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62 :夜桜散る頃に:2009/07/28(火) 01:12:47 ID:NueWz6ui

 「あのさ、一つ聞きたいんだけど」
 「ん?何?」
 「俺のどこがいいの?」
 そう尋ねた時、彼女は暗く、いや黒い笑みで囁いた。
 「全部」
 ゾクッと背筋が震えたのは多分、本能の警戒信号だ。
 彼女―黒咲姫と付き合ってからもう12年になる。
 ちなみに俺達は、現在高校二年生。17歳。
 逆算すると幼稚園の頃からの付き合いとなる。
  異常だ。異質でもある。
 ちなみに黒咲姫は自分の彼女には勿体無い、いや、正確に
 言うなら不釣合いだと言える位の美人だ。
 大和撫子というのか。長い黒髪に清楚な黒いセーラー服。
 学生服だけでなく私服でも黒を着ることを多い彼女の肌は
 対照的に白く、まるで真珠のように艶かしい色艶を放っている。
 学歴の方も学年上位で、子供の頃から習ってるという剣道も強い。
 まさに文武両道の天才美女。
 そんな彼女の唯一の欠点といわれてるのが付き合ってるボクのステータスの低さ。
 頭が悪く、運動は出来ず、更に視力が悪いのでずっとメガネをかけてるせいか、
 昏い人間だと思われてる。実際、昏いのだけど。
 そんなボクは時折、疑心暗鬼となってこういう質問をしてしまう。
 失礼だな、と思っても。
 姫は笑顔のまま、ボクの耳元に唇を近づけ、囁く。
 「何、また言われたの?」
 「今回は違う。なんとなく」
 「そう・・・・」
 「痛っ!」
 ガチッと鋭い痛みが耳に走り、僕は思わず手で覆う。
 彼女は口元を拭う。
 「そういうのは私は嫌い。私は好きだから付き合ってるの。君は違うの?」
 「い、いや、僕もそうだけど」
 「なら一々びくつかない。そしてそういう質問もしない。いいね?」
 彼女は笑い、僕も釣られるように微笑む。
 
 ボクの幸せだった記憶だ。
 それを壊したのは僕で、壊れたのは彼女。
 まるで満月に照らされた夜桜は、散るさまが一番美しいかのように。