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648 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/08/30(日) 01:24:17 ID:VBLu33dI

ジョナサンの妻、マリアは元・軍人だ。
二人はデバ共和国で勃発した第二次ザンジバル独立紛争の戦場で出会った。
ジョナサンは現地でNPOとして戦場での無差別医療に携わっていた。
連日報道されるキリング・フィールドが彼の使命感を燃え上がらせたのである。
事実、命を捨てる覚悟で来た戦場だった。
しかし、「戦場」はそんな使命感を吹き飛ばすような現実を彼に見せた。
一般市民、それも子供や老人ばかりが手遅れの状態で運ばれてくる毎日。
医療と言うより最期を看取ることしかできず、彼はまさに地獄を味わっていた。

後の妻、マリア・ソネンフィルドが彼の病院に運ばれてきたのはそんな時だった。
マリアはデバの元・宗主国、ケルン連邦から派遣されてきた部隊の兵士だった。
中尉であった彼女は、部下を率いて教会関係者を避難させる途中、敵の襲撃にあった。
シスターを庇って敵の攻撃を受け、瀕死の状態で彼女は彼の病院に運ばれてきた。
幸い、ほかの拠点と比べて設備も物資も充実していたため彼女は一命をとりとめた。
そのとき、一週間ほとんど寝ないで看病に当たったのが彼である。
短いものの美しい金髪と、真っ青な眼、鼻筋の通った美しい顔立ちに魅了されたのだ。

運ばれて一週間後、マリアは昏睡状態から目覚めた。
彼女は左腕を失い、腰の傷から歩くことはおろか立つことさえできない状態であった。
マリアは怒り、嘆き、悲しんだ。そして自殺すら考えていた。
しかしそんな時に、ただ静かに彼女を見つめながら「死ぬな。生きてほしい」と言われた。
そのたったひとことが彼女を救った。まだ若い、青年の看護士だった。
名前はジョナサン・アルスタインと聞いた。彼が一週間、寝ずの看病にあたってくれたことも。
マリアにとって、全てが奇跡のめぐり合わせに思えた。
ジョナサンは二度も私を救ってくれた。これが奇跡でなくて何なのだろう。

二日後、軍のヘリがマリアを基地に搬送するため迎えに来たとき、彼女は彼に付き添いを頼んだ。
ジョナサンは迷った後、こう答えた。
「こんな俺でも人を救えるときがある。君がそれを教えてくれた。だからもう少しここで頑張りたい。」
諦め切れなかった彼女は、上司に掛け合った。
父と懇意にしている上司は、重傷を負ったマリアの願いを聞き届けたようだ。
どうやったのか、次の日には、ジョナサンらNPOに国外退避命令が下った。
基地に来たジョナサンは、真っ先にマリアを訪れた。
訪れた彼にマリアは、自分も帰ること、そして退役することを伝えた。
「私は退役する。この体では戦えない。しかし国に帰っても私には生きる場所などあるのだろうか。」
「我々は無駄な介入者と非難されている。国民の目は冷たい。しかも私は働くことすら出来ない。」
「帰るべき家も無い。母は死に飲んだ暮れで元軍人の父親は私になぜ死ななかったと言う体たらくだ。」
「どうすればいい?君に言われて私は死ぬこともできない。いったいどうすれば・・・。」
青白い顔で、マリアは涙を流しながらジョナサンに問うた。
彼はただ静かに、黙って彼女の聞いていた。そして答えた。
「それなら、―もし君が良ければだが―僕と生きよう。僕が君の家になる。だから一緒に生きるんだ。」

二人はケルンに戻った後、結婚した。傷痍軍人との結婚は大反対され、半ば駆け落ちのような形だった。
絶望で空っぽになりかけた男と、彼が絶望と死の淵から救った女は互いを自らの半身のように想った。
しかし、女は常に、男が五体満足であり、それゆえ外で働くことを不安に思っていた。
男を疑うわけではない。しかし、自分の体で男が満足するとは思えなかったのだ。