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77 名前:不安なマリア5[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 01:11:04 ID:y4Nin90V

マリアが家事修行をはじめて、2ヶ月が過ぎた。
さすが元軍人、軍隊仕込の包丁裁きはなかなかだったが、火を扱う手は心許ない。
ジョナサンとしては、頑張ってくれて嬉しかったがまず不安が先に立ってしまう。
仕事中でも、すこしの暇を見つけては電話して安否を確認する癖がついた。
この前の小火が、もしかしたら今度は火事になるかもしれない。
高めに調整した車椅子から落ちれば、最悪怪我をしてしまう。
実際、彼女は料理中に何度か車椅子から落ち、駆けつけた夫に助けてもらっている。
そうしたことが続き、彼の心配症は加速度的に強くなっていった。
しかし、駆けつけたときの妻の安堵と不安が入り混じった嬉しそうな表情を一度見てしまえば、
彼の中には例えようのない幸福感が溢れるのだ。
そうしてマリアは、夫に「教え」、「与える」ことを繰り返した。

そんなある日、マリアが夕食を準備することになった。
隻腕なうえ、体も衰えたマリアにとって、水を張った鍋を持ち上げるのも一苦労だ。
包丁も、手つきはジョナサンより良いくらいだが、やはり体が邪魔をする。
座った状態で料理すること自体、困難なのだ。課題はいくらでもある。
心配したジョナサンは定時に帰宅しており、ハラハラしながら妻の料理を見守った。
そんな夫の視線を感じ、マリアの口元はどうしても緩んでしまう。
「最近、はやく帰ってきてくれるんだな。ありがとう。」
帰宅が早いくらいで大喜びされると、彼も照れくさく、素直に心配だからと言えない。
「うん、まぁそうかな。忙しくないからね。それに特訓もあるし・・・」
彼の照れたような言葉に不満な彼女はさらに追撃した。
「ふふ。正直に“君が心配だった”と言ったらどうだ?私を気にかけてくれたんだろう?」
最近鍛えだしたのか、右腕だけで肉を軽快に切っていく。
よほど努力したようで、彼は自分の見ない間にマリアが変わったことに驚いた。
「ああ、その通り。君が心配だった。料理、すごく上手になったね。」
素直に喜ぶと同時に、自分の見ない間、というのが何となく気に入らない。
「ふふ。それで良いんだ。あなたが教えてくれたんだから上手いのは当たり前だ。」
彼女は機嫌よさそうに答えた。と、背後から突然抱きしめられる。
「あっ。待て、今は料理中だぞ。」
「・・・でもね。君が僕の見えないところで頑張るのは、何だか嫌だな。」
夫から予期せぬ言葉をかけられ、マリアは恍惚とした。
今の夫の心理はまぎれもなく、不安と独占欲から生まれたものだからだ。
これまでなかなか目に見える成果が現れなかったので、喜びもひとしおである。
あと一息だ。込み上げる歓喜を押さえ、ツツと彼の腕に自らの指を絡ませた。

一方、夫も自分の言葉と行動の意味に気付いてうろたえていた。
自分は何を言っているのか。無論、独占欲だって人並みにあるのは自覚している。
しかし、今の言葉はまるでマリアが不安定になったときに吐露する感情と同じだ。
一体、いつの間に自分はこんな風に・・・。
体を離そうとしたがいつの間にか腕に彼女の指ががっちりと絡んでいる。
「あ、あの、今のはその・・・」と一応、弁解を試みる。
妻が振り向いた。全てを包みこむように微笑んでいる。
「クス。ふふ。やっとあなたも、わかってくれたんだな。」
「不安を感じるんだろう?影も形もないのに、ただそこにいるんだ。」
「それは私だ。私がいるんだ。あなたのなかに。私だけが。」
マリアは、ジョナサンの体を引き寄せた。
彼は動けないまま抱き止められる。いつも彼女にしていることを自分がされている。
「あなたが不安で心配してくれるから、私は安心して生きられる。」
「私もあなただけを考えて、心配して、毎日待っている。一緒なんだ。」
額をつけて目と目を合わせる。こういう時、マリアの目は他に何も許さない。
「・・・ふふ、私もあなたも幸せ者だ。そうだろう。」
夫には、私以外との時間も、私以外との空間もいらないし与えたくない。
夫の不安を育て、独占し、支配することで、彼女は彼の心の選択肢を極端に奪っていった。


78 名前:不安なマリア5[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 01:14:24 ID:y4Nin90V

それから1カ月が過ぎた。彼は明らかに変化していた。
どんなに忙しくてもあまり残業をしないようになった。
家との連絡をするため、他との電話を避けるようになった。
他人と何をしていても家のことが気になって仕方ない。
以前は時々していた散歩も、あまりやらなくなっていた。
週末は極力家にいて、マリアと料理や掃除、読書に打ち込む。
二人ベッドでキスやフェラしながら一日を過ごすことさえあった。
妻が無事かどうか、どうしようもないほど心配になる時もある。
しかし、電話で話したり、家に帰って抱きあえばそんな不安は吹き飛んだ。
いつ、どこで、何をしていても妻のことが気になるようになっていた。

その日も、さっさと作業を終わらせたジョナサンは定時ちょうどに店を出た。
「じゃあ、ここでお先に失礼します。お疲れ様でした。」
店に残ったのは店長と、以前、香水で浮気疑惑の火元となった同僚のクレアだった。
最近、この二人の会話はただ一つの話題に独占されている。
いわずもがな、ジョナサンが最近変わった、というものだ。
「やっぱりヘンですよね。」とクレア。
「うーん。そうだねえ・・・。」とろとろと相槌を打つ店長。
二人とも、ジョナサンの何が変わったのかはイマイチ掴めないのだ。
仕事が速いのも、真面目だが緩急をつけられるのも相変わらずなのだが。
「それに、なんか最近あの人、何だかそっけないっていうか。」
確かに、最近のジョナサンは職場での人間関係に気を使わなくなったように見える。
もちろん無礼ではないのだが、そもそも関心が向いていないようだった。
しかもクレアは、特に自分に対してそうなのではないかと感じていた。
「確かになぁ。そりゃあ早く帰るのは、奥さんのことがあるから良いけど・・・。」
「変ですよ。外回りなんかもっとユルい感じでしたけど、なんか最近ぜんぶ事務的で。」
「あと、電話もなぁ・・・」さすがに店長も電話の回数が異様に多いことに気付いていた。
「ですよね。電話、どんな忙しくてもしてますもん。私たち仕事中じゃないの?って。」
仕事を始めたころの真面目で人当たりの良かった彼は一体どうしたのか。
「最近は私がランチに誘っても来ないし・・・。」とクレアは怪訝な顔をした。

その頃、すでに夕食を終えたジョナサンとマリアは、ソファでだべりあっていた。
これは最近根づいた習慣で、夕食後、抱き合いながら色々なことを話す。
話題は最近の彼の悩み、マリアのことが異常なほど心配になってしまうことだ。
しかし、それを聞いた彼女はこれ以上ないというほど嬉しそうに笑った。
「ふふ。アハハハハハッ。すごいッ。私たちは完璧だ。完全な夫婦になれる。アハハハハッ」
「あなたの中にいるのは私だけだ。あなたが見えるのはわたしだけだ。そうなんだろう?」
「それは、すごくすごく良いことなんだ。ふふ、だって私たちは夫婦だからな。」
「夫婦とはそういうものなんだ。クス、ずっと二人だけ。これが本当の夫婦なんだ。」
彼が偽物の基準はなんだと尋ねると、彼女は鼻で笑って答えた。
「あいつらだ。『あの女』と『あの男』。私を生んだクズどもは偽物だ。ざまあ見ろッ。」
強烈な憎悪だった。そして彼もそうだなと心から首肯する。
――そうだ、『あいつら』はクズだ。そして、僕らはクズじゃない。


79 名前:不安なマリア5[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 01:17:45 ID:y4Nin90V

「私はクズの娘なのに。本物になれたんだ。ふふ、あはは・・・」
口を歪め、半笑いのままの虚ろな目で、マリアは夫を見つめた。
彼女の目が彼の目を捕える。ジョナサンはたまらず妻を倒して抱きしめた。
「僕らはあいつらと違う。そうだろう?」
慄く彼にキスしながら、うっとりとした表情の彼女はその耳に囁く。
「今はな。でも一生そうならないために、ずっと二人だけで・・・。」
そう言ってマリアは彼の股間に顔をうずめる。長い金髪が垂れた。

彼がまるでセックスしているように感じるほど、彼女のフェラチオはうまくなっていた。
肉の擦れる音、吸い上げる音、舌を絡める水音、彼の荒い息、うめき声。
「普通の」セックスが出来ない彼女にとって、精一杯の楔がフェラチオである。
夫を責め抜き、それに夫が感じれば、彼女は歓び、独占の証に満足して絶頂する。
「・・ンム・・ンン・・・ハァ・・ジョナサン?」
「うぁ、ッツ・・・なんだい?、ハァ、急に・・・」
急に止められて不満そうな顔をするジョナサンを、マリアが探るような目で見つめる。
「まさか、他の女にもそんな声をだしている、なんてことはないな?」
そう言うなり、目線はそのまま「作業」を再開した。舌を焦らすように少しずつ動かす。
「な、に言って、ううッ、く、ぁあ・・・」
「どうした?答えられないのか?どうなんだ。」
マリアは自分の表情が醜悪になっていくのを感じた。しかし、疑念は止まらない。
――疑いは私の愛の証なんだ。だから正直に答えてくれ。同僚の女だろう?あの香水の。
――私の勘違いだと言うなら、私の仕打ちを許してくれ。私を愛してるんだろう?
彼女は先端を甘噛みして射精を促しながら、その根元を手で締め上げる。
「ちがっ、・・・うぁ・・――ッく、はぁ・・・・してない。信じてくれ・・・」
ジョナサンは「信じてくれ」という懇願を繰り返し、彼女を悦ばせた。
「信じて」と懇願する夫の姿のなんと愛しいことか。
疑われる不安で彼をもっと満たそう。互いに満たしあうからこそ夫婦なのだ。
再び「夫」を咥え、片手で自分の股間も刺激しながら、支配の言葉を投げかける。
「ム、フ・・・ンム・・ゥん・・・本当か?もし嘘なら、ンンッ・・・自殺、するかもな。」
「キッチンで・・ハァ・・大怪我もいいな。もっと、ンフぁ・・・ひどい、状態に・・・」
「ンフ・・フッ、ん・・それとも、二人で、ンム、死ぬほうが、ハァ・・良いか?」
責められ続け朦朧とした夫は、「マリア・愛してる・信じてくれ」の三語を呟くだけだ。
それだけでマリアは、幾度となく絶頂してしまう。こんな深い陶酔があるとは知らなかった。
――イく。これだけでもっとイける。あなたがおかしくなって私と一緒になって・・・。
――ジョナサン、もっと不安でもっと気持ちよくしてやる。私の私の私の私の私の・・・。
単なる呻き声しか出なくなった頃、ようやくジョナサンは解放された。
不安、信頼、喜び、恐怖がないまぜになって強烈な快感となり、彼を襲う。
妻の笑い声が響き、頭の中で不安も愛情も妻も自分も全てがいっしょくたになる衝撃。
「イクっ、私もイクからッ。だからッッ、一緒にィィィィイ」
髪を振り乱して高笑いしながら、マリアも再び絶頂した。

興奮しすぎたせいだろうか。夫を責めまくった後、マリアの意識は急に薄れていった。
その時も、マリアの脳裏に浮かんだのはやはり夫の不安に満ち何かに慄く表情だった。
ついに夫と分かち合えるようになったのだ。この身と魂にとりつく塊を。
不安に慄く夫から抱きしめられた瞬間、マリアは歓喜に震えていた。
無理もない。ずっと一人で背負ってきた呪いを一緒に受けてくれる人ができたのだ。
彼女は思う。そもそも「不安」が消えるはずなどなかった。私の一部なのだから。
私は再びそれを使いこなしただけだ。しかも軍にいた頃よりも上手く。
3ヶ月前の小火や、何度も椅子から体を投げ出した努力を思い出し、思わず笑みがこぼれる。
彼女のなかでずっと燻っていた敗北感は、いつの間にか消え去っていた。
意外にも、消えるべきは「不安」ではなく全ての「過去」だったのである。
全てを清算した気になり、必要なものは手の届くところにしかないように見えた。