875 : ◆memoqQ96og :2009/09/13(日) 20:17:02 ID:VbGPF8dU
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OR(オーバーリアクション)な彼女
第1話

今年の夏のことだった。
ついに俺にも初めて彼女が出来て、しかもそれが男十人中九人が振り向く美女ということで浮かれていた。
しかし後から考えると、そもそも彼女をと出会ってしまった時点で俺の人生の歯車は狂ってしまったのかもしれない。
それは何気ない会話の中の一言から始まった。
「最近、暑くて寝苦しいから睡眠不足でさ…。」
この言葉に大きなリアクションを期待していたわけではない。
しいて言えば、「それは大変ね。」程度の普通の反応を期待していたわけだ。
しかし、彼女の反応は違った。
口をポカンして、瞳孔は開ききってきた。まるで驚愕の事実を知ったかのように。
そして、次の言葉で俺を責めたてた。
「何故、もっと早く私に言わないんですか!私は漢君の彼女ですよ?」
「は?」
今度は俺がポカンとする番だった。イマイチ状況がつかめない。
俺が何も言葉を返せずにいると
「準備があるのでこれで失礼します。」
と、急いでどこかへ消えてしまった。

一体今日の初デートは何だったのか?俺は何か悪いことを言ったのだろうか?
そんなことが頭の中で何回もぐるぐると回っていたが、答えは見つからない。
彼女になんとメールを入れるべきか分からないまま日が暮れ、就寝の時間になったのでベッドに入ろうとすると、玄関のチャイムがなった。
こんな時間に誰だろう?
ドアの穴から外をのぞくと、そこには彼女が立っているのが見えた。
「どうしたの?こんな時間に」
よく見ると彼女の顔は真っ青で全く生気が感じられない。いや、真っ青というより真っ白と表現した方が正確だろう。
「具合でも悪いのか?とりあえず部屋へ――。」
手に取った彼女の手も蝋人形のように白く、ひんやりと冷たかった。
しかし、こんな夜遅くに男女が二人きりで・・・。これはOKのサインなのだろうか?
いや、むしろここは慎重に・・・。早とちりして襲いかかることがないようにしなければならない。
などと頭の中で考えつつ、部屋に招き入れる。
彼女は次の瞬間、ベッドへと潜り込もうとした。
「ちょ、何やってんの?」
展開の速さに俺の方が混乱した。
「さあ漢君、一緒に寝ましょう。体を限界まで冷やしてきましたから。」
低体温症というやつだろう。彼女の声は途切れ途切れで弱々しい笑顔だった。
このままでは彼女が死んでしまうかもしれない。その夜、彼女を温めようと必死に強く抱いたのだった。
次の日、僕はいつもより寝不足だった。未だ童貞だったことは言うまでもないことだ。

886 : ◆memoqQ96og :2009/09/17(木) 00:57:29 ID:tBq2vw64
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ORな彼女 第2話

猛暑が続いていた。暑くてこれ以上寝る気にもならない。
「腹減ったな。」
近所のコンビニで弁当を購入し、最初に和風ハンバーグに手をつけた。味は…まあまあだ。
ピンポーン
「む、あいつ来るのが早いな。」
そんなことを呟きつつ、玄関のドアを開ける。
「こんにちわー。」
そこには白地のワンピースに、麦藁帽子を被った女ちゃんがいた。
「おう、中に入れよ。」
「おじゃましまーす。」
「今、飯食ってたんだ。少し待ってて。」
「…。」
女ちゃんは部屋の入口に立ったまま、しげしげと弁当を見つめていた。
俺は何をしているのか不思議そうに見ていたが、女ちゃんの表情が次第に険しくなっていくのがわかった。
「メスノニオイ!」
女ちゃんが機械的な言葉を放った次の瞬間、俺の弁当は窓の外へと放りだされた。
女ちゃんの手元はかすんで見えなかったが、たぶん投げたんだと思う。
弁当のトレイは回転し、中の具を四方八方に散乱させながら彼方へと飛んでいった。
「何するんだよ!」
「すみません…。何故か反射的に。でも浮気は駄目ですよ?」
俺に向けられる虚ろな眼差し。彼女の目を見つめていると何処かに吸い込まれていきそうだ。
わけもない身震いに襲われる。
この状態で彼女を放置しておくと危険だと俺の本能が教えている。
確かに店員は女性だった。いや、作ったのが女性でそれがまずかったのだろうか?
検証したいところではあったが面倒だったので、これからは俺の弁当を作ってくれるよう頼むという姑息な手段で誤魔化した。
お陰で、毎日のように得体の知れない食材の入った弁当を食う破目になったことは言うまでもない。
最終更新:2009年10月11日 16:15