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882 :名無しさん@ピンキー:2009/09/16(水) 23:52:35 ID:jSKMc008
埋めネタ1レス「オチのない人生」

基本的に全ての文章は、いわゆる「オチ」でその評価を決してしまう側面をもっている。
読み手をハッとさせる上手い「オチ」
読み手の心情を導いて感情を動かす「オチ」
巧妙な伏線の処理で読み手をストンと得心させる「オチ」
読み手の目を眩ませ、あえて突き放す「オチ」
最後まで語らず、余韻で読み手の想像を誘う「オチ」
と、色んな「オチ」が文章には存在する。
書き手は様々なバリエーションから適切と思われる「オチ」をつけなくてはならない。
しかも、「オチ」はその作品全体の雰囲気と文脈の上に成立せねば意味が無い。
そんなキツいなら「オチ」をつけなくても良いじゃないかと諸賢の一部は言うかもしれない。
それは一見、物事の正しい側面を指摘しているようにも見えるが、誤っている。
なぜなら、文章が書き手の産物である以上、永遠に展開し続けることは不可能だからだ。
可能な例があるとすればただ一つ、書き手が途中で文章を放棄する場合のみだ。
そう、「オチ」をつけるというのは、重要で且つ困難な作業なのだ。


「では実際、『オチ』をつけるという作業について具体的に見てみよう。
テーマは、皆さんもよく知るところの「ヤンデレ」タイプの女性が登場する恋愛モノだ。
ここに控える助手の女君がヤンデレヒロイン「Xさん」を実演してくれる。
そして私が朴念仁な主人公の「男君」を演じよう。
長々と素人芝居を見るのは諸君もつらいだろうから、今回はクライマックスのみ見せる。
では、まず粗筋を解説しよう。男君はXさんの想いに気付かず、他の女と付き合ってしまう。
最初は我慢して応援したXさんだったが、男君の朴念仁さに傷つき、嫉妬に狂う。
そこで、ある日、二人きりになったところで、Xさんの想いが爆発してしまう・・・。
こんなところだ。よくある話と笑わんでくれ。これでも昨晩寝ずに考えたんだ。
では、女君、いや「Xさん」、はじめよう。」


ここで先生の講義はいつも途切れる。
途切れて始まるのは、もちろん私とのセックスだ。
バードキスがフレンチに変わり、息を荒くして互いの体をまさぐりながら裸になる。
そのころには、もう私の股間はびしょびしょに濡れていて、準備が整ってしまう。
先生は無言で私の体を強く抱きながら、「私」のなかに侵入する。
あの講義で、先生は一つだけ間違っていた。
――文章が書き手の産物である以上、永遠に展開し続けることは不可能。
そう、確かにそうだ。文章を、文脈を永遠に展開し続けることは不可能だ。
だが、一つだけ、たった一つだけ例外が存在するのだ。
それは書き手の存在自体が限りあるもの、と想定されない場合だ。

あの講義の最中、私は先生を拉致してラボに入った。
最先端のセキュリティに守られたラボで、私は先生と一緒にある種の永遠を得たのだ。
――物質を完全に分解し、データとして数万のスパコンに転送し再構成する。
「アトム」計画と呼ばれたその最先端技術の粋を集めた実験施設で私と先生は出会った。
私は平凡な研究員だったが、出来の悪さが幸いしたのか先生は何かと目をかけて下さった。
いつも優しく接してくれる先生に、ついていけず落ち込んだ私は夢中になっていった。
しかし、先生には交際相手がいた。副所長のクソババァだ。
私はあの女から先生を奪い、先生と一緒になるため、装置に手を加えて私達二人に照射した。
私と先生は今、システムプログラムの一部としてシステムの中枢に入り込んでいる。
先生は私が仕掛けたバックドアーからの侵入に冒され、私を愛することだけを実行し続ける。
ただ、直前の記憶だけはどうしても残り、講義のシーンをフラッシュバックし続けている。
ここでは、装置が破壊しつくされるか、人類が滅びるまで文脈は再生産されつづける。
私達二人はそうして永遠に再生産を繰り返す「オチ」なしのサイクルに「埋め」られたのだ。