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551 :名無しさん@ピンキー [sage] :2009/08/23(日) 15:44:31 ID:hRB7g0JA
書いてみた。3レス消費でやってみるで。SFもの

「でもなぁーんかおかしい。その女の人、どう見ても山に登る格好じゃないんですよ。」
面白れぇなあ、稲垣淳三。やっぱり日本の夏はコレダネ。
夏真っ盛り。現在午前三時。エアコンあり。団扇あり。
雑然とした部屋で俺はビール片手に怪談講談師、稲垣淳三の「怪談ナイト」を堪能していた。
落としたファイルの中に「怪談ナイト」全集が入っているという奇跡が起きたのだ。
「なんだぁ、と思って見ていると女がパッと振り返った。するとIさんはうわぁあっ・・・」
イイネ、よっ、名人芸!
などと一人モニターに声をかけていると、突如粒子のシャワーが乱れた。
淳三の顔がゆがむ。シャワーが突如乱れるなんていうのはありえない。
やべぇ、とうとう俺も心霊体験デビューか・・・。
と、モニターが暗転した。シャワーが停止しているのにシステムの駆動音は聞こえる。
現代では、テレビからキッチン、セキュリティにいたるまで家のことはシステムが動かしている。
モニターはシステムの操作画面にもパソコンにもテレビにもなる。
無論、モニター自体がシステムではないのでモニターの故障だけなら危険にはあたらない。
とはいえタイミングが良いだけにマジでコワいな、コレ。

「私の名前はコードネーム2501。私は情報の海で生まれた生命体だ・・・」

緊張を破ったのは聞き覚えのある台詞だった。
これは・・・、SFアニメの傑作「幽玄 攻核気動隊」の有名キャラクター「たまきち」の台詞だ。
でもおかしい。俺はさっきまで稲垣淳三の怪談話を聞いていたんだから。
もしや遅効性ウイルスか。俺の好みを分析してウイルス仕込んだ稲垣全集送りつけやがったのかも。
そうだとすると、相当ヤバイ。俺の家の家電操作はシステムに依存しているからだ。
でもビデオの中身自体は本物だし、わざわざ個人的に狙われるほど恨まれた覚えも無い。
それにこのシステムはファニーメイシステム社が誇る最高の攻性防壁に守られている。
チャチなトロイの木馬に破られるほどヤワな代物じゃないはずだ。

ぐるぐる思考をめぐらせていると再び声が聞こえた。
「おかしぃなぁ。この台詞なら食いつくと思ったんだけど・・・」
暗転したモニターのスピーカーから聞こえている。女の声だ。しかもこの声は・・・
「・・・この声はまさか、虚報花音?」
虚報花音は俺が大好きな女性声優だ。ハスキーな声の売れっ子。
「あ、やったぁ。この声には反応するんだ。」
応答があった。甘えたような声。本人な訳はない。だとするとハッキング野郎が遊んでやがる。
怒り心頭の俺は声を張り上げて、怒鳴った。
「テメー、いい加減にしろや。なに遊んでやがる、人の家のシステムにハッキングしやがって。
通報してやるからな。画面にツラ出せコラ。クソガキが。」

・・・静寂。
しまった・・・。俺の家をめちゃくちゃに出来る相手にこんな言い方をしてしまった。
俺は最低の間抜けだ・・・。今に攻撃が始まるぞ。
怒鳴った後の賢者タイム。ハッカーの次の一手の前に、まな板の上の鯉が一尾。
「・・・クス」
笑い声だ。小さいが聞こえた。スピーカーの音量を上げる。
「い、いま、笑ったか?」
クスクスと笑い声がスピーカーから漏れている。
と、突然笑い声が爆発した。シアター用の音響機器からコンポまで家の全スピーカから発している。
「アハッ、アハハハハハハハハハハ」
俺は耳をふさいだ。そうしていないと鼓膜が破れてしまいそうに思った。
「もうやめてくれ。俺に何の恨みがあるんだ」
「ないわ。用ならあるけど。それからね、助けは呼べないわよ。電話・携帯は私が支配してる。」
「なんだと!?」
俺は携帯に飛びついた。電話もメールも動かない。


552 :名無しさん@ピンキー [sage] :2009/08/23(日) 15:51:15 ID:hRB7g0JA
>>551の二つ目です

「そうそう、携帯のアドレス帳は絶対見てね。操作はできないけど閲覧はできるわよ。」
「・・・はぁ、なんでアドレス帳だけなんだよ。」
怒りを通り越して諦めが見えてきた俺は、抗議する気すらおきない。
アドレス帳は確かに見れた。しかし何か変だ。数が絶対的に少ない。削除されている。
「お前、アドレス消したのか?」
「ええ。」
即答かよ。
「なんで?ていうか誰の消した?」
「女よ。女の全部。理由は察してほしいわね」
・・・。って、女のアドレス全部?理由は察しろ?
「もう俺の理解を完全に超えてるわ。クソハッカーのことなんか理解したくないし。」
そう言うと俺はソファに寝転がった。舌打ちをしてモニターを消そうとする。
あと1時間もすれば会社のセキュリティに引っかかり、俺は助かる。そしたら修理に出そう。
そう考えて立った瞬間、キッチンの方から全自動収納の駆動音がした。
全自動収納は立方体型の各スペースが集合し、パズルのように組みあっている。
自動的に動いて、使いたいときに取り出しやすい位置で取れ、収納も簡単なのだ。
ジャキン、という金属音。・・・、これは包丁か。
キッチンを見ようとした瞬間、目の前にストンと何かが落ちて突き刺さった。
「ヒッ」
思わず情けない声が出る。包丁だった。どうやらアームを操作して投げたらしい。
「理由、わかんないんだ。消したの女の子のだけって教えたのに。」
さっきまで猫なで声だったハッカーの声が、やけに冷たいものになっていた。
「こ、怖い声もでるんだな。」
調子づけに一言。しかし次の返答で続ける気は無くなった。
もう一本、今度は耳のすぐ側をかすめて後ろの壁に突き刺さる。
「察して。お願い。」
・・・。どうやらこの洞察には俺の命がかかってるようだ。
携帯、アドレス、履歴、女。昼メロのネタかよ。
そうごちた瞬間、ハタと気づいた。まさか昼メロ?というかストーカーか。
「お前、まさか・・・・・・。」
「私の連絡先入れておいたよ。」
女?ハッカーは嬉しそうに答えた。
なんてこった。相手はハッカーのうえ、ストーカーかよ!
「あと、セキュリティに引っかかる期待は早く捨てることね。」
「会社のシステムには擬似情報噛ませておいたから。」
嬉しそうに続ける虚報花音のハスキー・ヴォイス。
ガッシ、ボカッ。俺の心は死んだ。死にかけた。とんでもないのに捕まった。

「大事なことを話すからとりあえず静かに聞いて。あたしの正体も明かすし。」
「あと、逃げ出したら足をまず狙うからね。」
三本目の包丁を前に、俺は一も二もなく、首を縦に振っていた。
逃げ出そうとしたせいでリビングのドアは全てロックされ、窓には雨戸が降りている。
ハッカーに監禁されてしまったようで、何とも絶望的な状況だ。あぁ吊りたい。
モニターには粒子のシャワーが流れている。
画面が戻ると、今度はコンポから音楽が流れ出した。
日本の曲だ。
「竹内まりや。『真夜中のナイチンゲール』、聞いたことあるでしょ?」
なぜかウキウキした声で話しかけてくる。つかとりあえず虚報の声止めてほしいね。
「知らん。つかホントに正体明かすの?ストーカーの意味なくなるだろ。」
そう悪態をつくと、画面には人間の顔が映し出された。


553 :名無しさん@ピンキー [sage] :2009/08/23(日) 15:55:59 ID:hRB7g0JA
>>5513つ目 ごめん。4レス消費です

前はきれいに整えられ、後ろでまとめられた長い黒髪。
涼しげな切れ長の目に、筋の通った日本人の平均より高い鼻。白い肌。
「それが、お前ってか。ふざけんなネカマ。鏡見ろアホ野郎。」
男か女か分からないが、美人の顔を見た俺の反応でテメエが興奮しようって魂胆だろ。
誰が付き合うかボケナス。さっきの包丁も忘れて怒りがこみあがる。
「ネカマ、かぁ・・・。」
モニターの少女の顔が歪む。そして俯いた。
悲しそうな顔をして俯く向こうにはストーカーがいる。
閉じ込められたストレスから、やけっぱちになった俺は追い討ちをかけた。
「そうだよ。くだらねぇことしやがって。さっさと俺を解放しろ。」
そう言った瞬間、少女は顔を上げた。
ぞっとするような敵意に満ちた眼差しだ。思わず視線をずらした。
視線をずらした先に見えたのはキッチン。アームが見えた。
恐怖で体が頭より先に反応する。瞬時に俺は伏せた。
頭の上を何かが通り過ぎる。背後の壁には包丁が2本刺さっていた。

数分後、俺はモニターに向かって額をこすりつけていた。
「いくらあんたでも言って良いこと悪いことがあるよね。」
はい、本当にすみませんでした。
「私、言ったよね。大事な話があるから口を挟まないでって。」
その通りです。私の不徳のいたすところでした。
「言うに事欠いてネカマだなんてひどすぎる。」
本当にごめんなさい。無神経でした。
「本当よ。私みたいに女性タイプのAIだっているんだから。」
はいまったくもってその通り・・・ってはぁぁあああ?!
「え、AIって誰?まさか人工知能のAIじゃないよな?」
思わず面を上げて聞いた。冗談にしちゃくだらなさ過ぎる。
「まさかってなによ。AIなら何か悪いの?」
おいおい。『スティング』なみのびっくり展開だ。
天才ハッカー・ストーカー・電波のロイヤルストレートフラッシュじゃねえか。
「信じてないのね。」
またさっきの寂しそうな表情をする少女。ぐっと唇を噛んでいる。
もう家に包丁は無いが、家のシステムを握られている限り反抗はできない。
「いや、あんまり突飛過ぎて、正直頭が追いつかないんだ。」
「・・・。」
「その、だから信じてないと言うわけでは・・・。」
「・・・、確かにそうよね。いきなり言っても信じるわけ無い、か。」
顔を上げてくれた。殺気立った様子もない。
はじめて何とかコミュニケーションできた気がするぞ。
さて、ここからどうやってこの監禁状態を解除してもらうか・・・。
しかし、少女はそんな俺の思惑をよそににこやかに言い放った。
「だったら、証明してあげる。私がAIだってことをね。それなら良いんでしょ。」
二の句が告げない、とはまさにこのことだ。何も言えない。
少女は嬉しそうに今後の予定を語り始めた。
「まず、適当なボディを捜してそこに入る。で、この家に玄関から侵入するわ。」
どこのボディがいいかしら、ロクス・ソルス、それともメガテク・ボディ社?
高性能なのが良いわね。信憑性あるでしょ。いつラボに侵入しようかな・・・
一人で勝手に話を進めはじめる少女。もう良いよ、勝手にやってくれ。


554 :名無しさん@ピンキー [sage] :2009/08/23(日) 16:00:42 ID:hRB7g0JA
>>5514つ目 これで終わりです。続きません。

「・・・だからね、あんたはこの家で待ってて。一週間くらい。」
へー、そんなとこまで話が進んでたのか。すごいな。ケイカクテキー
「で、その間に俺どうすりゃいいの、結局。」
そこが重要なのだ。こいつがいない間に逃げ出さなきゃいけない。
「いま言ったじゃん。何聞いてたの、ホント。」
「・・・悪い。まだ混乱してるんだよ。」
もう俺も疲労の限界だ。話を聞かないくらい許してほしい。
つかれきった俺の表情を見て、少女は不機嫌な表情を改めた。
「そっか。まあそうだよね。ごめんなさい。あんたを傷つけるつもりじゃなかったの。」
ショゲた顔をしている。俺への配慮もできるようだ。
この隙をうまく広げればなんとか外に・・・。
「良いよ。もう一回言うから聞いてね。」
「おう。」
「とりあえず、一週間。あんたには一週間この家にずっといてもらうわ。」
・・・え?
「ちょ、ちょっと待った。お前自分が言ったこと分かってるか?」
「なに?一週間も家は嫌なの?」
せがむような表情。アバター画像とはいえカワイイな。しかしここは譲れない。
俺は事実を口にした。
「ていうか、それ監禁だぞ。待つのはずっと家じゃなくても出来るし。」
少女の反応をうかがう。これでやめてくれれば・・・。
しかし、少女はそんな俺の顔を見るとニヤッと笑った。
「監禁?そんなの当たり前でしょ。一週間くらい待ってて。逃げるなんて許さない。」
「おい!」
予想したより、ずっとたちが悪い相手だった。というかなんで俺なの・・・?
「ここに私のプログラムを少し残しておくわ。もう逃げられないわよ。」
「でも・・・。」
「でももクソもない。あんたは私と恋人になるのよ。それぐらい待ってくれても良いでしょ。」
恋人、のところでテンションが上がったようだ。声が大きくなっている。
これ以上ないような幸せな表情をするモニターの少女。
結局、俺は反論できなかった。幸せモードを壊して命の保証が無かったからだ。
少女は続けて、戻ってきた後の生活を語り始めた。どうやら一生二人きりらしい。
冗談きついぜ。いや、マジで。