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581 :Cinderella & Cendrillon 6 [sage] :2009/10/23(金) 00:49:37 ID:9xbypOrN
~依音side~

やぁ皆! こんにちわ!
ところで皆は最近、現実逃避はしてるかな?
僕? 僕は今、現実逃避の真っ最中さ!
え? 現実を見ろって?
やだなぁ、現実を見ても何もないよ……何も……
ただそこに僕とさきねぇのキスをばっちりと見てしまったひめねぇがいるだけさ……
…………ひめねぇが……ヒメネェガ…………


~姫乃side~

弟が交通事故にあった。
その知らせが来たのは夕方の6時頃、私がその知らせに気付いたのは夜の11時頃。
朝から研究室に籠って実験のレポートをまとめ、不備がある、もしくは不明瞭な個所はもう一度実験をする。
それの繰返しを続けているうちに午後の5時になった。
(これは徹夜になるかもなぁ……)
そう思い、弟と双子の妹の携帯にメールを入れ、仮眠をすることにした。
そして目が覚めたのが午後10時30分、眠気覚ましのコーヒーを弟がプレゼントしてくれたカップに注ぎ、机に戻る。
カップの中のコーヒーが半分になった頃、先輩の一人が「メール着てたわよ?」と知らせてくれた。
私は礼を言い、自分の携帯を確認する、妃乃からのメール、珍しいこともあるものだと思いメールを開く。
そこには「えねがじけにあた」とだけ書かれていた。
急いでいたのだろう、「えねが」までは読み取れる、問題は「じけにあた」の部分。
恐らくこれは「じけ」に「あた」と読むのだろう、「じけ」…………「事故」?
とするとこの「あた」は「えねが事故に……」から推測すると…………「あった」かな?
全文を読解し再翻訳する、「えねがじこにあった」…………「依音が事故にあった」!?
そのたった一行の文字列を理解すると同時に、手元にあったカップは床に落ち、音を立て、割れた。



582 :Cinderella & Cendrillon 6 [sage] :2009/10/23(金) 00:49:59 ID:9xbypOrN
そこからの行動は迅速だった。先輩に事情を説明し床にこぼれたコーヒーとカップの後始末を頼む。
そして自分はコートを羽織り、携帯と財布だけ持ってタクシーに飛び乗った。
タクシーに乗っている数十分が耐えきれない。早く……早く!
病院に着くと同時に運転手に一万円札を渡し「お釣りはいらない」と吐き捨てる。
後ろから声をかけられたが気に留めている時間はない、受付に弟の病室の場所を聞き出す。
8階の個室、804号室。エレベーターなどを待っている時間はない。
階段を1段飛ばしで駆け上がる、2分もたたないうちに8階に着いた。
804号室、廊下の突き当たりの右の部屋、地図はさっき受付で見たので覚えている。
私が804号室を見つけると部屋の前のソファに妃乃が座っていた。
「妃乃……何があったの……?」
できるだけ優しい声で話しかける、でも少しは怒気が混じっていたかもしれない。
「ち、が……わた、し……そんな……つもり、じゃ……」
現実を信じられないのか、それとも信じたくないのか。
私は双子の妹を廊下に残し、弟の居る病室に入る。
未だ寝ている依音を見た瞬間、意識が飛びそうになった。
痛々しく巻かれている包帯、真っ白な病人服。
本来なら清潔なイメージをもたらすそれらが、私の脳にさらに痛々しいイメージを追加する。
思わず駆け寄り、えねを抱きしめる。
そこでさらに異和感、左肩から生えているはずの腕がない、左腕がない。
私は座り込みたい衝動を何とか抑え、えねちゃんに布団をかけ病室を後にする。
病室の前にはまだこの出来事を理解しようとせずふさぎ込んでいる双子の妹が1人……。
「……妃乃。」
「………………」
「……妃乃!」
「っ!」
「いい加減受け止めなさい。」
ゆっくりと妃乃が私を見上げる。
「何があったかは知らない、でも依音をあんな風にしたのはあなたでしょう?」
「………………」
妃乃は答えない、恐らくこれは肯定の意なのだろう。
「だったら、私はあなたを許さない。 例え依音があなたを許しても、私はあなたを許さない。」
それだけ言うと私は依音の病状を知るため、担当医師を探しに行った。
かなり大掛かりな手術だったため、今は安定していても先はわからないらしい。
医師は続けて、数週間の入院が必要と私に告げた。
医師の話を聞き終えると、私はえねちゃんの着替えを用意するためにいったん自宅へ向かった。
考えをまとめるためタクシーではなく、徒歩で自宅へ向かう。
病院から自宅までは徒歩で約2時間、往復で4時間。
だけど私にはそれが1時間にも満たないとさえ感じた。
自分では妃乃にあんなことを言っておきながら、自分でも受け止めきれていないのだろう。
滑稽すぎて笑いがこぼれる。
結局、再び私が病院を訪れるとき、携帯のディスプレイには「Am 07:00」と表示されていた。
8階の804号室、すでに部屋の前に妃乃の姿はなかった。
逃げたか、それともお手洗いにでも行ったか、どちらにせよ自分には関係ない。
私は何も考えず病室のドアを開け放つ。
そこにいたのは…………

…………我が最愛の弟である奏 依音と、依音と唇でつながっていた私と同じ容姿をした女だった。