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595 :動き出す時 2話 [sage] :2009/10/24(土) 23:47:55 ID:2NMRiSV1
救命士とか、そういう職業に就いている人でもなければ、恐らく一生に一度あるかどうかの体験をした俺は
次の日の朝、自室のベッドで絶賛爆睡中だった。どうせまだ夏休み期間中なんだし、このまま昼くらいまで寝てしまおう
そう考えて起きる気ゼロで眠りこけていた俺の耳に突然、鼓膜を破らんばかりの大声が聞こえた。
「祐樹! 起きなさい! 夏休みだからって何時まで寝てるつもりよ!?」
あまりの声量に、耳にダメージを受けつつ目を開けると、非常によく知ってる顔があった。声で誰かは分かってたけど。
「おばさんに、祐樹が帰ってきたって聞いたから様子を見に来てみれば……」
声の主は幼馴染の綾菜だった。ポニーテールにしている自慢の赤い髪を揺らしながら更に続ける
「突然行き先も告げずにふらふらどっかに行っちゃうんだから! 心配する方の身にもなってよ!」
どうやら俺が若気の至りで何も知らせず突然旅に出たのが心配だったから怒っているらしかった。
「悪い、綾菜。心配かけたみたいで……」
素直に謝る事にした。すると綾菜は
「ふん!」
と、そっぽを向いて部屋のドアの方に向かって行った。一見すると諦めて突き放した様な態度である。
しかし、付き合いの長い俺には、実はこれは許してくれたのであるという事が分かった。
「朝ごはん出来てるから早く降りて来なさいよ」
最後にそう言って、綾菜は部屋から出て行った。彼女は羽柴(はしば)綾菜。俺の幼馴染であり、お隣さんでもある。
ウチの両親と彼女の両親はとても仲が良く、俺達は生まれた時から家族ぐるみでの付き合いだった。
その為、俺達は兄弟の様に育ち、今もそんな感じの関係である。ちなみに学校のクラスも今までずっと同じだ。
小・中の9年間と高校1年の今も同じクラスなので合計して十回連続で同じクラスという事になる。
ここまで来ると神掛かり的な何かの力が作用しているのではないかと疑ってしまう。
ちなみに容姿の方は非常に良い。健康的に伸びた手足に、形が良くやや小振りなそれぞれの顔のパーツ。
そして、強気そうだがパッチリとした意志の強そうな目。綺麗な赤い髪がそれらによくマッチしていた。ちなみに彼女の赤い髪の毛は地毛である。
両親共に日本人であるのに、何故赤い髪をしているのかというと……ぶっちゃけ忘れた。
遺伝子の突然変異か何かの関係で色素がどうこうとか聞いたような……いや、それは違う話だったような……
まあ正直どうでもいい。俺にとっては「綾菜の髪の毛は赤くて綺麗」という事実があれば、それで満足なのである。
性格の方も見た目通り強気な面もあるが割とさっぱりしており、誰に対しても分け隔てなく接する為、男女問わず好かれており友達も多い。
そんな訳で結構モテるらしく、告白されたなんて噂を時々聞くけど全部断っているらしい。
まあ、あいつは誰とでもすぐに友達になれる分、逆に相手を友達以上に見る事がなかなか出来ないんだろうと俺は解釈している。
ちなみに周りも同じ解釈をしており、そんな中で綾菜が唯一友達以上(兄弟)として接している俺は、周りから綾菜の旦那扱いされており
俺と綾菜はクラス公認の夫婦として扱われている。勿論クラスの連中の冗談・冷やかしの類である。
俺もそうだが綾菜もそんな気は無いだろう……と、それより早く着替えて下に降りないとな。俺は急いで着替えて一階へ向かった。


596 :動き出す時 2話 [sage] :2009/10/24(土) 23:48:54 ID:2NMRiSV1
一階へ降りるとテーブルには既に朝食が並んでいた。ご飯に味噌汁、焼き魚にお新香という典型的な和食の朝ごはんだ。
「今日は味噌汁よ」
俺が椅子に座るといつの間にかテーブルの向かいに来ていた綾菜がそう言った。
綾菜は時々こうして我が家に来ては母さんの料理を手伝ったりしており、今のは「今日、私が作ったのは味噌汁よ」という意味である。
早速その味噌汁を飲んでみる。良い感じにダシが利いており、味噌の濃さも丁度良い
「うん、美味い。もう少しで母さんに追いつくんじゃないか?」
と、褒めると綾菜も嬉しそうな顔になる。
「よかった、口に合ったみたいで。でも流石におばさんにはまだまだ及ばないよ」
と言った。そこに我が母、廣野早苗(さなえ)がやって来て
「そうよ、祐樹。私の料理はまだあと二回変身を残しているんだから。甘く見て貰っちゃ困るわ」
そうのたまってきた。マジか? 今でも相当美味いのに、更にあと二段階も美味くなるというのか!? というか変身ってなんだよ
母さんは以前、料理人を目指していたらしく非常に料理が上手い。俺の父、和雅(かずまさ)の事もその料理の腕でゲットしたとか言っていた。
「でも、綾菜ちゃんもかなり上達してるわよ。この歳でこれだけ料理の出来る子もなかなかいないわよ~」
と、嬉しそうに何故か俺に向かってニヤリとした表情を向けながら言ってくる母。まあ、言いたい事は分かる。
俺と綾菜の両親は俺達がくっ付く事を望んでいるらしく、クラスの奴らと同じく俺達を夫婦扱いして時々遊ぶのである。
「上達できたのはおばさんの指導のお陰ですよ。とても分かりやすく教えてくれますし」
「もう、綾菜ちゃんったら、そうやっておばさんの顔を立ててくれるなんて嬉しい♪」
と、何だか二人はそのまま料理談議へとなだれ込んでいった。俺は気にせず朝食を平らげ食器を流しへと運んで行った。

「じゃあ、行って来ます」
母さんは自分が講師をしている料理教室へと出掛けて行った。
かつて料理人を目指していた母さんは、火事に巻き込まれた時に消防士だった父さんに助けられ
その時の恩と助け出す時の父さんの姿、更にその後、見舞いに来た父さんと会話をして知った人柄に惚れたらしく
「私は和雅さん専属の料理人になります!」
と、夢が料理人から父さんと結婚する事に変わったそうな。母さんの積極的なアプローチによって二人は付き合う事になったけど
父さんが奥手で、なかなか一線を越えずにいたらしい。どう見ても両思いなのにと周囲もヤキモキしていたそうだが
ある日、何故か突然父さんが人が変わったかの様に母さんを抱いたらしく、そのままゴールインしたとのこと。
何故、それまで奥手だった父さんが突然行動に移ったのかについては、その話を聞いた周囲の人達も疑問を抱いたそうだが
変わったのは話で聞いた、その日の夜、食事を終えてからだけで、それ以降は全く普段通りだったので
普段抑えていた色々が噴出したんだろうという考えに至ったらしく、結果的に二人がゴールインする後押しとなったので良かったねという結論となったそうだ。
その後、父さん専属の料理人となるため、料理人になるという夢をバッサリ切り捨てた母さんは
かつての経験を生かして料理教室の講師をするようになった。母さんの指導は料理教室に通う奥様達にも好評らしい。
ちなみに料理教室の講師をやるようになった理由については「経済面でも和雅さんを支えたいの。それに、こうして私も稼いでいれば
もし、『不慮の事故』か何かで和雅さんが働けなくなってしまっても生活に困らずに済むでしょ?」と言ったらしい。
それを聞いた父は「心配性だなぁ」と苦笑したそうだが、その話を父から聞いた時、何故か俺は不安を感じた。

さて、今日はこれから何をしようか。母さんを見送り、特にする事も無いのでどうしようかと考えていると
「祐樹、実は私、夏休みの宿題がまだ終わってないんだけど、分からない所とか見てくれないかな?」
と、まだ家にいた綾菜が聞いてきた。
「おう、分かった。じゃあ部屋で待ってるよ」
「うん、じゃあ勉強道具、取って来るね」
そう言って綾菜は一度自分の家へ戻って行った。



597 :動き出す時 2話 :2009/10/24(土) 23:49:59 ID:2NMRiSV1
夏休みのある夜、家に電話がかかって来た。出てみると隣に住んでいるおばさんからだった。
「あっ、綾菜ちゃん? 祐樹が帰ってきたわよ。なんだか疲れてるみたいで帰ってきて早々寝ちゃったけど」
私は幼馴染が帰って来たという連絡を受けてすぐに家を飛び出しそうになったのをギリギリの所で堪えた。
今行っても仕方ない。行く口実となる物も無いし、祐樹を起こしてしまうのも可哀想だ。そう考えて明日の朝に行く事にした。
本当は今すぐに祐樹の様子を見に行きたいが、その気持ちを抑えて、明日ちゃんと睡眠が充分な状態で祐樹に会おうと眠りに着いた。

朝になり、私は隣の家へと向かいチャイムを鳴らした。するとおばさんが出迎えてくれた。
「おはよう、綾菜ちゃん。じゃあ早速だけど今日は味噌汁をお願いしようかしら」
こうして私は時々朝に祐樹の家にお邪魔して朝食作りを手伝わせてもらっている。気合を入れて味噌汁作りに取り掛かる横でおばさんは魚を焼いている。
私のお母さんもそうなのだが、おばさんは見た目がやたらと若い。高校生の子供がいるのだから当然それなり年齢なのだが、見た目はどう見ても20代である。
祐樹も私も母子で出掛けた時に母子ではなく姉弟・姉妹に間違えられた経験がある。私達の母親は秘密の若返り薬でも共有しているのだろうか?
しかも美人で、私が作った味噌汁を味見してくれているその横顔は、女の私でも見惚れてしまうほど綺麗である。
「うん、美味しいわ。これならいつウチにお嫁に来てくれても問題無いわよ」
「そ、そんなお嫁って……///」
おばさんの発言に思わず慌ててしまう。顔が熱い。恐らく今の私の顔は真っ赤だろう。
「じゃあ、朝ごはんも出来たし祐樹を起こして来てくれないかしら?」
「あっ、はい」
私は内心喜びながら、それに表に出さないよう気を付けて返事をし、二階へと階段を上がっていく。
祐樹の部屋に前に着き、一度深呼吸をしてから軽くドアをノックする。
「祐樹ー? 起きてるー? 朝ごはん出来たから起きてたら返事しなさーい?」
反応は無い。祐樹はまだ寝ているようだ。その事を喜びつつドアをそっと開けて部屋の中へと入る。
祐樹はまだ眠っており、ベッドの上で寝息を立てていた。私は祐樹の寝顔を覗き込んだ。
(可愛い……)
祐樹本人に自覚は無いが、祐樹はおばさんの遺伝子をちゃんと受け継いでいるらしく、おばさんによく似たとても整った顔立ちをしている。
そして、その無防備な寝顔は、見慣れているハズなのに、見ていると段々と胸がドキドキしてきてしまう。
祐樹はモテる。祐樹は誰に対しても優しくて、常に誠実であろうとしている。その優しさ・誠実さを受けて惚れる子は多い。
だけど祐樹自身にモテるという自覚は無いし、告白をされたことも無い。何故なら、それらは全て私が潰しているから。
例えば、祐樹に気がある子の前でわざと祐樹に必要以上に接触してみせたり、祐樹にラブレターを渡して欲しいと頼んできた子には、そのラブレターを捨てた後
祐樹からの返事は「NO」だったと伝えたり、色々な手を使って私は祐樹への告白の類をとにかく片っ端から潰していった。
優しい祐樹の事だ。告白でもされたりしたら、その子に同情して好きでもないのに付き合ってしまうかも知れない。
祐樹の事をよく知りもしないクセに、祐樹の一部を知っただけで全てを分かったような気になっている子と付き合っては、祐樹が不幸になってしまう。
祐樹の事を誰よりも理解していて、誰よりも深く愛している。そんな私と添い遂げる事こそが、祐樹にとって一番幸せであるに決まっている。
幸いなのは、祐樹がミーハーな子達にキャーキャー騒がれたりしていない事である。流石に表立って騒がれると、こちらも対処しにくい。
祐樹はおばさん譲りの整った顔立ちながらも、おじさんの遺伝子もちゃんと受け継いでいるらしく派手さが無いというか目立たない(別におじさんは派手さが無いだけで
渋いと言うか地味なカッコ良さみたいな物があり、冴えないとか不細工とかいう訳ではない)。その為、ミーハーな子達はもっと目立っていて派手な
別の男子に流れてくれているのである。まあ、隠れたイケメンみたいな感じでのファンもチラホラ居るみたいだけど個人単位だし動きも大人しいので問題は無い。


598 :動き出す時 2話 [sage] :2009/10/24(土) 23:53:55 ID:2NMRiSV1
私の祐樹への思いがここまで強くなったのは小学校に入ってすぐの頃だった。その頃には既に私は祐樹の事が好きだったが、あくまで一般的なレベルの感情だった。
その思いが今ほど強くなった原因はいじめだった。私は小学校に入学してすぐの頃にいじめに遭っていたのである。原因は私の赤い髪である。
それまで私達の周囲にいた子達は、物心がついた時には既に私が近くに居たので、私の髪に何の疑問も持たずに当たり前の事の一種と捉え、普通に接してくれていた。
しかし、卒園後に同じ小学校に入学したのは私と祐樹だけ。それ以外の子達から見れば私の髪は異端だったのである。
自分達と違う物は排除しようとするのが生物の本能なのだろう。私はあっという間にいじめの対象となった。とはいえ小学校に入学したばかりの子供である。
いじめと言っても靴を隠されたりする程度のものだった。しかし当時の幼かった私には辛くて仕方なかった。その度に祐樹に慰めてもらったりした。
ある日、私は数人の同級生に囲まれて、遂に暴力的な直接手を出すいじめへと発展しそうになった。
祐樹が掃除当番で私一人になったところを狙われたのである。しかし……
「おい! 綾菜に何してるんだ!」
ギリギリのところで祐樹が助けに来てくれて、その剣幕に怯んだいじめっ子達を、そのまま追い払ってくれた。
「綾菜、大丈夫だったか!?」
と、祐樹が心配して声を掛けて来てくれた時、私はそれまで我慢していた涙を堪えきれずに泣き出してしまった。
「うっ、ひっく、もうやだよ。何で私の髪は赤いの? みんなと同じじゃないの? 私だってみんなと同じ黒い髪の毛が良かった!」
泣き喚くようにそう叫んだ私を祐樹は抱き締めて、そして私の髪を梳かす様にゆっくり優しく頭を撫でてくれた。
「俺は綾菜の赤い髪、好きだよ。綺麗だし、これが綾菜の髪なんだって感じがするし」
「でも、赤いからみんな変な目で見てくるし、からかわれたりするんだよ」
「そんなの気にするな。みんなお前の髪が綺麗だから羨ましがってるんだよ。これからは『へへーん、いいだろー』って見せ付けるくらい堂々としてろ」
「でも、でも……」
「もし、世界中の人達みんなが綾菜の髪を変だって言っても俺だけは絶対に綺麗だと思ってるし『綺麗だ』って言ってやる」
その言葉を聞いた時、私は今までに無い安心感に包まれた。そうだ、例え誰が敵であったとしても祐樹だけは必ず私の味方でいてくれる。
「うん、ありがとう祐樹。私頑張ってみる! 祐樹が言うみたいに堂々と出来るように頑張る!」
「おう、その調子だ! 俺も応援するぞ! 頑張れ綾菜!」
「うん!」
こうして、この日から私の中で、祐樹に綺麗と言ってもらえるこの赤い髪の毛は私の自慢へと変わった。
そして、祐樹に言われた様に堂々とするよう心掛け、嫌がらせをされても挫けずに強くあろうとし続けた結果、徐々にいじめの方も無くなっていき
私にも友達が出来るようになった。こうして今の私へと繋がっていく。祐樹や周りは私の性格を強気と称しているようだが、その基を作ったのは祐樹である。
祐樹がいなければ今の私は無かったと思う。弱いままで泣き続けていただろう。祐樹がいたから私は強くあろうと決意する事が出来た。
祐樹には今でも感謝している。ただ、いじめが無くなったのは良かったのだが、学年が上がってくるにつれて今度は私に言い寄ってくる男子が出てきた。
はっきり言って祐樹以外は、どこまで行っても、あくまで「友達」でしかない。付き合おうという気なんてとても起きないし、そもそも私は祐樹のモノだ。
祐樹に思いを寄せている女子もそうだが、、私と祐樹を見て、二人の間に割り込む余地なんて無いと思わないのだろうか?


599 :動き出す時 2話 [sage] :2009/10/24(土) 23:55:18 ID:2NMRiSV1
と、そこで私の思考は一旦停止した。原因は、ふと目に留まった部屋の時計。私が部屋に入ってから結構な時間が経っている事に気付いたのである。
このままでは、折角おばさんが私を信頼して祐樹を起こしに向かわせてくれたのに、その意味も無くなってしまう。
私はもう少し祐樹の寝顔を堪能したい思いにかられながらも息を大きく吸い込んで
「祐樹! 起きなさい! 夏休みだからって何時まで寝てるつもりよ!?」
そう叫んだ。その後、目覚めた祐樹に行き先も教えてくれずに突然出掛けて行った事に対しても説教をした。
ここ数日の祐樹がいない、無事かどうかも分からない日々は私にとっては地獄であった。文句だって言いたくなる。しかし……
「悪い、綾菜。心配かけたみたいで……」
祐樹が申し訳なさそうに謝ってくるのを見ると、私の怒りも削がれてしまう。だいたい祐樹は卑怯だ。あんな顔をされたら怒るに怒れない。
「ふん!」
私はそっぽを向いて、赤くなっているであろう顔を祐樹に見られないようにしながら、朝ごはんが出来ている事を伝えて部屋から出て行った。

その後、朝ごはんを食べ終えた祐樹がおばさんを見送っている間に私は食器を洗っていた。
(祐樹に褒められた……)
洗い物をしながら私は幸せな気分に浸っていた。食事中、祐樹におばさんにもう少しで追い付くのでは? と言われた。
おばさんの料理の腕前はプロレベルの凄さである。祐樹もその事は当然理解しており、おばさんの腕前をとても高く評価している。
その祐樹からのあの言葉は、現時点での私にとっては最上級とも言える賛辞なのである。私は浮かれ気分のまま洗い物を終え祐樹の元へ向かう。
「祐樹、実は私、夏休みの宿題がまだ終わってないんだけど、分からない所とか見てくれないかな?」
おばさんを見送り終えた祐樹に声を掛ける。祐樹は勉強も出来て、成績の方もかなり良い。
流石に成績トップに名を連ねたりはしないが、こうして同級生の勉強を見てあげるくらいは出来るレベルである。私もこうして時々見てもらう。
「おう、分かった。じゃあ部屋で待ってるよ」
祐樹と部屋で二人きり。しかも家には他に誰もいない……つい、そんな事を考えてしまう。
祐樹の事だから、どうせ手を出したりとかはしてくれないのだろうけど、頭では分かっていても、どうしても心の何処かで期待をしてしまう私がいる。
「うん、じゃあ勉強道具、取って来るね」
そう言って私は、何も無いと分かりつつも期待を胸に、勉強道具を取りに一度自分の家へと戻った。