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718 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:00:02 ID:MTeA6Wkq
僕の手から放たれた紫の光はまっすぐに姫君に向かって炸裂した。
あまりの強大な魔力の放出に体がついていかず、僕の膝が崩れ落ちる。
この技は連発できない。最初の一発の不意打ちが外れた以上、多少の無理を
覚悟で使った二発目だ。これ以上は僕の魔力をもってしては火炎呪文の
一発も放てないだろう。
―でも、直撃だ!
先ほど舞い上がった爆煙の方を見て、僕は勝利を確信した。

「その考え方は実に危険でしてよ。相手の死体を確認しないでの勝利宣言は。」

煙がいずこともなく飛び去り、全く持って無傷の姫君が笑いながら立っていた。

「嘘でしょ…。何で平気なの?」

「知れたことです。わたくしがあの部屋に敷いたのは今から使う『記憶移植』の
術式ではなく『悪魔召喚』の禁術術式ですもの。闇の力を使うあなたの妨害が
予想される手前、私が複雑な『記憶移植』の術式を組み立てるのはいささか
難がありました。ですから私は悪魔と契約し、私の術が完成するまでの間
あなたのお相手をお願いしたのです。」

「そういうことです。」

姫君の横に新しい影が舞い降りた。戦闘中なので詳しい描写は省くが、悪魔だ。
しかも美人だ。

「私は今魔族に追われている身でして。人間界に私と兄さんの永遠の愛の巣を
提供してもらうことを条件に、この姫君の願いの手助けをすることになったのです。
フフフ…待っていて下さいね兄さん。逃げだせないように四肢を斬っておいたし、
人間界に逃げ込めば魔裁もそうそう見つけられないでしょう。」

悪魔は恍惚とした笑みを浮かべた瞬間、僕の背後にあっという間に回り込み
僕を地に押し付けた。今の僕の力では自力で抜け出せない。

「おやおや。どうやら魔力は空のようですね。まあ、たとえ魔力が十分にあったとしても
雷に強い私には到底かないませんけどね。」

その性質を利用してあの時姫様の盾になったのか。考えてもみれば同じ
闇の力を使う者同士、立場は対等だ。人間界で闇の力を使う僕が強いのであり
魔界の住人相手では闇の力の経験が不足しすぎているのだろう。

「しかしあなたも気の毒な方です。竜王に似てるからってあの姫君の
ターゲットにされてしまうとは。まあ、恋する乙女のやることですから、
黙って受け入れてあげてもいいのではないですか?」

ちょ!本当にそんな理由でターゲットにされていたのか!?竜王に容姿が
似ていればだれでもよかったの!?
僕はただ普通の生活を送りたいだけだったのに、竜王似の容姿といい宿命と言い
なぜ生まれながらに不幸が降り注ぐんだ!
呪われているから不幸なのか?それとも不幸だから呪われたのか?


719 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:01:20 ID:MTeA6Wkq
「それでは悪魔。わたくしの術式が完成するまでその身体を押さえつけていただけます?
もちろん、傷がつくのは困りますわ。」

「御意に。」

にっこり笑った悪魔は確信していた。今度こそ幸せになれると。偶然兄が転がり込んできたあの時は不覚にも逃がしてしまったが、今度は大丈夫だろう。
この姫君も信用できる。自分と同じ匂いのする姫だ。恋い慕う人を手に入れるための
契約を反故にはしないはず。
兄さんとの愛の巣、ふたりきり、ずっと一緒…。
体の奥底から湧き上がってくる煮えたぎるような熱い衝動の心地よさに
悪魔は身震いした。

「…だからさ、相手の死体を確認しないうちの勝利の確信は自殺行為。
そういったのは貴方達でしょう?」

突如、幸せいっぱいの女悪魔を黒い炎が包み込んだ。
悲鳴を挙げて炎を振り払おうとするも、魔界の獄炎はますます勢いを増す。
とうとう魔法陣を展開した女悪魔は魔界へ逃げ去ってしまった。

「馬鹿な!魔力はとうに空のはず!それにその呪文は一体…?」

驚く姫君の顔を僕は睨みつける。

「僕が『使用できる』闇の呪文は地獄のいかずちだけ。しかし、僕の『覚えている呪文』
は一種類だけじゃないよ。姫君、あなたはご存じないだろうけど、僕と父は
魔界の炎をも召喚できるんだ。魔力不足なら、術者の右腕を代償にしてね。」

「ま…まさか…。」

「右腕はくれてやる…あと、トガシなんて言うなよ。怖い人たちに怒られちゃうから。」

そう、これは物語の初めに語っていたこと。右腕から放たれる魔界の炎を黒龍の
姿へと圧縮、敵を焼き尽くす僕が父親から受け継いでいた真の切り札。
『使えない』と表現していた理由は…。

「し…しかし、勇者殿!その技を使えばあなたはあの合法的最強盗賊団
ジャス○ックに…。」

「そう。この技を使えば最後、彼らに嗅ぎつけられて僕は惨殺されてしまう。
しかし、今彼らはそれどころではないのさ。ほんの少し前彼らのところに
一通の差出人不明の手紙が届いているはずだよ。そしてその中にはある人物が
勝手にとある有名な吟遊詩人の詩を違法コピーして大量販売しているという
告発状が入っている…。まあ、本当はその人物無罪なんだけどね。よほどの
大物だから彼らの意識は全部むこうに向かっているはず。僕がこの技を
使っても、何の問題もない。」

「な…まさか罪なき人に冤罪をでっち上げスケープゴートに!?
勇者殿!人としてそのような考えはいかがなものかと…。」

「あんたに言われたくないね姫君!大体奴の首献上しないと人間と魔界の戦争が
終わらないんだよ!」

「…まあいいですわ。少々の誤算はありましたが、結果として勇者殿には
魔力も切り札ももう残っていいらっしゃらないのでしょう?」

「…できれば地獄のいかずちで仕留めておきたかったけど…。
見せてやる姫君。僕が父から受け取った最後の切り札を!」

僕はそう言って、変化の杖を振り上げた。


720 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:02:23 ID:MTeA6Wkq
ローラ姫の思考は動きとともに止まった。氷ついたその活動は目の前に現れた
光景によってのもの。そしてまたその光景により凍りついた時はゆっくりと
動き出し始める。
彼女が勇者のパーティに潜入した理由、三年間の綱渡りの日々の目的が
目の前で彼女に微笑みかけていた。

「りゅ…竜王!?」

もちろん目の前にいるのは本当の竜王などではない。それはこの場にいる姫自身が
よく自覚している。変化の杖による勇者の変装だということは痛いほど
分かっているのだ。自分にそう言い聞かせようとした姫は、ふと気づく。
自分の目から大粒の涙がこぼれおちていた。

「久しぶりだね…ローラ。」

目の前の竜王がにこりと微笑みかける。今まで自分が一方的に愛していた彼から
初めて名前で呼ばれたのだ。城のもの達は自分のことを『姫君』としか呼ばず、
今まで父母以外誰一人名前を呼んだことのないその名を今最もいとしい人の
姿が呼んでくれている。
足が笑い、下半身に何か熱いものがジュウとみなぎってくる。
たてない。
いつの間にやら地面にへたり込んでいた姫君は、母乳をねだる赤子のような
何か満たされない物を求めるような期待に満ちた潤んだ目で竜王を見つめていた。

「どうしたんだいローラ。僕のこと忘れてしまったのかい?竜王だよ。
いつまでもキミだけの竜王さ。」

「ふ…ふぇ?今なんておっしゃいましたの…?」

「ふふっ。わかってるくせに。全く厭らしい人だな!」

そう言って竜王の姿をした者は姫君を無理やり押し倒す。記憶の中の竜王とは
あまりにかけ離れたその行為に驚愕するのも一瞬のこと。いつも姫君が監禁生活の
中で思い描いていた本当に竜王に望んでいた今の姿に姫君は一切の抵抗なく
期待のあまりあふれ出る涙をぬぐおうともせず、上に見える竜王の顔を
見つめ続ける。



722 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:03:50 ID:MTeA6Wkq
「…僕と少し話しただけでココは大変なことになっているよ?姫君のくせに
まるで娼婦のような厭らしさじゃないか?まさか、自分を満足させてくれるのなら
別にどんな男でもいいってことかい…?」

眉をよせてちょっと悲しげな表情を浮かべてみせる竜王。そのあまりにも
あからさまな釣り餌にも今の姫君は食いついてしまった。

「ち…違います!わたくしそのようなふしだらな女ではありませんわ!
わたくしは…竜王、あなただけのローラです!」

「その言葉信じていいのかい?なら、後ろを向いて厭らしく僕にねだりなよ。
『すぐに濡らしてしまう厭らしいメス犬にどうぞぶち込んでください』って。
上手に言えたらキミが今いちばん望むことをしてあげてもいいよ。」

姫君の思考はもはやオーバーヒートして理性が本能に追いつけない状態になっていた。
期待のあまり震える足腰に鞭打ちなんとか体制を整えると、腰を高くあげ
羞恥と期待で真っ赤に染め上げた顔、その形の良い唇から言葉を紡ぐ。

「す…すぐに濡らしてしまう厭らしいメス犬にどうぞぶち込んでください!
お願い!お願いしますぅ!」

竜王は満足げに微笑んで、姫君の耳元に顔を近づけ甘い声色で囁いた。

「いいかローラ。これから君は一生僕の奴隷だ。三年前とはわけが違う。
毎晩全力で愛してやる。僕なしでは片時もいられないくらい愛欲と依存に満ちた
王族のものとは思えぬ位あさましいメスに変わるんだ。二足歩行の日々も
今日限りで終わり。今から徹底的に君を愛して二度と足腰立たなくなり
四つん這いで過ごさなくてはならないほどにしてやるよ。
別にいいだろ?だって僕は君を愛しているんだから。」

これこそ、姫君にとって天地がひっくり返るほど驚愕の、そして心に望んでいた
言葉だった。もはや声も出ず意味をなさないあえぎ声をあげ、ただ首を全力で
縦に振る姫君を見て…。

「じゃあ僕だけのローラ。約束通りぶち込んであげる。」

竜王…の姿の勇者こと僕はそう言いつつ、手元にこっそり寄せておいた長くて、
硬くて、黒くごつごつと節くれだった木の棒を振りかざし…。

ポカーン!



723 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:05:04 ID:MTeA6Wkq
「父から渡されたのは変化の杖ともうひとつ、姫君に関する父の考察さ。」

後頭部に僕の一撃をぶち込まれ伸びている姫君に僕は独りごちた。

「母さんという人間の本質を見抜けなかった父はさすがに反省したみたいでね。
潜伏中もずっと人を見る観察眼を養う訓練をしていたのさ。姫君と戦ったあの時、
父はあなたにそっち系の属性があることを何故か見抜いていたんだよ。
そして、僕は勇者やキングスライム、あるいは王族など限られた血筋にしか
使えないディン系の属性をもつ魔法使いさんの正体があなたであることを
ある程度感づき、父に打ち上げて、対策を練った。もっとも、あなたのこの
目的や盗賊くん達が手駒と化していたことまでは分からなかったけど。」

ひめぎみからへんじがない。ただきぜつしているようだ。

「相手の隙を誘発するのは戦いで重要な一手だからね。悪いけど、竜王の姿を
使わせてもらったよ。卑怯だと思うかい?別にいいんだよ。
勇者って言うのは、正々堂々魔物を蹴散らし、伝説の防具に身を固め、世界中の
人々のために正義を背負う人間のことじゃない。
誰かのために、日夜小さな努力を積み重ねられる人のことを言うんだ。
…上記のとおり、己のために戦う僕は勇者なんかじゃない。だから
どんな卑怯な手も平気で使えるんだよ!」

仮とはいえ、一応勇者を名乗っていた人間にあるまじき暴言を吐いた僕は
姫君に背を向けると、湖畔に置いてきた僧侶ちゃんや盗賊くんのもとへ駈け出した。
こうして、僕の短い旅の割には強すぎるボスとの戦いはひとまず幕を閉じる。
そして気の抜けた僕はこの後そのツケをあまりにも高い代償で支払うことになる…。



724 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:06:00 ID:MTeA6Wkq
オチ1
人間界の隅、人はとても近寄れないような山の中にこっそりと建てられていた
館の中では惨劇が起きていた。勇者が姫君と戦っているころの話…。

「ひぃ!?たっ…たすけてくれえ!」

情けない声をあげ、地を四つん這いになりはいずり逃げ回る魔王バラモス。
その後ろには、黒い服に赤いリボンタイに身を包み、うつろな目をした少女たちが
手に鈍い光を宿した剣を片手に獲物を追い詰めていた。

「どうしてここが分かった!?何故わしを狙う?」

「タレこみがあった…あなたは違法にコピー品をばらまき、著作権を侵害した…。」

「し…知らん!本当に知らないぞわしは…。頼む…みのがしてくれ!!」

「…問答無用。」

そこに残っていたのは阿鼻叫喚の地獄絵図。
行為の終わった少女たちは、その場でうつむいたかと思うと不意に肩を笑わせ…。

「ふふ…あは…あははははっはははははは!!やったよ!殺してやったよ!
著作権くんを馬鹿にする奴を殺してやったよ!剣でグサリと!ザシュッと!
原型ないほどにばらばらあははははっはははははははっははははっはははは!
そうだよ簡単なことじゃない!著作権くんは私たちが守るんだから!
弱く儚い著作権くんは私たちがいないと駄目だから!私たち以外では駄目だから!
著作権くんを侵害する虫けラドモハバラバラノグサグサハハッハハハッハッハハハ!
著作権くん著作権くん著作権くん!
ず~っと ず~っと 我らジャス○ックの側にいてね。ずっと守ってあげるから。」

後日、原形をかろうじて残していたバラモスの首を人間界は魔界に渡し、ここに
人間と魔族の三年にわたる戦いが終わった。


オチ2
とある町の船着き場で船が今出ようとしている。小さな船に乗り込むのは
十七、八の年頃の少女だ。

「にしてもお嬢さん。あんな小島に何の用だい?あそこにはだーれも住んじゃいねえ。
一人ぼっちのちーさな島さ。」

「ええ。ですからあそこに住むのです。」

妙な女だ。船頭はそう首をかしげる。

「確かに魔物は少ねえけども、一人ぼっちじゃ辛かろうに…。」

「一人じゃありません。ずっと夫と一緒です。」

彼女はそう言って、血の色のように赤く光る首元の魔法陣をそっと撫でた。
それっきり、彼女がどうしているのかは誰も知らない。



725 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:07:10 ID:MTeA6Wkq
オチ3
結局、転職はできなかった。勇者をやめるなど許されないことなのだそうだ。
とはいったものの、魔界の戦争も終焉し暇になった僕は旅に出ることにした。
今度の旅は、幻のアイテム『世界樹の葉』を捜すためのものだ。
姫君の禁術から僧侶ちゃんと盗賊くんは救い出せたものの、二人とも
禁術を使われた影響でさっぱり眼を覚まさない、
そこで僕が思いついたのは例のアイテムだ。驚異の癒しの力を持つというこれなら
禁術の爪後も洗い流せる…僕はそう考えたのだ。
それから一年…。

「ケモノオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

うりゃ!
気合いとともに繰り出した一閃で魔物を倒した僕は、眼下の霧深く立ち込める海を眺める。
そして崖の上に立ち、目を細めながら僕は海の向こうにある島に思いを飛ばした。
いろいろ情報をあつめ、ついに確からしい情報をつかんだのだ。この海の向こう、
大海原にぽつりと存在する島にある木が幻の世界樹だと…。

「魔物退治で懐具合も改善したし…そろそろ船を借りられるかな?」

町に行って交渉してみようと、僕がその場を立ち去ろうとした時…。

「勇者さぁん…。」

「勇者…。」

懐かしい声がした。
二人分の足音とともに、耳に入ってきた僕がもう一度聞きたかった声…。
黒い長髪と、ふわふわのショートヘア。
一年前から止まっていた歯車が、僕の中で力強く回り出した。
もう二度と止まらない。そんな思いが伝わってくる力強さで…。

「僧侶ちゃん!!盗賊くん!!」

僕は二人の元へ駆け寄り、二人をギュッと抱きしめた。

「良かった!目が覚めたんだね!?よかった…本当によか…っ?」

おなかがあつい。ふたりからはなれぼくはじぶんのおなかをみる。
ないふがにほんぼくのおなかにつきささっている。ちもでているようだ。
あれ?このないふ、そうりょちゃんととうぞくくんのものじゃないか?
どうして?ねえそうりょちゃん、とうぞくくん。だまってないでなにかいってよ。
ねえどうして…ねえ…。



726 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:10:37 ID:MTeA6Wkq
目が覚めると…この書き出しを見て僕は安心した。
なんだ。夢オチか。いつもは手抜きだと批判したくなるこの手法も、嫌な
夢を見てしまったあとでは自然に笑いがこみあげてくる。
ひどい夢だ。多分僧侶ちゃんと盗賊くんへの想いの強さで、あらぬ状況が
僕の夢の中で暴れまわったのだろう。
さて、船を捜しに行くか…え!?

「勇者さん。好きぃ…。」

「むっ…ちゅぱっ…勇者…ずっと一緒…。」

信じがたいことに、僧侶ちゃんと盗賊くんがそこにいた。
僧侶ちゃんは僕の胸のあたりをしっかりと廻した手でホールドし、頬を僕に
幸せそうにすりよせている。
一方の盗賊くんはというと、僕の右手をとりその指を愛おしそうに丹念に
舐めまわしているのだ。

「勇者さん…。あの時はひどい事をしてごめんなさい…。怒ってますよね。
だから私達が眼を覚ました時、そばに居てくれなかったんですよね。」

「勇者…あの時のことは反省しているんだ。お前に刃を向けた私の事を
怒るのは無理無きことだが…さみしかったよぅ…。」

涙声になりながら僕に訴えかけてくる二人。だが僕の頭はそれに追いつかない。
この目の前の二人が夢じゃないのなら、あの時僕はどうなったんだ?
僕は腹に手をやる。そこにはまだ完全に塞がっていない傷跡の感触が感じられた。

「…私たち考えたんです。このままの関係を続けていたら、想いがすれ違い
いつかみんなが壊れてしまうって。」

「それは絶対に避けねばならないこと。そこで目を覚ました私達は一つの
結論に至った…。それがこれだ。」

盗賊くんが指さす先…僕の周りの床。それを見た僕は…
死にたくなった。



727 :そして転職へ  13 [sage] :2009/11/07(土) 22:11:24 ID:MTeA6Wkq
黒く染め抜かれた魔法陣。この一年で多少なりとも魔術の心得がついた僕には分かる。
あまりにも有名な禁術…それは

「死人呪文…ネクロマンシー!?」

「そうですよ。」

僧侶ちゃんが僕に抱きついた。そして僕の身体を蛇のようにゆっくりと撫でまわす。

「あの時、勇者さんをこの手で殺して二人でこの呪文をかけました。知っての通り
よみがえった人間は、術者に対して絶対服従なので。死後すぐ術をかけないと
いけないのが難点ですが、うまくいったみたいで良かったです♪
あ、安心して下さい。ちゃんと永久腐敗防止呪文もかけてありますから。
ゾンビみたいな魔物にはなりませんよ。」

僕の中で動き出していた歯車が、乾いた砂となり消えていく。
そんな…こんなのってないよ!

「さあ勇者。言ってくれ。お前は私たちの何だ?」

僕の口が意識とは裏腹にしゃべりだす。

「僕は…僧侶ちゃんの…よき夫であり、盗賊くんの…永遠のパートナーです…。」

僧侶ちゃんと盗賊くんの顔が、今まで見たことがないくらい輝いた。

「じゃあ、命令です。…私たち二人を愛しなさい。一生そばに居なさい。
ずっとずっと、一緒です。」

「ずっとずっと…一緒…です。」

力なく繰り出された言葉は、僕の旅の終わりを静かに締めくくった…。


                           おわり。