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799 :強襲 [sage] :2009/11/13(金) 03:15:21 ID:O9hdO7pG
装甲が砲弾を浴びるような激しい金属音が先刻より襲う。
もうすぐ、雨戸と言う紙装甲は抜かれるだろう。ここは田舎の片隅、人も道も通らない。
女の子が手斧で雨戸を滅多打ちにしていても分からない。薄いアルミ合金の雨戸についに穴が開いた。
なぜこういう事態になったのか、二時間前に遡る。
「もう俺は学校には行かねえと決めたんだ!もういいだろ!」今日も学校からの回し者が来た。
俺は不登校と言うヤツだ。ある事件がキッカケで心が負けた。そして家にこもるようになった。
両親は会社の近くの県外のアパートで暮らしていてこちらには無関心。学校側も二ヶ月で諦めた。
しかし欠席二週間目から女の子がやって来る様になった。最初はプリント等を届けに来てるだけだったが、
ある夏の日、汗に濡れた彼女を家に入れ迷惑料代わりに飯を振る舞った事があって以来、彼女は毎日来る様になった。
会話をする内にどうやら俺が心を許したとでも思ったようだ。説得が始まった。
彼女には悪いと思いつつも居留守、罵声で抵抗をしていた。
来なくなってくれたらよかった。そうすれば俺は苦しまずに済んだのに。
だというのに彼女は雨の日も風の日も雪の降る日もやって来た。  


800 :強襲 [sage] :2009/11/13(金) 03:48:22 ID:O9hdO7pG
気づいたら冬になっていた。夏のあの日から少しづつ少しづつ彼女は何かが変質して来た。
使命感に燃えた瞳は何時しか何かを期待する瞳になり、何故か“楽しそう”な表情に変わっていた。
この女、目的と手段を取り違えている…と思った俺はこう言った。
「おまえ、何しに来たんだ!今更どのツラ下げて復帰しろって言うんだ!意志が変わらない以上片道25分も掛けて俺の所に来たって仕方無いだろ!もう来るな!」
いつも気丈な彼女は急に俯き、走り去ってしまった。
翌日も彼女は来た。彼女は暗い笑みで俺にこう告げた。
既に担任からも見捨てられ、訪問不要の烙印を押されていたがただ会いたいが為に、自ら志願して通い続けていたと…語った後。
だから「私だけを見て」と。
馬鹿馬鹿しい、お前がここに来ることを目的としてようが俺は知ったこっちゃねえ。
だからキモチワルイその感情を向けて来るなと言った。
そしてついに今日彼女は濁った目をしてこう言った。
「学校に来てみない?あたしが復帰できるように頑張るから、だからあたしだけを見て。」
そして俺は正気でない人間に言ってはいけない拒絶の言葉を言い放った。
すると、彼女はよく響く声でこう言った。




801 :強襲 [sage] :2009/11/13(金) 04:17:56 ID:O9hdO7pG
「アンタがアタシを見てくれないのは家に閉じこもってるからなのよね。」
俺は二階の窓から話していた。後にも先にも手が触れる距離で会話したのは夏のあの日だけだ。
猛烈にいやな予感がした。アイツは俺をここから引きずり出そうとしている。
心の距離を詰めて話そうとしている。俺は急いで一階に降り、ドアを施錠し・雨戸を閉めた。
ドア越しにアイツの声が聞こえる。
「こんな家があるから引きこもっちゃうんだ、好意も信じられなくなるまで。じゃあ…」
二階の窓から下を窺った。すると居なくなっていた。
安心したその時、ドアが引かれる音が続いた。玄関は死角だったのだ。
ガシャンガシャンと連続した音が一分位続いた。そしてぴたっと止んだ。
次の瞬間、真下の居間の方から激しい金属音が響き始めた。
頑丈な玄関戸より薄いアルミ雨戸とその下のガラス戸を破った方が簡単だ。
しかし女の子の力で殴ったり蹴ったりしてもへこむだけじゃないかと思っていたが…
いきなり、乱打音と共に山脈状に隆起してきた。道具を使っているようだ。
そして電話機にたどり着いた時、ガラス戸が割れた。
止め金部を潰され雨戸が開き、ガラス戸の鍵を開けられた。
俺は固まった。   


802 :強襲 [sage] :2009/11/13(金) 04:30:11 ID:O9hdO7pG
「おじゃましまーす」場違いな明るい声でアイツは家に入ってきた。
左手には名字の入った古い手斧が、そして肩から学校制定のバッグを掛けていた。
アイツはバッグをテーブルの上に置くと、中から弁当箱を取り出して、俺の前に置いた。
「やっと目を見てお話出来るね。その前にお昼ご飯作ってきたんだけど。食べて。」
俺は状況の意味不明さ、植え付けられた恐怖心から何も言えなかった。