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71 :Cinderella & Cendrillon 7:2009/11/23(月) 08:59:47 ID:9AbmaJRf
~依音side~

「ひ、ひめねぇ…違うんだ、これは、その…ちょ、さきねぇも離れ……」
「えねちゃんから離れなさい、妃乃」
「どうして? えねの恋人でもない姉さんの言うことを、なんで私が聞かなくちゃならないの?」
オレの目の前でひめねぇとさきねぇがたがいに鋭い視線を交錯させる。
「一つだけ聞くわね? 何故あなたと依音ちゃんはキスをしていたの?」
「そんなの決まってるじゃない、私とえねが愛し合っているからよ」
あれ? 何時の間にオレはさきねぇに愛の告白をしたのだろう……?
って、まてまて! ひめねぇが怖い! 体から尋常じゃないオーラが出てる!
「そんな戯言でえねちゃんの唇を奪ったの?」
「ええ、えねの唇、熱くて、柔らかくて……とっても美味しかったわ」
「万死に値するわ」
やばいっす、無理っす、もう「尋常じゃない」なんて言葉じゃ表わしきれないほどのオーラが出てますって。
今のひめねぇならそこらの機動兵器なんて目じゃねぇ、実はGNドライヴ搭載してますって言われても信じる。
ひめねぇが手を振り上げたその瞬間、病室の扉のドアが開いた。
「貴方たち、なにしてるの?」
それは両親と共に海外に住んでいるはずの奏家の長姉「奏 灰乃」だった。


72 :Cinderella & Cendrillon 7:2009/11/23(月) 09:00:35 ID:9AbmaJRf
奏家の構成は父、母、長女、二女、三女、そしてオレの5人家族だ。
両親は科学者をしており、現在ははドイツの研究室に雇われている、確か医療機器の研究だと言っていた気がする。
長女は現在22歳、両親がドイツへ行くと決まった時、一緒に付いて行った。
二女、三女はこれまで説明したとおり、もちろんオレも。
だが、我が家で唯一の異端、それが長女「灰乃」である。
小学生になる前に完璧なイギリス英語をマスター、幼稚園では円周率の計算ばかりやっていたらしい。
小学三年生になる頃に、高校までのありとあらゆる学問を修め、小学校卒業と同時に複数の大学から熱烈なラヴコールを受けた。
中学の三年間では外国語に興味を持ったらしく、米語、仏語、独語、西語、伊語、中国語、韓国語等のいくつもの言語を覚える。
高校に上がると、ついに大学レベルの学問を次々と取り込んでいき、世界的に注目されるような論文を発表するまでになった。
だが、彼女が有名になればなるほど、自分は劣等感を抱くことも少なくはなかった。
「あの人の弟君?」「君は何ができるの?」「やっぱり兄弟でも違うんだね…」「姉のほうはあんなに優秀なのにな」
一時期は心的ストレスが酷く、他人が信じられなくなることもあった。
それでも姉の所為にしなかったのは心のどこかで姉を尊敬していたからだろう。
だからその姉が両親とともにドイツへ行くと言った時、少し寂しくもあり、少しくらいは嬉しくもあったかもしれない。
そしてその姉が外国で飛び級をし、さらに博士号まで得たことを聞いた時や両親の研究チームに呼ばれたことを聞いた時。
周りの対応が変わらないことに、自分は解放されたと感じることもあった。
そしてもう完全に忘れていたころ、彼女は再びオレの前に現れた。

73 :Cinderella & Cendrillon 7:2009/11/23(月) 09:01:56 ID:9AbmaJRf
「貴方たち、なにしてるの?」
一瞬、自分の目の前に現れた人物が誰かわからなかった。
「灰乃……ねえ…さん……?」
「久しぶりね、依音、大怪我だって聞いたから心配したけど…元気そうね?」
名前の通りの艶のある灰色の髪が揺れる、それだけで灰乃姉さんから目が離せなくなる。
「依音?」
「えっ! あぁ、うん、元気だよ、この通り」
「考え事でもしてたの? そんな間抜けな声をあげて」
「い、いや、なんでもないよ」
まさか「あなたに見惚れてました」なんて言えない。
少しウェーヴのかかった艶のある灰色の髪、優しさと美しさを称えた二重の眼、そしてひめねぇやさきねぇ以上の豊かな胸。
いや……反則です、確実に。
「灰乃姉さん、今海外に住んでるんじゃないの?」
「あん、依音ったら、昔みたいに『はいねぇ』って呼んで♪」
「え? あ、うん、じゃあはいねぇ」
「はい♪ なんですか?」
「えと、わざわざお見舞いのために飛行機で日本まで来たの?」
「うん♪」
別にこんなに急いでくることなかったのに、年末あたりにでも来てくれたらよかったのに。
と、今まで静観していたひめねぇが話しかけた。
「灰乃姉さん、本当に用事はそれだけですか?」
……一瞬の間、はいねぇが隠し事をしているのが3人にも読み取れた。
「まだ他に、何かあるんですね?」
「えと……うん……」
はいねぇは1分くらい考えた後、その言葉を紡ぎだした、いつもの日常を破壊する、その言葉を。
「依音を、ドイツに、私の家に連れて行きます。」