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335 :ニーベルンゲンの歌 第一話 [sage] :2009/12/20(日) 01:36:58 ID:19S8AU3u

西暦20XX年
人類は、異世界からの襲撃を受けた。
それは秘密裏に、世界各国の政府によって水面下で処理される筈だった。
しかし、異世界の軍隊の所有する人型兵器は人類の兵器を圧倒し、蹂躙した。
人々は事態を理解する間もなく滅亡するかに思えた。が、異世界にも味方はいた。
異世界の軍勢が所有する人型兵器、通称『シグルス』
それを手に入れた地球の軍と異世界軍は均衡状態にあった。
これは、その戦火を駆けた少年少女の、狂愛の物語

* * * * *

「…眠いなぁ」
帰り道の坂を下っている少年。彼の名前は貴志堂 生(きしどう いきる)。今年高校二年になったばかりだ。
坂を下りた先の桜並木は桃色の吹雪を散らしている。生はその道の端を歩きながら、大きな欠伸をしてそう言った。
部活にも入らずにフラフラとしているが、毎晩のランニングと腹筋だけは欠かさない。
中一の時からの癖のようなものだ。
更に今日が土曜日ということも手伝って、彼の眠気は並々ならぬものとなっていた。
今日も変わらず、そんなことをするのだろう、と心の奥底で安心している。
それは、日常に隠れた確かな平穏。しかし。
少年の平穏は、音を立てて呆気なく終わりを迎えることになる。

* * * * *

突然轟く爆発音。閃光。爆風。小さな振動。
「な、何だよ一体…え!?」
少年の目に映ったのは、崩れ落ち、燃え盛る民家。その後ろには、巨大な人型のロボット。
「な、んだよアレ…化け物、いや…ロボット?」
片手にグレネードランチャーのようなものを構えている。
(い、急いで逃げないと!!)
少年の体を恐怖が支配した。生は脱兎の如く我が家のある方へ走り出した。
(あの曲がり角、あそこを曲がれば…)
そこで少年が見た物は、他の家と何ら変わりなく燃える家だった。

「……………は?」
その一言、いや、一音を紡ぎだすのに何秒もかかってしまった。
今日は土曜日、今は昼食時、家族は恐らく全員…
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァ!!!!!」
生は訳もわからず駆け出した。
元自分の家、今はただの瓦礫と化したものを取り去っていく。
その奥から、細い腕が現れた。左腕、指輪をしているので母さんだろう。
「母さん、今助けるから!」
埋まっている体の上から瓦礫をどかす。
しかし、そこには何も見えなかった。
「…え?」
そこに転がっていたのは、指輪をはめて、根元から千切れた左腕。

「そ、んな、は、ははは」
生はその場に膝をつく。
そこに大きな影ができた。さっきの巨大なロボットだ。
そいつは生にハンドガンの銃口を向けた。
(俺、ここで死ぬのかよ…こんなわけわかんねぇ状況で…)
(いや、嫌だ、死ぬのは、嫌だ!父さんも母さんも雫も、テメェらが殺したのに!
テメェらが死なねぇのは納得いかねえ)
(死にたくない…殺したい、奴らを、この手で、殺したい!!)
バァン!!
響く銃声。巨大な薬莢の落ちる音。そこには、舞い散る筈の鮮血はなかった。
変わりに、生を守るように手を翳す、巨大なロボットの姿があった。



336 :ニーベルンゲンの歌 第一話 [sage] :2009/12/20(日) 02:45:05 ID:19S8AU3u

「あ?何だよ、お前」
突然現れたもう一体のロボット。漆黒の騎士のような外見をしていた。
そいつは銃を向けたロボットを突き飛ばした。
胸部から、おそらくロボットのコックピットと思われる部分が飛び出した。ロボットは生にその巨大な手を差し出した。
「俺に、乗れってか…ははっ、いいぜ、乗ってやるよ」
生を乗せた巨大な手は、彼をそのままコックピットへ乗せる。
生は、真ん中の球体に手を翳した。何故かそうしないといけないと思った。
球体に触れた途端、生の腕に痛みが走った。
「ぐ、ああああぁぁぁぁぁぁ!!」
咄嗟に手を離そうとするがかなわない。数秒間痛みに耐え、ようやく手を離すことが出来た。
生は自分の手を見た。指先から肘の辺りまで、機械の回路のような模様が刻まれていた。
端から見れば不気味なものに見えるが、生は何も嫌悪感のようなものは感じなかった。
そのまま両端にあるレバーのようなものを握る。一瞬で、手に取るように操縦の仕方が解った。
と、いうよりも寧ろ、生自身がこの巨大なロボットになった感覚だ。
目の前にこの世界の文字が映る。余談だが、翻訳機能が付いていたりする。
「ジーク、フリート…それがお前の名前か。…よし、行くぜ!」
既に突き飛ばしたロボットは立ち上がっている。それどころか他のロボットまでこっちに注目している。
数は三。どれも同じ外見をしている。つまり定石でいえば奴らは量産機。
「さあ行くぜジークフリート!!」
生は一番近いロボット、さっき突き飛ばしたものに突っ込んだ。
ジークフリートは絶えずホバリングしてるため、かなり素早く動ける。
敵が動く暇もなくその頭部を左腕で掴まれる。右腕は胴に翳されていた。
そして次の瞬間には、その頭は吹き飛び、胴は上半身と下半身に真っ二つに分断されていた。
ジークフリートの両腕からは杭のようなものが伸びている。パイルバンカーという兵器だ。
「次!!」
他の二体は警戒してグレネードを構えている。
生はジークフリートのサイドアーマーから、バヨネット付のサブマシンガンを二挺取り出し両手に構えた。
躊躇うことなく引き金を引く。敵のロボットの装甲に着弾する。
しかし後退する気配はない。生は撃ちながら一歩、また一歩と前進していく。
ある程度近づいたところで一気に駆け出した。両方の胴の部分に銃剣を突き刺す。そのまま撃ち続けた。
ベルト給弾式のサブマシンガンの弾丸が切れる頃には、一機目と同じ様な有様になっていた。
「はぁ、はぁ、はぁっ、ふぅ…」
呼吸を整えてから周りを見る。何度見ても変わらない赤く染まる街だった。

* * * * *

ジークフリートから下りた途端、何処かへ消えてしまった。
もう一度腕を見る。薄らとではあるが、まだ回路のような模様は消えてはいなかった。
(何だったんだよ、一体…それより)

これからどうなるのかな

誰かに問いかけるように、天涯孤独となった少年は言う。
そこにはただ、小さな小さな戦争の残り火しかなかった。


その残り火の中に立ち尽くす少年を見る影。
「ようやく見つけた…私のナイト…フフフッ」