467 :魔王様との日常 [sage] :2010/01/10(日) 03:19:47 ID:oTlRE5Lk
目が覚めると、いつも通りの見慣れた天井が目に入った。
体を起こして隣を見る。誰もいないし誰かがいた形跡もない。ようやく言いつけを守ってくれたようだ。
無駄にでかいベッドからおりて、これまた無駄にでかいある城の部屋に立つ。
外はもう既に明るい。ルシファーはちゃんと仕事をしているようだ。
服を着替え部屋の外に出る。
「陛下、もう起きていらっしゃったのですか」
部屋の直ぐそこにいた女性がそう言った。
彼女の名前はメアリー・A・オニキス。代々侍女…つまりはメイド…の家系で、今代のメイド長だ。
「朝食の準備が出来ましたので、急いで参りましょう」
彼女はそう言って俺の手を引いた。メイドとしてはそういうのはどうかと思うのだが、気にしてはいない。
それよりも気をつけなければならないのは彼女の料理だ。
メイド長を勤めているだけあって腕はかなりのものなのだが、俺が少しでも残そうものなら生気の無い顔で責めよってくる。
さらに残してしまった翌日の夕食には、人間が使うものとは比較にならない程の強力な媚薬と痺薬を入れられた。
幸いにも、悪魔の中でも際立って凄い先祖譲りの身体のお陰で効力はすぐに無くなり事なきを得た。
最近は残すという行為自体を禁忌としたのでそんなこともあの時は危なかった。
全く、残したのは悪かったが、何であんなことをしたのか皆目検討がつかない。
他の奴にしたってそうだ。何故俺の周りには過激な女が多いのだろうか。

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朝食の場には既に六人が集まっていた。
「遅ぇよ!何暢気に寝てんだよ!お前が来ないと飯食えねぇだろぉが!」
朝っぱらからやけに!マークの多い喋り方をするこの赤髪の女はコロン・A・グラントン。簡潔に説明してしまえば戦闘狂だ。




468 :魔王様との日常 [sage] :2010/01/10(日) 03:51:41 ID:oTlRE5Lk
まあその戦闘狂も最近は戦争もないのでおとなしいものだ。
しょっちゅう俺のところにやって来ては喧嘩吹っ掛けて俺が負かして満足気に帰っていったのだが、今では俺の部屋で雑談でもして帰っていく。
しかし彼女は…いや、これは全員に言えることなのだが、彼女が最も酷い…話の途中に誰かが(割り込んでくるとそいつを肉片になるまでボコる。特にそれが女性となるとさらに酷い。別の女性の話題を出しただけでその娘は命の危険に晒される。
「別に彼を無視して食べていればいいじゃないの。ねぇ?」
そう問いかけてきたのはレイラ・B・レミントン。癖の無い真っ直ぐな金髪が特徴だ。
彼女もまともとは言えない。
一度彼女の所為で交友関係にあった国が無残なまでに壊滅した。理由はその国の代表が俺の悪口を言ったから、だそうだ。その後普段クールな彼女が一変、「ほめてほめて!」と嬉しそうに言ってくるのである。
あの時はもう呆然とするしかなかった。
「…早く、食べようよ」
俺の方をじっと見つめてそう言ったのはニコラ・B・ヴァードラント。
足が悪い訳でもないのに常に全自動の車椅子に乗っている。極度の面倒臭がりだ。
しかし、その怠慢を覗けば彼女はまともな女性だ。
だが仕事の忙しい時に彼女のことを構わずにいるときだけ異常な視線を感じるのは気のせいだろうか?
そんなことを考えているうちにコロンとレイラが本気の喧嘩を始めそうだ。
ルシファーを含めた三人が止めに入ろうとしている。
そろそろ朝食を食べてしまおう。今日も彼女たちを構わないといけないのだから。
最終更新:2010年02月05日 13:46