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618 :わたしは私、私はわたし1/1:2010/02/06(土) 01:17:32 ID:uSEnUj+Y
六月十七日 晴れ
私はこの度告白を受けました。人生初の経験でありました。
相手はとてつもなく凡庸凡骨、自然界で言うと石ころのような、凡人でありました。
だが、彼は私にとっては限りなく非凡な存在でした。
彼はわたしを愛していると耳元でほざくのです。私は彼を、いいえ、彼という人間性が該当するカテゴリィを内心馬鹿にしておりましたから、私は何時ものように内心馬鹿にして、わたしは笑いながら拒否を意味する言葉を見繕っておりました。
ですが彼は、私の耳元でまたも囁くのです。
君の、本当の姿を知っているのだ、と。
嗚呼、私への、初めての告白でありました。
誰も彼も、わたしを知れど私を知らず。私の片側すら見れぬ賎しい屑でありました。
ですが彼は違うのです。そうであるのです。
わたしは困惑し、私は当惑しておりました。
彼は、私の耳元で猶も甘言を紡ぐのです。それからのわたしの言葉はよく覚えていませんが、私は彼に愛し合う許可を出しました。
嗚呼、なんという運命。
彼が私と出会ったのは神のお導きに違いない。
彼は私を見てくれているのだ!私を愛しているのだ!
私は、もう一人ではないのだ!

七月三十一日 雨
嗚呼、私は孤独だ。
結論を言うと、私は彼を殺しました。
彼の血液の生温かさも生臭さもこの脳に刻まれているのに、彼が死んだという実感が沸きません。
それにしても、人間を包丁なんて前時代的な凶器で一突きしただけで、血液はあんなに噴き出てくるのですね。後学に活かせそうです。
彼は私にとって路傍の賎しき石ころに過ぎなくなりました。
彼に未練がないか、と言えば答えはノーです。私にとって彼は、永遠なる「初恋の君」なのですから。
私も乙女として、初恋の人と永久に添い遂げたいというロマンティックでメルヘンティックな夢物語を胸に抱いていたのです。
彼は、私の純情を踏みにじり、凌辱しました。
ええ、思えばあの夜更けの行為は肉体的凌辱であったのかしら。
彼は私の純潔を散らし、純情を踏みにじり、嘘の純愛で私を満たしたのです。
彼は、私を愛してくれませんでした。
わたしの体と、その偽物の心を、薄っぺらい“ラヴ”で凌辱したのです。
嗚呼憎らしい。彼は私を玩んだのです。いいえ今も玩んでいる。私は玩ばれている。
閑話休題。彼は、私のこころを理解せずに、私に甘言を囁いたのです。
嗚呼嗚呼憎らしい。だがそれ故に愛おしい。嘘つき男でも、未練はしゃくしゃく。私はなんという、馬鹿女なのでしょうか。
そろそろ彼を殺した状況について、説明をしましょう。
私は彼が私を騙した事を知り、焼けつくような、いいえ妬けつくような痛み憎しみ怒りに襲われました。
ですが、私は正気でした、いいえ、おそらくわたしと私が生まれた時から、私は最初から最後まで狂気を纏っていたのです。
私は、彼が私を騙していないという方向に賭け、彼の元へと急ぎました。
ところで貴方は、何かを書く若しくは描く時、消しゴムが手に無いと不安にならないでしょうか。
私は、どうしようもなく、恐ろしいです。
間違いは、過ちは、消せるのだと。
紙に穢い痕が残れど私は、彼が間違いならば、消してしまいたかったのです。
結局彼は間違った存在でした。
だから消しました。

私も、わたしの周りの女共のように、醜かったのです。
いいえ、醜くなったのです。私はわたしと言う外壁により純で美しい、指紋の付いていないこころを持っていたのに。
彼などに、わたしは私への道を開けたのです。
わたしは、私は、どうしようもなく、愚かなのです。
わたしは、私は、どうすべきなのでしょうか。
私は孤独だ。
私の穢れた心は、孤独を知ってしまった。わたしは成り立たなくなるのでしょう。
嗚呼孤独。それに付随する、絶望。
彼を殺した感触はあれど、彼が死んだ実感は無いのです。
が、彼が消えてしまったこと、それは理解できるのです。
絶望。絶望。只ひたすらに。絶望は死に至る病であると、キェルケゴールはかく語りき。
今の私ならば、そのお言葉の三分の一までは、理解できます。
嗚呼、私は、過ちなのでしょうか。
私は、消されるべきなのでしょうか?