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279 :cinderella & cendrillon 9:2010/03/07(日) 15:18:13 ID:HW+a6mw5
~依音side~

……ん……あれ……
オレ……何時の間に寝てたんだ……?
……てか……ここは……って此処はどこだ!?
辺りを見回す、暗くて何にも見えない。
まだ暗闇に目が慣れてないせいか……
とりあえず周りに何があるか確認しよう。

ガチャガチャッ

……?
いやいやいやいや、まさかねぇ……
もう一回やればきっと自由に動くはずさ、きっと疲れてるんだよ。

ガチャガチャガチャガチャッ!

……あー、あれか……手錠ってやつか……
うん、ちゃんと右手についてましたよ、それも二個。
これは左手があっても外せそうにないなぁ……
これが現実か、覆すことのできない現実か。
俺なんか悪いことしたっけ?
……してないはずなんだけどなぁ。
おっ、そろそろ暗闇に目が慣れてきた。
ここは……どこだ?
どっかの地下室みたいだけど、こんなとこ見覚えがない。
ってか俺いつのまに寝てたんだ?
むしろ昨日はいつ寝た?
少しずつクリアになってきた頭を働かせ、記憶の糸を手繰る。
えっと……まずは空港だ、そこで飛行機に乗って、そのあと列車に乗った。
その次はタクシー、そんでようやくはいねぇの家について……ん?

……はいねぇ?



280 :cinderella & cendrillon 9:2010/03/07(日) 15:18:43 ID:HW+a6mw5
そうだ、オレは今ドイツにいるんだ。
まだ出歩いた記憶はないし、友達どころか知り合いすらいない。
この国でおれの存在を知ってるのは両親とはいねぇ、あとはタクシーのおっさんくらいじゃないか。
そしてまだ両親には会っていない、タクシーのおっさんだってオレの顔も覚えちゃいないだろう。
そして残るのははいねぇしか居ない。

ガチャッ

オレの思考を肯定するかのようにドアが開く。
外はまだ明るいらしく、暗闇に慣れたオレの眼を光が焼いた。
そして光を背に受け立っていたのは、想像通り、はいねぇだった。
「おはよう、えねちゃん」
はいねぇが言う、昨日と同じように、ごく普通に。
「お、おはよう」
対するオレは答えるのが精いっぱいだった。
声は震え、日常的な非日常という恐怖に顔が引きつる。
「どうしたの? 怖い夢でも見たの?」
いやいや、今この状況が恐怖ですよ?
「おなか空いてない? 朝ご飯何にする?」
怖すぎて何にも考えらんねぇ、いやマジで怖い。
「ねぇ……答えてよ」
口の中がカラカラで声が出ない、何か言わなきゃ。
「ねぇ……答えてよ……答えなさいよッ!」
「ひっ!?」
はいねぇの表情が一変する、あの優しそうな雰囲気はもうかけらも残っていない。
「私がどんな気持ちで今まで過ごしてきたか解る!?
  毎日寂しくて、辛くて、悲しくて、でもそれを我慢して詰め込んで!
   研究に没頭することで自分の感情をごまかして、そうしてさらに詰め込んで!」
涙を流しながら叫び続けるはいねぇ。
はいねぇがそんな事を思ってるなんて知らなかった……
「えねちゃんが事故に遭って、手術するって聞いたときだって!
  研究を放り出して、我慢できなくなって、気づいたらら飛行機に乗ってて、それで、それで……」
うつむきながら、涙を流しつづけながら、話し続けるはいねぇ。
すでにその顔に怒りは無かった、あるのは悲しみだけ。
「ゴメン……」
そんなに想っててくれたなんて、知らなかった、知ろうともしなかった。
「これからは、何時でも頼っててくれていいから、何時でも背負うから」
今までの感謝と謝罪を込めて言う。
「オレはずっと、はいねぇのことが好きだから」

それから一時間程、オレははいねぇを慰め続けた。