※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

88 :サトリビト:2010/04/11(日) 13:23:01 ID:BGfcc4EP
僕の名前は早川慶太。高校2年生。
容姿は普通、勉強は数学が平均より少し上、運動は少し下といった所謂一般層にあたる人間だ。
「いってきま~す」
今日も学校だ。
僕の学校は家から遠いので、いつも電車を使って通学している。
……本当はあんまり人の多いところは行きたくないんだけどな。
電車に乗ってしばらくすると今日もアイツに声をかけられた。
「おはよ!」
同じクラスの岡田結衣。ちなみに中学からの同級生だ。
「おはよ」
「ねぇねぇ、昨日の数学の宿題やった?」
「まぁ一応は・・・」
「お願いっ!学校行ったら写させて!」
両手を合わせてお願いのポーズをしている。
岡田は数学の宿題をしてきたことがほとんどなく、いつも僕に見せてとお願いをしてくる。
今こうして岡田と気軽に話している僕が言うのもアレだが、岡田はとても人気がある。
男女問わず岡田と話したがっている人は多いし、岡田が宿題を見せてと頼めば、ほとんどの人は快く了承するだろう。
にもかかわらずいつも岡田は僕にしか頼まない。
まぁ理由は判ってるんだけど。
目的の駅に着き、僕たちは電車を降りる。
「じゃあ学校で」
僕は駅を出ると学校とは違う方向に向かって歩き出す。親友の大田大和を呼びに行くためだ。
「……うん、じゃあ宿題の件お願いね」
少しさびしそうな顔の岡田。若干気が引けるがそのまま歩き出す。
そのとき例の声が頭に響いた。
(くそ、また大田なの!?アイツもアタシと慶太の事を思って朝の登校譲ってよ!)
……はぁ~。
頭の中にまるで呪詛のような叫び声が鳴り響く。岡田の声で。
一般層にいる僕にはたった一つだけ普通じゃないことがある。
人間の思考が分かる。


89 :サトリビト:2010/04/11(日) 13:24:12 ID:BGfcc4EP
思考が分かるといってもすべての考えが分かるわけではない。というかわからない時の方が多い。
今日の電車でも心の声が聞こえたことはほとんどなかった。
長年の経験から、どうやら僕のこの能力は強い感情にのみ反応するらしい。
そうでなければ今頃発狂しているところだ。 
そんなこんなで大和の家に着いた。
「毎日ごくろうさん、慶太」
「おはよ」
大和と学校に向かう。
「ところで本日のお姫さまはなんと?」
「朝の登校譲れだって」
「またか……そろそろまずいかもな」
大和は僕の秘密を知っている数少ない人だ。
「よし!明日は俺んち来なくていいから岡田と一緒に登校しろよ」
「え!?そんなことしたら学校中の噂に……」
「後で根掘り葉掘り聞かれても付き合っていないってキッパリ言えば大丈夫だろ。それに例の陽菜ちゃんにも出くわすこともないだろうしな」
佐藤陽菜。僕が岡田の思いを受け取れない理由。 僕の幼馴染で好きな人だが、中学2年のとき県外の中学校に転校して行った。
大和は高校からの友達なので陽菜のことは名前しか知らない。
「大和、頼むから岡田の前でだけは陽菜の名前はださないでくれよ」
「分かってるって」
今でこそあれだが、昔は岡田と陽菜は仲が良かった。
いや表向き、心の外では今でも二人は友達だ。
中学校でクラスが一緒になったこともあるし、友達グループは違えどお互い結衣ちゃん陽菜ちゃんと呼び合っていた。
しかし高校に入ってからは岡田と話しているときに陽菜の名前を出すと、例の声がいつもの倍以上の大音量で頭に響く。

(なんでアタシとしゃべっているときにあの女の名前をだすの!)
(なんでアタシは岡田でアイツは陽菜なの!?)
(ナンデアイツノナマエヲダストキハソンナニウレシソウナノ) 


教室に入ると、待ってましたと言わんばかりに岡田がつめ寄ってきた。
「遅い!もうちょっとでHRが始まるところじゃない!」
どうやらお姫様は駅で別れてからのわずかな間に機嫌を損ねてしまったらしい。
「なんで俺が怒られてんの?」
「宿題写させてくれるって約束したじゃない!忘れたの!?」
ちなみに数学の授業は午後からである。まったくもって理不尽だ。
さらに文句を言おうとしたが、クラス中(特に野郎ども)の嫉妬と羨望の目に僕は抵抗するのをやめた。
僕はため息をついて「ほらよ」と宿題をしたノートを岡田に渡した。
「ありがと♪」
岡田はついさっきまでの怒りはどこへやら、ご機嫌スマイルを浮かべて席に着いた。
なにがそんなにうれしいのかね。
(はぁ~……慶太のノート、慶太の書いた字、見てるだけでドキドキする///)
あ~、そういうことね……。
僕は岡田の横の席に座った。ここが僕の席なのだ。


90 :サトリビト:2010/04/11(日) 13:24:41 ID:BGfcc4EP
チャイムが鳴りクラス全員が席に着いた。
担任の先生が入ってくる。
「え~、HRを始める前に転校生を紹介する。入ってきていいぞ」
先生の掛け声とともに一人の女の子が入ってきた。
その女の子を見た瞬間、僕は一瞬呼吸するのを忘れてしまった。
「皆さんはじめまして。○○県からきました佐藤陽菜です。よろしくお願いします」
転校してきたのは陽菜だった。
僕は夢かと思い、手をおもいっきりつねってみたが……どうやら現実らしい。
でもなんで?
僕は陽菜とは離ればなれになった後も何回か遊びに行ったりしていたし、電話やメールも頻繁にやり取りしていた。だが陽菜からは一度もこの学校に来るなんて聞いていない。いやそれ以前に転校の話すらも。
岡田の方を見ても目を見開かせて驚いている。多分岡田も聞かされていなかったのだろう。
「席は窓側の一番後ろだ」
僕の真後ろの席だ。
陽菜は少し恥ずかしそうに席と席の間を通ってくる。
僕の席の近くに来た時陽菜と目が合った。その瞬間、

(ふざけんなっっ!!)

今まで聞いたこともないくらいの怒声が頭に響いた。
(帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!)
あまりの怒涛の響きに僕は頭を押さえた。
その様子に気付いた陽菜が心配して声をかけてきた。
「大丈夫?慶太」 
その瞬間僕の頭痛は三倍になった。
(今、慶太って呼んだ!?あの二人知り合いなのか!?)
(早川君の知り合い!?)
(下の名前で呼んだ!?)
まぁ県外から来た転校生がいきなりクラスメイトの名前を知っていたら驚くだろうな。しかもいきなり慶太って。
頭痛がする頭を押さえつつも、僕はなんとか返事を返した。
「あぁ、大丈夫。ちょっと頭痛がしただけ」
「保健室行ってきた方が・・・」
「いや、本当に大丈夫だから」
陽菜はあまり納得していない顔をしながらも、諦めたように席に着いた。
「早川の友達か?ま、みんなも早川のように仲良くするんだぞ」
先生はそう言って教室を出て行った。
クラスの大半はいきなりで転校生に話しかけるのを戸惑っているのか、チラチラこっちの方を振り返るが、動こうとする者は誰一人いなかった。
そんな中、一人の女子生徒が陽菜に話しかけた。
「陽菜ちゃん久しぶりー!!なんでこっち来ること教えてくれなかったの!?」
岡田だ。
「えへへ、実は驚かせようと思って」
「ひど~い、罰としてジュースおごってもらおうかな!」
「普通歓迎ってことで私がおごってもらうんじゃないの?」
二人は終始笑みを浮かべてしゃべっている。
この場面を見る限りクラス全員が二人は仲がいいと思うだろう。
僕もそう思う。さっきから頭に響いている岡田ボイスの罵詈雑言さえなければ。
「……ってことで早川もくるでしょ?」
頭の方に意識を集中させていたせいで、二人の会話の内容を全然聞いていなかった。
「あ、ごめん。何の話?」 
「だから私と陽菜ちゃんと早川の三人、まぁ女の子二人に対して男一人が気まずいのなら大田君も入れて帰りにカラオケでもいこーかって話」 
「あ、ああ、分かった。大和にも声かけとくわ」
「んじゃ決定ってことで!」 
雰囲気に任せてOKを出してしまい少し後悔した。
今日一日は頭痛がすごそうだ……。