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118 :サトリビト:2010/04/14(水) 21:46:51 ID:KnfIAlzI
人の思考が分かる。
聞いたところとても便利な能力に見えるが実際はそうではない。
僕の場合は強い感情にしか反応しないし、人間にとって強い感情というのはほとんどが負の感情である。
憤慨、慟哭、焦慮・・・
そんな感情がいちいち頭の中に入ってくるのである。
この能力に目覚めたとき僕は一時期引きこもりになった。
来る日も来る日も人間の嫌な部分ばかりが見えて、人と接することが怖くなったのだ。
そのときは本当に追いやられていて、小学校の時だったが自殺まで考えた。
そんな僕を救ってくれたのが陽菜だった。
陽菜は僕が休んだ日からずっと家に来てくれた。
今日の算数の宿題は~、今日りさちゃんがね~、今日掃除中にね~・・・
毎日毎日家に来ては今日の出来事などを嬉しそうに話してくれた。
そしてきまって帰り際に、「慶太が学校に来ればもっと楽しいのに」と言ってくれた。
その言葉を聞くたびに僕は人の心が分かる苦しみよりも、陽菜が悲しんでいることの方がつらいと感じるようになってきた。
陽菜は僕が学校に行けば楽しくなると言ってくれた。
僕は陽菜をもっと楽しくさせてあげたい一心で再び学校に行くことにした。
その事を陽菜に伝えると、陽菜は涙を流して喜んだ。明日からもっと楽しくなるね、と言いながら。
人の心が分かるようになっても、陽菜は僕に対して一度も負の感情をぶつけた事はなかった。
今回もそうだ。頭の中には何も響かない。つまりこれは本心で言っているのだろう。
そのことがとても嬉しかった。
ところが次の日の朝になると、昨日の嬉しかった気持ちよりも不安の方が大きくなっていた。
何週間も学校を休んだ僕のことをみんなどう思うだろうか?
なまじみんなの心が分かる分、恐怖は何倍にも膨れ上がった。
だがそんな僕を察してか、陽菜は微笑みながら「大丈夫!みんなも慶太が戻ってくるのを待ってるから!」と言ってくれた。
陽菜はまた僕を救ってくれた。その一言が学校に向かう歩みを軽くする。
学校に着き教室のドアをおそるおそる開けとみんなの目が僕に向かった。想像どうりの反応だった。
「お、おはよ・・・」
不安になった僕にみんなが駆け寄ってきた。
「おい慶太ひさしぶりだな!」
「病気治ったのか!?よかった~」
「早川君元気になったんだ!」
陽菜の行った通りみんなは僕のことを心配してくれていた。いつもは負の感情ばかりが響いているこの頭も、この日はみんなの

喜悦の声が頭を駆け巡っていた。
陽菜の方を見る。すると陽菜は声を出さずに唇でよかったね、と言ってくれた。
その瞬間僕は涙を流した。みんなが心から僕の登校を喜んでくれているのがうれしかったのだ。
このことをきっかけに、僕はこの能力を受け入れる事が出来た。
すべては陽菜のおかげ。
これが陽菜のことを好きになったきっかけだ。


120 :サトリビト:2010/04/14(水) 21:47:34 ID:KnfIAlzI
懸念された今日の学校生活は思ったほど不快なものにはならなかった。時より頭に響いた岡田の声を除けばだが・・・
放課後になりみんながそれぞれ散っていく中、僕と岡田と大和は陽菜の席に集まっていた。
「ごめん、さっき先生に呼ばれちゃって・・・先に行っててくれる?」
陽菜は申し訳なさそうに言った。
「後で場所と部屋番号だけ教えてくれない?」
「でも佐藤さん、この辺の地理とか分かる?」
「それは・・・」
「んじゃあ慶太、お前ここに残って後で佐藤さんと一緒にこいよ」
大和がニヤニヤしながらそんな提案をした瞬間、僕の頭に岡田ボイスが鳴り響いた。
(黙れ大田!!慶太とコイツを二人っきりになんかさせれるか!!)
「それならみんなで陽菜ちゃんを待ってようよ~」
頭に響く声と耳に聞こえる声のあまりのギャップに、僕は岡田は将来女優になれるんじゃないかと思った。ルックスもいいしな

、うん。
「そうだな、みんなで待ってよう」
それが一番危険がなさそうだ。いや陽菜と岡田の二人がいる時点ですでに危険か・・・
「そういうことで陽菜ちゃん、早く用事すませて帰ってきてね~」
(このまま二度と戻ってこなければいいのに!)
「じゃあできるだけ早く戻ってくるから!」
そう言って陽菜は教室を飛び出していった。
もし陽菜が岡田の本心を知ったらどうするのだろうか?
僕は漠然とそんなことを考えた。
「よかったわね早川、陽菜ちゃんが戻ってきて」
陽菜がいなくなった瞬間、岡田が僕に話しかけてきた。
「・・・今でも好きなんでしょ?陽菜ちゃんのこと」
(お願い、昔のことだって言って!!)
陽菜の必死の叫びが聴こえてくる。
実は僕が陽菜のことが好きだという事を岡田は知っている。というか以前僕かカミングアウトしたのだ。
その頃の岡田は僕のことをなんとも思っていなかったし、それに・・・そうするのが最善の策だったからだ。
「あぁ・・・陽菜には絶対に言うなよ?」
本当は曖昧に濁したかったが、正直に言った方が岡田のためだと思い僕は肯定した。
「・・・うん・・・約束・・・だもんね」
岡田の声は耳からしか聞こえてこない。それが僕にとって何よりもつらかった。
大和は空気を察したのか先ほどから一言も発していない。
静まり返る教室。
そのとき教室のドアが突然開いた。
「・・・ハァハァ・・・みんなおまた・・・せ・・・?」
元気よく陽菜が帰ってきたが、教室中に充満している空気に違和感を感じたようだ。
「どうかしたの?」
「陽菜ちゃんには秘密の話してたの~」
岡田が明るい声で答えたが、岡田の気持ちを知っている以上、無理に明るくしているんだと分かる。
「先生の用事終わったの?」
「え?あ、うん、終わったけど・・・」
「ならカラオケいくよー!!」
岡田の掛け声とともに僕たちは教室を出て、カラオケに向かった。


121 :サトリビト:2010/04/14(水) 21:48:40 ID:KnfIAlzI
カラオケに行く道中、陽菜は岡田にさっきのことをずっと聞いていた。
「私に秘密の話って何?」
「秘密って言えば秘密~」
「え~教えてよー!!」
いつもなら岡田ボイスの罵倒が始まっているころなのに何も聴こえない。
岡田からは教室での出来事以降心の声が途絶えている。たぶん焦燥しているんだろう。
そのことを思うといくら事情を知らないとはいえ、しつこく岡田に食いついている陽菜に少し腹が立った。
「陽菜、さっきはくだらない話をしていただけだから」
「じゃあ何の話していたのか慶太が教えてよ」
「今日カラオケで何歌おうかって話」
「絶対ウソだー!」
陽菜ってこんなにしつこいやつだったっけ?
僕はイライラしながら陽菜に言った。
「なんでそんなことで嘘つくんだよ」
「だって嘘っぽいもん!」
「あー、もう、うるさいな!そんなに俺の言う事が信じられないのかよ!」
僕は怒鳴ってからしまった、と思った。今日は久しぶりに陽菜に会ってこれから楽しく遊ぶはずだったのに・・・
陽菜の方を見ると、陽菜はわずかに震えていた。
「・・・なんで慶太に怒られないといけないの・・・?」
聞こえるか聞こえないか程度の小さな声だ。と思った途端に陽菜が叫んだ。
「ウソつく慶太が悪いんでしょ!?」
「っ!?だから嘘じゃないって・・・分かった、もういい・・・」
「え?」
みんながキョトンとしている。
そんなことはお構いなしに僕は空気をぶち壊すことを言った。
「俺、今日はもういい、帰るわ。ごめんな、大和、岡田。また明日」
そう言って来た道を戻り駅に向かう。
せっかくのみんなの気分をぶち壊しにしてしまった。そう思うと少し自己嫌悪に陥ったが、それでも駅に向かう足は止められな
かった。
頭の中には(このあと俺はどうすればいいんだー!!)という大和の叫び声がこだました。


122 :サトリビト:2010/04/14(水) 21:49:21 ID:KnfIAlzI
「ただいま・・・」
僕は暗い気分で家に着いた。
家に帰ると少しの自己嫌悪が肥大化していた。
なんで俺あんなことぐらいで怒ったりしたんだろ・・・
とぼとぼとリビングに向かって歩く。なにやら中が騒がしい。
「ただいま~」
リビングに入ると二人の女性がこっちを見た。
「おかえり」
一人は母さん。そして・・・
「久しぶり、慶太」
東京の企業に勤めているはずの姉ちゃんがそこにいた。
「姉ちゃん!?なんでここに!?」
「この家にいたら悪いのかよ」
姉ちゃんが睨みを利かせてこっちを見た。
姉ちゃんは高校時代、そっち系のグループに所属していた。姉弟なのに全くの正反対だ。
でも勉強ができたので東京の有名大学に合格し、今年の春から東京の企業に就職した・・・はずだ。
「それがね~来週からこっちの支店に配属になって今日から家に帰ってきたのよ」
母さんが嬉しそうに僕の疑問を解決してくれた。
「でもなんで俺に帰ってくること教えてくれなかったの!?」
なぜか姉ちゃんが帰ってくることを教えてもらえなかったことがおもしろくない。
「なんでいちいちお前に言わなきゃいけないんだよ」
(そんなん慶太の驚く顔が見たかったからに決まってんだろ///)
・・・左様ですか。
ちなみに僕の姉ちゃんは真正のツンデレだ。だが一度もデレたことはない。正直、この能力がなければ姉ちゃんに嫌われている
と悩んでいたことだろう。
「ま、何はともあれ姉ちゃんが帰ってきてくれてうれしいよ」
ブルーだった気分が少しだけ緩和された。
「ウチはずっと東京に住んでいたかったけどな」
(慶太が嬉しいだって!嬉しいだって!ここの支店に希望出しといてよかったー!!)
訂正、岡田だけでなく姉ちゃんも女優に向いてるんじゃね?
僕はそんなことを考えながら姉ちゃんに近よる。
ちょうど母さんがご飯を作るために席を立ったので、空いたその席に座った。
「それで、いつまでこっちにいられるの?」
「半年くらいかな」
「そっか、また東京に戻るんだ」
なんとなくさみしい。
「なんださみしいのか?」
姉ちゃんがニヤニヤしている。
「なっ!?違ーよ!ただ聞いただけだろ!!」
僕は顔を真っ赤にしながら叫んだ。めちゃくちゃ恥ずかしい。
(あーん、もう!!慶太は本っっっっっ当にかわいいな!!!!!)
姉ちゃんは終始にニヤけているが、さっきとは違い目が恍惚としている。
リアルに身の危険を感じた僕は話題を変えた。
「ところで姉ちゃん、ちょっと相談したい事があるんだけど・・・」
「・・・陽菜の事か?」
「うっ・・・」
す、するどい!まさか姉ちゃんも僕の心が読めるのか!?
「・・・図星・・・か」
さっきまでの楽しい雰囲気が一瞬にして失われた。心の声も聴こえてこない。
しかしここまできたらもう引けない。
「実は今日陽菜と喧嘩してしまって・・・ど、どうしたらいいかな?」
僕がそう言った途端、姉ちゃんは急に立ち上がった。目つきが怖い。
「それくらい自分で考えろ!」
(なんでウチがアイツと慶太の仲直りに助言しなきゃなんないんだ!そのまま喧嘩別れしてしまえ!!)
姉ちゃんはそういうと自分の部屋に戻って行った。
それを台所の陰から見ていたのか、母さんがタイミングよく戻ってきた。
「あの子どうだった?東京に4年半いて何か変わった?」
「・・・症状が悪化していました」
「・・・我が娘ながら同情するわ」
あ、言い忘れていたけど母さんは家族で唯一僕の能力のことを知っている人です。


123 :サトリビト:2010/04/14(水) 21:49:59 ID:KnfIAlzI
家族との些細な団欒を終え、僕は自分の部屋に行き大和と岡田にお詫びのメールを送った。
[おい!あの後どんだけ大変だったと思ってんだ!よりにも寄ってあの二人と一緒に俺を置き去りにするとは!]
[気にしないで!また今度遊びに行こ♪]
岡田はともかく大和には明日ジュースでもおごってあげるか・・・
二人の返信メールを見ながら僕はあることで悩んでいた。もちろん陽菜の事だ。
僕が完全に悪かったので謝るのが筋なんだけど戸惑ってしまう。なぜならサトリの能力に目覚めてから一度も陽菜と喧嘩したこ

とはなかったのだ。ゆえに悩んでいた。
ご飯も食べ終わり、悩んだ挙句、僕は直接謝りに行くことにした。やはりそれが一番だろう。
そう思って重たい腰を浮かせた瞬間、玄関からインターホンが鳴る音がした。
特に気にもせず玄関に向かいドアを開けると、今から会いに行くつもりだった人がそこにいた。
「あ・・・」
「あ、あの・・・今日はごめんなさい!久しぶりに慶太や結衣ちゃんにあって、私興奮しちゃって・・・」
陽菜は僕が出るとすぐに謝ってきた。
「いや、こっちこそ!突然怒ったりしてごめん!」
僕はあわてた。陽菜は悪くないのに謝らせてしまうなんて。
「結衣ちゃんや大田君にはすぐに謝ったんだけど・・・慶太にはあんまり謝ったことなかったから・・・こんな時間に」
「俺も!陽菜に謝ろうと思ったんだけど・・・その・・・」
言葉に詰まった僕に対し、陽菜はおそるおそる訊ねてきた。
「もう怒ってない?許してくれる?」
「怒ってないよ!こっちこそ本当にごめん・・・」
僕の言葉を聞いて陽菜はようやく表情が明るくなった。
「よかった~」
安堵した様子とその言葉を聞いて僕は自分を責めた。なぜ僕はあんなにもイラついたのだろうか・・・
「じゃあ改めて、これからよろしくね、慶太!」
「よろしく、陽菜」
これでやっと家に帰ってから続いていたブルーな気分が完全に消し飛んだ。
陽菜と仲直りができた。そう思うと陽菜が帰ってきたことが実感され、明日からの学校生活が楽しみでしょうがない。
「そうだ、家に上がって行きなよ!母さんも喜ぶと思うし」
家が隣同士で同学年の子供がいたおかげで、陽菜の家と僕の家は家族ぐるみの付き合いをしていた。なので母さんにとって陽菜
は娘みたいなものなのだ。
「・・・でもこんな遅くに迷惑じゃない?」
「全然迷惑じゃないよ、むしろ歓迎!そっちの親がOK出せばの話だけど・・・」
昔馴染みの家だとは言っても、年頃の娘を夜遅くに同年代の男のいる場所にやるのは親として複雑な気分だろう。
「それは大丈夫。お父さんもお母さんもいないから」
「それなら尚更マズくないか?さすがにもう帰ってくるだろう?」
両親が遅くに帰宅して、いるはずの娘がいなかったら大事になるはずだ。
「あ、いやそう意味じゃなくて・・・実は私だけがこの町に帰ってきたの」
・・・なんですと?
「俗に言う一人暮らしってやつ?」



124 :サトリビト:2010/04/14(水) 21:51:17 ID:KnfIAlzI
陽菜を家に招き入れてリビングに案内する。
陽菜は久しぶりに我が家に入ったことで少し緊張しているようだ。
そんな陽菜がとてもかわいらしく見えて僕は思わず見とれてしまった。
「あらあら、何見とれてんのよ~」
母さんがニヤニヤしながらこっちを見ている。
「ち、違っ///!!」
恥ずかしさのあまり言葉を失ってしまった。思春期の男の子にとってこれはかなり拷問である。
おそるおそる陽菜の方を見ると陽菜も顔を真っ赤にして俯いている。
完全に母さんの言葉を聞いてしまったらしい。母さん、僕は初めて人を恨みましたよ・・・
母さんはからかいすぎたと思ったのか話題を変えた。
「ところで陽菜ちゃん、ご両親は今おうちにいるの?」
「いえ、私ひとりがこの町に帰ってきたので家には誰もいません」
「え!?じゃあ一人暮らしってこと!?」
「そうなりますね」
一人暮らし・・・
そういわれればおかしな点がいくつかあった。家族全員の引っ越しとなるとかなりの手間と時間がかかる。それなら隣に住んで
いる僕は必ず気付いたはずだ。それに陽菜のお母さんの場合、引っ越したらすぐにでも家に顔を出すはずなのに今回は連絡すらこなかった。
ある予感が頭をよぎる。
「もしかして家出・・・とか?」
「まさか、違うよ!私がお父さんとお母さんにこっちに戻りたいってお願いしたの。そうしたらOKしてくれたんだ~」
そんな簡単に娘の一人暮らし認めていいの?
「あら~よかったわね~」
母さんもよかったわね~、じゃないだろ!?ちょっとはおかしいと思えよ!・・・まぁ実際よかったけどさ。
そんなかんだで僕たち三人がしゃべっていると、廊下の方から足音が聞こえた。
「お客さんでもきてんのか・・・よ・・・」
僕は今日姉ちゃんが帰ってきてたことを思いだした。
姉ちゃんは陽菜を見て唖然としている。
正反対に陽菜の方は顔を輝かせていた。
「久しぶりー祥姉ぇ!!」
そのまま姉ちゃんに飛びつき顔をすりすりさせている。
ちなみに僕の姉の名前は祥子だ。
「あ・・・あぁ、久しぶりだな陽菜・・・」
(なんでここにいんだよ!お前確か三年前に転校したはずだろ!)
「あ~、5年ぶりの祥姉ぇだ~♪」
陽菜は姉ちゃんの心の声に気付くこともなく、ごろごろとじゃれついている。
陽菜さん、僕と会った時との温度差が違いすぎませんか?
少しセンチメンタルな気分になった。
「祥姉ぇ今週の土曜の夜暇~?もしも暇だったら神社で行われる秋祭り、一緒にいこ~?」
「秋祭りぃ?」
(テメーの血祭りだったらいつでも付き合ってやるよ!)
「うん!慶太も誘って一緒にいこ~よ~」
「なんでコイツも・・・ったくしょうがねぇな・・・わかったよ・・・」
(気安く慶太なんて呼ぶんじゃねーよ!・・・でも慶太と一緒に祭りかぁ・・・っ!!これってデートじゃね!?)
姉ちゃんが二つの意味で怖いです。それに陽菜もいるんでデートとは言えません。
「慶太も行くでしょ?」
陽菜がこっちを見る。
「別にいいけど」
陽菜と祭りか~、ってこれはまさかデート!?いよっっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!
僕は心の中で会心のガッツポーズを決めた。
「あっ!もうこんな時間!?それじゃ私帰るね!」
陽菜はそのまま帰って行ってしまった。
僕はあまりの高揚に「送って行くよ」という定番のセリフを言い忘れて後悔した。まぁ家が隣だし危険なことはないだろう。
あぁ、土曜日が楽しみだ。


125 :サトリビト:2010/04/14(水) 21:51:57 ID:KnfIAlzI
僕はルンルン気分で階段を駆け上がる。
子供ならかわいいのだが、高校生が踊りながら階段を上っていく様は正直キモかった。
(あの子、人の心の声を聴きすぎて頭がおかしくなったんじゃないかしら!?)
(慶太の奴、そんなにウチと祭り行くのがうれしいのか!?くーっ、かわいすぎるぜ!!)
二人の声によって僕は冷静さを取り戻す。
そうだよな、階段はゆっくり登らないと危ないよな。
自分の部屋に戻ると、陽菜とのやり取りを再び思い出してニヤけてしまう。重症だ。
すると突然携帯がなった。
ディスプレイを見ると恭子ちゃんと書かれた電子文字。
「もしもし」
「あ、・・・恭子です・・・」
中島恭子ちゃん。今年中学に上がったばかりの内気な子だ。
恭子ちゃんは病院で出会ったのをきっかけに、時々こうして連絡してくる。
僕にすごく懐いており、月に一回くらいは遊んだりもしている仲だ。
「こんな時間にどうかしたの?」
「す、すいません!!やっぱり迷惑でした!?」
急に謝りだす恭子ちゃん。この通り内気(?)な子なのだ。
「迷惑なんかじゃないよ。それより何か用件があって電話してきたんじゃないの?」
「は、はい!・・・実は・・・その・・・」
言い出しにくいのかそのまま無言になった。
恭子ちゃんがこういう態度を取るときは決まって僕にお願い事があるときだ。サトリの僕が言うのだから間違いない。
「じ、実はですね・・・慶太さんに・・・その・・・お願いがありまして・・・」
「何?」
「わ、私と一緒に・・・その・・・あ、秋祭り一緒に行ってくれませんか!!」
最後の方は恭子ちゃんとは思えないほどの絶叫だった。
「秋祭り?って今度の土曜の夜に神社でやるやつのこと?」
「そ、そうです!!」
・・・マジっすか。陽菜とデートの約束があるのに・・・どうしよう?
「やっぱり・・・私と行くのはイヤですか・・・?」
僕のだんまりを否定の意味にとったのか、恭子ちゃんの声が泣きそうになっている。
その様子にあわてた僕は「そ、そんなことないよ!じゃあ一緒に行こうか!」と返してしまった。
「ほ、本当ですかっ!?やたーっ!!」
心から嬉しそう声でそんなことを言われたら、「あ、ごめん、今のはナシ」なんて口が裂けても言えない。
「も、もちろんだよ!お、俺が嘘つくはずないだろ?」
ごめんなさい、この発言がすでに嘘です。
「ごめんなさい!慶太さんを信じていないわけではなく、あまりに嬉しくて夢なんじゃないかなと思ってしまって・・・。そうですよね!!慶太さんが嘘つくはずなんてないですよね!!」
恭子ちゃんの言葉が次々と僕の胸に突き刺さっていく。ハハ、こうなったらとことん堕ちてやるぜ!
「それじゃあ詳しい話はまた明日電話するんで!!おやすみなさい、慶太さん!!」
そういって恭子ちゃんは電話を切ってしまった。
さてと、どうしましょ?
まさかこの年でダブルブッキングを経験する羽目になろうとは・・・姉ちゃんにも相談できないしな・・・
姉ちゃんのことを考えた瞬間、大事なことを思い出した。今回の祭りは陽菜と僕と姉ちゃんの3人で行く予定だったはずだ。
そうだ!ここに恭子ちゃんも加えればどっちとの約束も破らないで済むじゃないか!
いいアイデアのはずたったが、これには大きな欠点がある。
陽菜と姉ちゃんは恭子ちゃんのことを知らないのだ。
僕が中学一年生の女の子を連れていったら二人はどんな反応をするだろうか?
まさか通報するとは思わないが・・・
あぁ、土曜日が憂鬱だ。