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474 :サトリビト:2010/04/27(火) 20:06:01 ID:RXffyHSx
「どうだった?メリーちゃんの電話を真似たんだけど怖かった?」
・・・大変恐ろしゅうございました、ハイ。
今恭子ちゃん家の玄関で修羅場が繰り広げられていた。
目の前には微笑んでる陽菜、睨みつけてくる岡田と姉ちゃん、抜け殻の大和。僕は玄関先で得意の正座をしていた。
「ちょっと早川!急に帰ったかと思ったらなんでここにいるの!?しかも一人で!!こんな時間に!!」
(あのガキ、人の彼氏に手だしやがって!!ふざけんなっ!!)
やっべ・・・岡田さんが半端ないっす・・・っていうか僕は仮の彼氏でしたよね?
「・・・おい慶太・・・ちょっと恭子だせや・・・」
(・・・コロス)
一つ質問してもよろしいですか?お母様からはなんと説明を受けたのですか?
「ふ、二人とも落ち着いて!!何か勘違いしてると思うけどこれには正当な理由が・・・」
「じゃあなんで大田君にアリバイ工作頼んだの?邪な気持ちがないならそんなことしないよね、普通?」
おしゃるとおりです岡田様。
「正当な理由か・・・お前にとっての正当が友達(13才の娘)といい雰囲気になって家に泊ることだったとはな・・・」
ちょっとお母様っ!?なんて誤解をされやすい説明をしたんですか!?
「ところで恭子ちゃんの具合どう?風邪ひいてるんでしょ?」
よ、陽菜~!!やっぱり君だけは信じていたよ!!
「う、うん!でもさっき薬飲んでだいぶ落ち着いてきたんだ!」
(ちっ・・・もっと苦しめばよかったのに!)
(よかった・・・ならもう慶太は家に帰ってくるんだな)
姉ちゃんはともかく岡田はなんてこと言うんだ!!見そこなったぞ!!
突然陽菜が笑いだした。
「?・・・陽菜?」
「あ、ごめんごめん。お、おかしくって・・・アハハハハハハハッッッ!!」
今までの陽菜からは想像もできないような笑い声だった。一体僕の会話のなにがおもしろかったんだろうか?
「よ、陽菜ちゃん?」
「どうしたんだよ?・・・気持ちわりぃな・・・」
僕にとっては陽菜が何をしても気持ち悪くはないが、さすがにこの陽菜には驚かされる。
「と、とにかく今日いっぱいは恭子ちゃんの看病をしなくちゃいけないので・・・」
このタイミングならあっさり容認してもらえるか?と思った僕は、どさくさにまぎれて今日はここに泊まるという意思を伝えた。
だが僕の考えはどうやら甘かったらしく、その発言で辺りが一瞬にして音を無くした。
「どういう意味、慶太?」
「早川?」
陽菜と岡田が無表情で僕に訊ねてくる。はっきりいて今まで見た中で一番怖い表情だ。
「あの・・・その・・・」
その時急に腕を掴まれた。
「帰るぞ、慶太。二度は言わせんな」
「ちょ!待ってよ!恭子ちゃんが・・・」
僕の反抗を虚しく、そのまま拉致されようとしたときだった。
「え・・・帰っちゃうの?・・・お兄ちゃん・・・」
恭子ちゃんがパジャマ姿で後ろに立っていた。
「「「お兄ちゃん?」」」



475 :サトリビト:2010/04/27(火) 20:07:10 ID:RXffyHSx
「さっき約束したよね?今日一日はそばにいてくれるって・・・帰っちゃ・・・やだよぉ・・・」
恭子ちゃんが泣きそうな表情で僕にすがってきた。
「悪いな恭子・・・でもお前も女の子一人の家に男なんて連れ込むんじゃねーよ。(ウチの慶太が)何されっかわからないだろ?」
だがそんなこともお構いなしにと姉ちゃんが僕の腕を引っ張る。
「やだぁ!!今日はいるって約束したもんっ!!帰っちゃやだぁ!!」
(嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!)
恭子ちゃんが病人とは思えないほどの力で僕にしがみついてくる。
その態度に姉ちゃんがついにキレた。
「っ!!離せよボケェ!!テメーの風邪が慶太にうつんだろっ!!」
「やだぁ!!絶対に離さないもんっっ!!」
お互いに持てる限界の力で僕を引っ張り合う。正座していたせいもあって今の僕はΖ←こんな状態になっている。腰が痛い。
しかし地力の差がでたのか姉ちゃんに軍配が上がった。
僕は姉ちゃんの胸に飛び込んだ形になったが、恭子ちゃんはそのまま前のめりに倒れる。中学生しかも病人相手になんてことを・・・
「お、お前が離さなかったから悪ぃんだろ!!」
(やべー・・・ちょっとやりすぎたか?)
さすがの姉ちゃんも少し心配そうだ。
「恭子ちゃん大丈夫!?」
僕があわてて声をかけると、前のめりになったまま動かなかった恭子ちゃんが次第に震えだした。
「・・・なんで邪魔ばかりするのよぉ・・・グスッ・・・今日は一緒にいるって・・・約束したのにぃ・・・ウワァァァンッッッ!!!」
そのまま恭子ちゃんは大泣きした。
その様子に全員が戸惑っている。そんな中、一人がそっと恭子ちゃんに近づいた。
その人はそのまま恭子ちゃんを抱き上げ、母親のように優しく告げた。
「大丈夫だよ恭子ちゃん!!慶太お兄ちゃんは優しいから今日はここに泊ってくれるよ!!」
「ほ、本当っ!?」
二人がこっちを見た。もちろん僕の答えは決まっている。
「約束したでしょ?今日はなんでもお願いを聞いてあげるって。恭子ちゃんがお願いするなら、俺はここに残るよ」
「お願いっ!!帰らないで!!」
「了解」
僕はそう言って恭子ちゃんの頭をなでた。
「でも恭子ちゃんは風邪なんだから部屋でおとなしくしていること!俺もついて行くから」
「ずっとそばにいる?朝起きても部屋にいてくれる?」
「・・・しかたないな」
「やたー!!」
恭子ちゃんが本日三度目のハグをしてきた。正直、ささやかな胸の感触が・・・って僕は何を考えてるんだ!?
「恭子ちゃん・・・あんまり男の人に抱きついちゃだめだよ?悪いことを考える人だっているんだから。ね、慶太?」
陽菜が恭子ちゃんに注意をした。
「そうだよ恭子ちゃん。山・・・じゃなくて男の人に簡単に抱きついちゃダメだよ?」
確かにこんなかわいい子に抱きつかれたら、普通の人でも悪いことを考えそうだ・・・ってあれ?
「あ、あの陽菜さん?その悪い人の中に俺はもちろん含まれていないですよね?」
「もちろん・・・含まれているよ?」
一体僕が何をした!?ただ恭子ちゃんの胸の感触がちょっと気持ちいいかなって思っただけな―――
「慶太・・・いいかげんにしないと・・・怒るよ?」
「す、すいません!!邪なことを考えてしまいました!!本当申し訳ないです!!」
僕は謝ったあとで自分の発言に後悔した。


476 :サトリビト:2010/04/27(火) 20:08:26 ID:RXffyHSx
只今の時刻は午後9時。場所は恭子ちゃんの部屋。
部屋の主人は現在ベッドの中。その周りに陽菜、岡田、姉ちゃんがいる。4人は楽しそうにおしゃべりをしている。
ちなみに僕と大和は部屋の隅っこにいる。
最初は陽菜たち3人衆が部屋から出ていけオーラを出したが、恭子ちゃんたっての要望ということで何とか部屋にいさせてもらっている。
しかしこれはある意味、事の真相を聞くチャンスだった。
「ボソッ(おい、なんで俺を裏切ったんだ!)」
「ボソッ(しかたないだろ!あのときの岡田と陽菜ちゃんの様子をみたら誰だって裏切るさ!)」
僕は驚いた。今回のことはてっきり僕を探すことに張り切っている岡田に陽菜が手伝っていただけと思ったからだ。まさか陽菜もメインだ
ったとは・・・
「ボソッ(ちなみに姉ちゃんはなんでいたんだ?)」
「ボソッ(・・・みんないるのに祥子さんだけ仲間はずれにはできないだろ!)」
ということはお前が呼んだのか!?なんてことを!!
「ボソッ(ふざけんな!!そのせいでさっき修羅場になっただろ!!)」
「ボソッ(祥子さんとのお泊り・・・そのためなら修羅場の一つや二つ・・・俺は乗り越えて見せる!!)」
全然カッコよくねェよ!!それにさっきの修羅場を乗り越えたのはお前じゃなくて僕だろ!!
「・・・ってかさっきからそこの男子うるさいんですけど?」
岡田が軽蔑めいた目で僕を見てくる。
実はちょっと前の邪なことを考えてました発言から女性陣がこういう視線を僕に送るのだ。
はっきりいって納得がいかない。これは男の生理現象なのだ。
「すいません・・・以後気をつけますんで・・・」
しかし弱肉強食の世界。弱い者は強い者にまかれるのだ。
「おい、そんなこと言ったらかわいそうだろ?・・・大田君が」
「し、祥子さんっ!!」
「お前はウチに連絡してくれたいい奴だからな。なんならこっちに来っか?」
「ハ、ハイっっ!!」
姉ちゃんが僕に冷たい。これもツンデレの一種だと信じたい。照れてるだけだと信じたい。ってか大和、覚えとけよ・・・
唯一の親友に裏切られた僕は壁に向かって座りなおした。
フフ・・・壁さんはいい奴だな・・・僕から離れないでちゃんと話を聞いてくれて・・・大好きだよ、壁さん・・・
壁に向かってぶつぶつ話していた気持ち悪い高校生に対して恭子ちゃんが話しかけてくれた。
「あ・・・あの・・・慶太さんも一緒にお話しませんか?」
「ダメだよ恭子ちゃん。あの人は恭子ちゃんに対して邪なことを考えた変態さんなんだよ?」
う・・・うぅ・・・陽菜さんに嫌われた・・・
「そ・・・それはそうですけど・・・」
否定してよマイエンジェル!!僕は邪なことを考えたけど変態じゃないよ!!
「でも・・・私・・・慶太さんになら・・・う、嬉しいかも///」
恭子ちゃんの大胆発言に場が凍った。
「え?恭子ちゃん・・・?」
「いまなんつった・・・?」
「あ、あれ~?私聞き間違いしたかな~?」
僕も聞き間違えたのか?心の声は岡田と姉ちゃんの声ばかりが聴こえて全く頼りにならない。
「実は私・・・け、け、慶太さんの事が好きなんです!!」
「「「「「は?」」」」」


477 :サトリビト:2010/04/27(火) 20:09:28 ID:RXffyHSx
「恭子ちゃん・・・えっと・・・その・・・」
突然の告白に慌てふためく僕。まったくもって情けない。
そんな僕を見て恭子ちゃんは自分の発言の意味に気づいた。
「あ、いや、慶太さんと付き合いとかそういうわけではなくて・・・その・・・お兄ちゃんみたいで・・・」
(どうしよ~!!絶対誤解されちゃったよ~!!)
なるほど、恭子ちゃんの好きは異性に対するものではなくて、家族に対する方の好きだったらしい。
「あ、だから今日慶太のことお兄ちゃんって呼んでたの?」
「・・・うん」
どうやら陽菜も理解したようだ。
「そっか・・・悪かったな恭子・・・その・・・さっきは・・・」
(そっか!恭子は慶太のことを好きなわけじゃないんだな!)
「いいな~早川。ねぇ恭子ちゃん、私のこともお姉ちゃんって呼んで~」
(慶太の彼女だもん。慶太がお兄ちゃんなら私だってお姉ちゃんだよ!)
恭子ちゃんの大胆告白のおかげで驚くほどの和やかムードになった。
さすが恭子ちゃん、天使・・・いや女神だぜ!!
「でもそれならおかしくない?恭子ちゃんはお兄ちゃんにいやらしい目で見られて嬉しいの?恋人とかじゃなくて?」
さすが陽菜さん、雰囲気をぶち壊すだけじゃあきたらず、さらっと嫌な事を思い出させてくれたぜ!!
「だって山田さんが言ってたの・・・妹にそう言ってもらえるのがお兄ちゃんの幸せだって・・・だから慶太さんが喜んでくれるかなって
・・・」
あれ?今山田って言った?
「・・・ねえ恭子ちゃん。この際だから山田と話をしたことは水に流すけど・・・それ以外で山田と何を話したの?」
「えっとね・・・確か僕のことはお兄ちゃんと呼んでとか、今度家に一人で遊びに来てとか・・・」
僕は無言で携帯電話を取り出す。
「恭子ちゃん一つお願いがあるんだけど・・・聞いてくれる?」
「なに?」
「実は俺、ある人にいじめられていて・・・そいつに嫌いだって言いたいんだけど勇気がなくて・・・だから恭子ちゃん、俺の代わりにそ
いつのこと大嫌いって言ってくれないか?」
「慶太さんをいじめるなんて許せない!!分かりました!!私がその人に嫌いだって言います!!」
僕は心の中でほくそ笑みながら山田に電話した。
「なんだ早川君?」
山田が出たところで恭子ちゃんに変わる。電話をうけとった恭子ちゃんはやる気満々だ。
「いい加減にして下さい!!あなたって人は・・・あんまりです!!私あなたのこと一生軽蔑します!!大っきらいです!!」
そう言ったところで恭子ちゃんから電話をひったくり、切った。これでよし。
「ふぅ・・・恭子ちゃんはもう絶対にどんなことがあっても山田とは話ちゃダメだからね?」
「?・・・うん」
(どうしたんだろ・・・慶太さんが恐い・・・)
ごめんね恭子ちゃん。でもこれも恭子ちゃんのためだからね?


478 :サトリビト:2010/04/27(火) 20:10:21 ID:RXffyHSx
「んじゃ、そろそろ寝っか」
時計の針は10を指している。寝るには早い時間だったが、そろそろ恭子ちゃんに寝てもらわないと本末転倒になる。
姉ちゃんの一声に全員が従った。
僕と大和は部屋を出る。さすがに女の子と一緒に寝るのはマズいからだ。
「慶太さん・・・」
(さっきは朝までいてくれるって言ってたのに・・・)
「ごめんね?でも僕は隣の部屋にいるから、なにかあったらすぐに来てね」
後ろ髪を引かれながらも僕は部屋を出た。
大和は疲れたのか、隣の部屋に入るとそのまま恭子ちゃんのお父さんのベッドに倒れこんで眠った。
僕は空いていたお母さんのベッドに入る。ものすごく居心地が悪い。
そういえばこのベッドを僕が使う事を恭子ちゃんのお母さんは知らないんじゃないか?
そう考えると、ますます罪悪感が募ってくる。
僕はそのまま眠れぬ夜を過ごした。

どれくらいの時間がたったのだろうか?突然部屋のドアが開いた。
「あれ、恭子ちゃん?」
ドアを開けたのは恭子ちゃんだった。
「あっ!慶太さん・・・起こしちゃいました?」
(どうしよう・・・迷惑だったかな・・・?)
「いや、ずっと起きてた。なんか眠れなくて・・・ところでこんな時間にどうしたの?」
時計を見ると今は3時らしい。
「私も・・・さっき目が覚めてから眠れなくって・・・」
(慶太さんと一緒に眠りたいって言ったら怒られるのかな・・・)
う~ん、どうしようか?恭子ちゃんの頼みなら聞いてあげたいのは山々なんだけど、さすがに一緒のベッドは・・・
「じゃあ少しお話しようか?」
「うんっ!!」
とりあえず恭子ちゃんをベッドに入れ、僕が地べたに座ろうとした。
「あ・・・慶太さんもベッドに入ってくれませんか・・・?」
恭子ちゃんのお願いに僕は従った。
これはしかたのないことだ。恭子ちゃんのお願いだからな、うん。決して心の中でガッツポーズをしているわけではない。
「えへへ・・・慶太さん、あったか~い」
抱き枕を抱くように恭子ちゃんが僕にしがみつく。
訂正、誰か・・・助けて下さい・・・
「今日は・・・有難うございました・・・本当に楽しい一日でした・・・」
僕の胸に顔をうずめている恭子ちゃんがポツリとつぶやいた。表情は見えない。
「それなら僕にじゃなくて陽菜たちに言わないと・・・」
「でも・・・やっぱり慶太さんがいないとこうはならなかったと思います・・・それに・・・」
(私が一番一緒にいたかったのは慶太さんだから・・・)
恭子ちゃんの僕を抱きしめる腕に力がこもる。まるで何処にもいかせないように。
ふと恭子ちゃんの言動に気になる点を見つけた。
「あれ?そういえば俺のこと慶太さんって・・・お兄ちゃんはやめたの?」
僕の言動に恭子ちゃんの呼吸が一瞬止まった気がした。
「・・・覚えていますか?私と慶太さんが出会ったときのこと・・・」


479 :サトリビト:2010/04/27(火) 20:11:06 ID:RXffyHSx
僕と恭子ちゃんが出会ったのは病院。
僕はサトリについて研究している教授の手伝いとして病院に通っていた。その時にある先生から頼まれたのだ。
「実は早川君にお願いがあるの。ある鬱病の患者さんなんだけど、なかなか心を開かなくて・・・そこで早川君にその患者さんが何につい
て悩んでいるのか聴いてほしいの」
そんな難しい問題に関わることは断ろうと思ったが、その子が10歳と聞いて僕は協力した。
10歳といえば僕がサトリの能力に目覚めたころで、僕もそうとう心を病んでいた。だが陽菜によって救われたのだ。
僕は陽菜のようにはできないかもしれないけど、少しくらいならその子の力になれるはずだ。
恭子ちゃんを初めて見たとき、なぜかあの頃の陽菜を思い出した。
実はあの頃の陽菜もこうして悩みを抱えており、誰かに救いを求めていた。
陽菜は毎日が楽しそうだったのに、どうしてかそんな気がした。
だから僕は恭子ちゃんのためというより、陽菜のために頑張ったんだと思う。
恭子ちゃんが毎週土曜の朝に来ると分かり、3か月僕はずっと土曜日の朝は病院に通った。
最初は恭子ちゃんもその両親も怪訝な表情で見てきたが、僕の努力が功を奏し、少しずつだが話をする仲になっていった。
そして僕はサトリの能力で恭子ちゃんの鬱の原因を察知し、それを両親に告げた。
「恭子ちゃんはお父さんお母さんが家にほとんどいないことで悩んでいます」
恭子ちゃんの両親は僕の言葉に思い当たる節があったのか押し黙った。
しかしこれは経済的な問題。なかなか解決方法が見当たらないのが現状だ。
思い悩んだ挙句、僕は一つの案を思いついた。
「ねぇ恭子ちゃんは兄弟がほしいと思ったことある?」
「・・・うん・・・あるけど・・・」
「じゃあ、さ・・・僕が恭子ちゃんのお兄ちゃん替わりやってもいい?」
恭子ちゃんが驚いている。
当たり前だ。知り合って数カ月の他人にいきなりお兄ちゃんて言われても驚き以外なにものでもない。
「別に一緒に住もうなんて言わないよ。ただ・・・暇な時に遊んだり電話したりするだけ」
「それじゃ・・・友達なんじゃ・・・」
「はいこれ」
そう言って僕は家のカギを恭子ちゃんに渡した。
「これ俺んちのカギ。これがあればいつでも家に来られるでしょ?これが友達との違い」
恭子ちゃんは掌に置かれたカギをずっと見つめている。
(いいの?本当にお家にいってもいいの?お父さんやお母さんがいない日はいつでも行っていいの?)
「ただし、来るときは必ずお父さんとお母さんに許可をもらう事!それと電話なら24時間いつでもかけていいからね」
僕がそう言った途端、恭子ちゃんの掌に水滴が落ちた。
「ありがとうございます・・・でも私・・・やっぱりあなたのことお兄ちゃんなんて呼べません・・・」
(この人が本当のお兄ちゃんのように毎日うちにいてくれる日が来たら・・・そのとき呼ぼう!)


480 :サトリビト:2010/04/27(火) 20:12:18 ID:RXffyHSx
「あの時思ったんです。この人が家にずっといてくれる日が・・・本当のお兄ちゃんになってくれる日が来たらお兄ちゃんと呼ぼうって。
だから今日泊まっていくと言ってくれたとき、そう呼びたいって思ったんです。今日一日は本当のお兄ちゃんになるんだなって・・・。
でも・・・人がいっぱい来て、私だけのお兄ちゃんじゃなくなって・・・呼ぶのをやめたんです。」
なんてことだろう。楽しそうにしていた中でこんな風に思っていたなんて。サトリの能力は一体何をしていたんだ。
「本当はもう十分だったんですが・・・さっき目を覚ました時に無性に慶太さんに会いたくなって・・・」
(お兄ちゃんって呼びたくて・・・)
「だから・・・せめて朝までは・・・こうしていてもいいですか?もう二度と我がまま言いませんので・・・」
(朝まではお兄ちゃんでいて・・・私だけのお兄ちゃんでいて・・・)
恭子ちゃんはそのまま黙りこんでしまった。
こんな時なんて声をかければいいんだろう?
僕の乏しい人生経験ではなにも思いつかない。
「・・・そういえば恭子ちゃんに渡したカギ、一度も使ってないよね?・・・どうして?」
悩んだ挙句が話題の転化。何をやっているんだ僕は・・・
「・・・だって・・・迷惑だから・・・」
(やっぱり私が家に行っても迷惑に思われる・・・慶太さんにだけは・・・そう思われたくないから・・・)
そこで僕はやっと気がついた。ここで恭子ちゃんが喜ぶ答えを。
「恭子ちゃんのご両親は今どこら辺にいるの?」
「今ですか?・・・今日はフランスで泊るって言っていたので・・・この時間だとホテルかレストランかな?」
それを聞いて僕は携帯を取り出した。
「恭子ちゃんのお父さんの携帯番号教えてくれる?」
「え?いいですけど・・・」
恭子ちゃんから電話番号を聞いた僕はさっそく電話をかけた。うぅ・・・国際電話は高いんだぞ・・・
「もしもし?」
「もしもし恭子ちゃんのお父さんですか?早川慶太です」
「おぉ~慶太君か!?久しぶりだなぁ!!ところで、私になにか用かね?」
「えぇ、実は・・・」
後は野となれ山となれ。
「恭子ちゃんのお父さんとお母さんが家にいらっしゃらないとき・・・恭子ちゃんを僕の家で預かってはだめですかね?」
「な、何っ!?」
「え、えぇー!!」
あー、恭子ちゃん!!今はしゃべっちゃだめだよ!!
「・・・今恭子の声が聞こえた気が・・・」
「い、今のは姉ちゃんです!!こんな時間にお宅の恭子ちゃんがいるわけないじゃないですかっ!!アハハ・・・」
なんとか恭子ちゃんの口をふさぐことに成功。でももしこの場面を他人が見たら完全に犯罪者に見えるカッコだ。
「ところで・・・さっきのお願いはいかがですかね?」
「・・・恭子がまたさびしがっているのかね?」
「正直に言うとそうです。でも恭子ちゃんはお父さんやお母さんの気持ちを知っていますから、そういう事は一切言っていません。ですか
らこれはあくまで僕の個人的主観によるものです」
「・・・考えても?」
「もちろん、お願いします!!」
そこで電話が切れた。
「ごめんね、勝手に話を進めちゃって・・・でも俺は本気だから。本気で恭子ちゃんに家に来てほしいと思っているから」
僕は恭子ちゃんに真剣なまなざしを送った。恭子ちゃんも僕の目をじっと見ていたが、やがて僕の胸に頬ずりをしてきた。
「慶太さんはズルいです・・・慶太さんのこと、諦めようとしたのに・・・諦めさせてくれないんですね・・・」
(どうしよう・・・やっぱりもっと慶太さんと一緒にいたいよぉ・・・ずっとこうしていたいよぉ・・・)
そのまま恭子ちゃんは眠りについた。
僕は余計に眠れなくなったが・・・まぁたまにはこんな日があってもいいだろう。


481 :サトリビト:2010/04/27(火) 20:13:37 ID:RXffyHSx
「慶太!!」
朝っぱらからうるさいな・・・
「起きろ慶太ぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うおっ!?」
僕はあまりの大音量に飛び起きた。どうやらいつのまにか眠っていたらしい。
「あれ姉ちゃん?なんで俺の部屋に?」
「ここはテメーの部屋じゃねぇだろっ!!」
そこでやっと思い出した。昨日恭子ちゃん家で泊ったことを。
「まぁまぁ祥姉ぇ落ち着いて。それより・・・なにやってるの慶太?」
ん?眠っていただけですけど?
「さいてー・・・仮にも私の彼氏のくせに・・・」
えっ!?まさかおねしょでもしたのか!?
「・・・慶太・・・歯をくいしばれ・・・」
そ、そんな!!たしかにこの年、しかもよその家でおねしょは最低かもしれませんが、なにもそこまで・・・
「ちょ、まってよ姉―――」
バチーーーーーン!!
僕は体が吹き飛ぶくらいの衝撃を顔に受けた。だが予想と反して僕の体はそれほど動かなかった。
「ひ゛と゛い゛よ゛!!」
「ひどいのはテメーの方だ!!なに13の娘に手をだしてんだよっっ!!」
姉ちゃんは何を言っているんだ?僕が恭子ちゃんに手を出したって言うのか?
「「さいてー」」
陽菜も岡田もなぜ僕にゴキブリでも見るかのような視線をおくるんだ?
そのときぼくの胸のあたりで何かが動いた。
「う、う~ん・・・むにゃ・・・」
あ、あれ、あれれ?ぼ、僕の胸にいるお方は一体・・・?
「ん・・・ん?あ、あれれ?け、慶太さん!?」
ようやく恭子ちゃんが目を覚ました。
「な、なんで私慶太さんのところに!?」
・・・このタイミングでそういう事言います?まるで僕が君をここに連れてきたみたいに聞こえるんですが?
「慶太・・・もっかい歯ぁ~くいしばれや・・・」
フフ・・・全く恭子ちゃんは。この小・悪・魔・さ・ん・め♪
それから数分間僕は気を失った。

朝から痛い目にあった日だったが、この日は僕にとってはいいことづくめだった。
まずは朝恭子ちゃんの携帯にお父さんから[粗相のないように]とのメールが入っていたこと。
次にそれを見た恭子ちゃんが今まで見たこともないくらい嬉しがっていたこと。
そして・・・なんとか陽菜にだけは誤解が解けたこと。
そいえば後日談になるのですが、この日を境に恭子ちゃんは両親がいないとき家に泊りに来るようになりました。
恭子ちゃん(の心の声)いわく、やっぱり兄妹は一緒にいるのが当然だとか。
でも出会うたびに泊ったときのことを話すのはやめてね?岡田さんが笑顔で放つ『声』が恐いから。
それと余談ですが、山田君が最近学校に来なくなりました。