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554 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:20:03 ID:DUthe+ZN
「占い?」
「そ!良く当たるって有名なんだよ!だから一緒にいこうよ~!」
休み時間に岡田と談笑をしていたら、そんな話をされた。
僕は占いなんて信じるたちではないが、やはり岡田も女の子、そういうのが好きらしい。
「でもそれなら友達と行った方がよくないか?」
やっぱり占いなんか信じていない僕と行っても岡田は楽しめないだろう。
そう思って聞いたのに、岡田は怒り始めた。
「・・・私とは行きたくないっていうわけ・・・ふ~ん・・・彼女にそう言う事言うんだ・・・ふ~ん」
(このバカ慶太!!慶太と行きたいからこうして話したんじゃない!!)
岡田の言うとおり。一緒に行きたくもない奴にこんな話は普通持ちかけない。
あとできれば彼女ってあんまり強調しないで頂けます?陽菜さんに聞かれると色々と面倒なので。
「・・・ぜひ一緒に行きませんか、岡田さん」
「岡田さん?」
(結衣でしょ!!)
「・・・結衣さん」
「しょうがないな~」
(やばい・・・慶太をいじめるのクセになりそう・・・)
ヤバイだと!?それはこっちのセリフだ!!
岡田の言動が日に日に姉ちゃん化している。姉ちゃんが二人なんて僕の心が持たない。
こうなったら最近のお勧めリフレッシュ法をするか・・・
僕はある人物にメールを送った。
[俺のこと・・・好き?]
メールは必ず1分以内に返ってくる。今回もだ。
[だだ大好きです!]
く~、これだよこれ!!このかわいらしさ!!この純粋さ!!やっぱ俺の女神は最高だぜ!!
「・・・誰とメールしてるの?」
(まさか他の女!?浮気!?)
フッ、そう来るのは予想済みだよ岡田さん。
「友達だよ。彼女とラブラブしやがって許さんとかなんとか」
「ち、ちょっと!私たちはあくまで仮の関係でラ、ラブラブとかはないからね!!」
(慶太の彼女・・・慶太とラブラブ・・・ってキャ~キャ~キャ~!!!)
案の定、岡田は僕の言葉にほほを赤らめ、なにやら妄想の世界に入って行った。
これでよし・・・のはず。
でもなぜだろう?なんだか僕が最低の男に近づいている気がするぞ?
「とにかく、今度の日曜でいいか?」
「OK~!日曜の10時に私の家に迎えに来てね」
占い屋は岡田の家とは反対方向だった。それなのになぜ僕が岡田の家に?
「何?なんか文句あるの?」
「いえ、滅相もございません」
こうして今度の日曜日岡田と初デートに行くことになった。



555 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:20:50 ID:DUthe+ZN
デート前日、土曜の夜。この日は恭子ちゃんが家に泊りに来る日だった。
恭子ちゃんは家に来るとすぐにかわいいエプロンをつけ、必死にカレーを作りはじめた。
どうやらお世話になるお礼らしい。
「絶対においしいカレーを作るから・・・待っててね///」
そんな恭子ちゃんの様子を見ると、ここが桃源郷のように思えてくる。
しかし・・・絶対に振り返ってはいけない。振り返ると現実に引き戻されるからだ。
「あらあら慶太ったら、モテるのね~」
お母様、冗談でも今はそのようなことを言わないで頂けます?
「ケッ!!カレーくらいウチでもできるっつーの!」
あれをカレーと呼ぶなんて、あなたの言うカレーの定義が知りたいですね。
「かわいいな~恭子ちゃんは。男の子が見たら襲いたくなるかわいさだよね、慶太?」
う、う~んどうでしょうね?す、少なくとも僕は思いませんよ?
そう、今僕の背後には3人の女性がいるのだ。
前と後ろで違う世界。まさに僕がいるのは三途の川だな。
「できたっ!!」
どうやらカレーが完成したようだ。ん~、見た目といい、香りといい、まさしくカレーだな!!
「いただきま~す」
一口食べる。うまい。ものすごくおいしい。
(く、くそっ・・・ウチのよりうまいかも・・・)
確実にあなたのよりおいしいです。というか比べるほうが失礼ですよ。
「ど・・・どうですか・・・?お、お兄ちゃん・・・?」
ちなみに恭子ちゃんは僕の家に泊まるときだけお兄ちゃんと呼んできます。
「ものすごくおいしいよ。毎日食べたいくらい」
「そういえば・・・お前たしか先週ウチがカレー作ったとき、実はカレーが苦手って言ってなかったっけ?」
「・・・」
「え!?そうなのお兄ちゃん!?・・・ごめんなさい、苦手なもの作ってしまって・・・」
「っ!!」
なんだこの新しい地獄は!僕は一体なんて答えたらいいんだ!?
僕がだんまりを続けていると陽菜が話しかけてきた。
「ところで・・・今週の日曜暇?」
ん?ま、まさかデートの誘い!?
「ど、どうして?」
「久しぶりに慶太と遊びたいと思ってさ~」
き、きたー!!僕の時代が来たっーーー!!!暇さ!!とっても暇さ・・・ん?
「・・・ごめん、その日は先約があって・・・」
なんてタイミングの悪さだ・・・うらむぜ神様・・・
「先約?何の用事なの?」
うっ・・・岡田とデートなんて言えないしな―――
僕がそう考えたとき陽菜が豹変した。
「何処にっ!!どこに行くの慶太っ!!早く言いなさいっっ!!」
陽菜の変貌ぶりにみんなが唖然とした。いつも冷静な陽菜がこんなに慌てるなんて。
「どこって・・・」
占い屋なんていったら確実にデートだと思われるだろうし・・・
「・・・あ、ごめんね慶太。私どうかしちゃった・・・もう問い詰めたりしないから・・・」
陽菜は笑顔でそう告げ、それ以降何も聞いてこなかった。


556 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:21:35 ID:DUthe+ZN
「遅いっ!!」
今は日曜日の午前9時50分。理不尽すぎる。
「彼女との待ち合わせが10時なら9時半に来なさいよ!」
それは待ち合わせ場所が家以外の場合だろ?家の場合は早く行きすぎたら逆に迷惑だろ。
しかし反発したところで僕が負ける事は明白である。
でもちょっとくらい嫌味をいってもいいよな?
「いや~朝から恭子ちゃんにひっつかれちゃってさ~」
「っっ!!」
(あのクソガキまた泊りやがったのか!それになんで慶太は私以外の女を家に泊めるんだ!?今度浮気したら・・・)
ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!嘘です!!もう言いません!!
なんとかビンタ2発で許してもらった。
「グズッ・・・ところで占いは何時に予約したの?」
ここからの移動時間を考えて11時前後だろうけど。
「5時」
「はぁ!?なんで5時に予約したんだよ!!今から7時間なにすんだよ!!」
「そ、それは・・・そ、それを考えるのが彼氏ってもんでしょ!?」
(今日は一日中慶太といたいから遅めに予約したに決まってるじゃないっっ!!なんでわかってくれないのよっっ!!)
僕は一番大事なことを忘れていた。岡田は僕のことが好きなのだ。
好きな人とずっと一緒にいたいと思うのは当たり前のことだ。
「・・・しかたないな。んじゃあ映画でも見るか?」
「そ、それってデートっぽくない!?」
いまさら何をおっしゃられます?そのつもりで僕を誘ったんじゃないんですか?
「・・・俺はデートのつもりで来たんですけど?」
僕がそう言うと岡田は慌てて家の中に駆け込んだ。
「ち、ちょっとまってて!!」
(今すぐ化粧しなくちゃ!!服も新しいのに着替えて・・・あ、シャワーも!!)
え?い、今からシャワーですと・・・?
結局、岡田が出てきたのは1時間後だった。その間僕はずぅぅぅっと玄関前で立ち尽くした。
でも僕はこれぽっちも怒りがわいてこなかった。
「お、おまたせ?・・・ごめん、怒ってる?」
「怒ってないよ。なら行こうか」
「うんっっ!!」
なぜなら岡田がものすごくかわいかったからだ。

街に来てから僕は思い知らされた。僕と岡田は不釣り合いだ。
二人で街を歩いているといろんな人の声が聴こえてきた。
(今の彼女めちゃかわいくなかったか!?)
(なんであんなかわいい子とあんなさえない奴が一緒に歩いてんだ?)
(すご~いモデルみたい~)
今の岡田ははっきり言って芸能人並みだ。
もともと顔のつくりやスタイルはよかったが、今日はうっすら化粧までしているのだ。
そしてなにより心から楽しんでいる表情をしているのが一番の要因だろう。。
(慶太との初デート楽しいな~)
そんな岡田とは対照的に、今の僕の心の中は暗かった。
やっぱりもっと別の奴が岡田の彼氏役をやったほうがよかったんじゃ・・・


557 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:22:19 ID:DUthe+ZN
僕が一人で落ち込み始めると岡田が心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「どうしたの?」
(どうしよう・・・慶太は私とのデート楽しくないのかな・・・)
ダメだ!!僕が暗い表情をしていたら岡田の気持ちを台無しにしてしまう!!
「あ、ごめん!!ちょっと考え事してた!映画何観よっか?」
「あ、えっとね・・・私見たいのがあるの!!」
岡田は僕が笑ったことに安堵したのか、僕の手を引いて映画館に入って行った。
「これ見ようよ!!」
そう言って岡田が指さした方向には、最近話題になっている恋愛映画の看板がある。
「これ一度見てみたかったんだ~!」
目を輝かせている岡田にその横のSFアクションが見たいなんて言えない。
「俺も気になっていたからそれにしようぜ」
「決定ーっ!!」
という事でその恋愛映画を見ることになった。
内容自体は思っていたよりも楽しいものだった。
しかし最後のシーンで主人公を取り合って女の人同士が罵り合っていたのが・・・他人ごとではない気がした。
「面白かったね!!」
「うん・・・そうだな・・・」
最後のシーン以外はね。
「早川は・・・もし早川のことが好きな女の子が二人いて・・・その二人が喧嘩したらどうする?」
なんてリアルな質問だろう。その答えは僕自身が一番知りたい。
「さぁ・・・どうするかな?」
「なら・・・それが喧嘩じゃなくて・・・殺し合いだったら・・・どうする?」
驚いた。まさか岡田の口からそんな言葉を聞くなんて。
(わからない・・・もし慶太と陽菜ちゃんが付き合ったら・・・私はどうするんだろ・・・)
岡田が本気で悩んでいた。
僕が陽菜のことが好きなのは変わらない。でもこのままでいいのだろうか?
岡田の問いかけに僕は何も答えることができなかった。

映画を見終わった後は少し深刻な雰囲気になったが、その後は楽しく時間が過ぎていった。
お昼を食べたときも、ウインドショッピング(お金がないんです)したときも会話は途切れていない。
陽菜以外の女の子とここまで話したのは初めてだ。
「次プリクラ撮ろ~!」
女の子と二人っきりのプリクラ。あれ?なんで僕はこんなにドキドキしているんだろう?
プリクラ機に入った途端岡田も緊張し始めた。
「ど、どれにしようかな~?」
(うわーっ!!個室に慶太と二人っきりなんて緊張する~!!)
そうやって僕たちは硬い表情のまま写真を撮られる羽目になった。
案の定出てきた写真はお世辞にも楽しそうとは言えない顔だ。
でもその写真を岡田は潤んだ目でずっと眺めていた。
(夢じゃないんだ・・・今日は慶太とデートしたんだ・・・)
「岡田・・・」
「あ、ゴメン。そろそろ占いにいこっか!って、今また岡田って呼んだー!!」
「ゆ、結衣さん・・・」
ニコニコしながら僕の手を引く岡田。もう片方の手にプリクラを貼った携帯を握りしめたまま。
そうして僕と岡田は占い屋に向かった。


558 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:23:17 ID:DUthe+ZN
占い屋に入った僕たちは驚愕した。
「あれ!?慶太と結衣ちゃんだ~!!」
「っ!!なんでお前が結衣と!?」
店の待合室に陽菜と姉ちゃんがいたからだ。
「なんでって・・・それよりなんで二人が!?」
「実は今朝陽菜にここの占い一緒に行こ~ってせがまれてな」
「一回行ってみたかったんだ!!店の人に聴いたら4時半が空いてるからって!!」
陽菜が使った『きく』という単語がなぜか引っかかる。
「それよりなんで結衣とおまえが一緒にここに来るんだよ!?」
(まさかデートしてやがったのか!?)
姉ちゃんがキレる一歩手前だ。というか岡田もキレる一歩手前の顔をしている。Why?
(慶太の奴~!!もしかして陽菜にしゃべったの!?最低っ!!)
いや僕は全く、一言もしゃべってませんよ!?
「次のお客様どうぞ~」
そのとき店員が入場を催促してきた。そうだよな、早く入らないと迷惑だよな。
「・・・って言ってますから、陽菜か姉ちゃんかどうぞ?」
早く二人が占いを終えて出て行ってくれるのが唯一の希望だ。
「慶太が先に行って?」
陽菜がまさかの提案をした。
「そうだ、オメーが先に行け」
「バイバイ、早川」
姉ちゃんどころか岡田までも冷たい。そうとう怒っているようだ。僕はなにも言ってないのに。
「・・・行ってきます」
なんか本当に僕の人生を占ってほしくなった。


「ふ~む・・・君の恋愛運はいいですな」
「・・・本当ですか?」
なら最近修羅場が多いのはなぜ?
「どうやら近々好きな子と両想いになれそうですぞ?」
「ま、まじっすか~!!」
や、やったぜ!!あんたは最高の占い師だ!!
「本当じゃ」
(ま、こう言っとけば、こいつもわしの占いが良かったと宣伝してくれるだろう)
・・・・・・
この能力は聴きたくないことのほうが聴きとってしまうのだった。


「どうだった、ここの占い!?」
陽菜が興味津津の顔で聞いてくる。こんな陽菜を地獄に突き落とすことは僕にはできない。
「ど、どうかな~?」
ごめんなさい陽菜さん。どうかどころか最低なインチキでした・・・


559 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:24:23 ID:DUthe+ZN
「ふ~む・・・あなたは現在前途多難な恋愛をしていますな?」
「!!そ、そのとうりだ・・・一体どうすればウチはそいつと結ばれんだ!?」
「愛しなさい!!その方を愛して愛して愛しつくしなさい!!さすればその方もあなたの気持ちに答える!!・・・かも」
「わかったぜじじいっ!!今以上に愛情を注げばいいんだな!!」

なんだろう?部屋から出てきた姉ちゃんが僕にすり寄ってくる。
「おい慶太、なんでも好きなもん買ってやるぜ?」
「・・・恐いのでいりません」
「なっ!!いらねぇだ・・・ゴホン・・・そんなこと言わずに~なんかいってよ~」
ちょっと占い師さん!?一体姉ちゃんに何て吹き込んだの!?
「・・・なんて言われたの姉ちゃん?」
「秘密~」
(慶太にもっと愛情を注げば慶太と結ばれるんだ!!)
どうやらここの占い屋はガチでインチキらしい。


「あなたの恋はどうやら実らないようじゃな・・・」
「ふ~ん」
「でもこの香水を買えばきっと恋愛運が上昇してくるじゃろう!!」
(フフ・・・このバカ、いいカモだぜ・・・)
「聞いてもいい?バカって私のこと?いいカモって私のこと?」
「え?」
「あなたも大変ね~。愛人に貢ぐためにこんなバイトまでして」
「な!?」
(コイツ、わしの考えていることが分かるのか!?)
「そうだよ?ねぇこのことみんなにしゃべってもいい?」
「そ・・・それだけは・・・」
「なら次に入ってくる女の子にこう言って?あなたの思い人には今好きな子がいて、将来その人と結婚するからあなたはあきらめなさいっ
て」

陽菜が笑顔で出てきた。
「ここの占いすごかったー!!超あたってたもん!!」
可哀そうな陽菜。あのインチキじじいにだませれたんだ。
でも何占ったのかな?僕との相性・・・とかだったら嬉しいな///


「あ、あなたの思い人には今好きな子がいて、し、将来その人と結婚するからあなたはあきらめなさい・・・」
「ちょ、ちょっと待って!!もう一度占ってよ!!なにかの間違いかもしれないじゃない!!」
「あなたのためにこう言っているんです・・・あなたのライバルはあなたが思っている以上に・・・強敵です・・・」
「そんな・・・だからって・・・何かいい方法はないの!?」
「・・・あきらめなさい。それが一番です」
「・・・」

岡田が暗い表情で出てきた。
(そんな・・・慶太のことを諦めろって・・・他に方法はないって・・・)
なんてこった。確かに僕は陽菜オンリーラブだけど、ここの占い師は自分の店のためにいいことしか言わないはずなのに。
岡田とは対照的にさっきから陽菜は満面の笑みだった。


560 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:24:57 ID:DUthe+ZN
占い屋を出た僕たちはそのまま駅に向かった。
(占いはダメだったし、帰りも陽菜とお姉さんまでいるし・・・最悪・・・)
占いに行くまでは楽しそうだった岡田の元気がない。
なんとか元気をつけたいがいい言葉が思いつかない。
肝心な時にダメだな僕は・・・
駅について時刻表を見ると、あと数分で電車が来るようだった。
「お、あとちょっとじゃねぇか」
(帰ったら今日のことをとっちめてやろう!!)
姉ちゃんの心の声に突っ込みを入れる気が起こらない。
「本当だ~運が良かったね!」
陽菜の笑顔を見ても嬉しくならない。
今は岡田のことで頭がいっぱいなのだ。一体どうすれば・・・
僕がなにも話さないことが気に食わないのか陽菜が顔をしかめる。
「もぅ慶太も結衣ちゃんも占いでなんて言われたか知らないけど落ち込みすぎ!占いなんて当たらぬも八卦だよ!」
場の雰囲気を良くしようと陽菜が励ましてくれた。
「ありがとう陽菜。そうだよな、占いなんて適当だもんな!」
この言葉は岡田に対して言ったものだ。そんな簡単に人の未来なんてわかるわけがないだろ。
「ありがと、陽菜ちゃん。それにあのじいさん、なんかうさんくさかったからね」
そう言って岡田は微笑んだ。
多分僕だけだろう。岡田がさっきからずっと泣いているのに気づいているのは。
電車が来たところで、僕たちは話を中断して乗り込む。
乗り込んだのはいいのだが、あまりの混雑によって僕たちは離ればなれになった。
「あっ・・・」
岡田の声が漏れる。
当然だろう。なんせ無意識に岡田の腕を掴んでしまったのだから。
「・・・離れるなよ」
「・・・うん」
陽菜や姉ちゃんとは離れてしまったが、こうして岡田は僕のそばにいた。
「・・・どうして私の腕をつかんだの?」
(掴むんなら陽菜の腕でしょ・・・私なんかよりそっちのほうを掴めばよかったのに・・・)
電車が動き出してから岡田が僕にしか聞こえないような声でつぶやいた。
「・・・わからない」
「・・・そう」
その言葉を最後に僕たちは黙りこんでしまった。
(どうせ陽菜に取られるなら・・・せめて今だけは・・・)
しかし岡田のわずかな願いは数分間で終わりを告げる。
「次は○○駅~○○駅~」
どうやら僕が降りる駅に着くようだ。
「・・・今日はありがとう・・・また明日ね!」
(・・・もうちょっとだけ・・・一緒にいたかったな・・・)
岡田の声を聴いた僕は握っていた手に力を込めた。
陽菜と姉ちゃんを見る。二人とも今日は先に帰ってくれ。
「送ってく」
「え・・・でも・・・」
「家まで送ってく」
そう言って僕は電車を降りなかった。


561 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:27:53 ID:DUthe+ZN
2つ向こうの駅で降りた僕たちは岡田の家に向かっている。
「でもまさかあんたから送っていくなんて言葉が出るとわね~」
岡田は電車を降りた後、こうして話しかけてくるぐらい元気を取り戻していた。
(せっかくの慶太とのデートだもん!最後くらいは楽しまないと!)
そうやって楽しく歩いていると、ふと考えてしまうことがあった。
「そういえば・・・なんで俺には下の名前で呼ぶことを強制するのにそっちは呼ばないんだ?」
僕の質問に岡田の顔が曇る。
「そ、それは・・・」
(だってもしそんなことしたら本当に諦められなくなる!慶太の本当の彼女に・・・無理だけどなりたいと思ってしまうじゃない!)
やってしまった。僕はバカだ。よりにもよってこれ以上岡田を悲しませることを聞いてしまった。
「ど、どうしてかな~?」
(私だって呼びたい!慶太って呼びたい!慶太の本当の彼女になりたいよぉ!!)
岡田の気持ちに応えてあげたい。けど答えられない。
そんなジレンマが僕の心に渦巻いている。
しばらくの沈黙後、岡田がポツリと話し始めた。
「・・・私ね、本当に好きな人がいるの。自分でも驚くくらいその人が好きなの」
僕はその人を知っている。それに岡田がその人をどれだけ好きかも。
「でもね?その人には好きな人がいるんだって。だから私、最後の望みをかけて今日占いをしてもらったの」
その結果も知っている。
「・・・ダメだって・・・諦めたほうがいいんだって・・・」
(そうだよね・・・慶太は7年も陽菜のことが好きって言ってたもんね・・・もともと私なんかが入り込む隙間なんてなかったもんね)
もういい。もういいから。
「だから私その人のこと諦める!!・・・正直つらいけど・・・諦める事にした!!」
(これ以上頑張っても慶太に迷惑をかけるだけだから・・・)
もういいっていってるだろ!!
「もしその人と付き合うことができたなら、その人のことを名前で呼びたかったの・・・これが早川の名前を呼ばなかった理由っ!!」
(これって告白かな・・・諦めたはずなのに・・・なにやってるんだろ私・・・)
「もういいからっ!!」
僕の大声に岡田がビクッと体を震わせた。
「もういいよ・・・もうわかったから・・・」
「・・・」
僕の言葉に岡田は頭を下げた。多分・・・泣いているのだろう。
「・・・一つ聞いてもいい?」
「・・・何?」
「そいつのこと・・・なんでそんなに好きなの?」
実は僕にもわからない。僕の能力も万能ではないのだ。
「・・・なんでかな?私にもよくわからない・・・」
「・・・そっか」
「気づいたら好きになってた。だけど・・・」
そこで岡田は顔をあげた。やっぱり涙を流していたが・・・笑っていた。
「その人は唯一私のことを信じてくれたの。誰も信じてくれなかった私を。そのときは・・・うれしかったなぁ~!!」
そう言って岡田は今日一番の笑顔を見せてくれた。


562 :サトリビト:2010/05/01(土) 19:28:42 ID:DUthe+ZN
「そうだ!そこの占い屋さんに占ってもらおうぜ!」
岡田と歩いていると暗い路地裏に占いと書かれた立て札を見つけた。
「でも・・・」
先ほどの悪い占いがまだ尾をひいているのか岡田が渋る。
「いいからいいから!」
しかし気にしても仕方ないと思い僕は強引に岡田を連れていった。
「あの占っていただけませんか?」
僕の言葉に占い屋さんは何も返さずタロットカードを机に並べ始めた。
「・・・あなたの恋ははっきり言って成功する確率が低いようね」
占い師が岡田に向かって開口一番にそう言った。
あれ?僕たちは一言も恋愛運を占ってほしいなんて言ってないぞ?
「・・・そうですか」
マズい。岡田が再び落ち込み始めた。
「・・・12月です。12月の行動次第であなたの恋愛運がガラッと変わります」
「どういうことですか?」
「あなたには今現在強力なライバルがいますね?」
「ハ、ハイ!!その通りです!!」
「今はそのライバルの方が恋愛運が強いです。しかし12月の行動次第ではあなたとその方の運気が逆転します。すなわち、あなた次第で思
い人はあなたのことが好きになるようです」
な、なんと!?
「ほ、本当ですかっ!?」
岡田が占い屋さんの肩をつかんだ。失礼だぞ、岡田。
「えぇ、そうでています」
「あ、ありがとうござい゛ま゛ず~!!」
(やったー!!まだあきらめなくてもいいんだ!!まだ慶太のことを好きでいてもいいんだ!!)
岡田はそう言って泣き始めた。まったく、僕よりいい男はいっぱいいるのに。
「・・・あなたの方は気をつけなさい」
占い屋さんが唐突に話しかけてきた。
「俺ですか?」
「ここまではっきりと見えた人は初めてです」
な、なんだか恐いな・・・
「あなたは近い将来、究極の選択をせがまれるでしょう」
「きゅ、究極の選択!?」
「それも一つではありません。少なくとも4回は訪れるでしょう」
4回も!?
「一つでも間違えれば・・・最悪の結果を招くかもしれません」
最悪の結果?え?・・・じ、冗談ですよね?
「良く考えて答えを出しなさい。とくに最後の2つは・・・」
そう言って占い屋さんはカードをしまいどこかに出かけた。ってあれ?お金は?
「なんだか不思議な人だったね・・・それだけに本当に未来が見える人だったりして」
やめてくれ!僕は4回中1回でも間違えたら死ぬみたいなことを言われたんだぞ!
でも僕はなぜか嬉しい気持ちになった。
岡田がやっと心から笑ってくれたからだ。