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7 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:05:42 ID:mXfirx1d
「今夜は雷を伴った強い雨が・・・」
ザザッーーー
今日は朝から雨が降っていた。それはもうザーザーと。
学校から帰っても雨がやむ気配はなく、ニュースでは今夜は雷まで鳴るとか言っている。
こんなとき考えるのは陽菜と恭子ちゃんのことだ。
恭子ちゃんは今日は両親がいると言っていたから心配事は何もないが、問題は陽菜だ。
陽菜は現在隣の家に一人で住んでいる。17歳だからたかが雨や雷くらいでどうって事はないと思うが、それでも心配してしまう。
でもそれくらいでメールや電話をするのは・・・なんとなく気が引けるんだよな。
う~ん、でもどうしようか?
「・・・なにさっきからう~う~うなってんだよ」
やっぱ一応メールくらい送ろうかな?
「シカトすんなや、コラァ!!」
「うおぉ!?」
目の前に閻魔だ・・・ウホン・・・ちょっと不機嫌そうなお姉さんがいた。
「なにさっきからう~う~うなってんだよ。ウザイんだけど」
姉ちゃんはソファで寝ころびながら雑誌を読んでいた。なになに・・・これであなたも恋愛上手!?
「て、てめー、今笑っただろっ!?」
笑ってませんよ!口を押さえているのは自分の口臭を確認しているだけだから!
「し、祥子!お前まさか彼氏でもいるのか!?」
あ、父さん帰ってたんだ。おかえり。
「なんだ、いたのか?」
姉ちゃん言いすぎ。さすがの僕でさえ口にはしなかったのに。
「あらやだ祥子ったら。たった今帰ってきたのよね?」
さすが母さん、ちゃんと見てたんだ。
「・・・すでにご飯も食べて、お風呂にも入って、今風呂上がりのビールを飲んでいたところなんですが?」
「あら、そうなの?全然気付かなかったわ」
さすが母さん、やっぱり姉ちゃんの親だ・・・
そんなこんなで家族の時間を過ごしていたとき、事件が起こった。

・・・パチッ・・・

突然目の前が真っ暗になった。
「あら?停電かしら」
このときは電子レンジやドライヤーを使っていなかったのでブレイカーが落ちたのではない。
つまりは十中十停電だ。
「みんな落ち着け。ひとまず懐中電灯を探してくる」
そう言い残して父さんはどっかに行った。その瞬間三人が携帯を取り出し、ライトをつける。
「そういえば懐中電灯ってこの家にあったかしら?」
「別にどうでもいいだろ」
「それもそうね」
なんて奴らだ!今頃父さんが暗闇の中、家族のために必死になって懐中電灯を探しているのに!
そうは思いながらも手は全く違う動きをしていた。
[今停電になったんだけどそっちは大丈夫?]
まぁ大丈夫だろうけどさ。
しかし予想に反して意外なメールが返ってきた。
[恐いよ慶太 早く来て]
多分僕だけじゃないだろうか?上下で柄の違うジャージを着て大好きな人の家に向かったのは。


8 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:06:17 ID:mXfirx1d
「今夜は雷を伴った強い雨が・・・」
ザザッーーー
今日は朝から雨が降っていた。まぁだからと言って何も感じないけど。
今家には一人。いや、この表現は少し違う。いつも一人だ。
この家に戻ってから慶太は一度も来てくれたことがなかった。
一緒に帰るとき何度か私の家に来たがったことを『言っていた』くせに。
そのたびに家に帰ってから何度掃除をしたか分かる?そして来ないと分かったときにどれだけ自分が滑稽に思えたか分かる?
慶太は絶対に分からない。昔から私に対してだけは鈍感なんだから。
・・・今頃なにしてるのかな?
きっと慶太のお母さんや祥姉と楽しくおしゃべりでもしてるんだろう。
それとも部屋で私のこと考えてくれているのかな?だったら嬉しいな。
こんなときこそサトリの能力を使えばいいのだが、最近少しだけ調子が悪いのだ。普段生活している分には問題ないのだが、たまに感度が悪くなったりする。
きっと距離がこれだけあって、尚且つ雨の日となると何も聴こえないだろう。
そう思い先ほどからテレビを見ているがちっともおもしろくない。
慶太の声が聴きたい・・・
毎日の私の楽しみ。慶太が部屋で漏らす心の声が何よりの楽しみだったのに。
チャンネルを変える。最近人気の子役が出ていた。
そういえば私の楽しみを邪魔する害虫が最近よく現れる。
害虫の声が聴こえるのは2、3日に一度。しかも事もあろうか慶太のことをお兄ちゃんと呼んでいる。
本当にムカつく。
慶太の姉妹はろくでもない奴ばかりだ。まぁ姉妹だけじゃないんだけど。
岡田結衣。
コイツは私がこの世で一番ムカつく女だ。
私とは違い、見た目に優れているだけでも憤りを感じるが、何より慶太の彼女を名乗っているのが一番気に食わない。
そもそも慶太は私だけの物だ。慶太だってそれを望んでいるに違いない。
机の上に置いてある結衣の写真を左手で持つ。右手にはハサミ。
そのまま顔を真っ二つに切る。
少しだけ気分が優れたがまだまだ足りない。
いっその事、本物で試してみたい。
どこかの国では物を盗んだだけで死刑になるらしい。この国もそうなればいいのにな。
そうなったら結衣ちゃんは・・・ううん、あの姉妹だって盗もうとしている。3人とも死刑だ。

・・・パチッ・・・

そんなことを考えていたら突然停電が起きた。
停電ごときで別に何も思わないが、やることがさらになくなってしまった。
そうなると寝るしかなくなるのは自然なことで、私は自室に向かおうとした時―――
[今停電になったんだけどそっちは大丈夫?]
慶太からのメールが届いた。
停電ぐらいでいちいちメールしてくるなんて。でも素直にうれしい。
そこで私はちょっとしたいたずらを思いついた。
[恐いよ慶太 早く来て]
さて、王子様は何分後に現れるかな?


9 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:06:44 ID:mXfirx1d
ピンポーーン!
陽菜の家のインターホンを押す。そう言えば陽菜の家に来るのも何年振りだろう?
しばらくして陽菜が出てきた。寝る寸前だったのかパジャマを着ている。
「大丈夫か!?」
僕が声をかけると陽菜が吹き出した。
「ぷっ、・・・け、慶太ったら・・・何その格好・・・ア、アハハハハハっ~!!」
陽菜がお腹を抱えて笑っている。
う、うるさいな!家にいたんだからどんな格好しててもいいだろう!
「あ、ごめんごめん~!駆けつけてくれたんだもんね・・・ってやっぱ無理!アハハハハ!!」
最悪だ。よりにもよって好きな人から笑われるなんて・・・
「ところで・・・何か問題でもあったのか?」
あんなメールを送るくらいだ。ま、まさか変質者か!?
「ど、何処だ!!変質者は何処にいるんだ!!」
よくも陽菜の家に・・・もしかして今は陽菜の部屋!?なら狙いは下着か!!くそっ!!
「・・・何考えてるの慶太君?」
陽菜がものすごいジトっとした目を向けてくる。調子に乗りました。ごめんなさい。
「そうね、変質者がいるわ・・・目の前に」
あんまりだ。確かに陽菜の下着はどんなのかな~とか想像したけど、さすがにこれはあんまりだ。
「・・・選択肢を与えてあげる。警察か結衣ちゃんか恭子ちゃん・・・どれに電話をかけたらいいかな?」
・・・できれば警察でお願いします。
「あ、もしもし恭子ちゃん?実はこの近所に変質―――」
「うわぁぁぁぁーーーー!!!ごめんなさい陽菜様!!なんでも言う事聞きますから勘弁して下さいっっ!!」
「ほんとぉ!?やったー!!」
もういいよ。僕はもう人生をあきらめるよ。
「じゃあ・・・とりあえず今夜は私の奴隷ね♪」
さすが陽菜様だぜ。とりあえずでかなりハードなとこをついてくるなんて。
「じゃあ、あなたの奴隷ですって宣言して?私の言う事だけを聞きますって」
あれ、本当にやるんですか?てっきり軽いジョークだとばかり・・・
「せ・ん・げ・ん・し・て?」
「・・・私は陽菜様の奴隷です・・・陽菜様の言う事のみに従います」
「んふぅ♪・・・はまりそうだなぁ~、これ」
好きな人の奴隷になるんだ。これは幸せなことなんだ。
そう思う事に決めた。
「とにかく家に入ったら?こんなとこにいたら寒いでしょ?」
確かに。それに今の僕はずぶ濡れを通り越して水を着ているみたいだ。
「お、おじゃましま~す・・・」
招かれるままに家に入ると、そこは暗かった。この暗さは停電だけが原因ではない。
「陽菜って本当に一人で住んでんだな」
玄関には陽菜の靴だけ。家の中も物音一つしない。
なんかさびしいな。
「一人暮らしって・・・その・・・さびしくなったりしないのか?」
「ん~・・・時々さびしくなるかな・・・でも隣に慶太がいるし平気だよ?」
「そっか」
今までは何となく家に行きづらかったけど、今度からは陽菜の家に行くようにしよう。


10 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:07:10 ID:mXfirx1d
ピンポーーン!
どうやら目的の王子様が来てくれたみたいだ。
時間にして数十秒。やっぱり私は愛されてるんだな~。
フワフワした気持ちになって玄関のドアを開けた。
「大丈夫か!?」
ドアを開けると同時に慶太が叫んだ。しかし、私にはそれよりもっと気を取られたことがあった。
「ぷっ、・・・け、慶太ったら・・・何その格好・・・ア、アハハハハハっ~!!」
慶太が上下で違うジャージを着ていた。これは慶太があわてて家から出てきた証拠。
ますます胸がポカポカする。
(う、うるさいな!家にいたんだからどんな格好しててもいいだろう!)
照れてる慶太って本当にかわいいな~。
「あ、ごめんごめん~!駆けつけてくれたんだもんね・・・ってやっぱ無理!アハハハハ!!」
(最悪だ。よりにもよって好きな人から笑われるなんて・・・)
大丈夫だよ。確かに笑ってるけど、慶太のこと何があっても大好きだからね?
「ところで・・・何か問題でもあったの?」
(ま、まさか変質者か!?)
・・・その格好だと慶太が変質者に見えるよ。
「ど、何処だ!!変質者は何処にいるんだ!!」
(よくも陽菜の家に・・・もしかして今は陽菜の部屋!?なら狙いは下着か!!くそっ!!)
「・・・何考えてるの慶太君?」
慶太をジト目で見る。まぁ演技だけど。
「そうね、変質者がいるわ・・・目の前に」
でも慶太が変質者で私を狙ってくるなら大歓迎♪それに下着が見たいならお願いしてくればいいのに。
慶太をいじめるのが面白くなってきた私は冗談で恭子ちゃんに電話をかけたフリをした。
「うわぁぁぁぁーーーー!!!ごめんなさい陽菜様!!なんでも言う事聞きますから勘弁して下さいっっ!!」
「ほんとぉ!?やったー!!」
慶太はすぐに大げさなことを言う癖がある。そんなこと簡単に口にすると後悔するよ?
「じゃあ・・・とりあえず今夜は私の奴隷ね♪」
(さすが陽菜様だぜ。とりあえずでかなりハードなとこついてくるなんて)
全然ハードなんかじゃない。ハードなのはむしろこれからだよ。
「じゃあ宣言して。私は陽菜様の奴隷ですって。私の言う事だけを聞きますって」
「・・・私は陽菜様の奴隷です・・・陽菜様の言う事のみに従います」
・・・これはマズイ。あまりの喜悦さに意識を手放しそうになった。
(好きな人の奴隷になるんだ。これは幸せなことなんだ)
本当に慶太はすごい。ここまで私を気持ち良くするなんて。
「とにかく家に入ったら?こんなとこにいたら寒いでしょ?」
私の奴隷になった記念として色々いいことしてあげるからね?
「お、おじゃましま~す・・・」
慶太が家の中に入る。ここが墓場だとも知らずに・・・
ううん、違う。慶太は私の奴隷であることが幸せなんだ。だからここは慶太にとって天国なんだ。
「一人暮らしって・・・その・・・さびしくなったりしないのか?」
突然慶太が訊ねてきた。さびしくなんかないよ?だって―――
「ん~・・・時々さびしくなるかな・・・でも隣に慶太がいるし平気だよ?」
そう、これからは『隣』に慶太がいるからね?


11 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:07:39 ID:mXfirx1d
「とりあえずシャワーでも浴びたら?」
そんな陽菜の言葉に僕は頷いた。
僕だって男の子。っていうか陽菜は男に自分の家のシャワーを使われて平気なのか?
「じゃあ私の服しかないけど、ここに置いとくね」
しかも陽菜の服つき。こ、これは何かの罠なのか!?
しかし僕の服は洗濯機の中。かろうじてシャツとパンツだけを着ている状態。
よってこれが罠だとしても僕は突き進むしかなかった。
陽菜の家のシャワーを堪能した後(け、決していかがわしい意味はないよ・・・?)、パンツとシャツを着る。
少し湿っぽいが、ドライヤーで乾かしたにしては上出来だ。
そして・・・罠にかかる瞬間がやって来た。いや、罠と決まったわけではないが・・・
とりあえず畳んであった服を手に取る。うん、いい匂いだ!例えこれが罠だとしても十分いい思いをした!
そして意気揚々と服を広げる。
・・・絶句、あまりに絶句。
なんと陽菜が用意した服はワンピースだった。これは思春期の男の子にとって会心の一撃だ。
しかも女の子用。つまり僕が着ると上はピチピチで下はミニスカートみたいになっている。すね毛が生々しい。
ひどいよ!いくら幼馴染だからといってもこれはあんまりだよ!
しかしパンツとシャツではこの時期寒い。幸い今は停電中で部屋は真っ暗。
わかったよ、これが奴隷の服だって言うのなら着てやるよ!
僕はワンピースを着た。ちょっとドキドキする。ってかワンピースを着ても寒いんですけど・・・
「慶太~まだ~?」
陽菜様がお呼びだ。
「今行くよ」
覚えてろよ陽菜!僕を家に入れたことを後悔させてやるぞ!ウェヘッヘッ・・・
僕がリビングに行くと蝋燭が数本立っていて、部屋にほのかな明かりを灯していた。
「あ、以外に似合うじゃない!女の子みたい!」
なんだろう?大事なものをいくつか失った気分だ。
「・・・これはあんまりじゃないですか?」
僕は着ていたワンピースを指さす。
「あんまり?私が着た服は・・・汚いってこと?」
えぇー!?普通そんな解釈します!?もしかして天然系ですか!?
「ち、違うよ!陽菜の服はとてもいい匂いがして最高だよ!」
「・・・」
あ~あ、ドン引きだ。こうなったらヤケクソだな。
「あ~、こうして自分を抱きしめるとまるで陽菜を抱きしめているみたいだ!」
・・・最後に陽菜の服を着れたんだ。悔いはない。
「私を抱きしめてる気分はどう?」
お、新しい反応だな!でもその反応をされるくらいなら、軽蔑の眼差しを向けられた方がずっと楽かな?
「・・・幸せいっぱいです・・・」
「本物でも試してみたい?」
本物?
「本物?」
あ、つい考えたことが口に出てしまった!
「そ、本物。つまり私を抱きしめてみたい?」
そう言って陽菜はクスクス笑い出した。
薄暗い部屋に若い男女二人。しかも男は女にべたぼれ。あまつさえ女が男を誘惑。
=僕の理性は消える。
ウヘヘヘヘヘヘ!!
「そう言えば・・・さっき恭子ちゃんから電話があったよ。今日はもう遅いから明日にでも掛けなおしたら?」
恭子ちゃんから電話?なんだろう、明日泊りに来るって連絡かな?


12 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:08:16 ID:mXfirx1d
「とりあえずシャワーでも浴びたら?」
さすがにこの格好のままでは風邪をひいてしまう。それに・・・慶太も何かと嬉しいでしょ?
「じゃあ私の服しかないけど、ここに置いとくね」
そう言って私は浴室を出る。この服を着てきた慶太が楽しみだ。
そのままリビングに戻ると、慶太のポケットから取り出したあるものを開く。
さてと、恒例のメールチェックでもしますか・・・
慶太の受信ボックスは主に二人の女で占められていた。
まず片方の女は慶太に大好きとかフザけたメールを送っていた。今まではガキだからと見過ごしてきたが、そろそろ本気で潰しにかかろうか?
そしてもう一人の方はメールでも彼女気取りだった。本当に・・・今すぐ消したいくらいムカつく。
そうやってメールを見ていくと、ふと気になる一通があった。
[あ~早く12月が来ないかな♪そこでようやく私にも春が来るんだな~]
12月?コイツは12月に慶太と本物のカップルになれるとでも思っているのか?一体何を根拠に。
この後の慶太の送信メールを見る。
[まぁほどほどに頑張れ]
なんだこのやりとりは。まるで慶太もそのことを知っているみたいな―――
その時急に電話が鳴った。発信者は・・・恭子ちゃんだ。
どうするか悩んだ挙句電話に出た。
「あ、慶太さんですか!?実は今停電になってしまって、それで・・・こ、こわいんで家に来てくれませんか!!」
ふ~ん、ガキだと思っていたけど男心をくすぐるテクは持ってるんだ。なら一人の女として扱ってあげるね?
「ごめん恭子ちゃん、今慶太シャワー浴びててここにはいないんだ」
「・・・え?そ、その声は陽菜さん!?なんで慶太さんの携帯に!?それに、え?シャワー?」
「そ、今『うちの』シャワー浴びてるからここにはいないんだ。なんなら伝言しとこうか?」
「あ・・・いえ・・・それほどのことではないので・・・し、失礼しました・・・」
その言葉を最後に電話が切れた。
いい気味だ。それより結衣とのメールの真相を問いたださないと。
「慶太~まだ~?」
「今行くよ」
返事を返して戻ってきた慶太の格好を見た瞬間、私は慶太と結衣のやり取りを忘れてしまった。それくらい私の慶太はかわいかった。
「あ、以外に似合うじゃない!女の子みたい!」
やはり好きな人にはフィルターが掛かるのか、その辺の女の子よりもかわいく見える。
「・・・これはあんまりじゃないですか?」
「あんまり?私が着た服は・・・汚いってこと?」
「ち、違うよ!陽菜の服はとてもいい匂いがして最高だよ!」
慶太をからかうのは本当に楽しい。素直な子は大好きだよ。
「あ~、こうして自分を抱きしめるとまるで陽菜を抱きしめているみたいだ!」
慶太が私の服を抱きしめている。決まり。あの服は明日から私のパジャマだ。
「私を抱きしめてる気分はどう?」
イジめてばっかりでごめんね?でもこの答えはどうしても聞きたいの。
「・・・幸せいっぱいです・・・」
合格だよ。
「私を抱きしめてみたい?」
今までは彼女になるまで慶太とはそういう事はするつもりなかったけど、最近ウザイのが増えてきたからね。その予防策も兼ねて少しくらいなら体を許してあげるね♪


13 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:09:04 ID:mXfirx1d
「ところで・・・自分はいつまでこの家にいればよろしいですか?」
服は乾いていないとはいえ、家を飛び出てきたんだ。多分今頃姉ちゃんが荒れているはずだ。
「何言ってるの?今夜は私の奴隷なんだからここにいるのよ?」
陽菜がものすごく楽しそうだ。どうやら空白の3年の間にSッ気に目覚めたらしい。何処で道を間違えたのかな?
「でも、せめて家に連絡させてはもらえないでしょうか?」
早くしないとあの姉ちゃんの事だ。取り返しがつかなくなる。
ブブブブブブブブーーーーーー!!!
「あ、慶太の携帯が鳴ってるよ?」
慶太の携帯・・・今のは陽菜さんのダジャレかな?かわいいなー。
「・・・あ、もしもし祥姉ぇ?」
うぼぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁ!!陽菜様が出たらまずいよ!!もしかしてダジャレとか考えたのがいけなかったんですか!?
「な、なんで慶太の携帯にテメーがでんだよ!!」
うっわー・・・僕にまで姉ちゃんの声が聞こえるよ・・・。それに慶太の携帯って最近はやってんの?
「え?慶太?慶太なら今日私の家に泊ってくんだって~、え?なら代わろうか?」
ハイ、とかわいらしく携帯を渡された。で、できればでたくないかなー?
「・・・でないの?」
そんな恐い笑顔を向けないで!僕の知っている陽菜はかわいい笑顔しかしないはずだよ!
「・・・も、もしもし姉ちゃん?」
「け、慶太!テメーマジで陽菜んちに泊るってのか!?」
「お、お母様にかわってもらえないでしょうか?」
姉ちゃんはその後も文句を言っていたが、僕の一辺倒のセリフにあきらめ、ついに母さんに電話を代わった。
だが多分向こうは受話器に顔を近づけ会話を聞くつもりだろう。
かくゆうこちら側も一つの電話に二人が顔を近づけている。よ、陽菜様の顔がこんな近くに///
「それで私に何の用なの?」
「・・・今日は陽菜のお家に泊めていただく所存であります」
あまりの緊張に変な言葉を使ってしまった。
「あら、そうなの?陽菜ちゃんに失礼のないようにね」
そう言って電話が切られた。なんてあっさりと。それに切れる寸前、姉ちゃんの断末魔の叫びが聞こえたような・・・
「さすが、慶太のお母さん!認めてくれるなんて、本当にいい人だな~」
その言い方だと認めなかった姉ちゃんが悪い人に聞こえますよ?陽菜様は姉ちゃんのことが大好きでしたよね?
「ところで陽菜様、今から一体何をしましょう?」
「う~んとね・・・なりきりゲームは?」
僕の様付けの呼び方に何の反応も示さない陽菜。完全に女王様の気分なんだろうな。
「なりきりゲーム?」
「お互いがある人物になりきって性格やしぐさを真似るの。もちろん真似るのは性格やしぐさだけでお互いの名前はいつもどうりね」
なんだか難しそうだな。
「じゃあ最初は・・・慶太が恭子ちゃんね?」
え?僕が恭子ちゃんになりきるの?確かに今は女の子の格好をしてるけどさ!
「それで私は私ね」
ちょっ!それってズルくない!?自分だけ何もしないってこと!?
「何か文句でもあるのかな?奴隷さん♪」
ないです。ないですから奴隷さんと呼ばないで、慶太って呼んでください。
「それじゃあスタート!」
僕にとって地獄の時間が始まった。


14 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:17:22 ID:mXfirx1d
「ところで・・・自分はいつまでこの家にいればよろしいですか?」
「何言ってるの?今夜は私の奴隷なんだからここにいるのよ?」
せっかく慶太が来てくれたのに、私が何もしないまま返すわけないじゃない。それに慶太だってここにいたいんでしょ?
「でも、せめて家に連絡させてはもらえないでしょうか?」
まぁ慶太の言うことも一理ある。
祥姉のことだ。電話をしなかったらここに乗り込んでくるかもしれない。
ブブブブブブブブーーーーーー!!!
「あ、慶太の携帯が鳴ってるよ?」
言ってるそばから電話が鳴った。でちゃおっかな~♪
(慶太の携帯・・・今のは陽菜さんのダジャレかな?)
・・・私はくだらないことが大嫌い。例えそれが慶太の発言だとしても。
「・・・あ、もしもし祥姉ぇ?」
(うぼぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁ!!)
「な、なんで慶太の携帯にテメーがでんだよ!!」
やっぱり私が出て正解だった。祥姉の驚きと怒りに満ちた声がたまらない。
本当はもっとおしゃべりをしていたしけど、祥姉は慶太と話したいはず。
心優しい私は慶太に代わってあげる事にした。
電話を受け取った慶太は祥姉が恐いのか、ひたすらお母さんと代わってくれるように頼んでいた。
怯えきった慶太の表情もかわいい。慶太の理性よりもこっちの理性の方が先に崩壊してしまいそうだ。
どうやら向こうが折れてお母さんに代わったようなので、こちらも会話を聞くために慶太に顔を近づける。そのときの慶太の艶めかしい表情に私は電話を忘れて飛びつきたくなってしまった。がまんがまん。
「それで私に何の用なの?」
「・・・今日は陽菜のお家に泊めていただく所存であります」
「あら、そうなの?陽菜ちゃんに失礼のないようにね」
さすが慶太のお母さん。どっかのバカと違って物わかりがいい。やっぱりいい人だ。
「さすが、慶太のお母さん!認めてくれるなんて、本当にいい人だな~」
(その言い方だと認めなかった姉ちゃんが悪い人に聞こえますよ?陽菜様は姉ちゃんのことが大好きでしたよね?)
演技をしている私が悪いんだろうけど、慶太は全然気づいてない。私がこの世で好きなのは慶太と慶太のお母さんだけだ。
「ところで陽菜様、今から一体何をしましょう?」
「う~んとね・・・なりきりゲームは?」
(完全に女王様の気分なんだろうな)
私は別に女王様が好きなわけではない。ただ私が女王様なら慶太は名実共に私の奴隷だ。奴隷は女王様の私物。
その面では女王様も満更ではないけどね。
「じゃあ最初は・・・慶太が恭子ちゃんね?」
慶太があのクソガキを演じるのは癪に障るが、それを踏まえてもあの絡みつくような求愛行動を慶太にしてほしいと思ってしまう。
「それで私は私ね」
(ちょっ!それってズルくない!?自分だけ何もしないってこと!?)
大丈夫、慶太の行動次第ではいいこともしてあげるから。それに慶太だって大手を振って私にべったりできるんだから文句なんてないでしょ?
「それじゃあスタート!」
私にとって天国の時間が始まった。


15 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:17:56 ID:mXfirx1d
「お、お兄ちゃん・・・」
「あれ?おっかし~な~。慶太ちゃんは私の事お兄ちゃんて呼ぶの?」
「っっ!!・・・ご、ごめんね・・・お、お姉ちゃん・・・」
「いいよ、かわいいから許してあげるね」
何て屈辱だろう。恭子ちゃんを否定してるわけではないが、これは男としてのプライドをズタズタにする。
「慶太ちゃんは陽菜お姉ちゃんの事好き?」
あ、あれ?なんだかデジャブ感がするぞ?
「・・・だ、大好きです!」
「ふ~ん・・・恭子ちゃんにそんなこと言われてたんだ・・・」
しまった!これは巧妙な罠だったのか!?
「な、何言ってるの、陽菜お姉ちゃん!?私は陽菜お姉ちゃんにしか言ったことないよ!?」
「本当?じゃあ恭子ちゃんの事は好き?」
もちろん好きだ。だがはたしてこの状況で言ってもいいものか?
「えっと・・・妹としてなら好きだよ~!?」
「それなら・・・結衣ちゃんの事は?」
うっ!なんてとこついてくるんだ!まさかこれが本命だったのか!?
「どうなの~慶太ちゃん?」
岡田か・・・確かに友達としては好きだ。でもあくまで友達として。岡田には悪いが異性としてと聞かれたら、答えはNoだ。
「答えにくい?なら質問を変えてあげる。今は仮の関係だけど、本気になる可能性はあるの?」
可能性。たしか占いでは12月に僕が岡田を好きになるって言われたっけ。
「・・・分からないです」
「ふ~ん・・・」
そのまま沈黙が訪れた。
何となく手持無沙汰になったので携帯をいじくった。その電池パックの裏には岡田とのプリクラがある。
あの時の嬉しそうな岡田の様子を思い出すと、あながち占いが当たってもおかしくない気がした。
このプリクラ、二人とも緊張してひどい顔になっているのにな・・・
「・・・慶太は一応結衣ちゃんと付き合ってるんだよね?ならプリクラとかも撮ったの?」
突然陽菜の雰囲気が変わった。
「もしあるなら私にも見せてくれないかな~?」
いつもなら躊躇するが、この時ばかりはなぜか素直に従った。そうしないといけない気がした。
「ふ~ん・・・なんか二人とも緊張してて・・・付き合いたての本物のカップルみた~い」
陽菜はしばらくプリクラを見つめていたが、やがて携帯を僕に返してきた。

・・・パチッ・・・

それと同時に部屋が明るくなった。電気が復旧したのだ。
だが一瞬、電気がついた一瞬だけ見えた陽菜の顔が・・・歪んでいたように見えた。
「ねぇ慶太ちゃん・・・そろそろ寝よっか?」
つ、ついに来たか!陽菜は私の事抱きしめてもいいと言ってたんだ!き、今日こそ大人の階段を上がるぞ!
「お、俺は陽菜お姉ちゃんと一緒に寝たいな~・・・ダメ?」
さっきまでの雰囲気からOKしてくれると信じていた僕は調子に乗っていた。
だが陽菜の返答は一般的には普通だが、今の僕の予想を大きく外れるものだった。
「慶太、調子乗りすぎ。いっておくけど抱きしめていいとは言ってないよ」
えぇ!?あれだけ僕の理性をくすぐっておいて今さらこの仕打ち!?そんなの僕耐えられないよ!
「気が変わったの。慶太はおとなしくここで寝て」
嘘だろ・・・僕の性欲は今MAXなのに何もしないでここで寝ろと?ワンピース姿で?
そのまま陽菜はリビングを出ていき、ドアを閉めた。ものすごい音を立てて。


16 :サトリビト:2010/05/08(土) 08:18:23 ID:mXfirx1d
「お、お兄ちゃん・・・」
「あれ?おっかし~な~。慶太ちゃんは私の事お兄ちゃんて呼ぶの?」
「っっ!!・・・ご、ごめんね・・・お、お姉ちゃん・・・」
「いいよ、かわいいから許してあげるね」
本当にかわいい。あのガキがやっているのを見るとただイラつくだけだったが、慶太がやるとここまでかわいく見えるものなのか。
「慶太ちゃんは陽菜お姉ちゃんの事好き?」
これは慶太の送信メールにあったものだ。
「・・・だ、大好きです!」
「ふ~ん・・・恭子ちゃんにそんなこと言われてたんだ・・・」
確か受信メールもこんな返事が返っていた。
内気な子がここまで大胆になってきている。もしかして・・・異性として意識し始めているの?
「な、何言ってるの、陽菜お姉ちゃん!?私は陽菜お姉ちゃんにしか言ったことないよ!?」
慶太の返事が少しだけ気に障った。
慶太は恭子ちゃんのしぐさを真似しているだけでしょ?なんで恭子ちゃんの気持ちを代弁するようなこと言っているの?
「本当?じゃあ恭子ちゃんの事は好き?」
「えっと・・・妹としてなら好きだよ~!?」
そんなに軽々しく好きなんて言葉使わないで。私に対する好きも軽く聴こえるじゃない。
「それなら・・・結衣ちゃんの事は?」
(・・・答えはNoだ)
それならなんで仮の彼氏役なんか引き受けたの!?私の事が好きならなんですぐに告白してくれないの!?
・・・ダメだ、落ち着け私。イライラしてら肝心なことを聞きそびれてしまう。
「答えにくい?なら質問を変えてあげる。今は仮の関係だけど、本気になる可能性はあるの?」
(たしか占いでは12月に僕が岡田を好きになるって言われたっけ)
ビンゴ。私の質問に慶太が素直に答えてくれた。
12月って・・・占いでそう言われたの?いつの間に違う占い屋に行ったのかは知らないけど、占いごときを信じるなんて結衣ちゃんは本当にバカだな。
慶太の一言で少しだけ落ち着いた・・・はずだったのに・・・
(このプリクラ、二人とも緊張してひどい顔になっているのにな・・・)
プリクラ!?・・・ふ~ん、本物のカップルみたいなことしてたんだ。
「・・・慶太は一応結衣ちゃんと付き合ってるんだよね?ならプリクラとかも撮ったの?もしあるなら私にも見せてくれないかな~?」
そう言って手を差し出す。
慶太は私の雰囲気を感じ取り、素直に携帯を渡してきた。
プリクラを見ると、確かに慶太の言った通り二人ともひどい顔をしている。
でもそれがなぜか・・・二人が本物のカップルのように見えてしかたがなかった。
「ふ~ん・・・なんか二人とも緊張してて・・・付き合いたての本物のカップルみた~い」
自分でも驚くほど冷静になっていくのが分かる。
いいよ。今までは余裕を感じていたから本気を出していなかったけど・・・もう許さない。
本気でいくよ。

・・・パチッ・・・

電気が突然戻った。一瞬慶太に私の本性を見られたが、時間が時間だっただけに気のせいだと思うだろう。
「ねぇ慶太ちゃん・・・そろそろ寝よっか?」
「お、俺は陽菜お姉ちゃんと一緒に寝たいな~・・・ダメ?」
結衣ちゃんはもちろんだが、慶太にだって腹は立っている。好きな人がいるのに他の子と二人でプリクラなんて何考えてんの?
「慶太、調子乗りすぎ。いっとくけど抱きしめていいとは言ってないよ」
「気が変わったの。慶太はおとなしくここで寝て」
私は慶太をリビングにおいて部屋に戻った。