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81 :悪意と好意と敵意番外編「幸せになろう!」 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/11(火) 00:12:07 ID:IM8wuOZh
僕の名前は相田洋介。双葉宮(ふたばのみや)商事に勤める26歳のサラリーマン。周囲からは出世株として期待されている…らしい。
そんな僕は今日人生最高の瞬間を迎えようとしていた。最愛の人「井上彩子」と結婚する。
控室で見たウェディングドレス姿の彩子はいつもに増して可愛かった。そんな彼女と結婚できるなんて僕はなんて幸せ者なんだろうか。
思い返せば彼女と出会ってからは本当にいろんな事があった。


初めて出会ったのは大学2回生で20歳の時に初めて行った合コン。記憶が正しいなら同じ学部の時田に誘われたはずだ。
「お前流石に20年女居ないのはマズイって」とか「頼む!数合わせでいいんだ!」とか言われたんだっけかな。
受ける理由がないから適当な返事で断り続けた。彼女が居ない事が罪でも無ければ行きたくも無いイベントに足を運び時間を潰す程暇じゃ無い。
大体女は苦手なんだ。俺が人類の半分の人間が苦手と言うのには理由が有る。
普段は男女平等を唱っているがひょんな事からレディーファーストを主張する厚かましさ。
すぐに流行に流される意思の弱さや、暴力反対と言う割には口の暴力が凄まじい事。
なにより胸元を大きく開いた服やパンツが見えるんじゃ?と疑いたくなる程短いスカートを着て街を闊歩して恥ずかしくは無いのか。
厚顔無恥で傍若無人にも程がある。古き良き時代の大和撫子が絶滅した現代の日本人女性はそんな生物なのだ。だから俺は苦手だ。
しかし「飯奢るから!」の一言が耳に入って詳しい話だけでも聞いてみようと思って耳を傾けた。
詳細を聞くと場所はなんと都内の焼き肉屋。タダで焼き肉食えるとはラッキーだし、今月は財布がピンチだったのだ。
人数は男4人と女4人。両陣営共に大学生。男性陣は右から時田、真田、俺、松野と座っていた。
まあ最初は自己紹介をする事になった。時田と真田の自己紹介はやけに気合いが入っていた。
で、俺はと言うと「相田洋介です。よろしく」と趣味すらも省略した。「シラケさすなよ」という念の籠った男性陣の視線を無視して着席。
俺の自己紹介の次に自己紹介をした松野も気合い入っていたなぁ。合コンってこんなに真剣になるもんなのか?と疑問を抱くほどに。
続いて女性陣の自己紹介が始まった。トップバッターはいかにもギャルな女性だった。
「藤井洋子です。趣味は~レゲエかな!よろしくネ!」
藤井って人…胸元を曝け出して髪色は金髪で夏でも無いのに焦げ茶色の肌。ピアスをしたヘソを出していて総評すると下品と思えた。

「河野由美です☆メイド喫茶でバイトしてます☆よろしくお願いします☆」
河野って名乗った人は化粧が濃く髪型はツインテールでぶりっこ全開だった。コリン星出身だったりする?
なにより特徴的なのはアニメ声。俺の耳にとっては鬱陶しい声だった。うぎー!
なんかバイト先のメイド喫茶のスタッフルームで客の悪口言ってそう。根拠は無いがなんとなくそう思った。

「雪野…由紀…。よろしく」
3番バッターの雪野って人ははこう…Ⅴ系の格好をした女性だった。
俺と同じであんま自己の紹介はしなかった。「口下手なんだろうな」と勝手な解釈をしてみた。
ラストの人間もクセの強い奴なんだろうなと左に目を見やる。だが、現実は俺の予想の斜め上を行った。

「い…井上彩子です!!数合わせで来ました!!よ…よろしくお願いします!!」
声の主は茶髪の女性。その色は上品さを撒き散らしている感じの髪。洋服の形を崩さない貧乳。
日焼けという言葉に無縁そうな白い肌。知的美人を連想させる顔の造りとその顔を際立たせる薄いメイク。
合コンの自己紹介で「数合わせで来ました」って慌てながら言うくらいの人だから中身は知的美人ってより天真爛漫な子供っぽい。
まあ、悪く言えば空気が読めない人。現に自分の発言で空気が盛り下がったのに気が付いて無いようだし。
そして僕はそんな彩子に少し興味を持った。彩子は女性に興味の欠片も無かった僕の20年に終止符を打っってくれた。
彼女と会話したい。彼女と仲良くなりたい。彼女をもっと知りたい。
しかーし!女が苦手な俺はどうすればいいか分からなかった。


82 :悪意と好意と敵意番外編「幸せになろう!」 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/11(火) 00:13:14 ID:IM8wuOZh
彩子の空気の読めない自己紹介から5分が経った。
簡単な自己紹介の後に席替えをする事になって紙で作られた即席のクジを引いたら僕と彩子は廊下側の席で向かい合わせになった。
この時ほど無神論者の僕は神様って奴に感謝した事は無い。神様ありがとう!
楽しく会話する男女6人。雪野さん以外に饒舌じゃねーか!と心の中で突っ込んでから6人の横で店員の持ってきた肉を焼く俺と彩子。
「「………」」
隣は喧騒に包まれていたが廊下側の縦二席は肉の焼ける音だけがしていた。
そうだ、僕は浅はかだった!小中高と女子と会話を最低限しかせずにホモの噂を流されていた様な無力な俺に何が出来る!
クッ…女子を内心「厚顔無恥で傍若無人」と見下していた過去のツケがこんな所で回ってくるとは…。自分の行いを悔やむ。
けれど、神様は救いの手を差し伸べた。いや、女神の声が鼓膜に届いたという方が正しいか。
「あの…具合でも悪いんですか?」
いつの間にか俺の横に立っていた彩子が心配そうに俺に声を掛けてきた。
「あ…ああ。大丈夫…です…」
「そうですか。あの…お肉焼けましたので…よかったらどうぞ」彩子の箸にはよく焼けた塩タン。
「…どうも」そう言って僕はタレの入った受け皿を差し出した。
彩子はタレの中でその塩タンを丁寧に泳がせる。そして…
「はい、どうぞ召し上がれ!」その塩タンを箸で僕の口元まで運んで来た!
最初は戸惑ったが徐々に近づいて来るタン塩と天真爛漫な彩子の笑顔を見て覚悟を決める。
口を開いてタン塩を受け入れて咀嚼して飲み込む。幸せの味がした。
「おいしいですか?」こんな美女に「あーん」して貰えて不味い筈がない。
「うん。おいしいです…ありがと」
ふと隣が静かになっている事に気付く。6人がにやにやしていた。目が合うと6人とも目を逸らして再び喧騒ムードを作り始めた。
それを見ても気にせずに笑顔のまま席に戻る彩子。子供っぽい性格なのか空気を読めないのか…。
「全く…女って本当に厚顔無恥で傍若無人な奴だな」と改めて実感した。けれど不思議と不快感は無く違う何かが込み上げてきた。


その後、僕たちは焼き肉屋を後にした。「カラオケ行こうぜ」なんて提案が出たが僕は音痴なんで適当な理由を並べて離脱。
彩子は大学の講義が1時間目からあるらしく同じく離脱となった。
夜道は危ないので「駅まで送るよ。」と勇気を振り絞って言うと「お願いします。」という返答が笑顔と共に帰って来たので送る事になった。
駅までの帰りで色々な事を聞いた。中高と女子校に通っていて男性との交際経験は無いとか数学好きな所とかそんな他愛も無い会話だった。
彩子の夢が高校教師になる事と聞いた時は「正直幼稚園の先生の方が向いてる」と思ったのは内緒だ。
楽しい時間はすぐに過ぎて駅に着く。
「では私こっちなので…」
「あの…」僕と反対側のホームに向かおうとする彩子を呼び止める
「?」
「れ…連絡しゃきを…!」噛んだ…。ダッサ…と自己評価して彩子を見ると携帯電話を持っていた。
「喜んで」その言葉を聞いてポケットから携帯電話を出そうとして落っことす。「ドジですね~」なんて彩子に言われて恥ずかしかった。
「えーっと僕から送信で!」僕は送信を選択する。
「あ、はい。」互いの赤外線の部分を近づけ合う。が、いつまで経っても送信が完了しない。何故だろうと首を傾げていると彩子が口を開く。
「あ、私も送信してました…ごめんなさい…私もドジでした!」僕は萌え死にそうになった。


83 :悪意と好意と敵意番外編「幸せになろう!」 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/11(火) 00:14:09 ID:IM8wuOZh
連絡先を交換して最初の土曜日。僕は彩子を「もしよろしければ公園の桜を見て歩きませんか?」とメールでデートに誘った。
断られるかと思ったが快く「喜んで!」のメールが帰って来た。しかも猫の顔文字付き。
彩子のアルバイトが午後2時に終わるので3時に噴水で待ち合わせという事になった。
噴水に座ってしばらくすると彩子が登場。
「お待たせしてすみません」という彩子の謝罪の台詞に「いや、今着たとこだよ」なんていうありがちな台詞で返した。
自然を満喫しながら公園内を歩く。春なので桜が満開で鮮やかだった。
ふとその桜の木の下で一人の少年が泣いていた。しかし周りはスルーを決め込んでいたのでそのつもりで僕もスルーしようとした。
けれど、彩子は女神のような優しさを持つ女性なので少年を見捨てなかった。
「僕、どうしたの?」しゃがみながら聞く彩子。それに釣られて僕も少年の元に歩み寄る。
「おかーさんと…はぐれた…」
「あらあら、どうしましょ…」
「少年…探してやるから泣くな。」カッコつけて見た。効果は有った様で少年の目に希望の光が見えた。
「立てるか?」少年は僕の質問に頷く。
「よく頷いた。後でジュースを奢ってやろう」某謙虚なナイトの真似をしてみた。少年はジュースという言葉で笑顔を取り戻した。


少年の母親を見つける頃には夕焼けが地面を茜色に染めていた。
少年の母親に感謝されて、少年は母親と手を繋いでこちらに顔を向けてもう片方の手をぶんぶんと振りながら親子は帰って行った。
「良かったなぁ。でも、誘っておいてごめんな。井上さん。」
「いえ、私もあの子が無事に母親と再開できて良かったと思います。それに相田さんの優しいさが分かって今日はいい日でした。」
屈託のない笑顔で僕を誉める。どきっとした。この人の笑顔をもっと見たい、独占したいと思った。
だから僕は告白の台詞を彩子に告げた。
台詞の内容は緊張し過ぎて覚えてないが恥ずかしくて思いだしたら顔から火が出そうになる台詞だったような気がする。
夕陽の所為か告白の所為か彩子の顔は赤くなっていた。そして口を開く。
「私…相田さんの事を初めて見た時から良いなって思ったんです。それに今日の優しさも見て…なんていうか…こんな私で良ければよろしくお願いします!」
返事はOK。僕の初恋は実った。
「でも3つだけ条件が…」
「何?」どんなのが来るかと身構える。
「一つ目は下の名前で呼び合う事」
「分かったよ。彩子」ちょっとこそばゆかった。
「二つ目は結婚を前提にしたお付き合いにする事。」
「大歓迎!」彩子となら今すぐにでも結婚したい。
「三つ目は…えっちなのは結婚してから!交際中はキスまで!」赤い顔を赤らめて言った。
また萌え死にそうになりながら「了解した」と答えた。獣のように交わる事に嫌悪感を持つ俺にとっては好都合だった。


84 :悪意と好意と敵意番外編「幸せになろう!」 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/11(火) 00:14:50 ID:IM8wuOZh
それからは順調に愛を育み俺は大企業である双葉宮商事から内定を貰い、彩子は晴れて教員免許を習得した。
大学を卒業するころには互いの両親に紹介して家族公認の仲になった。このまま上手く行くと思ってた。
悲劇は25歳のときに起きた。
彩子から「いますぐきて」とだけ書かれたメールが来た。嫌な予感がして彩子の住むマンションに行く。
インターホンを押しても反応が無いのでドアノブを握るとドアは空いていた。中は真っ暗で何も見えなかった。
部屋に入っても真っ暗だが変な音が鼓膜を刺す。電気を点けると彩子が布団で泣いていた。
「洋介さん!洋介さん!!あ、ああああああああああああ!!!!」俺に飛びかかり泣きじゃくる。
理由を聞くと仲の良い京華院涼香という同僚の女教師が殺されて悲しみにくれていたらしい。
職場では強がってる分、家でこうして泣いているようだった。
俺はどうしたらいいか分からなかった。ただ自分の腕で彼女を包んでいた。


赴任している高校の生徒が死ぬ度に塞ぎこんでは泣きじゃくってった。
それを僕が子供をあやすように優しく包んでいった。5回ほどだったかな。
けれど、犯人が自分の高校の教え子だった時はそれまで以上に泣きじゃくった。
その時確信した「こいつは俺が居ないと駄目だ」と。
そして紡いだ「彩子。結婚しよう。必ず幸せにするから。だからもう泣くな」


そして今僕はここに居る。前には神父、横には彩子。後ろには親族や友人達が居るこの教会に。
神父が僕に「誓いますか?」と問いかける。
「誓います。」僕が躊躇いなく言うと神父は僕に微笑んだ。
神父が続いて彩子に「誓いますか?」と問いかける。
「はい。どんな苦難も2人で乗り越えて見せます。一生と言わずに来世もその次も愛し合います。
洋介さん?浮気なんてしたら許さないわよ。主に浮気相手を。完膚無きまでに叩きのめすわ。
後、先に死なないでね。私の周りはどんどん居なくなって辛かったの。洋介さんまで居なくなるときっと私壊れちゃうわ。
それより洋介さん。子供は何人欲しい?それよりしばらくは2人だけの時間を満喫する?ええ、任せて。
洋介さんがどんな変態プレイを要求してきても私ちゃんと応えるわ!でも優しくしてね…。
そして中年になっても老人になっても未来永劫愛し続ける事を誓います。」
僕と神父さんは唖然とした。会場はドン引き。彩子は満足顔。
「そ…それでは誓いのキ…」神父が台詞を言い終わる前に押し倒されて口付けを交わす。
こ…こいつ…狂ってやがる…。これが噂のヤンデレ…って奴なのか…。



そんな彼女を益々愛おしいと思える俺も狂っていると自分で思った。彩子、愛してる。