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94 :山姫と海姫:2010/05/11(火) 21:36:24 ID:9ITSh+D9
昔々のことです。
ある国に木こりが住んでいました。
心優しく真面目な働き者でしたが、生まれつき顔が醜く、体も熊を見下げるほどの大きさでした。
人々はそのことで疎まれて、山の中で一人木を切って暮らしていました。

ある日のことです。
木こりはいつものように、山に木を切りにでかけました。
えっちらおっちらと山道を登っていると、絹を裂くような悲鳴が聞こえてきました。
急いで声のした方に走っていくと、女の人が狼に襲われようとしているではありませんか。
娘は木にもたれかかり、震えるだけでなす術がなさそうです。
「あぶない」
木こりはそう叫ぶと、狼に向かって飛びかりました。
狼はびっくりして暴れましたが、体の大きな木こりはとうとう狼を捕まえて、放り投げます。
切り株にぶつかって体をしたたかに打った狼は、きゃんきゃんといいながら逃げていきました。
木こりは狼が遠くに行ったのを見てとると、娘に向かって話しかけました。
「もう大丈夫。けがは無いかね」
でも、女は答えずにぽーっと木こりを見つめたままです。
「おうい娘さん、大丈夫かい」
「ええ、ええ。もう平気です。助けてくれてありがとうございます」
木こりがもう一度問いかけると、娘はやっと気づいてお辞儀をしました。
ああ、こりゃおらを見て怖がっちまったかな、と木こりは思いました。
身の丈七尺、山のような体つきの木こりは、今まで何度もこのような目で見られてきていたので気にしません。
「おお、それはよかった」
木こりは頭を上げた女の顔を見ると、どきっとしました。
娘の顔がたいそう美人だったからです。
くりっとした瞳に小ぶりな鼻、艶かしく紅の塗られた唇。
ほっそりとした輪郭は、まるで出来のよい人形のようです。
背中にかかる長い黒髪もつやつやとした、こんな山には似つかわしくないぐらいのべっぴんさんでした。
「何だってあんたみたいな美人が、こんな山の中にいるんだね」
木こりは不思議に思って聞きますと、娘は口元に袖を当ててさめざめと語ります。
「私は隣の国の者です。この国に物見遊山に来たのですが、お供とはぐれてさまよっていたのです」
形のいい眉をゆがめて悲しげに話す姿は、正に傾国の美女といった趣です。
そして、木こりの岩のような手を握って、上目づかいにこう言いました。
「あなた様が通らねば、私は今頃狼にはらわたを食われていたでしょう。
あなた様は命の恩人でございます。どうかお礼をさせて下さい」
木こりはたじろぎました。
何しろ木こりはこのとおりの化け物じみた見た目をしていたので、女という女は木こりを見ると逃げ出していました。
こんな風に手を握ることはおろか、まともにしゃべった事すらないのです。
はしめて握った女の手はやわらかく、何やら良いにおいもします。
「れれれ、礼を言われることなんぞねえ。ききききき、気にせ、せんでくれ」
木こりは舞い上がりながら言います。
すると、それを聞いた娘は珠のような顔をずいと木こりの岩のような面に近づけ、こうまくしたてました。
「そんなわけには参りません。
命を助けられて何もせぬとあっては、我が名折れというもの。
ぜひともあなた様へ恩返しをさせてください」
娘のようすは、それはそれは必死でした。、
瑠璃のような瞳を見開いて、まるで木こりを逃がさぬとばかりに言いつのります。
その剣幕に気おされて、木こりはうんうんとうなずきました。
「おう、おう。そこまで言うのならしてもらうとしよう」
木こりがそういうと、娘は先ほどまでつり上げていた目を戻し、まるで花が咲いたような笑みを作りました。
それを見て、木こりはまたもやどきっとしてしまいます。
「はい。では、あなた様の身の回りのお世話をさせてください。
飯炊きから風呂掃除、夜伽のお相手まで何なりとお申し付けください」
学のない木こりには、夜伽というのが何かわかりませんでしたが、この娘があまりに熱心なので思うようにさせることにしました。
それに、こんなきれいな娘が自分の世話をしてくれるというのを断るほど、木こりも馬鹿ではありません。
「おお、それはありがたい。んだら、おいらの家に案内しよう」
「はい。わたくしは海姫といいます。不束者ですが宜しくお願い致しまする、お前様」
不束者という言葉も、木こりにはよくわかりませんでしたが、気にしないことにして木こりは娘と家に向かいました。
こうして醜い木こりは、ひょんなことから美人の娘と一緒に暮らすことになったのでした。


95 :山姫と海姫:2010/05/11(火) 21:36:59 ID:9ITSh+D9
さて、醜い木こりと海姫と名乗る美しい娘が共に暮らし始めて、一月が経ちました。
海姫は木こりに負けず働き者でした。
朝は早くから起きて木こりの飯を作り、夜は遅くまで木こりの着物をつくろって、かいがいしく尽くすのでした。
木こりはそんな海姫を見てありがたく思う一方で、自分のような男にこんなに尽くしてくれる海姫に悪いような気もしました。
そんなある日の事です。
仕事を終えて帰った木こりは、海姫の作ったご飯を食べながらこう言いました。
「海姫や。明日は薪を売りに町に行ってくる」
「左様ですか。頑張ってくださいまし、お前様」
「そこでじゃ。あんたは隣の国から来て、連れとはぐれたんじゃろう。
向こうもあんたの事を探しとるはずじゃ。
どうじゃ。おいらと一緒に町でおまえの連れを探してみぬか」
木こりが言うと、海姫は興味がなさそうにこう言いました。
「いえいえ。もはや連れも諦めている頃でしょうし、お気づかいは無用です」
「それならば、尚更お主の連れを探したほうが良いじゃろう。
あんたにはずいぶんと助けてもらったし、おらも恩を返さにゃあならぬ」
木こりは海姫を心配して言ったのですが、海姫は血相を変えて言い返します。
「そんなことはありませぬ。
わたくしがお前様に受けたご恩は、たった一月では到底返せぬものにございます。
どうかそのような事をおっしゃらないで下さい」
海姫は木こりの右腕を胸に抱き、目に涙をためて訴えます。
その姿はあまりにも健気で、木こりは自分の言葉を悔やみました。
「ああ、これは悪いことを言った。すまなかった。
二度と言わぬから許してくれ。このとおりだ」
木こりは座ってもなお大きな体を折り曲げ、海姫に頭を下げました。
「いえ。わかって下さればよいのです。
これからもお世話をさせて下さいな、お前様」
機嫌を直した海姫は、再び木こりの腕をとって嬉しそうにささやきました。
それを見て、木こりの鬼瓦のような顔を朱に染めてうつむきます。
「そそ、そういうわけじゃから、明日は留守を頼むぞ」
「かしこまりました。お前様のお帰りを、海はお待ちしております」
海姫は、まるで熱に浮かされたように語りかけます。
頬を朱に染めて、目元をとろかしたその顔は、何ともいえぬ色香に満ちています。
木こりはこれ以上この顔を見ていると、海姫と間違いを犯しかねような心地になりました。
そして、あたふたしつつも海姫をやんわりと引きはがし、いつもより早く床に着きました。

木こりが寝入ってからしばらくした頃、海姫はふすまを開けて寝ている木こりの下へ来ました。
地鳴りのようないびきをかいている木こりの顔を、海姫は愛しそうになでます。
すると、海姫は木こりの顔を撫でていた左手を、自分のまたぐらに差し込みました。
内股からくちゅくちゅと水音がひびき、海姫はうっとりとした顔になります。
「ああ、お前様。お前様。
私の国には、お前様のような偉丈夫はおりませんでした。
海はお前様が、愛しくてなりませぬ。」
更に激しく指を動かし、海姫は身をくねらせてあえぎます。
「あ、ああ、お前様っ。気をっ、気をやってしまいますうっ」
海姫の左手はとどめとばかりに、上に下にと激しく動かしました。
「ああっ。おっ、まえっ、さまっ。ああああっ」
木こりを呼びながら、海姫は達しました。
そしてぐったりと木こりの体にもたれながら、幸せそうに呟きました。
「お前様。国許の従者など、探すには及びませぬ。
海はお前様とこうして暮らすことが幸せでございます。
他には何もいりませぬ」
海姫はそういうと、後始末をして自分の部屋に戻っていきました。