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449 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 10:16:49 ID:USB98JEl
こんばんは、大変時間がかかってしまいましたが無事にショタヤンデレ作品が完成しましたのでさっそくですが
投稿します。
 ショタヒロインに関して貴重なご意見を頂けて大変嬉しかったです、どうもありがとうございました。
 それでは始めます、一応ショタとグロ、そしてインチキ時代劇注意です、長くなりますがご覚悟を…。

 「月輪に舞う」①

 …あらあ、兄ちゃんここいらじゃ見かけない顔だわね…いやいやあ、こんな狭めー村じゃあよその人なんて一発で解っちまうからよお……そんで、今日は何かい?こんな山奥の村の、よりにもよって居酒屋によお…へえ、学生さんで、こんなところまで民俗学の研究ってかい…。
 そんで…昔話?そんなモンを調べてんのかい?…いいぜえ、んならおらっちさが教えてやっからよお…。
 …これはむかーしむかし、まぁだ織田信長がガキ大将をしてた頃…そこの筑摩山に、忍者の里があったころのお話でよぉ…。

 …空からは大粒の雪が降っていた、まだ季節は神無月の初旬であるというのに…。
 男は走っていた、といってもただあてもなく走っていたわけでもない、久々に仕事を終えて久々に里に帰るために走っていたのだ。
 「寒いな…全く…」
 男の口からはそんな言葉が漏れた、無理もない。時刻は丑三つ時、さらに雪が降っていると言うのに男は傘もかぶらず薄い綿入りを着ているだけといった格好で、更に汗で髪と、眼帯と顔を濡らしながらもすさまじい速度で街道を走っているのだ。
 普通の人間ならばこの季節柄、凍傷…最悪凍死しまってもおかしくないだろう。しかし男は普通の人間ではなかった。
 男の生業は忍者だった、しかもただの下忍ではない…里の土地柄ゆえか活動範囲こそ限定されてしまっているが、それでもそこそこ名の知れた流派の腕扱きとして、たった今まで任務をこなして…やっと里に帰ろうとしたときにこんな目にあってしまったのだ。 
 「今日はついていないな…本当に…」 
 そういいながら男は立ち止まると街道の右側にある山の獣道に向かって走り出した…獣道をまっすぐ入り、そのまま山を二つ越えれば男は見事里の家に帰れるといった具合である。
 (二刻ほど掛かるかな…早く帰らねば本当に風邪を引いてしまう)
 男はそんなことを考えながら懐かしい故郷の山道の土を踏みしめて…ふと異変に気づいた。
 臭い…何かが匂う…それも普通の糞尿の類の匂いではない、これは…人間の血糊の匂いだ。
 「…死体か?」 
 男は呟いて辺りを見回した、訓練された目はこんな夜道でも梟のごとくものを見ることが出来るのだ。
 男は視線を周囲にめぐらし…自分の横にある大木の下に目を向けた。
 そこには一人の…裸の人間が横たわっていた。まだ雪が降り積もっていない分熱を帯びているようだ…辺りには衣服が乱雑に散らばっており、血の匂いもそこから漂っている…。
 「…生きているのか?」
 倒れこんだ人間にそう男が尋ねた瞬間、背後にまばゆい光が迫った…。



450 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 10:19:24 ID:USB98JEl
「月輪に舞う」①

 「水雲さま!帰ってこられましたか!蓑虫は嬉しゅうございますぞ!!」
 男…水雲が背後に振り向くと、そこには提灯を持った初老の…隻眼の男
が立っていた。
 「…何だ、蓑虫か…驚かすなよ…」
 「へへぇ…すいやせん…」
 そういって蓑虫は顔をくしゃくしゃにして微笑んだ…その手には蓑と傘、更に
はかんじきと酒徳利までもが握られている…どうやら帰るのが遅い自分を心配して
迎えに来てくれたようだった。 
 「出迎え有難う…ところで蓑虫、少し提灯を貸してはくれぬか?」
 「へえ?いいですが一体何を?」
 「…あれだ」
 そう言うと水雲は蓑虫から提灯を受け取り、大木の根元を照らした。
 「…こりゃあ…死体?ですかい?」
 「いや…息があるな……これは」
 水雲はそういいかけて…息をのんだ。
 根元に横たわっていたのは少年…いや、少年だった、と言うべきか…
その見た目は少年と言うにはあまりにも美しすぎた。
  …まるで雪と同化したような真っ白な肌と髪、そして少女のように
整った顔立ち…そして前文全てを否定するかのように股間に生えた可愛らしい一物
…脱がされた服と、下腹部の出血から考えれば乱暴され、そして口封じがわりに刀で斬られた
のは明白だったが…その光景さえも美しく感じるぐらいに少年は魅力的な…まるで、妖気を放っていた。
 「うう…」 
 光に反応したのか、少年は弱弱しい声を上げる…そのわずかに見開かれた目と、紫色の唇は…。
 …どういうことだコレは、俺は狸にでも化かされているのか?…コイツは、コイツは一体?…。
 「…鬼灯…」
 「ひ…ひい!いけません水雲様!すぐお離れください!こいつはきっと妖の類です!…でなければ
あんな、ほ、鬼灯様のような顔は!」
 後ずさる蓑虫を、水雲は睨み付けた。
 「・・・蓑虫、少し黙れ」 
 その目は普段の穏やかな水雲の目ではない、近頃関八州を騒がせる忍…天目水雲の目だ。
 そういうと水雲は蓑虫に手を差し出した、蓑虫は事情を察してすぐに酒徳利を手渡す。
 水雲はそれを手に取ると口に含み、少年のそばに寄ると、酒を傷口に吹き付けた。
 「…ぎああああああ!!!」
 少年はまだそれほどの力が残っていたのか甲高い絶叫を上げる、水雲はついで懐にしまった
路銀代わりの絹糸を取り出し、持っていた針に糸を通す。
 「…助けるのでございますか?水雲様?」
 「ああ、このままほおっておいたのでは気分が悪い」 
 そう言うが早いか水雲は絹糸で少年の傷口を仮縫いして、自分の着ていた綿入りを着せ、蓑虫
の持ってきた傘と蓑を被せた。
 「これを飲め…体が温まる…」
 「う…あう…」
 「もう大丈夫だ、お前は必ず助かる」 
 水雲は普段の柔和な顔でそう呟きながらかんじきを履いた。



451 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 10:24:59 ID:USB98JEl
月輪に舞う」①

 …これは、やはり神様仏様が下された罰なのか…?。 
 …少年を担ぎ、少年を気味悪がる蓑虫を連れて里に向かって走っている間
水雲はずっと考えていた、背に担いだ少年は微弱ながら脈もあり、声も上げ
られる、急いで里に帰れば命は助けられるかもしれなかった。
 しかしその少年の容姿は…あまりにも似ていた、いや…瓜二つだった…
まるで金型で鋳造したかのような容姿…そして、よくよく見ればその姿は…
白子(アルビノ)というところまで全く同じだった。
 …水雲、好きだよ…そう、今にも少年は自分にそう呼びかけてきそうな気がした。
 「…馬鹿な事を考えるな、こいつは鬼灯ではない…」
 水雲はそう呟いて自分の考えを否定した…そう、こいつは鬼灯ではない、彼女はあの
日死んだのだ…だから、そんなことはもうあるわけがないのだ…。
 水雲は動揺する心を必死に押さえつけて二つの山を越え、やっとの思いで筑摩の里に
たどり着いたのはやや空が白くなり始めた頃だった。

 筑摩の里は周りを山野に囲まれた小さな小さな村である、しかし塩が取れないと言う
事情からか物流は行われ、人の行き来は常人が思うよりは多少はある…忍者を育成する
のに適した、それでいて程よい閉鎖環境を保っている村だった。
 「先生!起きてくれ!頼むから起きてくれ!!」
 明朝、朝一番に筑摩の村の診療所に乗り込んだのは水雲だった。
 水雲はまだ鶏が鳴く前に医者をたたき起こすと、すぐさまに少年の怪我を直すように頼み込んだ。
 そしてそのまま家にたどり着くと、水雲は死んだように眠った、実際二日も目を覚まさなかった
ので蓑虫は本気で水雲が死んだのではないのかと心配したくらいだった。

 「…遅れましたが報告終わりまして、以上にございます」
 そして二日後、水雲はすぐ様に飛び起きると里の長に仕事の報告をした
かりにも水雲は里でも腕扱きの忍…筑摩七本槍の四位である。これを三日も
怠って臥せっていては七本槍の名が泣くだろう。  
 「ご苦労であったな…時に水雲よ」
 「はっ…何でございましょうか?」
 「某はあの山で…鬼灯に似た少年を拾ったそうだな」 
 「はっ!」
 「…陰間にでもなるつもりか?」
 ぎりりと、水雲は唇をかんだ…。
 「いえ…そんな気はありませぬが、どうも罪無き手負いのものは頬って
はおけないゆえ…怪我が治ったらば、事情を聞いて元居た所に帰そうかと…」
 「ならばよいがな…お主は里の宝故…間違いがあってはいけぬのでな」
 「…ありがたきお言葉…ではこれにて」
 内心苦々しい顔のまま、一礼をして水雲は里長の屋敷を後にした。
 「鬼灯のことは忘れるのだ…」
 里長の言葉はどんな攻撃よりも、水雲の心を傷つけた。



452 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 10:27:04 ID:USB98JEl
「月輪に舞う」①

 鬼灯を忘れろ、か…よくも言えたものだな。そう内心をいらいらさせながら
も水雲は家に帰り、蓑虫の用意した茶漬けを食い、そのまま診療所に向かった。

 「経過は良好だがな…どうにも人を怖がってかなわん…」
 ため息をついて医者はそういった、もともと子供好きな男だったのだが、少年
には全くなついてもらえず、さらに自分を見ておびえられるという行為には耐えられなかったようだ。
 「それで今、あの少年はどこに…」
 「縁側で日向ぼっこをしているよ…しかしあの年で乱暴されて斬られるとは…不憫だな」
 「…全て時代が悪いのですよ、それ一言で飲み込みたくは無い言葉ですが…失礼」
 そういうと水雲は土間から診療所に上がり、縁側に向かった。

 少年は縁側にたたずんで、飛んできた鳥と戯れていた、白子、と言う見た目と少女のように整った
顔はまるで風景を一枚の絵に変えていくようだった。
 「…調子はいいようだな」
 「…っ!!……あなたは…」
 少年は水雲の声とともに竦み、びくりと体を震わせたが…その顔を見るなり、まるで地獄に仏、と
いったような笑顔で水雲に微笑み返した。そして立ち上がると水雲にぺこりと頭を下げた。

「私のようなものの命を助けていただいて…本当に有難うございました…貴方がいなければ、僕はあ
のまま死んでいたでしょう…本当に何度お礼を言っても言い足りないぐらいです…有難うございました」
 「いや…例には及ばない、狭い里だがゆっくり休んでいくといい…怪我が治ったら元居た場所に送り届けてやるから安心しなさい」 
 「…お優しいのですね、有難うございます…」
 忍びの性か、声や顔には出さなかったが水雲は大きく動揺していた、少年の凛、とした声は、そして笑顔はまるきり鬼灯と同じだった
のだ…このまま押し倒したい、着物の襟から除く少年の白い首筋を見ると、水雲はそんな感情を抱きはじめ…また必死にその感情を抑えた。
 「…しかし、申し訳ありませんが、自分には…もうきっと帰る家はありません。野党に襲われて…家は、屋敷は焼かれました…父様も、母様
も…生きているのかは怪しいものです…それに、家に帰っても…白子の自分は…」
 座敷牢くらいしか居場所は無い、そう言いたいのだろう…この地方では白子は福を招く富の象徴だ…箱入りで閉じ込めて大切にはされるかも
しれないが、人並みの幸せは与えられない…きっと少年を襲った連中もそのご利益だのといったくだらない理由で少年を犯したのだろう…と、なんとなく想像がついた。
 それに少年がそういう身の上かもしれないことはうすうす気づいていた…もちろんその場合の返答も…苦心はしたが、考えてはいた…自分はもう二十歳で、さらに里
で責任ある立場にいるのだ、拾った孤児を放り出すのは恥だ…取るべき責任はきちんと取るべきだ。
 怖がらせないように笑顔でそっと、そしてやさしく、水雲は少年に声をかけた。
 「ならばうちに来るといい、ちょうど小間使いが欲しかったところだ…うちで使ってやろう…」
 「…迷惑では、ございませんか?こんな、私のようなものなど…」  
 「迷惑などではないさ、それにこの村の住人もいい奴ばかりだから安心するといい…きっともう、つらい思いをする事はないだろう」
 「う…う、うああああああ!!!ありがとうございます!ありがとうございますぅううう!!!」
 少年は大粒の涙を零すと水雲に抱きついた、乱暴された記憶からか、男を見て怯えるという症状を起こしていたのが嘘のように、ぎゅ
っと強く水雲を抱きしめた。
 「…大丈夫、もう大丈夫だ…」
 そういって少年を抱きしめ返す水雲の心境は複雑なものだった。あまりにも鬼灯と同じ外見を持った少年は…どれほど心で否定しても、水雲
のその心を惑わせるものでしかなかった。
 …怖いよ、水雲…怖いよ…
 少年の柔らかい肌…その感触で記憶が蘇る、初めて鬼灯を抱いたあの日の記憶が…。
 「私の名は…天目水雲…お前の名は?」
 「弧太郎…弧太郎と申します」
 悲劇は、このときにもう始まっていたのかもしれなかった…。



453 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 10:28:19 ID:USB98JEl
月輪に舞う①

 それから二週間ほど時が流れた、弧太郎はある程度心の傷が癒え始めたのか、水雲以外の他の男を見ても
あまり怯えなくなってきた…。
 弧太郎は村人たちとの交流も上手くいっているようだった、同い年の子供たちも始めはよそ者とあって近寄り
がたいようだったが…それでもその人をひきつける容姿と優しい性格から打ち解けあい…やがては鬼灯の亡霊と
気味悪がっていた村の大人たちとも交流が出来るようになっていった。
 「蓑虫様、それではそろそろ出かけましょう!」
 「あいさあ!それでは早速行きましょうか!」
 蓑虫も例外ではなかった…早くに子を失い、熱病で枯れたこの男もまるで
孫が出来たかのように弧太郎を可愛がってくれた。
 「…よかった、本当に…」
 水雲はほっとしていた、もしも弧太郎が皆と上手くいかなかったらどうしよう
かと思っていたが…どうやらそのような心配は要らないようだった、まあ…しかし今一番の問題は…。
 「よお!弧太郎ちゃん!釣りに行くなら俺も…うわっと!!!」
 玄関から盛大に転ぶ音が聞こえる、妖気に弧太郎に声をかけるこの男は名を冬士郎といった…男が転ぶ
理由はただ一つ、男も水雲と同じ筑摩七本槍の上…片目を眼帯で覆っているからだ。
 「馬鹿だねえアンタ…ねえ水雲、あんたもそう思わないかい?」
 そしてその背後にもう一人、やはり眼帯の女が立っていた。
  「門女まで…一体どうしたんだお前ら…?」
  「っつ!どうしたもこうしたもないさ…弧太郎が釣りにいくって言うから俺も一緒に行こうと思ったのよ!」
 「…そうか、人気者なんだな…あいつは…よかった」
 「ああ、人気者だよあの子は…化粧もよく似合うしねぇ…ふふふ」
 そういって笑う門女と冬士郎の笑顔を見て水雲は笑った…。
 「しかし、遅かったな冬士郎…弧太郎なら今さっき蓑虫と沢に向かっていったところだぞ」
 「何ぃ!早く言えよ!じゃあな!」
 水雲と門女は急いで駆け出す冬士郎の背中を見送った。
 「…しかし不思議だねえ、鬼灯の実の兄貴だったアイツが…あんなにもあの子と遊びたがるなんて」
 「…それをいうなら、鬼灯と許婚の俺はもっと不思議と言う事になるな…ところで門女」
 「ああ、私もあの子と遊びたいのは山々だけど…アンタに用があったんだよ、はい!」
 そういうと門女は懐に持っていた札を水雲に差し出した、真っ赤に塗られた札には、甲斐という文字が書かれている。
 「…仕事か、今度は甲斐の国とは…長くなりそうだな」
 「ああ、そうだろうね…」
 「冬士郎共々…弧太郎を頼むぞ…色々と、な」
 「任せときなって、それよりあんたも…生きて帰ってくるんだよ、弧太郎ちゃんが悲しむから」
 「ああ…それから」
 水雲は門女の言葉に安心すると、身支度を始めた。
 赤札は暗殺の印だ、詳しい情報は甲斐にいる草の者にでも聞けば解るだろう…。
 「あの子は何が何でもこの世界にかかわせないでくれ…頼むぞ」 
 「…任せときな…」
 水雲にとって一番の心配事、それはやはり…弧太郎がこの忍の世界にかかわる事だった。



454 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 10:29:56 ID:USB98JEl
月輪に舞う①

 翌朝、水雲は泣きじゃくる弧太郎をおいて村を出た、名残惜しかったが仕方のない事ではあった。
 いかないでくださいませ!水雲様…そういう小太郎を振り切って、水雲は甲斐の国へ向かった。

 休息が終わり、任務に戻れば日々はまたいつものように殺伐としたものだった。
 今回の仕事は近々行われる戦の情報収集というものだった、水雲は主に的に作戦を傍受してそれを伝え
さらに作戦に重要な指揮官を暗殺してくる任務を負わされた。
 普通の忍なら甲斐お抱えの根来衆の目をくぐって諜報活動をするのは至難の技だろう、しかし水雲には
それを可能にする特殊能力があった。
 水雲は甲斐の陣よりやや離れた森にいた、見回りの来る心配のないそこで深呼吸をすると水雲は片目を
覆う眼帯を取った…象牙で出来た眼帯の下には、大きなくぼみと…青い義眼が埋め込まれていた。
 青い義眼は筑摩の里の秘法…忍術を使える者にのみ与えられる証明だ…そして水雲の忍術は…一瞬にして
背景と自分とを同化して、視覚と聴覚、さらに嗅覚から自分を消し去るというものだった。
 (いっそ任務も俺のように消え去って、早く里に帰れればいいのにな…)
 敵たちの横を悠々と通りながら水雲はそう考えた…早く帰って弧太郎に会いたかった…。

 その頃、弧太郎は一人深夜の神社に御参りに行っていた、俗に言うお百度参りというものである…
願いはもちろん、水雲が無事に帰ってくるように…それだけだった。
 (水雲さま…生きて、帰ってきてください…)
 弧太郎は無心に祈っていた、自分の命の恩人の生還を…それはもちろん救ってもらった恩義もあったが
弧太郎はそれ以上に一刻も早く水雲に会いたかった…会って、何時もの笑顔を浮かべたまま、自分をやさしく
抱きしめてもらいたかった…。
 まだまだ子供とはいえ…弧太郎は水雲に対して淡い恋をしていたのだ。
 「水雲さま…弧太郎は、早く会いとうございます…」
 「そうか、それほど会いたいのか…ならいい方法を教えてやろうか?」
 背後からいきなり声をかけられて弧太郎は一気に後ろに振り向いた。その先には
…眼帯をした老人がいた。
 「何者です!?」
 「安心しろ、わしはこの村の者だ…」
 老人はそう言うと微笑んだ、そしてこう言った。
 「水雲に会いたいのなら忍になれ、さすれば嫌でも一緒に仕事をすることになるだろう
…それに、あの男の役に立ちたいとは思わんか?」
 「…役に、立つ…」
 その言葉に、弧太郎は悩んだ…今こうしてあの人の帰還を望むだけでいいのか、恒にそう
も考えていた彼にとっては…老人の言葉は渡りに船、といった所だった。
 目の前にいる笑顔の老人の正体がこの筑摩の村の長であるという事も知らずに…。 


455 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 10:31:54 ID:USB98JEl
月輪に舞う① 

 それから半年後、やっとの思いで任務を終えた水雲は一刻も早く帰郷するべく、筑摩の里への山道を
凄まじい速度で上っていた。
 その背には大きな風呂敷包みがある、中には露店で買った弧太郎へのお土産が山ほど詰まっていた。
 (弧太郎、喜んでくれるといいのだがな…)
 と、顔をにやつかせながら走る水雲の前に、白い影が現れた。一瞬で立ち止まって身構える水雲。
 「山河と筑摩…その意は」
 白い影はそう訪ねた、夕暮れ時の山道で顔はよく見えないが…これは筑摩の里特有の、確認の合図だ…
水雲は答えた。
 「ただ一人、月輪に舞う…」
 「水雲様!!帰ってまいられましたか!!」
 白い影はそう言うと、水雲の胸に飛び込んだ…その小さな姿、そして香る少女のような匂い…間違いない…
コイツは弧太郎だ…。
 「ああ…さびしい思いをさせてすまなかったな、弧太郎…」
 「嬉しゅうございます、手も…足もある…ぐ・・・ぐず…」
 弧太郎は水雲の胸で泣きじゃくった…無理もない、半年も文もよこせずに任務に没頭していたのだ。
さぞ寂しかったのであろう…やはりこう言う所は鬼灯とは違うのだな…だが、それでいい…。
 そう考えて…ふと、感じた違和感を拭うため、水雲は一気に弧太郎を押し倒した。
 「うわ!!ああ!!水雲様…何を…!?」
 水雲は一気に弧太郎の服の胸元をはだけさせる…そして、白い肌とともに現れたあるものに、水雲は愕然とした。
 「……お前、忍になるのか?…誰に技を教わった!?」
 「は…はい…まだまだ至りませんが…蓑虫様に…」
 弧太郎は少し嬉しそうに、顔を赤らめながらも答えた…。
 「里へ帰る!帰るぞ!!」
 水雲はそういうと、凄まじい速度で山道を駆け出した、そんな態度に弧太郎はきょとんとしながらも…
衣服の乱れを直し始めた。

 弧太郎は嬉しかった、水雲は自分の変化と…服の下に隠れた…稽古の後の痣に気づいてくれたのだ。
 きっと水雲は驚いて、嬉しさで言葉も出ずに走り出してしまったのだろう…そう考えた。
 …恥ずかしがり屋なのかな…でも、こうして水雲様に…思ってもらえているというのは…悪くないなあ
・・・でもどうしたんだろう、いきなり僕の裸を見て…興奮したのかなあ?…そうだったら、少し嬉しいな…。
 弧太郎は気づいていなかった、水雲の顔が完全に青ざめていた事に。

 「お館様!これは一体どういうことでございますか!?」
 水雲は一気に里の館に向かうと、任務の報告もそこそこに里長に事を問いただした。
 「どうもこうもない…あのものは忍の素質があるでな、わしが蓑虫に育てるように命じた」 
 「…里の秘法を、部外者に教えるということは…」
 「これは里の総意だ、そのような小さなことはどうでもいい…それにお主も見ておろう、弧太郎は
この半年で…蓑虫の攻撃全てを交わし、反撃を二手三手いれるほどになったのだぞ…あの実力は素晴らしい
きっと鬼灯のように抜け忍などにならずに…里の反映に手を貸してくれようぞ」
 …水雲はぎりぎりと、歯をかみ締めた…。 
 最も起こってはいけない事が起こってしまったのだ。


456 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 12:27:01 ID:USB98JEl
月輪に舞う①

 弧太郎は戸惑っていた、あれから数日の間、水雲はまるで口も聞いてくれないのだ。
 「水雲様…今日は、蓑虫様ではなく、水雲様に術を教えていただきたいのですが…」
 「成らぬ、師が二人つく事は里の掟に反する」
 そういって昼ごろに起きると、いつもどこかにふらふらと出かけてしまうのだ。
 …やはりまだ自分は半人前故に、厳しくしてくれるのかな?…弧太郎はそう考えた
それはある意味いつか自分を認めてくれるのだろうという期待に繋がった…。 
「行きますぞ!弧太郎様!」
 蓑虫は師として厳しく、時には何時ものようにやさしく弧太郎に師事した、水雲の
任務に比べれば軽い仕事なども任されるようになった。
 泣きたくなるような日もあった…そして、時に人も殺した…それでも、この行いが
いつの日か水雲への恩返しに繋がるのなら…そう考えた。

 「もう…駄目なようだな…あれほどの才能が有れば…今夜辺りには…」
 「ごめんね…水雲…私、力になれなくて…」
 そんな様子を門女と共に影で眺めながら、水雲は涙をこぼした…。
 「…そうではない、あれほどの才能があれば里の忍は誰も放ってはおけないさ…でも
でも俺は…あの子に…なんて事を…」
 「…ごめんね、ごめんね…私が悪いんだ…鬼灯の時だって…私が…」
 「…いうな、かどめ…うう、うう…」
 二人は抱き合って、泣いた。


457 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 12:31:18 ID:USB98JEl
月輪に舞う①

その晩、弧太郎は蓑虫に里の近くを流れる渓流に呼び出された…奥義の伝授、そういう話だった。
 「あ…蓑虫様…」
 弧太郎は影から音もなく現れた蓑虫のその格好に驚いた…服は黒の忍服、鉄鋼と脚半を装備した
その姿は…まるで修行ではなく、本当の任務に向かうときのような服装だったからだ…。
 「…先手は譲ろう…来い、弧太郎!!」
 「は、はい!!」
 言うなりいきなり抜き身の刀を渡すと、蓑虫は後ろを向いた。
 「こ、これは一体…」
 「この里では奥義の伝授は…師を殺して初めて行われるのだ!!…水雲と並ぶ実力が欲しいの
ならば…ためらわずに来い!!」
 「う…うおおおおお!!!」
 蓑虫の声はぞっとするほど冷たい…しかし…ここまで来て、ためらうわけには行かない…そう
弧太郎は…水雲の手助けをするため…そのために忍になったのだ。
 刀を水平に構えて、一気に蓑虫の背後に迫る。しかしそうもうまくはいかない、蓑虫は軽く
その攻撃を受け流すと、後方に弧太郎を弾き飛ばした。
 「ぐう…っつ!」
 倒れこむも一気に飛び起きて襲い掛かろうとする弧太郎、しかし眼前に蓑虫の姿はなく…いや、
その姿は上空にあった…蓑虫は服の袖からは黒い縄が四本、まるで触手のように飛び出していた。
 蓑虫の術は袖から出した縄をまるで本当の腕のように使う、といったものだった・・・伸縮自在な上
にまるで鉄鞭のような硬度を持ったそれでいっぺんに叩かれては、普段の練習とは違い…弧太郎の肉
は簡単に裂けてしまうだろう。
 ヒュ!!ヒュ!!!ビシイ!!!!
 凄まじい音が響く、しかし縄が叩いたのは蓑虫が手渡した刀であった。
 弧太郎は一気に後ろに飛ぶと、手に持っていた標で次々に三本の縄を切り落とす、これが弧太郎の
修行の成果だった。
 もちろんこんな芸当は水雲でも出来ない。
 「はあ!!」
 蓑虫は残った一本の縄で木に飛び移ろうとする、しかしその縄すらも切り落とされると…一気に地面
に落ちた、いや、叩き落された。
 「…ぐ、うう…」
 それほどの高さではなかったので何とか息はあった、しかし片手の骨が折れたようで…老体の蓑虫に
反撃は不可能なように思えた。
 「はあ、はあ…」
 その体の上に弧太郎が馬乗りになる、手には大きな標が握られていた…勝ちはもう決まっていた、しかし
弧太郎は…息を荒げたまま
刃を刺せないでいた。
 「どうした…やれんのか…」
 「…はあ、はあ…あなたをそう簡単に…出来るわけ…」
 「…やはりな、余所者の上に…陰間にはそのような根性はありはせぬか…」    
 「な…なあ!!!」
 まだ数えで11である弧太郎にとって…蓑虫を、水雲のいない間、まるで孫のように可愛がって
くれた蓑虫を本気で尊敬する弧太郎にとってその言葉は…ただただ動揺するしかなかった。
 「忍になって水雲の気を引きたいのであろう…しかし、哀れよ…愛するもの以外を殺す覚悟のない
お前には…陰間のお前には…水雲に愛される資格などは…抱かれる資格等はないわ!…あやつにとって
お前はただの…拾った子犬に過ぎぬ!!」

 弧太郎は動揺していた、訳がわからなかった。 
 何で、何でそんなことを言うのです…蓑虫様…僕は、貴方を尊敬しているというのに、水雲さまの次に
僕をかわいがってくれた貴方を…親同様に、好きだったというのに…わからない…なぜこの様な目にあうのか
人を愛するのがこんなにつらくて大変な事なのか…何故こんなにも苦しむのか…わからない、わからないわからない
わからないわからないわからない……うああああああああ!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!こんなことせずに…いっそ僕が…
でも…でも水雲様…僕は貴方の事が、僕は貴方の事が…ダイスキナンデス・・・オヤクニタチタインデス…ソバニイタインデス…ダカラ…
ごめんなさい、本当にごめんなさい…みのむしさま。
 「は…はははっ!!はははははははははははは!!!!」
 どすり!!と…笑い声と共に、弧太郎は標を蓑虫の胸に突き刺した。
 ぐう!と蓑虫が悲鳴を上げる。



458 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 12:33:33 ID:USB98JEl
「…お見事…もう、これで…水雲様の守護のお役目は任せられますな…弧太郎様…」
 そういうと、蓑虫は弧太郎の頬を優しくなでた…弧太郎はきょとんとする。
 「…貴方の実力なら…その覚悟がおありなら…たとえ子は宿せずとも、夫婦には
なれずとも…ずっと水雲さまをお守り出来ましょう…なに、元は里一といわれたこの
蓑虫を殺せたのです…しんぱいは…」
 「あ…ああああああ!!!いやだ、蓑虫様!!いやだああああああ!!!!」
 弧太郎は全てを悟ったのだ、蓑虫の想いを…しかし時はもう遅かった、蓑虫の呼吸は
次第に弱弱しくなっていく…その間、弧太郎には蓑虫とすごした日々の走馬灯が見えた
…たった半年とはいえ、彼との思い出は…弧太郎にとっては大切なものだった。
 そして数秒後、蓑虫の息は完全に途絶えた…。 
「ふ…ふふふ、あははっ!!ははははははは!!!あはははははははは!!!!」
 顔を血にぬらし、涙を流しながら笑う弧太郎…その背後に突如として篝火が現れ…
弧太郎の周りを七つの影が取り囲んだ。 
 「大儀であったな弧太郎…これでお前は晴れて筑摩の里の忍…それもその上の、筑摩七本槍
の七位の位が授けられようぞ…」 
 七つの影を引き連れて、弧太郎の眼前に現れたのはあのときの老人…この筑摩の里の里長だった。
 「…あなたは…そうですか、貴方が里長なのですか…」
 微笑む里長と、空ろな目と言葉でそれを帰す弧太郎…弱弱しいながらも弧太郎は里長にぺこりと頭
を下げる…その瞬間に、弧太郎は二つの影に両手を掴まれた。
 「悪く思うなよ、弧太郎…」
 影の正体の一人は冬士郎だった、冬士郎はそう耳元で呟くと、懐から竹筒を取り出して里長に渡した。
この筒を使って里長は継承儀式で師を殺した忍の目をえぐり…秘伝の義眼を埋め込む事で奥義を継承させる
ことでこの儀式は終了する…それが手順だった。
 「・・・・・・いえ、里長殿と、冬士郎様の手を煩わせるまでもありません…」
 しばしの沈黙の後、弧太郎はそういった…するり、と二人の拘束を解いて竹筒を里長の手から取り上げる。
 「これも、必要ありません…」
 ヒュ!という音と共に手刀で竹筒を割る。そして弧太郎はそのまま…人差し指を一気に瞼に当てた。
 これは罰だ、自分を大切にしてくれた人を殺した自分への罰だ。
 「ぐ……ぎああああああ!!!!」
 ブチュ!グチュ…血の音と共に甲高い声で悲鳴を上げながらも一気に目玉を引き抜く弧太郎…ひときわ
甲高い声を上げると同時に…目玉は弧太郎の手中に落ちた。
 「よろしい…それではこれからも…せいぜい…水雲と、筑摩の里のために働くがよいぞ、弧太郎」
 里長は弧太郎の目玉を受け取ると、それと引き換えに白い義眼と、象牙の眼帯を与えた。
 …弧太郎はそれを聞くとその場にへたり込んだ、里長と七本槍のうち四人はそのまま渓流を去り…
残りの二人…門女と冬士郎は蓑虫の死体を担ぎ上げて墓地へ向かう、そしてその後には…水雲と弧太郎
のみが残された…水雲はそのまま弧太郎を優しく担ぎ上げる。
 水雲は泣いていた…蓑虫を失ったという悲しみもあったが…それ以上に、これまでさせるまいと思って
いた弧太郎に…つらい思いをさせてしまったのが申し訳なかった。
 「私は…水雲さまを守ります…絶対に守ります…ふふふ、あははははは…」
 うわごとのように、こんな言葉を繰り返させるくらいに…弧太郎の心を追い詰めていた原因が自分にある
のが…とても悲しかった。
 「おしたい申しております…大好きです、水雲さま…」
 こんな自分でもなお、慕ってくれている弧太郎…水雲は、その弧太郎の姿をいとおしく思うと共に…それでも
鬼灯の事を忘れられずに弧太郎の気持ちに答えられない自分を恨めしく思った。 



459 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/11/26(月) 12:35:18 ID:USB98JEl
月輪に舞う ①

 それから二日の間、弧太郎は屋敷の自分の部屋にこもってしまい、たとえ水雲がなれない
食事をつくろうとも…部屋から出てこなくなってしまった…。
 三日目、水雲は意を決して弧太郎の部屋に飛び込んだ。
 「弧太郎…いい加減に飯を食わないと死んでしまうぞ…」
 炊いた粥をもって部屋に飛び込む。その先では痩せこけて青ざめた弧太郎が…抱きしめた布団
に何かを呟いていた。
 「…大好きですよ…すいうんさま…え、もちろんみのむしさまもだいすきですよ…うふふ…」
 心が壊れたのか…いたたまれない…そう思い、それでもあきらめきれない水雲は弧太郎を抱き
起こすと、その唇に口付けをした…それならば、せめてものこいつの願いをかなえてやろうと。
 「うわあ!…ん…ちゅ…はあ…」
 そのまま舌を口腔内部に侵入させる…唾液もほとんどなく、乾いたそこは甘い味がした。それに
あわせるかのように、弧太郎も水雲の舌に自分の舌を絡ませ…そのまま、長い長い接吻が続いた。
 「ん…水…雲さま…弧太郎は…弧太郎は…水雲さまを…愛しております…だから…」
 抱いて欲しい、そういうことなのだろう…水雲は無言で了承して、弧太郎の寝巻きを脱がせた。
 「あ…恥ずかしいです…」
 弧太郎はまるで少女のように胸と股間を隠す…そんなことはしなくても、何度となく見ているという
のに…水雲はその行為を微笑ましく思った。
 ……いや、違う…水雲は頭の中で浮かび上がる思考を必死に否定した…あの時も同じだったのだ…自分の
師を、祖母を殺して…自ら片目をえぐって儀式を終え…引きこもる鬼灯を抱いた日も…今日と同じこの日この季節…。
 「水雲さま・・・やはり、私は…男は…嫌いですか?」
 「そうではない、そうではないのだ…俺は、お前を…別の女と…死んだ許婚と…重ねようとしているのだ、そんな
俺にお前を抱く権利など…」
 肩を震わせる水雲、弧太郎はその体を優しく抱いた。
 「ふふふ…いいのですよ水雲様…私は…たとえ貴方が…貴方がどう思おうと…たとえどんな女性と私を重ねようと…
私は貴方を、愛しておりますから…」
 水雲は情けなかった、涙を流した…しかし、それでも、弧太郎が元気になればと…弧太郎を抱いた。

 「っ…痛くないか…弧太郎…」
 「はい…嬉しいです、嬉しいです…ん…ああ…うれしいです…すいうんさま…ああ!!」
 「…くう…は!あ!」 
 二人は同時に達した…事後…水雲は弧太郎にやさしく口付けをし、抱きしめ…明朝、里長の指令を受けて
奥羽に向かうべく屋敷を後にした。
 「もしもこの任務を断れば、弧太郎にはもっときつい任務を与える」
 里長はじかに水雲の前に現れてそういった…応仁の乱をとうに過ぎたとはいえ、まだまだ未開の地である
奥羽への遠征はたとえ水雲であってもそれなりに危険が伴うだろう…それでも、それでも水雲はたった一人
奥羽へ向かった。きっと弧太郎は悲しむだろう、でも…この指令を聞かねば、それだけはすまないのも事実だろう。
 (何があっても…俺は必ず守る、弧太郎を…この命にかけてでも…)
 水雲の決意は固かった…里を離れると言う事がどういう意味を持つ事なのかも考えずに。