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302 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:46:53 ID:ncgnUSHx
・・・え~っと・・・あれ?
目が覚めるとそこは不思議の国・・・ではなく誰かの家だった。
そう、僕は今まで誰かの家の誰かのベッドで眠っていたらしい。そんなバカな。
「あ、お兄ちゃん起きたの!」
「ん?恭子ちゃん?」
そっか、ここは恭子ちゃんの家だったのか。でもなんで恭子ちゃんの家に泊ったんだろう?
「もうすぐ朝ごはんができるから!」
恭子ちゃんは意気揚々と朝ごはんの支度をしている。
「いつもありがとうね」
「ど、どういたしまして///」
僕の言葉が余程嬉しかったのか、顔を朱に染める恭子ちゃん。
やっぱりかわいいな~・・・ん?『いつも』?
「あれ?恭子ちゃんはいつも僕に朝ごはんを作ってくれてたっけ?」
「何言ってるのお兄ちゃん?いつも私のごはんをおいし~って言って食べてくれてるじゃない///」
こうやってかわいくもじもじしている姿を見せられると、この疑問が些細なことに思えてくる。
そうだ、恭子ちゃんが毎朝ごはんを作ってくれる。これに何の不満があるっていうんだ。
僕は考えるのをやめた。
「そうだ、今日は天気がいいから二人でピクニックにでも行こうか?」
「いいの!?やたーーーーーー!!!!」
本当にかわいいな~・・・もはや何もかもどうでもいいな。
ベッドとキッチンが同じ部屋にあることも、そもそもこの家が1Kであることにも違和感を感じない。
「じゃあ今からお弁当も作るね!」
フフ・・・今日は楽しい一日になりそうだ。
だがそんな楽しいひと時も、悪魔の一言によって無に帰された。
「・・・何言ってるの慶太?これから魔物を倒しに行くんでしょ?」
陽菜が現れた。って、え?魔物?
「魔物って何?」
「・・・寝ぼけてるの?昨日『俺は魔王を倒す!!』って言ってたじゃない」
魔王?陽菜は何を言ってるんだ?もしかして頭でも打ったのか?
「・・・私ね、昨日新しい呪文を覚えたんだ~!慶太に試してもいい?」
陽菜がこんなことを言うときは、決まって僕がひどい目に合う。しかも想像以上に。
「・・・今思い出しました。昨日確かにそう言いました」
しかたがない。ここは陽菜の遊びに付き合ってあげるか。
「え~!?・・・ピクニックは?」
そんな悲しい目をしないで!ちゃんとその辺も考えてあるから!
「それじゃあ三人でその魔王とやらを倒しに行きますか!」
「恭子ちゃんも!?・・・危なくないかな?」
危ない?ま、まさか魔王ってギャングのボス的な人なのですか・・・?
「まかせて!私、これでもMPには自信があるから!」
MP?何の略だろう?MPMPMP・・・Murder Person!?殺人鬼!?殺人鬼には自信がある!?
「・・・MPがマジックポイントの事だって知ってるよね?」
「お兄ちゃんはMPの代わりにHPが高いからなるべく前線で頑張ってね!」
恭子ちゃんが恐ろしいことを堂々と言った。殺人鬼のヤンキー相手に前線で戦えと?
それにHPって・・・な、なんだか卑猥に聞こえ―――
「・・・いい加減にしなさいよ、慶太・・・本気で呪文を使うよ?」
なぜか魔王とか言う奴より陽菜さんの方が強そうな気がした。


303 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:47:23 ID:ncgnUSHx
三人で村を出て、ただっ広い草原(ってかここどこ!?こんな草原、見たことないよ!)を歩いていると何かが目の前に飛び出してきた。
青くてとんがっている生き物。なんだコイツ、気持ち悪いな・・・
「スライムだ!」
「早くやっつけてよ慶太!」
えっ!?僕がこんな得体も知れない生き物を倒せと!?動物保護団体から何か言われません!?
だが僕の心配は無用だった。
なぜならその生き物が突然体当たりをしてきたのだ。しかも半端ない威力で。
「うぼぉあっ!?いってーーーー!!」
あまりの痛さにのたうち回る。格好悪いのは分かっているけど、痛いものは痛い。
「・・・慶太に・・・何すんのよ・・・」
僕の情けない姿に腹が立ったのか、陽菜は黒いオーラを漂わせ始めた。
「・・・(ブツブツ)・・・死ね」
陽菜が意味不明の詠唱を唱え終わると、さっきまで暴れ回っていた生き物がピタリと動きを止めた。
一応男の僕がまだ痛みのするお腹をさすりながらそいつに近づいて行くと・・・なんと目を開けたまま絶命していた。
え?でもさっきまで元気に暴れていたはずじゃ・・・?
「どうだった?私の呪文の威力は?」
どうやら陽菜が呪文とやらを使い、一瞬でコイツの息の根を止めたらしい。ま・・・まさかこれをさっき僕に・・・?
「どうしたの?なんだか顔が青ざめてるよ?」
当然だ。むしろなぜ陽菜や恭子ちゃんが驚かないのか不思議だ。
「お兄ちゃん、お腹大丈夫?」
恭子ちゃんはスライム(?)の事よりも僕の事を心配してくれた。いや・・・僕よりあの生き物の方が大丈夫じゃないんだけど・・・
「あぁ、俺は大丈夫だけどアイツが・・・」
「スライムの分際でお兄ちゃんに攻撃したんだから、これくらいは当然の報いだよ!!」
まだ物足りないと言いたげだ。僕に対しての危害はそんなに重罪なのか?
その時、またもやあの生き物が飛び出してきた。
だがよく見るとさっきの奴よりは少し小さい。もしかしたらアイツの子供なのか?
そう思うと僕がやってないにしろ、親を殺してしまったという罪悪感が沸いてきた。
「君はさっきの奴の子供なのか?」
「キキー!!」
言っている事はまるでわからないが、怒っていることだけははっきりと感じ取れた。
やっぱりそうだったのか・・・
「ごめんな?謝って許してもらえるとは思わないけど、本当にごめん・・・」
そいつが僕を殺したいなら、そうさせるべきかもしれない。
だから今こうして僕に飛びかかってきているが、僕はあえてそれを受けることにした。
しかし、そいつの怒りの攻撃は僕に届くことはなかった。
「またお兄ちゃんに攻撃するつもり!?もう許さない!!・・・遺悪!!」
恭子ちゃんが叫ぶと同時に・・・そいつの体は木っ端みじんに砕け散った。
そいつの体液だろうか、辺り一面が青色に染まる。
その光景を見た僕は、体の震えを抑えるのに必死になった。これは怒りで震えているのではない。
・・・陽菜だけじゃなく・・・恭子ちゃんまでも・・・
それはこれまでに感じたことのない恐怖心から来るものだった。
「さっきから何突っ立ってるの?早く次の町に行こうよ♪」
「次はお兄ちゃんの戦闘がみたいな~」
一言だけ。たった一言だけでいいから叫びたくなった。
お金を払うから僕をお家に帰してください、と。


304 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:48:15 ID:ncgnUSHx
僕たち三人は一日中歩きとおして、ある城下町にたどり着いた。
時間にして10時間以上も歩いたはずなのに、陽菜と恭子ちゃんが平気なのはなぜ?それに比べて僕の足がパンパンになってるのはなぜ?
「も~慶太ったら・・・運動不足?」
10時間も歩くことができた僕に対してかける言葉がそれ?昼ごはんすら食べずに歩いたんだよ?
「私に任せて!回復呪文で癒してあげるから!」
あ、それは遠慮しときます。間違って僕の足が吹き飛んだら痛かったじゃ済まないからね。
「それより・・・何か食わないか?僕がお金を出すから」
そう言って財布から1000円札を出すと、二人は怪訝な顔をしてきた。
「・・・何それ?」
野口英夫さんに対して指を指す陽菜。
1000円じゃ足りないってのか!100円○ックでハンバーガーを9個買って、一人三個づつ食べればいいじゃないか!
「これお兄ちゃんが描いたの!?上手だね!」
・・・恭子ちゃん?天然キャラを作ってるんならそれはちょっとやりすぎだよ?
「とにかくご飯を食べるにしても、今私たちは50Gしかないから・・・宿代を除くと5Gしか残らないんだよね」
どこから出したのか、陽菜の手には金貨が乗っていた。
「ちょ、それどうしたの!?」
「どうしたのって・・・ここに来るまでに倒したスライムから奪ったに決まってるでしょ?」
恐ろしいことをさらりと言いのけた。つまりは殺して強奪したって事?
「どうします?もう一度草原でスライム狩りをしてお金を稼ぎます?」
限界だった。
「陽菜も恭子ちゃんもなんてこと言うのさ!生き物を殺してお金を奪う?そんなの許さないよ!」
「・・・何言ってるのお兄ちゃん?じゃあどうやってお金と経験値を得るの?」
「お金はちゃんと働いて稼ぐの!経験値は・・・って経験値?」
「だからこうして働いてるんじゃない。魔物を殺して」
「こ、殺すことはいけません!それ以外の方法で!」
「・・・それならカジノにでも行く?」
カジノだと!?なんで普通に働こうと思わないんだ!?
「あとは拾ったアイテムを売るとか?」
なんでそうよりリスクの高い方へと走るんだ!?売れる物がその辺に落ちているわけないだろ!それならみんなが持って行くぞ!
「でも結局経験値が入らないから魔物を倒さないと」
もういい。この二人を説得させるのは無理だ。
「・・・分かった。100歩譲って魔物(?)と戦う事には賛成する。でも殺すのはダメだ!」
「でも殺さないとお金も経験値も手に入らないよ?」
なんで殺すことにこだわるんだ?戦うだけでも訓練としては十分経験を積めるし、お金だって・・・不本意だが・・・脅して盗ればいいじゃないか。
「それに・・・ごく一部を除いてアイツらは絶対に逃げない。例え瀕死の傷を負ったとしても私たちを殺すまで逃げないんだよ?」
道端でたまたま出会ったら、どっちかが死ぬまで戦い続けるのが常識なのか?
しかし、よく考えてみると戦った奴らは絶対にあきらめたりしなかった。まるで最初から死を覚悟していたかのように。
食うか食われるか。どうやら眠っていた数時間の間に世界はめまぐるしく歪んでしまったようだ。
「・・・一つだけ僕のお願いを聞いて?・・・今度からは・・・あいつらを苦しまないように天国に行かせてあげて」
「お兄ちゃんがそう言うなら・・・」
「しょうがないな~、それくらいなら聞いてあげるよ」
二人はしぶしぶ僕の意見に賛同してくれた。


305 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:48:49 ID:ncgnUSHx
晩飯代を稼ぐために魔物狩りをした僕たちが再び城下町に戻った時は、すでに真夜中になっていた。
そのころには全てのレストランが閉まっており、僕たちは仕方なくバニーガールのいる居酒屋で食事を取ることにした。
始めは陽菜と恭子ちゃんがこの店はいかがわしい、ぼったくられそう、などと言った理由で猛反対したが、このまま何も食べないわけにはいかなかったので、僕が強引に二人を引っ張って店の中に入った。その際ものすごく軽蔑された目で見られたことは言うまでもない。
店の中は想像通りの場所で、席に着くとすぐにきわどい格好をしたお姉さんが近寄ってきた。
「あら、ここは坊やたちが来る場所じゃないわよ?」
「すみません。でも今日一日何も食べてなくて・・・お金はこれだけ持ってきているんで、今回だけは見逃してくれませんか?」
僕がテーブルに金貨を出すと、お姉さんはうっとりとした目を向けてきた。
「いや~ん・・・坊やを見てるとなんだか母性本能をくすぐられるわ~♡」
お金を持っていると分かっただけでこの変わりよう。さすがプロだな。
「・・・注文いいですか?オバサン」
「恭子ちゃん、オバサンはひどいでしょ?どう見てもまだ30代の人に向かって」
なぜか突然、陽菜と恭子ちゃんのコラボ攻撃が始まった。案の定、お姉さんのこめかみがピクピクしている。
「・・・私が30代?」
「いや、お姉さんは20代前半に見えるよ!角度によっては10代にも!」
僕はなにを言っているんだろう。最近こんなことばっかり言ってる気がする。
「・・・慶太はここに何しに来たの?」
陽菜がものすごい笑顔でそう訊ねてきた。
・・・ぶっちゃけ、ご飯が7割、楽しむためが3割です・・・ハイ・・・
「恭子ちゃんはまだMP残ってる?」
「遺悪一回分なら残ってます。陽菜さんの方は?」
「私も挫鬼一回分かな」
「ならお互いちょうどいいですね♪」
なにがちょうどいいんだろう?
生き物を一瞬で絶命させる呪文と木っ端みじんにする呪文がそれぞれ一回ずつ。ま、まさか・・・ね・・・
「ところで・・・慶太は何をする目的でこの店に来たんだっけ?」
まさかではなかった。
「お、お姉さーーーん!!お寿司盛り合わせ3人前お願いしまーーースっっ!!!!内、二つは特上で!!」
あ~お腹すいた!早くごはんが食べたいな!!
「ちょっと、何で特上のお寿司なんか注文したの!?今日の宿代がなくなるじゃない!!」
・・・やっと理解したよ。僕は何をしても怒られる運命にあったんだな。納得納得。
そのとき、奥で何人もの女性をはべらせていたムチムチ男がこっちに近付いてきた。うっわ!汗くさ!
「御困りかな?セニョリ~タ」
おおよそセニョリータの意味を正確に理解してそうもない口調で男はそう言った。
「・・・全然困ってませんから」
「・・・お、お兄ちゃん、お寿司半分っこしようね///」
話しかけてきた男に対して陽菜はものすごく冷たく、恭子ちゃんに至っては空気扱いをしている。
ってか、よく見ると太郎君だった。
「太郎君じゃないか!太郎君もごはんを食べに?」
「・・・誰だね君は?こんなみすぼらしい奴なんて俺様は知らないな」
は?いきなり喧嘩売ってるんですか?それに俺様?
「それよりも・・・そこのお二人さん、こんなスライム野郎と一緒にいないで俺と旅に出ないかい?」


306 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:49:36 ID:ncgnUSHx
「「いや」」
最近の二人は息がぴったり合っている気がする。なんかいろんな意味で。
二人のあまりの拒絶の早さに太郎君が一瞬たじろいたが、さすが男性ホルモンの塊、男らしくキッパリと言い放った。
「ならそこのスライム野郎、二人の女性を賭けて俺と勝負しろ!!」
「女の子を勝負の景品にするなんて、俺がスライム野郎ならテメェは最低野郎だな!」
・・・どうだった陽菜?今の僕ってばものすごく決まってたよね?
「こっちが勝ったら何をくれるの?」
え?まさかのスルー?それにこの勝負受ける気なんですか?僕には勝つ自信がこれっぽちもないんですけど?
「1000Gくれてやる。俺の全財産だ」
すげぇ・・・スライム1000匹分だ・・・っは!?今僕は何を考えた!?
「それにもうひとつ。対決はチーム戦でもいい?」
「フフ・・・しょうがないな~」
そんなこんなで勝負をすることになった。
「勝負はここから南に10km行ったところにある塔の最上階に眠るお宝を先に見つけたほうの勝ち、ってことでいいかな?」
最近はウォーキングブームなのか?なぜそんな遠いところまで?
「出発は明日の明朝6時ね」
「了解。それじゃあまた明日・・・チュ!」
投げキッスをして太郎君は帰って行った。
それに対して陽菜は口を手で拭った。ま、普通の反応だな。
それに対して恭子ちゃんは僕にお願いしてきた。「私、穢されちゃった・・・だからお兄ちゃんの・・・で清めて///?」。意外な反応だな。
「き、清めてって―――」
「・・・ねぇ、恭子ちゃん、私とちょっとお出かけしようか?」
陽菜が恭子ちゃんの肩をつかんだ。爪が食い込んでいるように見えるのは気のせいですか?
「お兄ちゃ~ん、陽菜さんが怖いよ~!!」
そう言って僕の背後にまわり抱きついてきた。
陽菜さんを見ると・・・確かに怖い。笑顔なのに怖い。ホワイ?
「ご注文のお寿司ですけ・・・ど・・・?」
「ほ、ほら~二人ともお寿司が来たよ!うっわ~おいしそうだな!早く食べようよ!」
ギスギスしたまま食べたお寿司の味は生涯忘れることはないだろう。

次の日の朝(AM6:00)僕たちは町の入り口にいた。
ちなみに昨日の晩は、なぜか24時間開放の教会があったのでそこで眠った。神様ごめんなさい。
「おや?レディたちの顔色が優れないようだね?昨日は眠れなかったのかな?」
馬車に乗った太郎君とその手下5人が現れた。・・・え?馬車?
「なんでお前馬車に乗ってるんだよ!?」
「誰も歩いて行くなんて言ってないだろ?まさか君たちは・・・あそこまで歩いていくつもりかね?」
ムカつく。なにより『かね?』の言い方がムカつく。
「ハーハッハッハ!もう勝負の行方が見えたね!」
そう言って太郎君ズは行ってしまった。ど、どうしよう・・・このままでは負けてしまう・・・
「大丈夫!私に任せて!」
私に任せてって・・・所詮徒歩と馬の足では勝ち目が・・・
「留雨裸!」
突然、僕の体が浮き上がった。


307 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:50:33 ID:ncgnUSHx
気がつくと禍々しい建物の目の前にいた。おや?ここは一体?
「気がついた?」
恭子ちゃんが心配そうにこちらを見ている。どうやら無事の様だ。
「あれ?陽菜は?」
ここにいるのは僕と恭子ちゃんだけ。陽菜は何処にも見当たらない。
そのことに対して恭子ちゃんが説明をしてくれた。まずここが目的の塔だという事。それとここには恭子ちゃんの瞬間移動呪文で来たこと。そしてその呪文は自分ともう一人しか連れてこれないという事。
「それならもう一度あの町に戻って、陽菜を連れてきてくれる?」
「・・・ごめんなさい。もうMPが足りなくて・・・」
どうやらあの呪文を使うとMPが大量に消費するらしい。
「そ、それじゃあ・・・僕たち二人でこの塔に?」
「えへへ・・・二人っきりだね///」
ギュッ、と僕の腕に抱きついてくる恭子ちゃん。その表情はまるで『作戦通り!』とでも言いたげだった。
だが恭子ちゃんの笑顔とは反対に、僕は恐怖で体が動かなくなってしまった。
恭子ちゃんは今MPがないので呪文は使えない。となると、もし魔物が現れても僕が何とかしなければいけない。
それに・・・もし大魔王様が瞬間移動呪文を使えなかったら・・・一人であの町に置いてけぼりを喰らったことになる。
「ちょっと聞きたいんだけど・・・陽菜はさっきの呪文使えるの?」
「使えないと思う。基本的には私が回復・補助系に対して陽菜さんは攻撃系だから」
大魔王様はさっきの呪文が使えない。しかも得意なのは攻撃系の呪文・・・僕は死んだかもな・・・
「それより、早く入ろう♪」
恭子ちゃんには怖くないのだろうか?この塔も、大魔王様も。
「はやくはやく~♪」
そして引かれるがままに塔に入ってしまった。
中は想像通り薄暗く、そこらへんに人骨が落ちていた。
「や、やっぱり引き返えさない?なんかここ危ない雰囲気がするんだけど・・・」
「大丈夫だよ!薬草もいっぱい持ってきたから!」
そんな草が何の役に立つの!!
その言葉を寸前で飲み込むことができた。
「う、うわ~、準備がいいね!」
「えらい!?私えらい!?」
「う、うん!偉いよ!恭子ちゃんはものすごく偉いよ!」
「お兄ちゃん、だ~い好き!!」
もう腕が引きちぎれそうなくらいの力を感じるが、どうせ僕はここか、もしくは・・・あの城下町で殺されるんだ。。
そんな事を考えていると新たな魔物が現れた。
「気をつけて、お兄ちゃん!アイツは強敵だよ!」
石の体を持ち、身長も2~3mはありそうな巨人。こ、こいつと戦えと・・・?
「ち、ちくしょ~!!」
せめて恭子ちゃんを守るんだ!たとえ木の棒しかなくても、たとえ相手がめっちゃ強そうでも!
結果は火を見るより明らか。僕は相手のパンチ一発で体が宙を舞った。
「お兄ちゃん!?」
「よ・・・陽菜に・・・愛していたと・・・」
「保井美!」
恭子ちゃんの掛け声とともに傷が治っていく。
「・・・ん?あれ?なんで傷が―――」
「許さない・・・よくもお兄ちゃんを・・・遺悪!遺悪遺悪遺悪遺悪遺悪!!」
恭子ちゃんの連続木っ端みじん呪文で巨人はあとかたもなく吹き飛んだ。
MP・・・無くなったんじゃなかったっけ?


308 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:51:22 ID:ncgnUSHx
その後も巨人は沢山出てきたが、全部恭子ちゃんの呪文で片付いていった。その間僕はただ見ているだけだった。
「・・・申し訳ないです・・・」
「ううん、お兄ちゃんがいてくれるだけで私は十分だよ!」
そのまま順調(?)に進んでいき、ついにお宝のある最上階に着いた。
「やっと着いた・・・じゃあさっそくお宝を手に入れますか」
「待って!多分この先にはボスがいるから作戦を立てないと!」
あの巨人達のリーダーか・・・しっかりした作戦を立てないと危ないな。
でも僕には大したことはできないので、結局僕が囮になってその間に恭子ちゃんの呪文で攻撃するしかない。
作戦が決まったところでドアを開ける。
「すいませ~ん・・・リーダーさんはおられますか?」
おそるおそる声を掛けると確かに誰かいた。
「二人とも遅かったじゃない♪」
なんとそこには瀕死の巨人と・・・満面の笑みを浮かべた陽菜がいた。
「ど、どうして陽菜さんがここに!?留雨裸は使えないはず・・・」
「甘いよ~恭子ちゃん。この世にはキメラの翼っていう便利な道具があることを忘れていたのかな?」
キメラの翼?なんだそれは?
「そんなことより・・・ふたりとも楽しかったかな?私を置いてのデートは?」
陽菜が一歩一歩静かに近寄ってくる。そのたびにさっきまで元気だった恭子ちゃんの顔が青ざめていく。
「私の方が後に着いたのに先に最上階に来てしまうなんて・・・余程いちゃいちゃしながら上ってきたんでしょうね~?」
陽菜の手に炎が現れた。しかもだんだんと大きくなっていく。
「お、落ち着け陽菜!!」
「落ち着いているよ?それより慶太が落ち着くべきじゃない?そんなに興奮して」
まさか味方によってやられるのか?と思った時、瀕死の巨人が最後の抵抗を見せた。
「ウゴアアァァァl!!」
立ち上がり、その大きな拳を陽菜に向けて振り下ろす。
「危ない陽菜っっーーー!!!」
「・・・うるさいな~、眼羅巳」
陽菜の手を離れた炎はそのまま巨人を包み込んだ。
巨人は少しの間熱さでもがいていたが、やがて真黒になってこと切れた。石を焼くなんて・・・
「フフ・・・それじゃあさっきの続きをしよっか?」
僕が17年の人生にピリオドを打つ覚悟を決めたとき、奇跡が起こった。

トゥルルトゥル~♪早川慶太と恭子ちゃんのレベルが上がった!

なんと僕と恭子ちゃんのレベルが上がった!・・・なんで?それにレベルって何?

早川慶太のHPが上がった!力が上がった!サトリ能力が上がった!

今まで忘れていたけど、今日は心の声を一度も聴いてなかったな・・・こうやって敵を倒せば聴こえるようになるのか?

恭子ちゃんのMPが上がった!賢さが上がった!かわいらしさが上がった!依存度が上がった!ヤンデレ度が上がった!

なぜか後半は上がってはいけないものが上がった気がする。
「やたー!!お兄ちゃんと一緒にレベルアップだー!!やっぱり私たちは相性がいいね!!」
そう言って僕の胸にすりすりしてくる恭子ちゃん。
かわいいな・・・あと何秒この笑顔を見れるかわからないけど、それまではこうして眺めていたい・・・
3秒後、激痛が走って意識を失った。


309 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:52:25 ID:ncgnUSHx
次に目が覚めたときは宿屋にいた。
「体の具合はどう?」
まぶしい笑顔の陽菜が目の前にいた。どうやら僕が起きるまで付き添っていてくれたらしい。
「もう大丈夫だよ。心配かけてごめんな?」
「ううん、慶太が無事でよかったよ!」
「・・・陽菜・・・」
「・・・慶太・・・」
なんだかいい雰囲気だ。まるで二人は恋人のような・・・
「騙されちゃダメ!しっかりしてよ、お兄ちゃん!」
部屋のドアを勢いよく開けて恭子ちゃんが入ってきた。
「お兄ちゃんをこんな目にあわせたのは陽菜さんなんだよ!」
「こんな目?」
「私が一日中保井美をかけ続けてようやく回復したんだから!」
衝撃の事実を告げられた。あの一瞬で傷が治った呪文を一日中かけられたらしい。
「・・・陽菜・・・本当なのか?」
「ごめんね?罵犠をかけようとしたら間違えて罵犠魔をかけちゃった~」
・・・ま、まぁ、人間だから間違えはある。だからゆるしてあげるけど・・・今度からは呪文を使うのはやめてね?
「もっと真剣に謝って下さい!陽菜さんのせいでお兄ちゃんの体がぐちゃぐちゃになったんですから!」
ふざけんなよ、陽菜!僕が何したって言うのさ!ってか僕はよく生きてたな!
「な~にその目は?もしかして慶太君は私に何か言いたいことでもあるのかな?」
「・・・次は間違えないでね?」
「慶太が『間違え』なければね?」
もう間違えないよ。大魔王・陽菜様はこの世で最強。これでいいんですよね?
「・・・それにしても恭子ちゃんはかわいいね?慶太もそう思うでしょ?」
いきなり何を言い出すんだ?そんなのもちろん、
「あぁ、俺の天使だからな!」
「け、慶太さん///」
「慶太は勇者って感じだね!」
陽菜が僕の事を勇者って・・・もしかして僕に気があるのかな?
「そ、そうかな~///」
「絶対そうだよ!」
やっべ・・・陽菜さんは俺にマジぼれしてるな?もしかして呪文を使ったのも恭子ちゃんとのことを嫉妬したのかな?
「陽菜がそう言ってくれるなんて嬉しいな!」
「どういたしまして~・・・ちなみに私は?」
ん?陽菜?陽菜はもちろん、
「大魔王様さ!!」
言ってから気付いた。今までの会話の真の目的を。
「ふ~ん・・・恭子ちゃんは天使で、私は大魔王っか・・・ふ~ん・・・よ~く分かったよ・・・」
あ~あ、せっかく回復したばっかりだってのに。
「ごめんね恭子ちゃん。疲れてるのに悪いんだけど、また例の呪文お願いしてもいいかな?」
これが僕の辞世の句となった。


310 :サトリビト・パラレル:2010/05/19(水) 23:53:10 ID:ncgnUSHx
「よ・・・よし・・・次の町へ・・・行こうか・・・」
あれから二日間生死の狭間を彷徨った僕は、立ってるのがやっとの状態だった。
にもかかわらず僕たちは次の町へと向かう羽目になっている。
実はあの塔に眠っていた財宝を陽菜が城へ持っていき(僕が眠っている間に)、王様に献上したのが発端だった。

「よくやったぞ!褒美に我が城に纏わる伝説の剣を授けよう!・・・それと頼みがあるんじゃが、ここから西に50km行ったところに大きな港町があるんじゃが、そこが魔物に襲われているそうなのじゃ。そこでこれからその町に向かって、そいつらを倒してきては来れんかの?」
「仰せのままに」

・・・なんでそんな大事なこと勝手に決めるかな?
「せめて家に電話させてくれ」
家を出てもう丸3日。さすがに親が心配しているころだろう。そして・・・姉ちゃんが暴れ回っているころだろう。
「電話って何?」
言われてみれば3日前から電線やアンテナを見たことがない。どうやらこの世界は相当文明が退化しているらしい。
「・・・それじゃあ恭子ちゃん、瞬間移動呪文を使って僕を家まで送ってくれないかな?」
「何か取りに行くの?」
「だってもう三日も帰ってないんだよ?二人の家族も心配しているころじゃないの?」
二人は僕の言葉に顔をしかめる。
「・・・私の両親はもうこの世にいないの知ってるでしょ?」
「私の家族もお兄ちゃんだけだよ?お父さんもお母さんもいないでしょ?」
あ・・・嫌なこと聞いてごめん・・・って何!?いつのまに家族が消えてしまったんだ!?
「そんなことより早く行くよ」
僕にとっては次の町よりも大事なことなんですけど!
「次の町まで50kmですか・・・歩いて12時間ってところですね」
・・・それにしても本当にみんな歩くの大好きだな。しかも12時間で50kmってことはまた休憩なしですか・・・
「お困りかな、諸君?」
「そうだ!恭子ちゃんの瞬間移動呪文で行けばすぐなんじゃないの?」
「ごめんなさい・・・留雨裸は私の行ったことのある場所にしか行くことができなくて・・・」
そうするとあの禍々しい塔には以前行ったことがあるってことなのか!?
「俺様の馬車を使えば2時間で行けるんだけどな~」
「慶太!あんたは男でしょ!それくらいの距離歩きなさいよ!」
あなたが言いますか!?一体誰のせいでこんなフラフラになったと思―――いえ、僕のせいですよね。ごめんなさい。だから火の玉を出すのはやめてください。
「無視すんなや!!」
そこで僕たち一行はようやく太郎君の存在に気がついた。まだなんか用があるの?
「俺様が仲間になってやってもいいぜ?ま、条件があるけどな!」
陽菜はチラッと馬車を一瞥して、
「本当?それならあっちの人気のないところでお話しよっか?」
そう言って二人は建物の奥へと消えていった。
だ、大丈夫かな・・・・もし襲われたりしたら・・・いや、その時は太郎君が死ぬだけだな。
しばらくして二人は戻ってきた。
ニコニコ顔の陽菜に、青ざめている太郎君。
「今日から太郎君が仲間になったよ!」
「み、皆様・・・僕みたいなクズを仲間にしていただきありがとうございました」
一体何があったのだろうか、太郎君の態度がさっきまでと180°変わっていた。
「ま、いっか」
なにはともあれ、僕たちは次の町まで馬車に乗ることができた。