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525 :幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] :2007/11/29(木) 01:00:50 ID:rCB25aQZ
 第1話『幽霊屋敷』
 この春。
 俺はめでたく浪人することが決定した。
 そりゃ、大学受験の当日に受験会場へ辿り着かなかった不運の持ち主だったら、
来年は頑張って志望の大学に受かってやるという意気込みが沸いてくるのだが。
学力以外の方法で試験に合格する手段はある。正真正銘のアホである俺は裏技を使わざるえなかった

 それは……カンニング。
 数学関連は適当に解けばいいんだが、暗記が必要とされる科目に関してはお手上げだ。 
事前に用意したカンニングのために仕込んだ消しゴム。目が怪我しているように装い、左目の包帯に
いろいろと英単語や別に覚えてなくていいだろう歴史や地理の名前など。

 完璧に用意したカンニング方法は……試験開始5分ぐらいでバレた。
 試験官が俺の背中を優しく叩いた瞬間に、皆がテストを受けている時に
俺は相手の胸に頭突きしたサッカー選手のようにレッドカ-ドで退場。
 後は偉そうな天下りしてそうな貫禄のあるハゲに人生とは何か? だんご大家族とは何かと延々と説教させられた。

悪質なカンニング行為をした懲罰として俺は試験を受けさせてもらう資格を剥脱された。試験を受けさせないなら受験料を返せよ。
 そんな感じで俺は浪人することになった。
 両親も息子がカンニング行為をやったぐらいでお前は勘当だ。
家から出ていけと怒鳴られて、僅かなお金を渡されて家に追い出される始末。

 まあ、母親が仕送りと予備校の学費と引っ越し予定のボロいアパートの家賃を送ってくれなければ、
念願の独り暮らしなんてできなかっただろう。その事に感謝しながら。
 引っ越してきたボロいアパートで俺の新生活が始まろうとしていた。

 さて、引っ越したアパートの物件を選んだ理由は家賃が安いし、周囲には駅も近く遊ぶ所には困らない。
今時、家賃1500円なんて信じられない家賃に少しでも仕送りのお金を節約して
小遣いを増やそうとこすいことを考えていた俺は速攻で契約した。敷金も保証金も0円という。本気で有り難い。
 ただ、物件を仲介した人は本当にいいんですか? 何度も何度も確認を求めてくる。
 怪しい態度に気付いた俺は何を隠しているのかと怯えている仲介人の胸倉を掴まさせて、白状させた。

 なんと、俺が契約したアパートには幽霊が住んでいるらしいのだ。
そう、この物件と契約した人たちはたったの三日ぐらいで契約解除して泣きながら助けを求めてきたらしい。 
正直、俺も信じがたい話だが、その仲介人も幽霊の存在を見たことがあると自分の恐怖体験を延々と語りだした。
 深夜零時頃になると幽霊がうらめしやーと叫びながら姿を現す。

予想もしていない異物な存在にパニックを起こした仲介人が唯一確信を持って言えたのは、幽霊は女性だった。
たった、それだけのことである。


526 :幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] :2007/11/29(木) 01:03:23 ID:rCB25aQZ
その事実を知ってから、松山光一(俺)は中古アパートに引っ越して一週間。
 何事も起こらなかった。
 幽霊なんて噂話に過ぎなかったのではないか? 住人の全てが麻薬中毒者で幻覚症状に陥っていた可能性すらも浮かんでくる。
 ともあれ、夜だ。

「今夜も秘蔵のお宝をインスト-ルするか」
 浪人生である俺が自宅から持ってきたPCでお目当てのゲームをインスト-ルするのは
真面目に受験に取り込んでいる人たちが見るとお前絶対に必ず落ちると指を差して笑われるかもしれないが、断固として言うであろう。
激しい受験勉強で数々のストレスが体に蓄積しているので、少しぐらいゲ-ムをやってもいいだろ。
 そんな感じでPCを起動して、スピーカーの差し込み口にヘッドホンをする。隣に住人はいないが、外に声が漏れるのはよろしくはない。
 完全最強装備を整えた俺はいざ勝負っ!!

「う~ら~め~し~や~」
「ん? 何か聞こえたような?」
 スピーカの音量をMAXにしているため、僅かな小さな声が聞こえるだけである。
「そんなことよりもヤンデレヒロインを頑張って病んでもらわないとステ-ジクリアができねぇよ」
「う~ら~め~し~や~」
「最近のヤンデレヒロインは着信99件に、ポストに五年分の手紙が入っていると年々と凄くなってきているな」
「う~ら~め~し~や~」
「ひゃっほっっっ!! ヤンデレゾンビが鉈を装備かよ。誰かロケットランチャ-持ってきてくれ」
「う~ら~め~し~や~。う~ら~め~し~や~」
「う~む……。精神世界にダイブするとまともだったヒロインがヤンデレ化して、
自分のために死んでよと嘆願されてもなぁ。男は余裕でひくって……」
「う~ら~め~し~や~。うらめし~や」
「ん?」

 後ろを振り返ると……そこには見慣れない少女がいた。
白い服だけ身に纏っていた少女が涙目になって、うらめしやと呟いていた。
年頃は俺と同じくらいであろう。腰まで届く長い髪に、整った可愛らしい容姿。
これが幽霊と言われると、押し掛けてきたストーカーが家に侵入してきたように思える。

「とりあえず、うらめしいんですよぉ!!」
 と、目の前の幽霊は振り返った来た俺の身体にポカポカと力を入れずに叩き出した。
何がうらめしいのか、その小さなお口でちゃんと事情を説明して欲しいもんだ。

「その前に。あんたは噂になっている幽霊なのか?」
「そうですよ。すでに故人です!! お墓もありますよ!!」
「それは良かったな。じゃあ、俺はヤンデレオンラインRPGの攻略するからじゃあ」

「ひ、酷いです。わ、私のお話も聞いてくれてもいいじゃないですか……」
「いや、聞いてもさ。生前、私は犬でしたがご主人さまのために転生しましたオチでしょ?」
「犬なんかじゃあありません。生前はまともな人間でしたよ!! それに私が話したいことはそういうことじゃあないんです」

 この幽霊はしつこく俺に歯向かってくる。せっかく、至福の時間を潰す奴は極楽へ行かせてあげたい気分になってきた。


527 :幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] :2007/11/29(木) 01:05:43 ID:rCB25aQZ
「大体、光一さんはあなたは一体何ですか!! 
あなたがアパ-トにやってきた日からずっとずっと、
うらめしやうらめしやって言っているのに全然気付いてくれないじゃないですか? 
あなたは本当に人間なんですか。他の人なら私の声に気付いて、すぐに逃げるんですよ」
 と、幽霊はポカポカと俺の頭を叩いてくる。力が篭もっていないので全く痛くも痒くもないが、幽霊の愚痴はまだまだ続く。
「なのに……光一さんは毎日毎日PCゲ-ムで夢中になって、本当に受験生なの!? 
って感じに朝になるまでゲ-ムをやっているだもん。
私、一度その人に姿を見られない限りは朝になると見えなくなるんですよ。
だったら、夜は早く寝てください。そうじゃないと私の声が聞こえないでしょう!!」
「ようするに気付かなかったことに怒っているのか」
「そうです!! 寂しがっている女の子の気持ちに気付かないと背後から鋸から刺されますよ」
 俺に無視されて、寂しかったのか幽霊。

「まあ、気付かないのは真面目に受験勉強に取り込んでいた俺の落ち度ということは認めよう」
「誰がが真面目に勉強していたんですか?」
「ともあれ、幽霊が実在していると証明されたので。それじゃあ」
「それじゃあないんです!!」
 と、先程から幽霊は自分の受けた仕打ち分は怒る権利があると言うばかりに怒鳴り散らしていた。
可愛いらしい容姿をしていても、カルシウム不足の女は男にモテないと思うんだが。
「どうして、光一さんは私のことを恐がらないんですか? 仮にも、私はすでに死んでいるんですよ」
「恐がると言われてもな……」
 これが筋肉ダルマの幽霊や顔が半分潰れている生理的に受け付けない幽霊なら
裸足でお宝のソフトコレクションを持ちながら逃げ出していただろう。
だが、目の前の少女は和やかな雰囲気を部屋に充満させているおかげでそんな恐怖を微塵も感じなかった。
「幽霊が居てくれないと家賃が上がるじゃん」
「家賃って」
「幽霊が出ると噂されているボロいアパ-トのおかげで家賃が安くて助かっているんだ。恐れるどころか、逆に感謝したいとこです」
「感謝って……」
「でも、遠きヴァルハラの道に行きたいなら、別に成仏してもいいんだけど」
「いいえ。まだ、私は成仏したくありません。この世に未練はたっぷりとあるんですよ」


528 :幽霊の日々 ◆J7GMgIOEyA [sage] :2007/11/29(木) 01:08:24 ID:rCB25aQZ
「その未練とは?」
 幽霊がこの世に固執した理由を肴にして、今晩は暇つぶしができそうだ。
 軽い気持ちで聞いた俺とは違って、幽霊は前髪で表情を隠して陰気な雰囲気を漂わせてから言った。
「私が死んでから15年の月日が経ちました。
生前は光一さんと同じように新築したアパ-トの部屋に住んでいました。
ここに住んだ理由は一生懸命勉強して入った大学に通うために下宿したんです。
この大学に入るために青春の全てを犠牲にして猛勉強しました」

 小さな手で鉛筆を動かしている幽霊の姿を思い浮べる。バカと書かれていた鉢巻きを頭にしている
彼女の健気な受験勉強に声援の一つとバナナの皮を持ってきて、
その場で滑って見せたりといろいろな悪戯もやりたくなるわけだが。
 幽霊は感情が強くこもった声が周囲の空気を更に重くした。

「せっかく、ギリギリで受かった大学も勉強が難しくてついていくことがやっとでした。
毎日毎日、自習や勉強に貴重な時間を費やしたときに気付いたんです。
他の皆は大学を勉強している場所ではなくて、男遊びにやってきた雌だということに。
友達も勉学よりも医大や一流大学のボンボンばかりを狙う狩人でしたし。
そこで私は勉強のおかげで自分の初恋もまだだったことに気付きました。
これからは男を、彼氏を作って、失われた青春を取り戻してやるんです!!

 宮野由姫(みやの ゆい)20才。運命を変える決心した日ですぅ」

 宮野由姫……男に泣かされるフラグが見事に立ちやがった瞬間だな。

「ところが、私は情けない事故で死ぬことになりまして。
若い年頃の女の子が初恋もできずに死んでしまうということは幽霊になる理由としては充分すぎると思いませんか? 
それがこの世に未練を残すことになったんです。本当に可哀相だと光一さんも思ってくれますよね?」
「俺が言えることはたった一つだけだよ」
 宮野由姫の悲しい過去に同情することはできないだろ。
どう受け止めるかは人それぞれ違うものだから。
俺は俺の真実を大声で告げるだけだ。

「実年齢35才!!?? いや、それよりも。驚くべきことは……
 この鍛え抜かれた鋼鉄の肉体!!!!」

「鍛え抜いていませんし、普通の女の子の体ですよぉぉ!!」
 幽霊・宮野由姫は頬を膨らませて、女の子に鋼鉄の肉体って嫌味ですかとジト目で睨まれていた。
小動物が少しムクれている姿は幽霊であっても可愛いもんだ。
 と、俺は今まで話を聞いてとある事実に気付いた。

「未練を残して幽霊になったってことは……宮野由比さんが初恋するまでは成仏できないのか?」
「その通りです」
「それまでは俺の部屋で居座るつもりかよ」
「ううん。ずっと、光一さんの傍にいますから。よろしくお願いしますね」

 こうして、俺と幽霊の奇妙な共同生活が始まった。
 やれやれだぜ。