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355 名前:囚われし者 ◆DOP9ogZIvw [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:56:44 ID:6474PHn1 [2/5]
翌日、僕が登校するとクラスはなにやらものものしい雰囲気となっていた。
原因は・・・、もはや考えるまでもなかった。
いつもクラスの中心である綾華。その彼女の様子がいつもと違っていた。
いつもの艶やかな髪は潤いを無くし、何やらブツブツと一人で呟いている。
そして何より、彼女の瞳は光を宿していなかった。
クラスのみんなは綾華を見て一歩引いているという感じだった。
昨日の事情を知らないもにとっては、綾華のこの代わりようはまさに異様そのものだろう。
「おはよう、綾華」
クラスの皆の視線を尻目に、僕は綾華に声をかけた。
綾華は呟きをやめ、こちらを見た。
「しょ・・・うご・・・?」
「そうだよ。」
咄嗟のことだった。
綾華は僕を思いっきり抱きしめた。
「ちょっ・・・綾華・・・何してるの!?教室だよ!」
「ねぇ、奨悟大丈夫?苦しくない?痛くない?怖い目に合わされてない?」
「だ・・・大丈夫だから!離して!」
「ちょっと綾華!」
「周防さん!」
クラスメートが僕と綾華を引き離した。
あまりにも強い力だったため、僕は少しむせた。
「大丈夫?周防さん?」
「あんなやつにあまり関わらないほうがいいよ綾華。」
そう言ってクラスメートは僕に白い目を向けた。僕は困ったというように苦笑いをしてみせた。
大丈夫、こんなのいつものことだ。
それでも、綾華は僕に触れようと手を伸ばし、クラスメートに抑えられている間も、僕の名前を呼び続けた。




結局、綾華は朝のこともあり早退した。
だけどどうやら、本人は帰りたくなかったらしく、しきりに僕の名前を呼んだそうだ。
そのこともあってか、何人かのクラスメートに、何かしたんじゃないのかと問い詰められたりもした。
結果、僕はいつもより肩身の狭い思いをすることになった。
綾華からの連絡があったのは、ちょうどすべての授業が終わりしだいにそそくさと学校をでて、家に帰る途中のことだった。
「なんだろう・・・」
綾華からのメールを開くと、そこには普段の女の子らしい文面からは想像できないような、シンプルなものだった。
『良い事を思いついた、これで私も奨悟も幸せになれる。』
意味がわからなかった。
僕も綾華も幸せになる?一体どういう意味だ。
携帯を睨みながら、どう返信をしようか考えている途中、今度は着信がはいった。
液晶画面には周防光一(すおうこういち)の名前が写っていた。
周防光一とは、綾華の父親であり、そして周防製薬の現社長である。
「はい、柏城です。」
「お、いやぁ柏城君久しぶりだね。」
光一さんと知り合ったのは幼い頃の食時会だ。
そして、優がこの会にあまり参加しなくなったころから徐々に数が減り、光一さんとも疎遠がちになっていた。
「光一さんもおかわりがないようで何よりです。」
「光一さん・・・か、それももうすぐ聞けなくなるんだろうな。」
「はぁ?」
「いやいや、こっちの話だよ。それより奨悟君、今日の夜は空いてるかい?」
「はい、特に予定はありませんけど。」
「それは良かった。」
その突如目の前にリムジンが止まった。
「お、ちょうど迎えもついたようだね、それに乗ってきてくれ。」
黒いスーツを来た人が車のドアを開ける。
(僕が断ったらどうするつもりだったんだ。)
若干、こんなことも思いながら車に乗せてもらった。



356 名前:囚われし者 ◆DOP9ogZIvw [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:57:28 ID:6474PHn1 [3/5]
「遅いわよ!奨悟!」
真っ赤なドレスを身に纏った綾華が言った。
あの後、僕は車に乗せられて、ある大きなホテルにいる。
ホテルの一室で体を採寸され、十分ほど待たされたと思うと、サイズピッタリの高そうなタキシードを渡され、ちょうどそれを着たところだった。
「・・・っ!何よ、奨悟のくせに・・・その・・・似合ってるじゃない。」
綾華はテレを隠すように顔を背けた。
「ありがとう、綾華。綾華もそのドレス似合ってるよ。」
「おっ、お世辞はいいのよ!それよりも早く行きましょう!お父様も、あなたのご両親ももう待っておられるわ。」
そう言うと綾華は一人そそくさと部屋を出て行ってしまった。
あの様子を見る限り、朝の奇行がまるで嘘のようだった。
それどころが、むしろ機嫌が良いようだ。やっぱりあのメールが何か関係しているのか。
そんなことを考えながらエレベータで最上階を目指す、この先には何度も会食を行ったレストランがあるのだ。
最上階、レストランの入り口にいたウェイターが洗練された動きで扉を開けた。
レストランには・・・僕の両親と周防家しかいなかった。
「やぁ、奨悟君!こんばんわ。」
「おお!久しぶりだな息子よ!」
「奨悟くん、ひさしぶり。」
と口々に挨拶を受け、適当に返事をしつつ僕は空いた席に座った。
「随分と急で久しぶりな会食かと思ったら、今日は他には誰もいないんですか。」
「あぁ、今日は貸切にしてもらったよ。」
こんな高いホテルのレストランを貸切とは一体どれほどの金がかかっているの想像もできない。
「何か特別なことでもあったんですか?」
「まぁね、まぁそれより久々にこのメンツで集まったんだ!存分に楽しもうじゃないか。」
光一さんのこの言葉を合図に食事は始まった。



358 名前:囚われし者 ◆DOP9ogZIvw [sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:57:54 ID:6474PHn1 [4/5]
「いやはや食った食った。」
なんて父の言葉を聞き流ていた時だった。
「さてと、そろそろ今日のメインイベントといこうか。」
光一さんが立ち上がってそう言った。
「いよ!待ってました!」
「フフフフ」
父は光一さんを持ち上げ、母さんは何やら意味ありげに笑っていた。
綾華はなぜか顔を赤くしてうつむいていた。
「えー、実にめでたいことに我が娘、綾華と奨悟君が許嫁関係となりました!」
・・・へ?
「うおおおおおおお!やったな奨悟!こんな可愛い嫁を貰うことできるなんて!」
「フフフフ、将来安泰ですね。」
僕はあまりの出来事に、頭がまわらなかった。
「えっ!ちょっとどういう意味ですか!?」
「文字どおりの意味だよ、今日、綾華が早退してきたと思っていたら突然言い出してね。まぁ、綾華も年頃の娘だし、どこぞの馬の骨にくれてやるくらいなら奨悟君にもらってもらったほうがよっぽどいいからね。」
「でっ・・・でも!」
「何だ、もしかして断るつもりなのか。」
そう言うと光一さんが僕を睨みつけた。
生まれ持って人の上に立ってきた人間の視線の前に、僕は反論する機会すら失われた。
「良かった。君は妹さんまでとは行かないが優秀な人材だしね、さて、綾華お前も何か言いなさい。」
綾華はうつむいていた顔を上げ、僕に歩み寄り、抱きしめた。
「あなたは私がいないとダメなんだから!私が一生」
そう行って綾華が耳元で囁いた。
「傍にいてあげる。」