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426 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/20(日) 02:20:54 ID:6gRkOBwO
ピシッ、ピシッ……
人外じみた先輩の膂力によって、特殊強化加工の窓ガラスが、みるみる割られていく。
にも関わらず、紅麗亜は僕とのセックス(の真似)を全く止めようとしなかった。
先輩の恐ろしさを知らないのか。それとも分かっていてやっているのか。
どちらにしろ最悪の状況だった。どうにか好転させようと、必死の呼びかけを続ける。
「紅麗亜! 紅麗亜!」
「ご主人様! ご主人様! ああっ! 私も気持ちいいです!」
駄目だった。
むしろ、気持ちよくて相手の名前を呼びましたみたいな感じになってしまった。
どうしたらいいんだ……
途方に暮れていると、先輩が少し窓から離れた。
今日は引き上げてくれるのか。
などと、少しでも期待した僕は、きっと世界一の大馬鹿者なのだろう。
ガッシャアァン!!
先輩の長い足が高々と振り上げられ、窓ガラスを粉砕した。
何のことはない。蹴りを放つために距離を取っただけだったのだ。
ガラスの破片が、部屋の中に飛び散る。
先輩が蹴りの威力を手加減したためか、僕達のところまでは飛んで来なかった。
「そこのメイド……」
そして、腹の底から絞り出したであろう先輩の声は、閻魔大王も逃げ出しそうなほど威圧的だった。
「詩宝さんから離れなさい!」
「ひいっ!」
初めて先輩の顔に表情が浮かんだ。
悪鬼の形相という形容では生温く、怒れる女神そのものだ。
直接命令されていない僕が、脅えて目を閉じる。
しかし、当の紅麗亜はあたかも全く聞こえていないかのように無反応だった。
まさしく馬耳東風といった様子で、相変わらず腰を振っている。
「あっ! ああん! ご主人様、もっと突いてくださいませ……」
「…………」
その様子を見て、先輩はしばらく無言だったが、やがて窓枠に足をかけた。
ドレスの裾が乱れるが、全く気にする様子はない。
ガシャン
先輩の体が、とうとう居間に踊り込んだ。
土足のまま、ガラスの破片を踏み付け、こっちに歩いてくる。
「そう。そういうことなのね」
「え……?」
「気が付かなくてごめんなさい。やっと分かったわ」
何が分かったと言うのだろうか。
「そこのメイドさん。あなた、自殺願望があるのね」
違うと思います。そう言おうとしたが、言葉にならなかった。
「そうよね。そうでもなければ、私の詩宝さんを手にかけるはずがないわ」
先輩は、僕達のすぐ横まで来て足を止めた。
大変なことになりそうだ。それも、後数秒とかそんな感じのオーダーで。




427 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ :2010/06/20(日) 02:23:08 ID:6gRkOBwO
「待って! タイム! 紅麗亜も先輩も、お願いだから1回止めて!」
僕はまた叫んだが、相変わらず何の効果もなかった。
「死にたいなら死にたいって、早く言ってくれればいいのに」
「ああっ! ご主人様! いくっ! いってしまいますっ!」
「今、彼岸に送ってあげるわ!」
先輩のドレスの裾が、“ぶわっ”と翻った。ほぼ同時に、ドォン! という衝突音が響く。
あまりの激しさに、一瞬、家の中で交通事故が起きたのかと思った。
でもすぐに違うと分かる。紅麗亜が両腕で、先輩の右足を受け止めていた。
今の衝突音は、先輩の回し蹴りと紅麗亜の腕がぶつかる音だったのだ。
「何ですって……?」
蹴りを受けられた先輩が、意外そうな表情を作る。
紅麗亜は左手で先輩の足首を掴むと、右手で何かを取り出し、先輩の太股に押し当てた。
「死ぬのは貴女です。ご機嫌よう」
フッと嘲笑う紅麗亜。今までの蕩けたような表情は、もう消えている。
次の瞬間、本当に雷が落ちた。バチバチという音と共に火花が散る。
いや違う。スタンガンだ。先輩の体がビクンビクンと痙攣する。
ようやく僕は、紅麗亜がセックスの振りをしていた理由を知った。
先輩に攻撃させ、スタンガンで反撃するつもりだったのだ。
何故そんなものを持っているのかという疑問は、不思議と湧かなかった。
先輩は大丈夫だろうか。
見ると、さすがと言うか何と言うか、倒れずに持ちこたえている。
そして先輩は、両手で紅麗亜を突き放し、強引に右足を自由にした。
「ふんっ!」
だが、やはりダメージはあったようだ。足がふら付き、立っているのがやっとという様子である。
それを見て、紅麗亜はにやりと笑った。
「止めです」
乳房を露出したまま、立ち上がって先輩に迫ろうとする。
いけない。先輩が殺されてしまう。僕は咄嗟に、紅麗亜の腰にしがみついていた。
「紅麗亜、もう止めて!」
「ご主人様、何を!?」
「詩宝さん……」
「先輩、今日は引いてください! お願いですから!」
「でも……」
そのとき、窓の外から、別の女性の声がした。
「お嬢様!」「ボス!」
姿を現したのは、赤いスーツと青いスーツの、白人の女性2人。先輩の秘書だ。
ここまで、一緒に来ていたのだろう。2人は叫んだ。
「お嬢様、大丈夫ですか!?」
「今日は引き上げましょう。早くこちらへ!」
それを聞いた先輩は、無念そうに言った。
「……メイド、覚えていなさい。詩宝さん、必ず助けますから待っていてください」
そう言うと、先輩は踵を返し、よろよろと窓まで歩きだした。
「ご主人様、お放しください。あの毒蟲に最後の一撃を!」
「だから駄目だって!」
紅麗亜は僕を引きずって、先輩を追いかけた。だが追い切れず、先輩は2人の秘書に助けられて外に出る。
もう大丈夫だろう。僕は安堵し、緊張の糸が切れたせいか、そのまま意識を手放した。