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543 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/06/23(水) 20:41:01 ID:itWtxVFq
「ベスト・ドレスアップ・コンテスト?」
毒の(それだけではなかったが)脅威から逃れることができた僕たちは、その後行きついた町でそう書かれたチラシを見つけた。
「え~と、なになに・・・あなたの美しさを競うコンテストです。一位になると賞金が・・・10万Gだって!?」
あまりの額に驚いた。
一泊一人頭15Gで泊れる世界で10万Gといったら家でも買えるんじゃね?
「でもこれだけの額となると、優勝はおろか、参加すらできそうにもありませんね」
そうつぶやく姉ちゃんの横顔を見てあることを確信した。
「大丈夫だよ!姉ちゃ―――祥子さんが出れば優勝に間違いないよ!僕が保証する!」
だってこんなに素敵な人を今までに見たことがない。つい先日までは全く、これっぽっちも思わなかったけど、今なら声を大にして言える。
「祥子さんはこの世で一番素敵な女性だ!」
「そ、そんな///」
本当に声を大にして言ってしまった。後悔は・・・している。なぜなら、
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
ある3人の少女達が無言でゆっくりと僕に近付いてくるからだ。ちなみに僕の後ろは壁。
「聞き間違えかな?慶太、今何て言ったの?」
「よ、陽菜の次に祥子さんは素敵な女性だって・・・」
「それじゃあ私はこの中で3位って事なの?慶太の奥さんなのに?妻なのに?慶太は私の物なのに?」
「ご、ごめん・・・結衣が1位です・・・」
「・・・お兄ちゃん?」
「・・・ごめんなさい!皆同率で1位じゃだめですか!?」
グチャ!ボボッン!


「ねえ太郎君・・・なんでこの世は女性の方が圧倒的に強いのかな?」
「知らん!俺に話しかけるな!お前なんか敵だ!」
「な、なんてこと言うのさ!一緒に三途の川を渡ろうとした仲だろ!」
「ふざけんな!お前はレディ達の愛の結果だろ!俺なんかただの八つ当たりや、理不尽な殺戮だったんだぞ!」
クソ不味い薬草を二人で食べながら僕と太郎君は談笑していた。
「それよりも・・・止めなくてもいいのですか?」
姉ちゃんは心配そうにある1点を見つめている。
「僕にどうしろって言うの?まだ薬草を食べ続けろって言うの?」
あんなのに関わるのは2度とごめんだ。
「・・・ならそれで決まりね?このコンテストで一番順位が高かった人が・・・1週間慶太を好きにできるって事で」
「って、うおーーーーい!!待て待て待てぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!」
なんか今、ものすごく理不尽かつ恐ろしい事が聞こえてきたぞ!
「心配しなくても大丈夫だよ。どうせ勝つのは私だから」
いや・・・それはそれで怖いんですが・・・
「応援してね!だ~りん♡」
が、がんばってね・・・?
「お兄ちゃん・・・大好き・・・///」
関係ないよね!?今そんなセリフ関係ないよね!?
そしてお願いだから陽菜や岡田の前でそんなこと言わないで!



544 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/06/23(水) 20:41:38 ID:itWtxVFq
「お~!これは美人な方が4人も参加していただき、誠にありがとうございます!」
さすがの貫録だった。
陽菜たち4人は顔パスで書類選考を通過したのだ。
こんな人たちと一緒に旅をしている僕って、きっと幸せのはずなんだよな。
「これは本戦が楽しみですな~・・・ところであなたはどうされますか?」
ん?僕の事?
「今回は第10回記念として、モンスター部門、男性部門でもそれぞれコンテストを実施しているのです」
受付の男はそうは言っているが、僕はさらさらそんな気はない。
自分がイケメンじゃない事くらい・・・し・・・知って・・・っ!
悲しくなってきた。
「わ~!慶太も参加しようよ!私、慶太のカッコイイ姿見てみたいな!」
その言葉が僕に勇気を与えた。
僕は机に掌をたたきつける。
「・・・俺も参加するぜ」
「・・・」
僕の決め台詞を太郎君に取られてしまった。これじゃあただ机を叩いただけの痛い人になってしまうじゃないか。
「かしこまりました。あなたがモンスター部門、机をたたいたあなたが男性部門、そして麗しい女性陣の方々が女性部門でいいですね?」
「え?いや違っ―――」
「「「「「はいっ!」」」」」
こうして僕達の戦いが始まった。
・・・ドンマイ、太郎君。

大会はモンスター部門、女性部門、男性部門の順に始まるらしい。
なぜ人気の高い女性部門を最後に持ってこないんだ?ボルテージが上がったときに男性のイケメンコンテストなんて誰得なの?
僕がその事について考えていたとき、モンスター部門が始まった。
そして終わった。
太郎君も終わった。
色々な意味で。

「大変お見苦しいものをお見せしました。でもここからは皆が待ち望んでいた・・・女性部門だぁぁぁぁぁああああああ!」
会場が異様な熱気に包まれた。
男性部門まではまだ時間があったので、僕はモンスター部門で惨敗した太郎君を励ましながら観客の一部と化していた。
「まずはエントリーナンバー1、見た目は天使、中身もきっと天使の早川恭子ちゃん!」
司会者の紹介とともに、舞台袖から人の姿をした何かが出てきた。
そんな言い方をしたのは、あまりにもその人が人間を超えたかわいさを放っていたからだ。
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「や、やべぇぇぇぇええええええええええええ!!超かわいいーーーーーーーーーーー!!」
「恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん恭子ちゃん!!」
若干1名、聞き覚えのある声をしていたが、きっと気のせいだろう。
「それでは自己紹介をしてもらいましょう!」
「み、皆さん、こんにちは・・・遠くにある村から来ました早川恭子です・・・よ、よろしくお願いします///」
恭子ちゃんの照れながらも必死にしゃべっている姿に、会場からちらほらと声が漏れ始めた。
「・・・もう次の人とかいいんじゃね?」
「ってか恭子ちゃん優勝?」
僕もその意見に賛成だ。
でもね?いくら恭子ちゃんが妹だからって・・・『早川』恭子でエントリーはしてほしくなかったな。
この後で通産6回目の三途の川に行きかねないからね。


545 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/06/23(水) 20:42:11 ID:itWtxVFq
この後も恭子ちゃんの自己紹介は続いたが、内気の彼女はなかなかに苦労していた。
それで見かねた司会者が助け船を出した。
「ではここで恭子ちゃんに質問のある方はおられますか?」
「「「「「「「「「「「「ハーーーーーーーーイッッ!!」」」」」」」」」」」」」」
司会者の言葉に会場の野郎どもが一気に反応した。
「現在彼氏はいるんですかぁ!?」
最初に当てられた奴がいきなりタブーな質問をした。
「彼氏はいませんけど・・・す、好きな人はいます・・・///」
「「「「「「「「「「「「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」」」」」」」」」
ちなみに今叫んだ中に僕もいた。
僕の天使が・・・(最近はちょっと微妙だが)心のオアシスが・・・くそっ、兄以外に好きな人だと!?相手は誰なんだ!?
「そ、その人とは・・・どんな仲なんですか・・・?」
2つ目の質問をした人に対し、観客の目が「そ、そんな恐ろしい質問すんなや!」といっている。
「・・・私の片想いなんですけど・・・キスはしました!///」
絶句。会場に詰めかけた千の人が一斉に声を失った。
ある者はそのまま意識を失い、ある者はおもむろにロープで輪を作っている。
その中で・・・一人の勇者が手を上げた。
「お、おい!止めろお前!これ以上やるとお前も俺達も死んでしまう!」
だがそれでも勇者は手を下さなかった。
会場全員の目が勇者に向かう。
「・・・では、そこの勇者殿・・・ご質問を!!」
司会者までもがその男を勇者と呼んだ。
勇者はスッと立ち上がると、眩しい笑顔でこう告げた。
「恭子ちゃんとキスをしたっていうゴミ野郎はどこのどいつですか?」
勇者の質問に恭子ちゃんは慌てふためいたが、彼のあまりにも真剣すぎる視線や会場の熱気からか、ゆっくりとその人物を指さした。
1000人(くらい)の観衆の目がその先を追う。もちろん勇者もその先を追った。
だがここでおかしな事態が発生した。
後ろを振り返るが、そこには誰もいない。
確かに恭子ちゃんの指先の方向はここを示しているのに、そこには誰もいない。
まさか・・・幽霊とでも言うんじゃないだろうな?
そこで勇者は隣に座っていた半幽霊の太郎君に訊ねる事にした。
「なぁ・・・僕の後ろに誰かいるのか?」
「・・・ロリコン野郎っ!」
どうやら勇者の後ろにはロリコンの幽霊がいるらしい。
でもなぜ太郎君は勇者を見て言ったのか?なぜ勇者には見えないのに太郎君には見えるのか?
全ての答えは恭子ちゃんの口から告げられた。
「今・・・そこに立っている慶太さんが・・・私の大好きな人でファーストキスの相手です!!///」
その瞬間、勇者は―――いや、僕はゴミ野郎に成り下がった。


546 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/06/23(水) 20:42:47 ID:itWtxVFq
「・・・ふ~ん・・・恭子ちゃんはそんなにあの人がいいんですか?一体どこがいいんですか?」
観客どころか司会者までもが、ゴキブリでも見るかのような視線を僕に送ってきた。
「ぜ、全部大好きです!カッコイイところとか・・・優しいところとか・・・私の事を誰より分かってくれる事とか・・・キャッ!///」
恭子ちゃんはこの会場に突如発生した巨大な低気圧に気が付いていないのか、一人できゃっ、うふふ、と悶えていた。
でもそんな彼女のおかげで僕はまだ生きていられるのだ。
恭子ちゃんがフェードアウトした瞬間、僕は会場の男どもからあまりにも残酷なリンチを受けることになるだろう。
もしくは・・・あの舞台袖から漂っている黒いオーラを放つ2人組みにか。
「え~・・・では最後に・・・何か一言ありますか?」
完全にやる気を失った司会者が投げ遣りに恭子ちゃんにマイクを渡した。
それを受け取った恭子ちゃんは息を大きく吸って全力で叫んだ。
「私は世界で一番お兄ちゃんが大好きです!!慶太お兄ちゃん、私とずっと、一生、一緒にいようね!!」
まるで大きな仕事を成し遂げたかのような仕草で、恭子ちゃんは舞台裏に消えていった。
「・・・それでは突然ですが10分休憩を挟みたいたいと思います」
まぁ、分かりきっていたことだ。何も驚きはしない。
「留雨裸!」
恭子ちゃんの真似をして叫んでも、僕はここから離れることができなかった。
まぁ、分かりきっていたことだ。何も驚きはしない。
「「「「「「「「「「「「「「「「・・・覚悟はいいかい?ゴミ野郎君?」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「まぁ、分かりきっていたことだ。何も驚きはしない・・・けど、できればやめてほしいな~・・・い、いかがですかね?」


547 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/06/23(水) 20:44:32 ID:itWtxVFq
「さて皆さんは休憩によって心の方はリフレッシュできましたか?それでは続きを始めたいと思います!」
次は誰だろう?とにかく残りの爆弾が来たらここから出よう。
「エントリーナンバー2、占いをとことん信じるがモットーの早か・・・チッ、コイツもかよ・・・早川結衣ちゃんで~す・・・」
ふぅ・・・岡田の奴、なんてことしてくれたんだ。おかげで名前を呼ばれただけで野郎共に囲まれてしまったじゃないか。
「みんな~こんにちは!早川結衣で~す!そこにいる慶太は私の旦那様だから、あんまり乱暴はしないでね?」
岡田の一言で2度目のリンチを回避した事には感謝するが、反対に会場の殺気が一層高まった。
これはまた岡田のフェードアウトと同時に殺られるパターンか・・・
でもここからは恭子ちゃんの時とは違った。
「でも皆の事も大好きだからね?本当にいい男ばっかりいて緊張しちゃうな・・・」
岡田はマジで優勝を狙いに来ていた。
めちゃくちゃかわいく見える様子もきっと演技なんだろう。こわっ!
「えへへ・・・きゃっ!」
なぜか何もないところで大女優・岡田が転んだ。
不自然にかわいい悲鳴を上げて。不自然に下着も見えそうになって。
「いやぁ~!見ないでよ~!!」
「う、うひょーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「見えたか!?今見えたのか!?」
「結衣ーーーー!!俺以外にそんな姿みせんなよーーーーーー!!でもラッキーーーー!!・・・じゅる」
言わずもがな、最後は太郎君だ。せめてよだれくらいふけよ。
「結衣ちゃんはとっても天然さんなんですね!」
「よくいわれるけど違いますよ~!私は天然じゃないもん!」
ないもんって・・・岡田って17歳だよな?さすがに痛く聞こえるぞ?
「さて!では恒例の質問タイム!ってことで私が早速・・・結衣ちゃんは僕の事どう思いますか?」
本当にこの司会者は自分の感情に忠実に生きているな。羨ましいよ。
「カッコイイと思います!そして会場にいる皆さんもそうですけど、私に投票してくれた人はもっとカッコ良く見えちゃうな!」
「「「「「「「「「「「「絶対に投票するぜーーーー!!」」」」」」」」」」」」」」
「みんなありがとーー!!大好きだよ!!」


女性部門前半の部が終わり、まもなく結果が発表される。
ちなみに今までのは予選。
そこで勝ち残った上位3名と、このあと後半の部の勝ち残った3名の合わせて6名でもう一度コンテストをするのだ。
「お待たせしました。只今から前半の部の結果を発表します」
3位は去年の優勝者。投票率・・・5%。
意外な展開に辺りがざわつき始めた。
去年のチャンピオンが5%しか票を集められなかったのだ。そうなって当然だろう。
「恭子ちゃんか結衣ちゃん意外に票を入れるなんて・・・一体何を考えているんだ!?」
「5%もいるぞ!きっとサクラに違いない!」
・・・そっちかよ。
そしていよいよ第1位の発表に移った。
「続きまして1位と2位の発表です!予選通過第1位は・・・投票率50%!早川恭子ちゃんです!2位は早川結衣ちゃんで投票率44%でした」
「いやったー!!これで1週間お兄ちゃんは私のものなんだ!」
僕のところに戻ってきていた恭子ちゃんが抱きついてきた。
他のお客さんもいるから・・・できるだけ・・・その・・・ね?
「「ふざけんな、クソガキ」」
二人も!岡田は本性を見られてもしらないよ!陽菜も後半の審査に影響しちゃうよ!?


548 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/06/23(水) 20:45:10 ID:itWtxVFq
「それでは後半の部を始めたいと思います!後半の部トップバッターは・・・エントリーナンバー51!得意わ・・・・・・」
いきなり司会者が無言になった。額にはなぜか大量の汗がある。
「・・・すいませんでした。エントリーナンバー51、得意技は眼羅象魔の佐藤陽菜ちゃん・・・です・・・」
「みなさん、こんにちわ~♪」
「いえ~い!陽菜ぁぁぁぁぁぁ!!」
あれ?叫んだの僕だけ?めっちゃ恥ずかしいんですけど。
「・・・どなたか質問はありませんか?」
えーーーー!?いきなり質問タイム!?
それに加えてさっきまで盛りに盛り上がっていた連中が、完全に消沈していた。誰一人手をあげない。
「誰も私に聞きたいことないの?」
マズい!このままでは陽菜がかわいそうだ!
「はいは~い!!」
僕が勢いよく手をあげると皆の目がいつぞやの勇者を見る目に変わっていた。
「・・・さすがだぜ」
なぜか太郎君まで僕を尊敬し始めた。
これは一体・・・ま、いっか。
「ではそこの勇者ど―――ゴホン、慶太君!いくつでも質問していいからね!」
「?・・・それなら・・・今現在好きな人はいますか?異性としてで」
「う~ん・・・いる・・・かな?」
ちょっと前までの僕なら失神しているに違いない答えが返ってきた。
でも今はその相手に同情してしまった。
「・・・フフフ・・・慶太ったら・・・面白いね♪」
何が面白いのだろう?僕は何も言っていないのに。
でも陽菜がニコニコしているから何となく嬉しいな。
「それで二つ目の質問は・・・」
う~ん、これは美しさを競うコンテストだったな。なら陽菜のかわいいところを引きだすような質問をしよう。
「その人の事どれくらい好きですか?」
これで陽菜の一途さをみんなにアピールすることができるな。
僕ってば何て華麗なパス!
「どれくらい?そうだな~・・・その人と一緒なら全世界の人間を葬っても平気だね」
陽菜の答えは若干、僕の予想の斜め上をいっていた。若干ね。
「・・・ちなみに本気でそう思った事はありますか?」
「それが最近になってその人が他の女に気が移るようになってね・・・まぁするかしないかは今後のその人次第なんだけど」
成程、毎日そう思っていたのですか。
陽菜の好きな人が誰なのか知らないが、とりあえずこれからは優しくしようと心に誓った。
「じゃあ最後に・・・さっき言っていた得意技の眼羅象魔って何ですか?」
僕の質問に対して、ほぼ全員が頭に手を当てて態勢を低くした。
「・・・誰かに試してみようか?」
陽菜が応答した瞬間、会場が一斉にパニックに陥った。
「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!まだ死にたくないよ!!」
「俺には子供がいるんです!まだ死ぬわけにはいかないんです!」
なんだか僕は不味い事を聞いた気しかしない。
「・・・やっぱりいいです」
「そっか~残念。ところで・・・みんなも投票はよ~く考えてからおこなってね?もし間違えたら・・・ウフフ♪」
陽菜の作戦は美しさのかけらもなく、ただ恐怖で票を集めるという最低なものだった。


549 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/06/23(水) 20:47:45 ID:itWtxVFq
恐怖政治を終えた会場は、お通夜みたいになっていた。
「・・・エントリーナンバー52・・・B90W58H88のパーフェクトボディ・・・祥子さんです・・・」
もはや誰一人として歓声を上げなくなった。
こんな状況で出てくる人はかわいそうだな・・・ってあれ?今祥子さんって言った?
「なんで私だけちゃんじゃなくてさん呼ばわりなのか気になりますが・・・只今紹介にあった祥子です。よろしくお願いします」
姉ちゃんが出てきた瞬間、屍のような顔をしていた観客が一斉に顔をあげた。
「・・・これは・・・幻か?」
「・・・いや、俺に見えているから多分違うだろう・・・」
「地獄で仏に会ったようとはこの事なのか?」
皆の目が徐々に光を取り戻していく。
それほど姉ちゃんは神々しかった。
「ごめんなさいね?本当は私なんかよりもっと美人な方が出たほうが皆さんも嬉しかったでしょうに・・・」
謙虚さ。おしとやかさ。大和撫子。
僕は一体いつからこの言葉を忘れていたのだろうか?
失いつつあったその言葉を、姉ちゃんが見事に取り戻してくれた。
「・・・やっぱ姉ちゃんが一番素敵だ―――って、いででででででででででーーーーーーーー!!」
「おい!そこのゴミ野郎うるせーぞ!!」
すいません。でも僕だって叫びたくて叫んだわけではない。
「・・・安全だと思っていたけど・・・やっぱり敵だったってことね・・・」
「・・・慶太さんに姉なんていませんよね?いるのはかわいい妹だけですよね?」
そう言えばあなた達はもう予選を通過したんでしたね。
とにかく両サイドに金剛力士がいる限り、失言には気をつけないければいけない。


「・・・そろそろ時間の方が押してきているので、質問タイムに入りたいと思います!」
僕のパーティの中で唯一まともに話を終えた姉ちゃんに、無数の手がかざされた。
「いや~さすがの人気ですね~!では一番早かった・・・恭子ちゃん!」
あれ?恭子ちゃんも手を上げていたの?
「最近、私だけの宝物にハエがたかるようになりました。それも2匹・・・その内3匹になるかもしれません。そのハエは本当にうっとうし
くて、ものすごくしぶといんです。一体どうすれば私は宝物を守ることができますか?」
抑揚のない声で恭子ちゃんはそう言った。
全くコンテストに関係のない質問だったが、それでも姉ちゃんは快く答えた。
「えっと・・・とりあえずその宝物を綺麗に掃除したらハエも来なくなるんじゃないかしら・・・」
「でもその宝物が自分から汚れに行ったら?何度注意しても、自ら汚れてしまうなら?」
当てられてもいないのに、岡田が口をはさんだ。
さっきから恭子ちゃんといい、岡田といい、二人はそんなに大事な宝物があるのか?
それにハエがたかって自ら動く宝物って・・・風呂が嫌いなペットか何かか?
「・・・なら檻や首輪で行動範囲を束縛して、定期的にお風呂に入れてあげる・・・とか・・・はどう?」
どうやら姉ちゃんも僕と同じでペットだと思ったらしい。
二人は一瞬僕を見た後・・・にっこりと笑った。
「ありがとう!今度首輪をつけてみます!」
「お風呂って・・・慶太の・・・エッチ♡」
なんで僕がエッチ呼ばわりされないといけないの?
「・・・他に質問のある方は?」
おっと、まだ質問タイムだったな。なら僕もさっきから気になっていた事を一つ。
司会者を完全に無視した僕は、大声で会場のみんなに訊ねた。
「さっきまで僕の横に座っていた太郎君を、どなたか見かけませんでしたか?突然いなくなってしまったんです」


550 :サトリビト・パラレル ◆sGQmFtcYh2 :2010/06/23(水) 20:48:27 ID:itWtxVFq
「さ~いよいよ後半の部の結果発表です!泣いても笑ってもこれが本戦に行ける最後の3人だ!」
結局、太郎君を見つけられないままに結果発表が始まった。
「まず第3位!投票率0.5%、祥子さんです!」
きっとその0.5%は僕達くらいなんだろうな・・・
「そして同じく3位!投票率0.5%、イルカ姫!」
「な、なんでわらわが3位なのじゃ!」
向こうの方でものすごい煌びやかなドレスを着た女の子が暴れていた。
きっとあの人がイルカ(?)という人なのだろう。それを必死で押さえこんでいる従者みたいな人が彼女に投票したのかな?
「そして栄えある1位は・・・何と脅威の投票率99%!佐藤陽菜ちゃんです!」
・・・シ~ン・・・
ここにいるほぼ全員が陽菜に投票したにもかかわらず、誰一人として歓喜の雄たけびを上げない。
それどころかみんな下を向いていた。
「やったよ慶太!」
「う、うん・・・すごいね・・・」
そしてなぜか僕も下を向いてしまった。


「この後30分後に本戦を始めますが・・・その前にこの会場にいる早川慶太君、今すぐに審査員席まで来てください」
悪い事をした覚えはないのに、なぜか審査員達に呼び出しをくらった。
「なんで僕が―――」
「いいから早く来なさい!」
なぜか怒られてしまった。
納得のいかないままそこに行くと、いきなりメインゲストと書かれた席に座らされた。
「えっと・・・僕はなんでここに呼ばれたんですか?」
「あなたには本戦の審査に加わる義務があると思うのです」
周りにいる人が一様にうなずく。
「あなたがはっきりとしない態度をとるから・・・だから今日ここではっきりと決着をつけていただきます」
そう言った男が小さな瓶を取り出した。中にはどす黒い液体が入っている。
「とりあえず、これを飲んでください」
「嫌です」
こんないかにも怪しい飲み物なんて僕には飲めません。
「フフ・・・フハハ・・・フハハハハハハハハハハハ!!」
突然、男が笑いだす。
気がつくと僕の体は他の男によって身動きが取れない状態になっていた。
「貴様に・・・貴様のようなゴミに選択の余地があると思っているのか?」
ゆっくりと小瓶を僕の口に近付けてくる。
「や、やめてくれ!マジでやめてくれ!た、頼むか―――ごぼぉ!?」
容赦がなかった。
どす黒い液体が僕の体に浸透していくのが分かる。
だが不思議と高揚感に包まれただけで、他にはこれといって異変は感じられなかった。
「・・・何の薬なんだ?」
「フフフ・・・それは審査の時のお楽しみだ・・・」
ふざけんな!もう何かの毒はこりごりなんだ!
「ふざけんな!もう何かの毒はこりごりなんだ!」
・・・ん?あれ?
「・・・ん?あれ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕は毒の知識は皆無に等しい。
ただ・・・何となく、死ぬ事よりも恐ろしい毒を盛られた気がした。