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76 :名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:52:00 ID:hv89C7RD
小さい頃に観た特撮ヒーローに憧れる子供は、きっと正常だ。
 親にねだってヒーローの扱う武器を模した玩具を欲しがるのも、本能的に強くなりたいと、子供心に思うからだろう。
 そして小学校に入り、3,4年くらいに入る頃には憧れは消え、「格好よくありたい」に変わるんだろう。別に物理的な強さが必要とされていないのを知るからだと思う。

 久しく観なかった特撮ヒーロー番組を観ながら、向坂修二(コウサカ シュウジ)は物思いに没頭していた。
 視界に映るプロテクターに身を包んだ異能のライダーが怪人の突進に弾き飛ばされていた。
 数年前まで、特撮ライダーの戦闘では火花でなく血飛沫に見立てた血のりが散っていたが、CG技術の成長と報道規制の変化のよって火花が採用されている。
 起き上がったライダーが、ベルトのバックルに付属したスイッチを押すと、突如としてライダーが発光し、光が消えるとともにプロテクターの色が変化していた。
 どうやら、この異能のライダーのもつ強化形態のようで、残像を伴う素早い動きであっという間に怪人を撃退してのけた。

 以前よりも派手になったCG演出に驚きつつ、テレビの電源を切る。
 ヒーローに憧れた事はなかったと思う。
 強さには惹かれるものがあった。
 しかし、俺は「武器」の恐ろしさを知っていた。
 最近のヒーローは武装もメインだ。
 だから玩具ですら、武器を敬遠した。
 ようやく会話が成り立ちはじめたような幼い頃、剣道場を仕切っていた父親に山へ連れて行ってもらった。
 熊がうろつき始める季節で、熊避けの鈴無しでは・・・あっても危険な山だった。
 父親は、「五月蝿いから」と言って付けていかなかったと覚えている。
 そして、生まれて初めて野生の熊に遭遇した。
 父親は・・・法律違反と知ってるだろうが・・・持ち込んだ太刀で一閃の下に熊を斬り殺した。


77 :名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:52:36 ID:hv89C7RD
その頃だけ、最初で最期。武器に憧れた。
 最期は、早かった。
 次の年、夏を迎える頃。
 父親の部屋から太刀を持ち出そうとして、重くて持てず、脇差を持ち出した。半分くらいしかない脇差でも結構重かった。
 「本物の質感」ってヤツは子供心にも感じられ、友達に自慢して一同興奮した。
 近所に在る公園の雑木林の奥、人通りも希薄で仲間の間では「秘密基地」となっている場所。
 深い池があり、気を付ければ溺れることも無い。実際、溺れたヤツはいなかった。
 秘密基地で自慢げに披露し、ヒーローごっこな感覚で友達の一人に切りかかる。

 父親はしっかり者で、刃の外観どころか切れ味まで「完璧」の一言に尽きた。
 先端がかする程度の接触で、友達の小さな手に切り傷が出来上がった。
 突然の痛み。子供には激痛と言っても過言ではないほどの痛み。
 パニックになった友達は、池に落ち、溺れた。
 数十分後親に囲まれ、俺は説教と非難と後悔に包まれていた。
 表向きは「事故死」となった友達。
 社会的に居場所を失った我が家は引っ越した。
 それ以来俺は、刃物や鋭い物にひどく恐怖と嫌悪を抱くようになった。
 心労で、母は急死。
 父親は太刀と脇差をどこかに売ったらしい。
 全てを隠し、遠い街へ逃げた。


78 :名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:53:21 ID:hv89C7RD
        • トラウマ思い出したら気分悪くなってきた。
 何故に日曜の朝から憂鬱にならねばいけないのか。
 八つ当たり気味に原因を特撮ヒーローのせいにして、もう二度と観ないと誓う。
 気分転換に何かしようと思ったが、やることが思いつかずに思考は立ち往生。
 散歩もいいが、生憎の本降り。無駄に風邪を引きにいくようなものだ。
 ゲームもあるが、昨夜遅くまで起きてフルコンプを果たしたりしたので、いまいち気乗りしない。
 短絡的に漫画で暇を潰すことにした。
 自室の前に立つと、人の気配を感じる。
 県内でも治安状態は上位にあるこの街で、泥棒や強盗の類はほぼ無い。
 しかし、海外赴任の父親に代わって家を管理する立場にある俺としては泥棒など洒落にならない。
 気が気でない・・とも言う。


79 :名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:54:06 ID:hv89C7RD
 さらに我が自室には父親の仕送りを中核とした、現在この家にある財産が全て保管されている。
 自衛用に去年購入したスタンガン(改造済み)を手に、部屋へと入る。
 そして、俺の部屋を物色する怪しい人物を打ち倒す・・・・
 はずだったが、そこにいたのは見知った顔。
 隣の家の住人 三国綾(ミクニ アヤ)だった。
 数年前に破損し、有って無いような状態のロックをはずして窓から侵入したであろう(一応)幼馴染は、勝手に俺の携帯ゲーム機を操作して何故か笑いをこらえて震えていた。
 どうやら、ゲームではなくダウンロードした動画を見ているらしい。 
 物語後半のグロシーンが過激なのに対し、前半のコメディ要素が笑わせてくれる人気のアニメを編集してMAD動画として出ていたヤツだ。
 主人公による『萌え』談義には何度も笑ったものだ。
 夢中になっているらしく、俺の存在に気づいていないらしい。
 「・・・・・・・・・・おい。」
 声を掛けるが反応は無い。上等だ。不法侵入者にかける情けなど無いのだよ。
 かつて特に意味も無く習得した消音移動で、忍者のようにしのび寄り・・・

 ゴッ・・・・

 遠慮容赦なく拳骨を叩き込んだ。


80 :名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:55:06 ID:hv89C7RD
「ツッッ!?・・・・うぐぅ・・」
 綾は突然の鈍痛に反応を遅らせて、数秒遅れで痛みに頭を抑えている。
 容姿自体は美少女に分類されるが、起伏に乏しい体格や長い付き合いから男友達といった感覚が根付いてて、「女だから手加減する」とかいう概念が適用されなかった。
 「っ!?・・・修二ぃ・・・いたの?」
 痛みが引かないようで、声が途切れがちになっている。
 「さっきからな。それよりまた不法侵入かよ?俺のプライベートは侵害されまくりだよ。」
 「いいじゃん、いいじゃん。お隣だし。」
 「お隣って理由で俺の自由は侵害されまくってるのかよ!?」
 「気にしない、気にしない。昔は一緒にお風呂にも入った仲でしょ?」
 ・・・・・お前に女性としての恥じらいは無いのか?
 と、問いただしたくなるが、無駄だと判ってるのでそこは流しておく。

 「それは昔の話であって、俺らは今を生きているんだからそんな幼き日の思い出などどうでもいいんだよ。」
 「ねぇ・・・なら今から一緒にお風呂に入る?」
 「ッッ!!?」
 突然のトンデモ発言に思考が一瞬、フリーズする。
 体が熱い。多分、羞恥で体がオーバーヒートしたんだろう。脳は凍結、体は炎上。正反対の反応を示す。顔は真っ赤に違いない。
 体つきはともかく綾は女なのである。そんなこと言われたら意識してしまう。
 「ぷっ・・・・アハハハハハッ 何本気にしてんの?もしかして想像とかしちゃった?」
 「バカ!そんなワケねぇだろっ!!」
 反論としては不合格。
 これでは意地の悪い解釈をされてしまう。実際ニヤついてやがる。
 最近ではこいつに勝てた験(ため)しがない。
 そりゃぁ、俺だって男だ。喧嘩すれば楽に勝てるくらいの自身はある。
 男尊女卑じゃないが、身体的な差があるから。
 同い年でもやはり力は男の方が強いはずだ。
 ただ、綾から見たら俺が初心過ぎるだけだという。
 いつかは逆に言葉でのしてやろうと、密かに心に誓った。
 本日は、他愛もない雑談に終始し、勝負(?)の第二ラウンドもあった。
 結果は敗北。やっぱり勝てないと再認識させられる。泣きたくなってきた。



81 :名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:55:40 ID:hv89C7RD
修二は居間にいるようだ。
 自室の窓を開けて、修二の部屋の窓に手を伸ばす。
 子供の頃のいたずらで、ロックが壊れたまま修理なされない窓をガタガタと上下に揺すり、窓のロックをはずす。
 幸い、居間までは少し間隔があるし、壁も厚いので音が修二に届くことはなかった。
 早速、ザ・抜き打ちチェック!
 大人の読み物がないか厳重に検査してやる。
 定番のベッドの下。
 本棚の裏。
 勉強机の引き出しのその奥  etc etc・・・・・

 一通り探すても秘蔵書物は見当たらなかった。
 やっぱり修二は仕事で裸を晒すようなビッチには欲情しないもんね!
 ついでにS●NY社製の携帯ゲーム機もチェックしよう。修二を疑うワケじゃないけど、気になるからね。
 ・・・・むぅ・・なんかコスプレっぽいのが多いなぁ。しかもちょっと露出多いヤツだ。
 修二ってばこういうのが好みなのかなぁ・・・?
 こういうのは正さなきゃ。修二にはちゃんとした性癖に戻ってもらわないと!
 こんなのは不健全だよ!
 人として二次元じゃなくて三次元に欲情しなくちゃ!



83 :名無しさん@ピンキー:2010/04/11(日) 02:56:18 ID:hv89C7RD
若干の憤りに身を震わせていると、不意に頭頂部から衝撃が駆け抜けた。
 鈍い音と鈍痛。ジワジワと痛みが頭部全体に広がる。
 頭に拳骨をされたようだ。
 目線を上げるとそこに居たのは呆れ顔の、この部屋の主。
 不覚にも気づかなかった。かつての消音移動がレベルUPしてる。
 「さっきからな。それよりまた不法侵入かよ?俺のプライベートは侵害されまくりだよ。」
 「いいじゃん、いいじゃん。お隣だし。」
 「お隣って理由で俺の自由は侵害されまくってるのかよ!?」
 「気にしない、気にしない。昔は一緒にお風呂にも入った仲でしょ?」
 修二の顔に呆れの色が深まった。
 この辺でからかってやる。
 「ねぇ・・・なら今から一緒にお風呂に入る?」
 「ッッ!!?」
 アハハ真っ赤になったねぇ。修二は可愛いなぁ♪
 追い討ちもかけてやるか。
 「ぷっ・・・・アハハハハハッ 何本気にしてんの?もしかして想像とかしちゃった?」
 「バカ!そんなワケねぇだろっ!!」
 む・・・・そんな真っ向から否定しなくてもいいじゃんか。
 お仕置きに、あとでまたからかってやる。
 でも・・しゅ・・修二となら、いつでも・・お風呂も、本番も・・OKなんだよ?

 今日は修二とお話できて楽しかった。進展ないのが少し残念。
 でも・・・いつかは修二から求めてくれるよね?
 気は長くないけど・・・待ってるよ。