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502 :自宅警備員の姉 [sage] :2010/07/08(木) 23:40:20 ID:FIGflbcd
俺こと桐沢誠司が通う高校は、家から歩いて20分ほどのところにある。
どうということもない普通の学校だ。
自分の教室に入ると、セミロングの髪の毛が特徴的なクラスメイト、三原優香がさっそく俺を見つけて笑みを浮かべた。
「おはよう、桐沢くん」
「ああ、おはよう」
「昨日の約束、覚えてる? 今日の放課後、あたしと・・・」
「悪い、三原。そのことだけど、行けなくなった」
「えっ? ど、どうして?」
「いや、いきなり家の用事が出来て・・・ほんと悪い。埋め合わせは今度するからさ」
「うん・・・」
なんとなく気分の沈んだ様子の三原。
すまない。
三原の横を通り過ぎて、窓際の自分の席に座る。
「相変わらず、罪つくりな男だねぇ」
後ろの席から声をかけてきたのは、ニタニタとした笑みを浮かべる女だった。
獄楽寺涼子という名の女で、長い黒髪をポニーテールにして背中に垂らした、涼しげな美貌の持ち主だ。
しかしこの女、身長190センチ、鍛え上げたムキムキのプロボクサーのような肉体を誇る、スーパーマッスルレディである。
ありとあらゆるスポーツと格闘技をマスターしていて、将来は国立の有力体育大学に進学してオリンピック選手にでもなるか、格闘技の大会に波乱を巻き起こす風雲児となるか、そちらの方面の業界から熱い期待を寄せられているらしい。
が、そんなことはいまこの場では関係なく、ただの俺の悪友にすぎない。
「なんだよ、罪つくりって」
「言葉の通りの意味だよ。さっきの三原さんの顔を見たかい? 幸福に満ちた状態から一転、期待を裏切られて絶望へ。まさに天国から地獄だ」
「・・・用事が出来たんだから仕方ないだろ」
「どうせお姉さんのことだろう?」
な、なんでそれを。
涼子の笑みが深くなる。
「すべてお見通しだよ。きみは考えてることが顔に出やすいからねぇ」
くそっ・・・反論できない。
涼子には、姉さんが自宅警備員であること、とにかく手のかかる姉であること、そして、俺が重度のシスコンであることまで知られてしまっているのだ。
切れ長の瞳でこちらを見つめてくる涼子。まるで心を読まれているかのような居心地の悪さだ。こいつに隠し事はできない。
「そうだよ・・・姉さんの具合が悪いらしくてさ、看病してやらないと」
「看病ねぇ・・・くっくっく」
意地悪く、ニタニタと笑う涼子。
「なんだよ」
「べつに? それよりも、放課後がダメでも昼休みは空いてるだろう、誠司?」舌なめずりする涼子の表情は、蛇を連想させた。
軟弱な毒蛇などではなくて、太く長く逞しい肢体で獲物に巻き付き絞め殺す、大蛇のような女である。
「今日も、きみのために弁当を作ってきたんだ。もちろん食べてくれるね?」
ああ、姉さんと同じ眼だ・・・。
余裕と狂気が入り混じったような双眸。
俺はこの眼に逆らえない・・・。