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566 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE [sage] :2010/07/10(土) 00:29:42 ID:hUKrr8YJ

こんにちは。僕の名前は藤川英(フジカワハナ)といいます。
とある高校の二年をやっています。
今回は少し特殊なケースをご紹介します。
決して交わるはずのない二つの物語が交わった極めて特殊な事件です。



Case2『鮎樫らいむ関係者殺害事件』



僕、藤川英が通っている県立東桜(トウオウ)高校は県内でトップの公立高校で大学への進学率も高い。
そんな俗にいう「頭の良い高校」の2年4組に僕は所属している。


「明日からテストだ!部活は休みで学校も午前中で終わりだ。だからといって気を抜くなよ?もしテストで赤点でも取ってみろ…」
教壇では理系主任にしてウチの担任である黒川先生が熱弁をしている。
黒川先生は25歳と新任教師にも関わらず、その鬼教師っぷりで僅か一年で理系主任にまで上り詰めた人だ。
そのドSぶりと美貌のおかげでファンの生徒も多いとか。
「…起きろこの馬鹿者がっ!」
「いっでぇ!?」
そしてそんな鬼教師の目の前。
最前列で愚かにも眠りこけて、たった今黒川先生の制裁を受けたのが…
「白川ぁ!お前は痛い目をみないと学習しないらしいなぁ!?」
「し、しまったっ!?」
クラスメイトで親友の白川要(シラカワカナメ)だ。
黒髪に中性的な整った容姿だが、授業中寝る確率95%は伊達じゃない。
なにしろHR(ホームルーム)で寝るくらいなのだから。
「仕方ない。特別に白川には『地軸の傾きが23.4度の理由を太古の生態系を踏まえて考察』というテーマでレポートを与えよう。期限は明後日、文字数は5000字以上だ。分かったな?」
「なっ!?そんなのありえ…っ!」
思い切り首を掴まれる要。
少しでも口答えしたら首がありえない方向に曲がる気がした。
「…分かったな?」
「り、了解であります!」
周りからは「また要の奴…羨まし過ぎるだろ!」とか「無茶しやがって…」とか様々な声が囁かれていた。


567 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE [sage] :2010/07/10(土) 00:30:41 ID:hUKrr8YJ

「お疲れ様、要。今日も黒川先生に絞られたね」
「おお、英か。相変わらず容赦ない野郎だぜ…。首がもげるかと思ったわ」
HR後、もうお決まりになった挨拶を要とする。
要とは高校からわすが一年ちょっとの付き合いだが、お互い相性が良いようで「親友」と呼べるまでになった。
「要も相変わらずだよね。黒川先生の目の前で寝るなんて…僕には出来ないな」
「全くもって英の言うとおりだ!ったく、いくらなんでも紳士すぎだろ要っち!」
「いでっ!?」
「亮介、お疲れ様」
「おっす!」
勢い良く要の背中を叩いたのは同じくクラスメイトにして親友の如月亮介(キサラギリョウスケ)だ。
赤茶の短髪に長身で引き締まった身体。典型的なスポーツマンといった風貌だ。
「亮介ぇ…お前は力強すぎだって、いつも言ってんだろうが!」
「この程度で痛がるとかお前はあれか、都会のもやしっ子か?あ、それからこの前借りてたコレありがとな。返すわ」
「ああ、サンキュ…ってどさくさに紛れて教室でこんなもの渡すんじゃねぇぇえ!!」
「ぐはぁ!?」
要渾身の右アッパーで宙に浮く亮介。二人は同じテニス部でずっとペアを組んでいる。
僕はバスケ部なので部活をしている時の彼等がどんな様子か知らないが、今のように賑やかに違いない。
「はぁはぁ…このボケが!」
「ナイス…アッパー…!」
GJと親指を立てて敬意を表する亮介。
ちなみにさっき要に渡したのは18禁ソフト。平たくいえばエロゲーというやつだ。
僕にはさっぱり理解出来ないが要の趣味の一つである。
昨日もスカイプで『CGコンプするまで寝ないから!』とか言っていたし。
「要、ナイスアッパーだと思うけどそれ、隠さなくて良いの?もうそろそろ…」
HR終了後5分経過。
ちょうど要の"趣味"の天敵である彼の妹とその仲間が姿を現す時間だった。
「もうそんな時間…っ!」
天敵が迫っているのに焦った要は急いで"趣味"を隠そうとするが、焦ったせいでそれを落としてしまう。
「わっ!?」
「なん…だと…」
要を嘲笑うかのように"趣味"はクラスメイトの足に当たり教室の扉の前に滑ってゆく。
そして無情にも
「兄さんお待たせ!」
「迎えに来た」
天敵達が扉を開くと目の前にそれがあるようにセットされていた。
「あらら」
「やっべぇ…」
僕と亮介は無意識の内に後ずさる。
当の要はというと固まっていた。まるで蛇に睨まれた蛙状態である。
「………13回や」
「……はい?」
明るい茶髪をゆったりとウェーブさせている普段ならば可愛らしいはずの要の妹、白川潤(シラカワジュン)の意味不明な発言に思わず要が聞き返す。
「…兄さんがこのどうしようもなく下品な妄想の塊を学校に持って来て」
潤が一歩近づいてくるごとに"ズンッ!"という重低音が響いてきた。
「それが私に見つかった回数が」
「ま、待て!話せば分かる!話せば…」
「13回目だって言ってんのよぉぉお!!」
「犬養毅っ!」
潤お得意の高速回し蹴りを鳩尾にもろに受け、要は地に墜ちた。
「「か、要ぇぇぇえ!!」」
僕達は…君のこと、忘れないからね…。
「……はぁ」
入口でその一部始終を見ていた白髪ロングの女の子、春日井遥(カスガイハルカ)はため息をついた。
これもいつもの光景である。


568 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE [sage] :2010/07/10(土) 00:31:39 ID:hUKrr8YJ

「いってぇ…。マジお前はもう少し兄を大事にするべきだな」
「全部兄さんが悪いんでしょ!あんなもの学校に持って来て…」
「違いないな」
「亮介ぇ…!てめぇ誰のせいだと…」
「ほらほら、着いたよ生徒会室」
「優も待ってる。早く入ろ?」
要達が騒ぐのを僕と遥で宥めながら生徒会室に到着する。
礼儀として遥がノックをする。会長はこういう所には厳しいんだよね。
「…はい?」
「わたし」
「遥か。皆も一緒だな?入っていいぞ」
扉を開けると生徒会室のソファーに燃えるような明るい紅い髪に碧眼というコントラスト。
そして綺麗な顔立ちがそれを強調している我が高校の生徒会長、美空優(ミソラユウ)が座っていた。
「待っていたぞ皆。まあまずは座れ。新しい紅茶が入ったんだ」
相変わらず会長は一挙一動が美しい。
まるで女王様だな、なんて僕は思った。
「優の紅茶、好き」
そんな会長に遠慮することなく遥は空いているソファーに腰掛ける。
「私も好きだな。特にアールグレイは格別だよ!」
「ふふっ、褒めても何も出ないぞ?」
僕達男三人も座る。
そう、これが僕が所属する"何でも屋"…通称"要組(カナメグミ)"と呼ばれる集まりであったりする。



"要組"。
この東桜高校では知らない人がいないほどの集団だ。
基本的にどんな些細な依頼でも受ける何でも屋だが、そのメンバーがまた凄まじい。
まず生徒会長の美空優。
そして一年でトップクラスの美少女、白川潤と春日井遥。
三人ともファンクラブが出来るほど有名である。そして何故かそこに僕達男子三人がいる。
始めは気にもされなかったが校内や地域の事件を解決し、一気に有名になった。
何故美空会長や潤、遥を差し置いて"要組"と呼ぶのか。
生徒の間では白川要がリーダーの理由が分からない、明らかに美空会長の方が適任だろ、という意見が専らである。
「じゃあ今回調査してもらったことを皆に報告してもらおう」
現に今仕切っているのは美空会長だ。
でも…それでもリーダーは要しかいない。
話すと長くなるので理由は語らないが、僕達は"要組"でしかありえないのだ。
「じゃあまずは…潤から頼む」
「はい!私が調査した、鮎樫らいむの事務所での…」
僕達が今調査しているのは最近良くニュースでやっている『鮎樫らいむ関係者殺害事件』だ。
これは依頼された訳ではなく、珍しく要がやろうと言い出した。
たかが高校生の捜査だと思って舐めない方が良い。
まず美空開発といえば航空や電子機器などで日本一のシェアを誇る。
あの日本有数の大企業、藤川コーポレーションともコネクションがある程だ。
そして亮介の父親は国会議員の如月龍一郎(キサラギリュウイチロウ)で亮介自身も政界のパーティーなどを通じて様々なコネクションを持っている。
ようするに未来の日本を代表するような人達がこの要組にはいる。
勿論様々な分野でコネクションを持っている訳で。
「遥は…大丈夫か?また県警のデータベースをハックしたらしいが…」
「痕跡は残してない。わたしのハック、ステルスだから」
そして一見大人しい遥はネットのアングラで囁かれているステルスハッカー"ハク"だっていうから驚きだ。
毎回一番危険なポジションを担当するため、皆冷や冷やしてるが当の本人は知らん顔でハッキングしている。
「心配すんなよ会長。遥のステルスは完璧だ」
「そう、完璧」
…しかし何より恐ろしいのはこれらの面子を白川要が僅か一ヶ月で集めた、という事実だ。
正確には集めたというより自然と集まったのか。
とにかくバックグラウンドには何もないが、彼には人を集める一種のカリスマ的な何かがあるのかもしれない。


569 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE [sage] :2010/07/10(土) 00:32:36 ID:hUKrr8YJ

「よし。皆が集めてくれた情報でかなり分かった。まとめると…」
皆が一通り報告をした後、美空会長がホワイトボードに情報をまとめる。
「まず手がかりとして現場付近には赤いペンキの痕跡が残されていた」
「噂話だけどね…」
「警察内部の情報とも一致するから大丈夫」
潤が自信なさげに答えるのを遥がフォローする。
「そして殺害された被害者達だが…いずれもナイフで一撃だ。犯人は相当な使い手だろう。つまり…」
「…もし犯人を捕まえるなら覚悟した方が良いな」
要の一言に全員に緊張が走る。
そう、この事件の犯人は相当の実力者。下手したら殺しのプロかもしれない。
「要の言う通りだ。恐らく次に狙われるアイドル、鮎樫らいむだが防犯カメラに彼女の姿が映っていた」
「場所は?」
「…海上娯楽施設『アクアマリン』だ」
その建物は藤川コーポレーション…つまりは僕のお父様の会社の所有物だった。
「確か…明日は人が来る分、閉園後の警備は一切しないって聞いたよ」
元々『アクアマリン』は孤島の海上娯楽施設。
モノレールでしか行けないため、終電後は警備の必要があまりない。
「…もし鮎樫らいむがそれを知っているなら、彼女は明日の閉園後ここに現れるはずだ」
「おいおい、何で鮎樫らいむがわざわざそんなところに行く必要があるんだよ?」
亮介の質問は最もだが…
「何か弱みを握られているのかもしれない。あるいは…」
「…彼女が犯人で誰かを呼び出した、か」
要が美空会長の言葉を引き継ぐ。
「いずれにせよ、鮎樫らいむがわざわざ『アクアマリン』に来たのには意味があるはずだ」
「まあ運よく明日は午前中で学校は終わりだ。皆で遊びに行ったついでに捜査で良いんじゃないか?」
「要…」
要の軽口を美空会長が嗜めようとするが
「やったー!じゃあ明日は兄さんと皆でお出かけだね!お弁当作んなきゃ!」
「潤、わたしは卵焼きが好き」
「おお!何か青春してる感じがするぜ!良く言った、要っち!」
「いってぇ!だから亮介!てめぇはいちいち力が強すぎんだよ!」
またいつもの風景に戻ってしまう。
「…はぁ。全く…」
「大丈夫ですよ、会長」
憂鬱な表情を見せる会長に僕は声をかける。
「僕達なら、何とかなりますよ」
「…そうだな」
「それよりよく防犯カメラの中から鮎樫らいむを見つけましたね」
ああ、と会長は苦笑しながら答える。
「ここ一週間の市内の防犯カメラを、入手出来るだけ入手して全てチェックしたからな」
「……え?」
思わず凍り付く。
「一人でやるのは大変だったな。おかげで二日間は寝ていないが…まあ何とかなるものだな」
「会長…何でそこまで?」
「皆も頑張っているし、要のためにも手は抜けないだろう?」
嬉しそうに微笑む会長に僕は思わず頷くしかなかった。
…要、君は朴念仁だから気がついてないだろうけど…とりあえず会長に謝ろうね。


570 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE [sage] :2010/07/10(土) 00:33:21 ID:hUKrr8YJ

「じゃあ明日の12時に駅前の喫茶店『向日葵』に集合な!忘れんなよ!」
仲間と別れて家路に着く。部屋の途中で執事である遠野亙さんに会った。
「あ、遠野さん」
「お帰りなさいませ、英様」
「あ、そういえば…」
「亙~!ちょっと来て~!」
遠くから姉さんの声がする。遠野さんは姉さん専属の執事なので邪魔は出来ない。
「…大したことじゃないからまたで良いや。姉さんのこと、よろしくね」
「はい、それでは失礼します」
また明日にでも言えばいいか。
そんなことを考えながらも僕は何かにずっと引っ掛かっていた。
「遠野…亙…」
ただの執事のはずなのに…。
結局分からず仕舞いで僕は運命の日を迎える。



次の日、午後11時40分。
僕は一人で海上娯楽施設『アクアマリン』で建設中のアクアポートに来ていた。
今朝少し調子の悪かった僕は昼からの誘いには行かず、夕方調子が戻って来たので途中からメンバーに合流した。
やはりと言ったところか、日中は鮎樫らいむは姿を見せず僕達は閉園まで潜めた。
そして閉園後各自散って探索をすることになり、僕はアクアポートを探索するのだが…。
「何か…当たりっぽいんだよね」
根拠は全くないが何となくここに誰かいる気配を感じる。
「一応皆に連絡…!」
一階のエントランスに入ってすぐ、何かが壊れるような大きな音がした。
…完全に貧乏くじだね。先頭は要や会長、亮介の得意分野なのになぁ。
「…連絡しますか」
僕は皆に連絡を入れた後、駆け足で上の階へ向かった。