45 :名無しさん@ピンキー [sage] :2010/07/12(月) 00:20:14 ID:hTCB3syZ
僕は妹に嫌われている。
自分で言うのもなんだけれど、容貌、性格面においてそれほど嫌悪感を持たれるような要素は無いと自負していているし、高校生として何か問題点があるとも思っていない。
平々凡々。普通で普通な高校二年生、それが僕だ。
なのに、妹には嫌われている……何故?どうして?
妹は、少しクセはあるものの、とても優しく、気品があり、怜悧な子だ。兄歴15年の僕が言うのだから間違いない。意味も無く人を嫌いになっちゃう子じゃないはずなのだ。
いや、もしかしたら知らず知らずのうちに傷付けてしまったのかもしれない。たった16年しか生きていない僕が言える事じゃないとは思うけれど、人間関係とは難しいものなのだ。
他の可能性として、ただの僕の杞憂だという案があるのだが、同じ家に住んでいる同士、こんな気持ちを胸に抱えて生活したくはない。
僕は妹に嫌われている。
いや、間違えた。
僕は妹に嫌われたのだ。
話は小一時間前に遡ることとなる……。
47 :名無しさん@ピンキー [sage] :2010/07/12(月) 00:22:13 ID:hTCB3syZ
夏。
そろそろ蝉が鳴き始めるんじゃないかという暑さに差し掛かった頃の夏である。
最近冷房が活動を始めた我が家のリビングには、パソコンでSSを見る僕と、ソファの上で寝転がって文庫本を読む妹のカズサとがいた。
カズサは肩までで切ってある黒髪に、白で無地の半袖シャツとショートパンツという涼しげな格好で、何時もどおりムスっとした表情での読書だ。
いや、カズサのツリ目がそういう仕様に見せているだけなのかもしれない……妹は気の強そうな美人顔なのである。
カズサの容姿は、遺伝子というものを疑うほどに美しく整っていて、世界ランキング3位に乗せてやっても良いと思える程なのだ。決して兄贔屓ではではない。決してだ。
そして、僕はといえば、投下されたSSを読み終え「GJ!」と書き終えたところだったのだが、どうでもいい。話は妹の描写に戻る。もっと妹について語りたい。
カズサは肩までのばした、サラサラとして艶やかな黒髪をしており、吊りあがった眉に、凛とした目つき、すっと通っている鼻筋から目線を下に下げれば、小さな可愛らしいピンク色の唇が見える。
身体つきは華奢で、強く抱きしめてしまうとポキリと折れてしまいそうだ。
雪のように白い肌。
遠目でもきめ細かそうな白い肌。
背丈 は僕より頭一つ分小さいぐらいで、前にこっそり診断書を盗み見たときは154cmだった。
48 :名無しさん@ピンキー [sage] :2010/07/12(月) 00:24:53 ID:hTCB3syZ
「何をジロジロ見ているんですか、兄さん」
「いや、いつかはお嫁に行っちゃうんだなぁって思うと悲しくなってさ」
「そんな遠い先の事……そもそも私なんて誰が貰ってくれるかどうかもわかりませんよ?」
「いるよ!いまくるよ!だから誰のとこにもいかないでね!?」
「兄さん、前後の言動が合っていません」
やめてくれ、そんな呆れるような目で見ないでくれ。
妹との話に専念するためにパソコンをシャットダウンさせた僕は、キャスター付きの椅子の上で床を蹴った。
パソコンチェアが僕を妹のもとへと運ぶ。
「ところで、妹よ」
「藪から棒に、なんですか?兄さん」
「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」
「ええ、どうぞ?もったいぶらないでください」
息を一つつき、一呼吸。
「おっぱいをさわらせてくれないか?」
なんでこんなことを聞いたのか?
そんなの簡単だ。
僕はムラムラしていたのだ。
「死んでください」
そして、妹の返答はあまりにも無慈悲なものだった。
僕はけっこうメンタル面での強さには自信があったのだが、妹に「死ね」と言われればさすがに死にたくなる。
僕は居住まいを正し、妹の瞳を見据えた。
「申し訳ありませんが、お胸とお尻を触らせてはもらえないでしょうか?」
「なんで丁寧に言ったんですか。丁寧に言ったら触れると思ったんですか。それに、触る箇所を地味に増やさないでください」
答えは如何に。
「なんですかその期待に満ち溢れた目は。答えは変わりませんよ」
「な、何故!?」
椅子からガッシャンと落ちて、僕。
「いや、だってそれはないでしょう兄さん」
「こら、お兄ちゃんと呼びなさい」
「変態義兄ちゃん」
「義理になっちゃったよ」
「おい、兄貴」
「兄貴はやめて!」
「おい、幹也」
「あ、名前の呼び捨ては萌えた」
お兄ちゃんポイント2200回復。
「ジュース買ってこいよ、クソ兄貴」
「兄貴はやめてってば!」
妹に兄貴と呼ばれるだなんて、僕は夜うなされる事になるだろう。
49 :名無しさん@ピンキー [sage] :2010/07/12(月) 00:26:44 ID:hTCB3syZ
だって、仕方が無いじゃないか。
僕にだってちゃんとした理由があるんだ。
いや、言い訳なんだけど。
僕はこの一週間部活の合宿だったのだが、それが女子の先輩とのものだったのだ。それも、二人っきりで。
勿論彼女なんて出来たことのない僕だ、妹免疫はあれど女子免疫なんてない僕だ。
同じ部屋での寝泊りし、ついでだからと言われ下着等々を洗濯させられ、興味本位で勝手につけたやがったペイチャンネルの観賞に付き合わされ、そして同じ湯船を使った。
思春期には辛過ぎるというものだ。
だから、だから……っ!
「お前のペッタンコを揉ませてくれないか」
僕は、力強く、一字一句、一文字一文字しっかりと、言った。
「ぺったん……こ?」
妹の周りの雰囲気が冷房の設定を超えて下がった……気がした。
不思議な事に、蝉の鳴き声が聴こえない。
ゆらりと、カズサが立ち上がった。
「~っ!死ね!馬鹿兄さん!!」
「ぶっ!」
妹は、そう叫ぶと、僕に本を投げつけて自室のある二階へ上がっていってしまった。
階段を乱暴に駆け上がっていく音。
扉を力任せに閉めてのであろう轟音。
「随分と機嫌が悪かったな。生理なのかな?もしくはあれがツンデレってやつなのか?」
そうして、僕は妹に嫌われることとなる。
落ちた文庫本を拾い上げると、その表紙には『疲れた兄の励まし方』というタイトルが印刷されてあった。
とりあえず、僕はサイトの保管庫に保存されているSSの続きを読むことにした。
最終更新:2010年07月14日 13:14