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53 : ◆fyY8MjwzoU :2010/08/01(日) 22:33:54 ID:o3zOFdrj
「あ、卓也さんおはようございます」
 学校に行く途中、愛さんと出会った。エプロンをして箒を持っているのでたぶん掃除中なのだろう。けれども……
「ここもう店と関係ないところですよね」
 ここは店からかなり離れたところだと思うのだが……
「これはですね、私の料理の中にビーフシチューとかありますよね。そういうものは煮込むのに時間がかかるのですよ。
 圧力鍋でもいいのですが……普通に煮込んだほうが自由に味付けできるので私は圧力鍋使って無いんです。
 でも味の調節し終わった後、完成までのぐつぐつ煮込む時間があるのですよ。その時間暇なので毎日少しずつ掃除しようと思ったらここまで来たんです。
 け、決してこの道のりを一日で掃除したわけじゃありませんよ!」
 テレながらそんなことを言う。ああ、この人は現代社会に生まれた女神なのだろうな。自分の空いてる時間を社会のために使うなんて俺なんて、俺なんて……
「あ、そういえば……」
 愛さんは自分の鞄から四角く、布に包まれた物体を差し出してくる。
「これ、新作の和食メニューの試作品なんですがよかったら食べてくれませんか?」
 て、手作り弁当……女性が丹精込めてつくってくれた男子の夢のアイテム!……母親がつくっているのも一応手作りだって!?
 我が家の母親は9割は冷凍食品に済ましてるから手作りじゃなく手詰め弁当だ! あの手抜きを手作りと認めるか!
「あ、ありがとうございます! ぜひいただきますね」
 俺は嬉々として弁当を受け取り学校へ向かうことにした。


54 : ◆fyY8MjwzoU :2010/08/01(日) 22:34:16 ID:o3zOFdrj
 校舎に入り自分のクラスの前に向かうと男子が喧嘩をしているようだ。片方は俺のクラスメイトの男子だ。
「どうしたんですか?」
 俺の声が聞こえると周りの人たちの一部が俺を睨み始めた。これはどういうことなのだろう。
「副会長! とりあえず教室に入ってくれ!」
 クラスメイトに手を引っ張られ教室に連れ込まれる。
「え、え?」
 何が何なのかが分からないがとりあえずついていくことにする。
 教室に入るとほぼ全員のクラスメイトが電話をしている。なんかどっかの仕事場みたいな感じになっていた。
「副会長! 率直に聞きます」
「え、えっと……はい」
 雰囲気に負けて椅子にすわりおとなしくなってしまう。これはどういう……
「ずばり! 万引きしましたか? 万引きして無いなら理由も添えて」
 万引き? 万引きなんてするわけ無い!
「するわけ無い、するわけ無い。万引きしたらポイントつかないから。今狙ってるぬいぐるみがあってね。
 妹ほしいらしいから万引きするよりポイント溜めるために普通に会計するよ」
「だよな。それでこそ副会長! 俺たちはお前の無実を信じてるからさ。こうやって知り合いに電話をしてるんだ」
 あー嬉しいな。これ。普通に見捨てると思うのに……
「お前が万引きで退学になると俺らのクラスNo1になれなくなるからな!」
 別に俺のためじゃないのか……なんか裏切られた気分になった。
「向こうは万引き写真を証拠としてるけどあれは副会長じゃないね。副会長のスーパーの買い物スタイルは……」
 あれ、俺に買い物スタイルとかあるんだ……いつも同じだから気がつかなかった。というかよく知っているな。
「エコバッグは常に常備、そのエコバッグは常にカゴの中にいれているし底値表も常備しているな。情報源は副会長を影から愛でる会」
「なにその不穏な会! そんな会初めて聞いたよ!?」
「ちなみに会員数は97人だったり」
「意外に多いな!? お前等入ってるとか無いよな」
「「「そんなバカな」」」
 そうだよな。そんなわけ無いよな。
「「「入っているに決まってるだろう」」」
「お前等……冥土に送ろうか」
 それにしても会長と正敏はきてないようだった。珍しいこともあるようだ。
 時間が経ち朝のHRになった。我がクラス担任の月島海先生が暗い顔で入ってくる。
「今日の朝の職員会議でいろいろもめている。すまない。現状を簡単に言うと二つに教員も割れているのだ」
 備え付けのミカン箱に乗りながら月島先生は俺たちに現状を説明した。生徒会の顧問であるからこの事件での苦労も凄まじいだろう。
 補足として月島先生の身長は148cmぐらいらしい。
「私を始めとする写真が嘘でやっていないと主張するところと横岡先生の目撃証言をもとにしてしたと主張するところだ。
 今日はまだ大丈夫だが日にちが経つと切ってしまおうとか思う輩がでてくるだろう。それは避けたいのだがなかなか難しい。
 とりあえずその日は生徒会会議があったから行くのは無理だと説明してるが途中で抜け出せるとか主張されてな。私の力不足だ。すまない。
 卓也少しの間耐えていてくれないか?」
「はい、俺の身からでた錆びみたいなものですし耐えますよ」
「いやお前のせいじゃない。それは覚えていてくれ。こんな卑劣なことを考えた奴が悪いからな。さてHRを終わろう。
 みんななるべく卓也を支えてやってくれ」
 先生も心配してくれたのか。しっかりしないと駄目だな。俺。授業表を見る。ええっと……合同体育、情報A、音楽Ⅱ、数学Ⅱか。
「って! 全部移動教室じゃないか!!」
 視線に耐えられるかな……って最初が凄く鬼門じゃないか? 合同だからな……きついだろうな……


55 : ◆fyY8MjwzoU :2010/08/01(日) 22:35:07 ID:o3zOFdrj
「はぁ……なんとかなった……」
 午前中の授業が終わり階段の踊り場で一息ついていた。違うクラスのやつらからの視線がこんなに痛いとは……
 あと二時間だが大丈夫だろう。両方とも文化祭の準備だからな。妨害とかもさすがに無いだろうし。
 弁当を食べるためにクラスへ向かう。今日の昼ごはんは愛さんの『手作り』(ここ重要)弁当だからな。
 わくわくしながら階段を下りていると背中に誰かの気配を感じた。
「昨日ぶりだな。あんたの妹の茜ちゃんは貰うぜ。いいだろう」
「なっ!?」
 衝撃が走り急に浮遊感が襲う。落ちながら相手の顔を見ると昨日蹴っ飛ばした男だった。
「そういえばオタク共はお兄様とか兄上とかいうんだっけか。兄上、妹は貰うでござるよ。ぎゃははは!」
 階段を転がって落ちていく。気絶はしなかったものの下まで落ちたときにはもう体中が痛くなっていた。
「ぐっ……」
「すごいな。その生命力。ゴキブリみたいだな!」
 ゴキブリはお前だ。そう言い返してやろうと思ったがが口が動かない。
「それじゃお兄さんよ。次お前が茜ちゃんに会うのは茜ちゃんが俺たちの子供を妊娠したときだ」
 あいつは階段を登っていってしまう。今追いかけても無意味だろう。この痛みじゃ走ることはできても追いつけない。
 妹も心配だがたぶん大丈夫だと思うから保健室に向かおう。教室にいれば引っ張っても誰か止めてくれるだろうし……
 とりあえず痛む体を引きずって保健室へと向かう。

 保健室には誰もいなかった。そのほうがいい。俺は棚から湿布を取り出し腫れているところに貼っていく。
 無駄遣いといわれるかもしれないが気にしないでペタペタ貼る。張り終わりとりあえず保健室のソファーに腰をかける。
 ああ、腹減ったな。今日の昼ごはん楽しみなのに。……とりあえず直ったらあいつを殴ろう。うん。いや半殺し。
『え……っと、ここ?』
 女の人の声がして扉を開ける音が響いた。ドアの向こうには愛さんがいた。
「え、え、ええ!? どうして愛さんが!?」
「えっと、簡単なことですよ。この学園に自由参加枠ありますよね。それに登録しようと思って。
 でも書類にサインしてるときに指を紙で切っちゃって……だから絆創膏貰いに来たんです」
 そういえばそういう参加枠あったな。利益の6割はとられちゃうけど宣伝効果があるから結構色々なお店が参加している。
「ところで……どうしたんですか?」
「ちょ、ちょっと転んで……」
「いや、あの……それならどうして泣いているんですか? 転んだだけじゃ……」
「泣いてなんていませんよ」
 何言っているんだろう愛さんは。泣いてるわけ無いじゃないか。このぐらいで。頬に伝っているのは気のせいだ。
「辛いときは泣いてください。私が受け止めてあげますから」
 そういって抱きしめてくれた。でも……兄なんだ。泣くわけにはいかない……。


56 : ◆fyY8MjwzoU :2010/08/01(日) 22:35:27 ID:o3zOFdrj
「兄は泣いたら駄目なんだ。強く見せないと……」
「兄かもしれません。でも私にとっては弟です。だから……泣いてください。弟なら泣いても……平気ですよね」
 堪えきれずに愛さんの胸の中で泣いてしまう。こんなことで泣くなんて弱いのかもしれない。でも苦しかった。怖かった。いつかクラスメイトにも無視されるのではないかと。
「ど、どうすればいいか……ま、万引きなんて、してもい、い、いないのに! あんな写真で……あんな写真一枚で……」
 今までのことを全部話した。愛さんは責めないで頭を優しく撫でてくれる。
「耐てんだね。えらいよすごく。それにいいクラスメイト持ってよかったね。私も卓也さんの無実を信じてるよ」
「愛さんって姉みたい」
「お姉ちゃんだよ。一応ね」
 急に頭を撫でていたのが止まる。どうしたのだろう。
「あ、あれこの首の火傷は……」
「小さいときにできた火傷らしいです。なんかやかんのお湯を被ったって」
 愛さんの目が一瞬鋭くなったがすぐに元に戻り笑顔でまた頭を撫で始めてくれた。
「そうですかー火傷って傷痕って残りやすいんですね」
「たぶん偶然残ってるんだと思いますよ」
「もしかしたら必然なのかも」
 くすくすと愛さんは笑いながらこたえてくれる。心が軽くなっていく。これならたぶんやっていける。
「ありがとうございます。愛さん」
「気にしないでください。私にできることがあればなんでも言ってください。姉……なんですから」
「……はい!」
「私はそろそろ行きますね。書類のサインまだ途中なので」
「俺も教室に行きます。それでは」
 例え血が繋がっていなくても姉だと思えるこの人のために決意を新たに教室に向かうことにする。まずは姉の特製弁当を食べないといけないな。

 私は兄さんがケガをしたと聞いてすぐに保健室に向かった。階段から落ちたらしい。兄さんは階段から落ちても受身は取れるだろう。それなのに落ちるのは他人に押されたからだろう。
 兄さんになにかあったら私は苦しい。なぜなら嘘をつくから。湿布をはり、笑って平気といって弱いところを見せない。それが嫌だった。
 まあもし怪我が軽傷ならからかおうと思っていた。保健室の壁に耳を当てる。兄さんの声が聞こえる。一人なのかな? そう思ったけどそれはちがった
『兄かもしれません。でも私にとっては弟で--』
 え……兄さんが……弟? 違う、兄さんは兄さんなの……弟じゃない。私だけの兄。誰にも邪魔できない家族の絆で結ばれているのに。なんで偽者のやつなんかに
「ど、どうすればいいか……ま、万引きなんて--』
 兄さんなんで泣いてるの? そいつは家族でもなんでもない女なのに弱いところを見せているの? いや……なんで……
 兄さんの悲しみを受け止めるのは私じゃないの!? 何で……妹じゃ駄目なの? 妹には涙見せられないの? 妹相手に弱みは見せられないの?
 あの女がいるから私から慰めを貰わないの? つらいとき、悲しいときの捌け口にしないの? 妹を性欲の捌け口にもしないの?
 兄さんなら私をいくら犯してもいいのに。
「あの女をころ--んぐっ!?」
 急に後ろから押さえつけられる。兄さんはすべすべしていい気持ちだがこいつの手はざらざらで気持ち悪い。
「んー! んー!」
「お休み茜ちゃん」
 薄れていく景色の中後ろにたくさんの男が見えた。何されるか分からず、恐怖を感じたまま意識がなくなった。