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名前: ◆fyY8MjwzoU [sage] 投稿日:2010/08/04(水) 23:03:31 ID:nc52WNAj
「ん……」
 目を覚ますと薄暗い場所に私はいた。かび臭く埃っぽい。天井や壁の隅のいたるところに蜘蛛の巣があった。
 首には首輪、脚には縄で縛られており背中にある腕はバレーボールの柱に縄で固定されていた。
「すごい手の込みよう……」
 私は閉じ込められたことを感じさせるには十分なほどだった。これから何されるかは少しは検討がつく。
「目が覚めたのか。やっとかよ。目覚めはどうだ? 茜ちゃん」
「最悪の目覚め。すごく気持ち悪い」
 確か倒れる前にあったことは……ああ、兄さんと知らない女の会話か。
「そんなこと言わないでよ。茜ちゃん。そういえば茜ちゃんはどうして野球部のマネージャーを辞めたんだい?」
 ああ、そういえば野球部のマネージャーやってたね。兄さんの妹として恥ずかしいことにならないためにも入ってたんだ。
「あんたたちがマネージャーを呼び出して性欲処理させていた。なんて知ったらだれでも抜けるわよ」
 顧問公認のマネージャーへの強姦。最低な顧問だし、それを実行している最低な部員だ。
「そんなことしているから甲子園に行っても優勝できないのよ」
 なかなか強いが所詮その程度だろう。こんな女をものとしてしか扱わない部活が優勝できるはずがない。
「言うじゃねえか。立場わかってんのか? あぁん?」
 もう一人の男が私の髪を引っ張る。
「触らないで!」
 兄さんが褒めてくれた髪をこいつらの手が触るなんて……
「チッ、さっさと犯しちまおーぜ」
「まだ待てよ。あと三人くればいいだけなんだから」
 やっぱり陵辱か。男って短絡的だ。
「そうだ。いい事教えてやるよ。お前の兄貴いるじゃねえか。あいつ元野球部だぜ」
 え……兄さんが野球部? あの兄さんが? あの優しい兄さんが女を無理やり……?
「兄さんが女を無理やりなんて!! やるわけない!!」
「確かに兄貴はやってないな。護ろうとして俺らを殴って退部になったからな」
 や、やっぱり違うんだ。よかった。兄さんがそんなことしないからな。
「でも、お前がなぜ野球部のマネージャーになったか分かるか?」
「え、それは自分で決めて……」
「兄貴はお前の扱い方知っているんだよ。お前は反対されるとそっちに行くってな。実はな、お前の兄貴が俺らに攻撃されていない理由は……
 お前を来年野球部のマネージャーにするから助けてくれと頼まれたからだよ」
「そ、そんなわけない! 兄さんが私を売るなんて! そんなわけ…… 違う! 違う違う違う!! 兄さんは違う! わが身可愛さにそんなこと!!」
「でも事実マネージャーになっただろ? まあお前がマネージャー抜けなければお前の兄貴の合成写真なんて作らなくてもよかったし。
 さっき階段から落とさなくてもよかったんだよ。つまりお前自身が兄貴を追い詰めたんだわかんないかな? それにしてもうるせえな。
 ガムテープかせ。こいつの口を止めるから」
「はいっと」
 もがいたが殆ど繋がれているため私の抵抗は無意味に近かった。
「んーんー!!」
 呻いていると扉が開かれる。兄さんだと嬉しいけど……ありえないだろうな……。
「もうやってんのかよ。うわ、ガムテープしてると口の中にいれれねぇじゃん!」
「仕方ないだろ。まあ躾けたらいくらでも出来るから気にすんなよ」
 どうせ兄さんはあの女とイチャイチャしているんだろう。私なんか。私なんて居なくても変わらないんだね。
 ああ、そうだもんね男に売ったのだから要らないってわかるね。
「さていい加減犯してやるよ。メンバーも集まったしな」
 私の目の前には五人の男がいる。どいつもこいつもズボンに手をかけていた。
 でも兄さん。どんなに要らなくても初めては兄さんがよかったな。

「待て!!」
 体育館に光が漏れる。男達はみんな光が漏れ、声が聞こえたほうを向いた。
 扉は少しずつ開かれていく。
 私を見捨てたはずの兄さんがどうしてと思ったが嬉しかった。だって私はまだ要る存在だと分かったからだ。
「悪逆非道……暴虐の限りのやつらは纏めて始末する!!」
 兄さんかと思ったら人影は違った。身長は兄さんぐらいだったがその影は金髪の長い髪をなびかせて変わった女子の制服を着ていた。
 え? なにこの痛い人。
「「「だれ? お前?」」」
「あ、あれはアニメの人気キャラの制服姿のコスプレですよ! すげぇ似合ってる!! というか本物!?」
「お前オタクだったのか?」
「アニメ見てるだけでそれはひどいっすよ。キャプテン!」
 たしかに似合っている。でもどうしてそんな子はここに? 兄さんが雇うのはおかしい。雇うぐらいなら自分でくると思うけど……
「許せないな。陵辱なんてする女の敵は全員……身の程を分かってもらわないと」
 なんか脊髄反射で笑いが込み上げてきた。どうしてだろう。似合っている。違和感もない。違和感がないのが不思議なのかどうしてか笑いが止まらない。
「キモいんだよ! クソ女」
 一人の男が女の子に殴りかかる。『体格の差、それに性別の差がある。勝てない』としかしその予想は裏切られた。
 少女は少し横に体をずらして避けたところに横っ腹に思いっきり蹴りを入れていた。少女より大きい男は紙のように吹っ飛ばされる。
「ごめんなさい。脚が滑ってしまって」
「あれが滑った!? あれでか!? 確実に狙わないとあんなに鋭い蹴りなんてお見舞いできないぞ!!」
 男のケガなんて気にしない冷酷な顔で私に近寄っていく。どうやらあの人の仕事は私を助けることだろう。
「まてよ! 俺たちに断りもなく近寄んじゃねぇよ」
 もう一人の男が横から出てきて殴りかかってくる。いやあの野球部バカだと思う。そんな声上げたら奇襲なんて出来るわけ無い。
 不意打ちした男は殴りかかったときの勢いを利用されて背負い投げされる。床に思いっきりぶつかり倒れる。
「すまない加減はできない」
 スタンガンなんて物騒なものをクククと笑いながら首筋にお見舞いしている。
 びくんと跳ねる男を見るとスタンガンを離す。しかしそのあとに顔を蹴る。人を傷つけるのに躊躇い無いのだろうか?
 というか……あの男生きているのかな? なんか危ない気がする。
「あと三人だな。わたしも忙しいんだ。さっさと来い」
 一体この人は何ものなんだ? 自分よりも頭一つ分以上大きいやつら相手に引けをとらないなんて。
「お、おいお前行けよ!」
「いやお前の方が握力強いだろ!」
 握力って殴り合いにまったく関係ないと思うんだけど……所詮握る力だし……
「落ち着け! 三人で襲い掛かればいいだろ!」
 キャプテンと呼ばれた男が当然の作戦を二人にいう。厄介なことになってしまった。さすがに三対一ではきついだろうな。
「そうだよな。別に一対一でなくていいんだよな……」
 三人の男はバットを取り出した。もし私が反抗したらバットで殴るつもりだったんだ……。そう思うと寒気が止まらなくなった。
「ふん、武器無い相手に武器を使うというのか。いいだろう。こちらは素手で相手になってやる」
 どんなに強くても相手が武器を持って取り囲まれたら終わりだ。
 男達が少女を囲む。三人だが図体が大きいので簡単に取り囲める。私は少女が命乞いすると思っていた。しかし違った。
 少女は目の前にいる男の腹を殴りつける。男がよろめいた隙に肩を踏み台にしてこちらに飛んでくる。
 第二体育館は小さいためすぐにこちらにこれる。少女は懐からナイフを取り出して手の縄と足の縄を切った。
 けれども他の二人の男たちが襲い掛かってくる。けれども少女は私の口についているガムテープをとっていた。
 とり終えたあとすぐに私に向かい合う。

名前: ◆fyY8MjwzoU [sage] 投稿日:2010/08/04(水) 23:05:19 ID:nc52WNAj
「はやく逃げろ」
 少女は私にそう一言言うと私の前に壁のように立ちはだかる。
「で、でも……」
「いいから!」
 でも情け無いことに腰が抜けて動けなかった。
「ちっ!」
 少女は私を覆うように抱きしめた。その温もりはどこかで感じたものだった。
「え……兄さん……?」
 少女はぽかんと思考してから気まずそうにする。兄さんだったんだ。だから笑いそうになったんだね。私。
「調子にのんじゃねぇよ!!」
「ぐ……あ!!」
 兄さんの背中に金属バットという凶器が振り下ろされる。
「兄さん……」
「だ、大丈夫……俺ならさ。だから笑顔でいてくれよ。ぐっ……」
 大丈夫なわけ無い。あいつらの目は本気だ。このまま殴られたら兄さんが死んでしまう。
「駄目、それだけは……」
 兄さんは痛みからひたすら耐えている。苦しそうにするが一瞬だけ。私を見ると微笑んでいた。
 なんで悪いことした奴らには痛みがすくないの? なんで正義の味方の方が痛みが多いの?
 世の中は理不尽だ。どうしてそうなるんだろう。どうして兄さんばっかり傷つくのだろう。
「そうだ……」
 そうだ。兄さんを傷つける奴は殺してもいいじゃないか。あんな社会のクズを殺したって悲しむ人はあんまりいないし……
 兄さんが使ったナイフが脇に落ちていた。それを拾い。私は兄さんの横にいる奴の顔に投げつける。
「こら、だめ……だろ……。人にそんなもの投げつけちゃ……」
 ナイフは兄さんの腕に刺さっていた。なぜ……なぜ庇ったのだろうか。あんなゴミなんかを。
 兄さんを傷つける最低の人間を。
「苦しくないの? 兄さん……」
「く、苦しいし痛いけどさ……ぐっ!! 妹が俺を見てくれる限り俺はいくらでも耐える……よ」
 私は泣きそうになった。いい意味でも、悪い意味でも。悲しくもあり嬉しくもあった。
 兄さんの頬にふれる。たぶん兄さんはそろそろ気絶してしまうだろう。これ以上耐えれるわけ無い。
「そこまでだ!! 新條葵の名においてこの戦いやめてもらえるか?」
 第二体育館の扉が開き、名乗る人物がいた。
「うるせぇな! 女が勝てると思うんじゃねェヨ!!」
 こいつらは余裕そうだった。兄さんはもう戦闘には参加できない。ということは葵さん一人で戦うしかないのだ。
 明らかにこいつらの有利。けれども葵さんは不敵に笑う。
「何がおかしいんだよ!」
「いや、なに。なんてことはない。私は準備をするのが好きでな。罠とかを仕掛けるのも嫌いじゃない。そんな女が何も準備しないでくるか?」
 その言葉に三人の男が固まった。準備万端の状態で来ているというのだ。葵さんは。
 よく考えてみればそうだ。先に兄さんがきた。普通なら葵さんはそのとき一緒に行動していると考えられるはずだ。
 けれども一緒に行動せずにいたということは……準備をしていたのだろう。
「大人を三十人ほどつれてきた。それでも喧嘩売るか?」
 男達はすぐさま逃げていった。意外に小心者だ。
「大丈夫か? 卓也に茜。さすがの私もヒヤヒヤしたぞ」
「すいません。会長」
「そういえば兄さんどうして女装を?」
 ふと思った疑問。聞いてもいいと思う。むしろ聞かせてほしい。
「あ、それは」
 二十分前になるんだけどと前置きしておいてから語り始めた
「たくやん!!」
 教室に入った瞬間正敏が俺に近寄る。かなり焦っているがどうしたのだろうか。
「茜ちゃんが攫われた」
「な、教室にいただろう!? まだ普通は飯時のはずだし教室からでてないんじゃ!!」
 自分の未熟さを痛感した。なにが飯時は安全だ。教室に居ただろうに思いっきり攫われているじゃないか。
「とりあえずこれをみてくれ」
 正敏は小さい液晶テレビをカメラに繋げる。そこには妹が担架のようなもので三人の男に運ばれていた。
「これは……どうみても盗撮じゃないか!!」
「「「ツッコミ違っ!?」」」
 前に一度やったことだからもう一度やっておかないと駄目な気がしたんだ。
「とりあえず~飯は置いといて助けに行ったほうがいいかもね~」
 いつものゆったりな喋り方に戻り俺を見つめている。
 だよなー。行かないと駄目だよな。体痛いけどきっと正敏も助けてくれるだろうし。
『えー、二年四組、杉岡卓也。至急職員室に来てください。繰り返します。二年四組、杉岡卓也。至急職員室に来てください』
「あ~もう! 相手も~手うってくるのはやいな~」
「どういうこと?」
 正敏は衣装を取り出して俺に手渡す。これはいったい?
「う~んとね。たぶんこれ教師も一枚噛んでると思うんだよ~たぶん横岡かな? 教師なのに茜ちゃんに告白した噂あるしね~」
 妹ってこんなにもてていたのか……意外すぎる。そりゃ可愛いけど、性格酷いと思うんだよ。
「スーパーから~監視カメラの映像記録もらってきたよ~。これがあれば分かると思うよ。その日は~入店してないって~」
 懐からDVDをとりだす。それが映像記録なのか。ふむふむ、初めてみたな。
「ま、今外にでればたくやんがしたと思っているやつは捕まえて職員室に連れて行くだろうね~だからそれを着て~」
「わかった、んで妹はどこに行ったか分かるか?」
「たぶん~カメラから推測するに今は使われていない第二体育館かな~あそこなら人こないからあんなことやこんなことするには
 うってつけだねぇ~。僕は職員室に行くから~。健闘を祈るよ~」
「ああ、正敏こそ」
「僕は負けないよ~こんなこと朝飯前だし~それに~友達兼最高の恋人のためなら!!」
「最後の一言無し!!」
 一言言うと走って教室から出て行ってしまう。職員室に向かってくれたんだろうな。さて、俺の方も行かないと。
 服を取り出すとそれは俺の予想してなかったものだった。
「これかよ!? よくこんなもの手に入れてるな!!」
 まじまじと渡された服を見る。これを着ていくのは恥ずかしいけど仕方ない……妹を助けるためには必要だよな。うん。
「ということだ。わかった? 二人とも」
「ああ、しかしよく無事だな。バットで殴られていたというのに」
「これがあったからさ」
 兄さんは背中に入れているものをとりだして私と葵さんに見せる。なにやら透明で薄い板だった。
「神崎財閥開発の衝撃吸収ゲル(板)!」
「正敏の会社の試作品か?」
 そういえば忘れちゃうけどまっさんは世界有数の大富豪、神崎財閥の御曹司なんだよね……
「そうそう。実験ついでに使ってくれって紙に書いてたんだよ。このウィッグにも入ってる」
「かなり丈夫だな。これなら量産してもいいだろう」
「けどさすがに衝撃少しはくるから痛いけどね」
 だからあんなに耐えることが出来たのかと少し納得。
「兄さん……保健室に行こう」
「ああ、そうだな、いてて」
 私は兄さんに肩を貸した。少し渋っていたが今日は珍しく素直に私を頼ってくれた。
「私はこいつらを部下と一緒に縛っておくから先に行っててくれ」
 葵さんは少しガラの悪い男達になにやら指示をしていた。なにを喋っているかは分からないが野球部の男を引きずっているから処分を聞いているのだろう。
 私は少し、ほんの少しだけ葵さんに感謝する。
「兄さん。ごめんね」
「どうかしたのか? 謝るのはこっちだよ」
「ううん。私、兄さんを信じられなかったもん。それにナイフで傷つけちゃったから。だから謝るの」
「それなら俺もごめんな。すぐに助けれなくて」
「気にしないでよ。そういえば女装何時やめるの?」
「え、うーん……今日はこの格好でもいいかもな」
「それなら変態だよ」
「そうだよな、ははは。まあ俺の制服は教室にあるから、教室に戻ったら着替えるよ」
「うんわかった。それじゃ保健室にいこっ!」
 兄さんをもう少し強く引っ張って保健室に向かう。あの女のことは忘れていないが今はただ兄さんのそばにいようと思った。