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278 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:14:49 ID:OC+Z0maW
「お前何ガンつけてんだ?」
「何とか言えよ。」
バカ二匹か。俺はお前等みたいな奴が嫌いなんだ虫酸がわくほどにな。
「なに黙ってんだ?やっちま…」
とりあえずニヤニヤしながらしゃべっていた奴の腹に蹴りを入れる。
「てめえ!」
後ろから向かってきたもう一匹には顔面に裏拳をかました。
なんだ手応えがないな。喧嘩売るならもう少し楽しませてくれよ。
倒れた二匹にはそれぞれとどめを刺しておいた。
腹に蹴りを入れた方は頭を、裏拳の奴には腹をそれぞれ踏む。
不愉快だ。嫌な音させるな、白目むくな。本当に害虫は死に際も醜いから嫌になる。

折角の高校の入学式だっていうのに台無しだ。
「ねえ、杉浦篤君だよね?」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえて振り向くと背の低い女がいた。
「覚えてないかな?小学校が一緒だった永井都だよ。」
…永井都?…思い出したくもない名前だ。

小学生の頃、俺はどっちかっていうと大人しく目立たない存在だった。
そしてこの女、永井都は当時のクラスで中心的な存在だった。
ガキの頃の話だ、そういう奴らのすることといったらいじめくらいなもので、当時の俺はそのターゲットだった。
もっともいじめと言っても、からかわれたり無視をされる程度のものだったが。
そしてこの女が転校するとき、俺は校舎裏に呼ばれてあろうことか告白をされた。
突然のことで何も答えられずにいたら、意地の悪い笑顔を浮かべこの女は言った。
『なんてね。嘘に決まってるでしょ。あんたみたいにキモい奴好きになる女なんているわけないじゃん。』
別にこの女に対しそういう感情は持っていなかったからショックはなかった。
ただ、次の日にクラスの男がからかってきたことに腹を立て気付いたらそいつを半殺しにしていた。
そしてそれ以降いじめは無くなり、中学の頃には周りから恐れられる存在になっていた。

「一応は覚えてる。で、何の用だ?」
「また同じ学校になれたし、よろしくね。」
「寝言は寝てから言え。お前の名前を聞くだけで吐き気がする。
楽しい高校生活を送りたいなら俺には関わるな。」
「もう、何照れてるの?」
「照れてない。お前のことが嫌いなだけだ。
あと下の名前で呼ぶな。」
あの頃からほとんど背が伸びていない永井は心底驚いたような表情で俺を見ていた。
それが余計に俺を苛立たせる。この女は存在するだけで害になるようだ。


279 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:16:06 ID:OC+Z0maW
冷たい表情と言葉を残して彼は去っていった。
久し振りの再会で照れてるんだよね。素直じゃないんだから。
私はずっと篤君のこと想ってたんだよ。
小学校の頃は素直になれなくてちゃんと伝えられなかったけど、離れていた中学時代にも篤君のことだけ考えてたんだから。
みんなとは打ち解けずに一人でいることとか変わらないね。そんな篤君のことが私は大好き。
これから楽しい高校生活を送ろうね。

「都!会いたかった!」
後ろから私を呼ぶ声が聞こえる。
「ああ、千晴。」
木谷千晴。小学校の頃のクラスメイトで篤君の近所に住んでる情報源だ。
「また同じ学校だね。よろしく。
でも驚いたよ!都がこの高校に来るなんて。」
篤君が行くんだから私が行くのも当然なのに何を言っているんだろう。
本当に察しの悪い女だ。
「そうそう、杉浦も一緒なんだよね。
あいつ小学生の頃とはすっかり印象変わったよ、会ったら驚くかもね。」
ついさっき会ったばっかりだよ、どこが変わったのだろう?篤君は今も昔もかっこいいのに。
千晴は私の手を取ってクラスの発表をしてある板へと向かう。
篤君と同じクラスだといいな。
さっき篤君に絡んでいた害虫二匹がまだ放置されていたからとりあえず隅の方に排除しておいた。



1年B組。これが私のクラス。
教室に入って真っ先に篤君の姿を探す。
同じクラスになれてよかったと言うよりほっとした。まあ、違うクラスでも毎日会いに行くけどね。
「永井さん?」
振り向くと髪の長い男が笑顔を向けていた。
「覚えてますか?小学校の頃一緒に学級委員をしてた、大石です。」
ああ、そんな奴もいたっけ。
「でも驚きました。まさか君と同じ高校になれるなんて。
さっきクラス発表で名前を見たときは同姓同名の人だと思ったくらいですから。」
こいつは小学生の頃からそうだ。私が聞いてもいない話を延々としてくる。
「これからもよろしく。」
キモイ笑顔を向けるな。お前にかまってる時間なんてない、篤君のそばにいる時間が減ってしまいもったいない。
適当に相槌をうって目の前の男から離れる。
でも肝心の篤君がいない。どこに行ったんだろう?
「おや、杉浦君じゃないですか。どこに行ってたんですかね?」
大…なんとかが篤君に話しかけている。何様なの?お前は。
「お前には関係ないだろ。」
そうお前なんて関係ないの。さっさと消えなさい。


280 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:16:57 ID:OC+Z0maW
「君が何かをすることで僕やクラスに迷惑がかかることもあるからね。
君のような問題児は僕のような優等生が監視していないといけないんです。」
「俺より成績が悪いのに優等生か。
まあせいぜい監視しとくんだな、優等生の大石さんよう。」
篤君に言われ大…なんとか改め男子生徒Aは言葉につまっていた。
ほら早く消えなさい。あんたの出番はこんだけなのよ。
「よく言ったな杉浦君!高校では…うげっ!」
だからあんたの出番は終わったの。空気を読みなさい、お呼びでないのよ。
「永井さん、なかなかの腕前ですね、効い…」
「一度死んでみる?苦しませないわよ。」
「これはなにかの間違いだ!永井さんがこんな…」
「あ!?」
「あはは…すいませんでした!僕みたいなカスが出しゃばって失礼しました…でわ!」
男Aはようやく自分の存在意義の無さに気付いたようで去っていった。話し合いは大切だよね。うん。
「やっと邪魔者もいなくなったね篤く…」
いつの間にか篤君は席に着いていた。



学園生活も慣れてきた初夏。教室ではいくつかのグループができている。
もっとも俺はお友達ごっこに付き合う気はない。
「篤君、帰っちゃうの?」
永井が俺の席の前に立ち、話しかけてきた。
「見ればわかるだろ。」
一言返し俺は席を立つ。
「待って!何か言うことはないの?」
「ない。」
あるわけがない。この女は何がしたいんだ?
「私も今日はもう帰ろうと思ってるの。」
「ああ、じゃあ帰れよ。」
「ちょっと!そこは私を誘うべきでしょ?こんな美人を一人で帰らせるつもり?」
「意味が分からん。」
「なんで分からないのよ!私が一緒に帰ってあげるって言ってるのよ?」
「杉浦君、永井さんの誘いをk…」
「いい加減出しゃばるな!その他大勢のくせに!」
割り込んできた大石を永井が蹴散らしていた。お前みたいな性悪女の相手をしてくれる奴なんだから大事にしてやれよ。
永井と大石の戯れを横目に教室を出ようとしたら永井が俺の袖をつかむ。
「ねえ篤君、私悲しいな。なんでそんなに冷たくするの?私ツンデレって好きじゃないのよ?」
一言いわせてもらうとツンデレじゃない。デレは皆無だ。今までこの女に対して嫌悪以外の感情を抱いたことさえない。
「消えろ。」
そう吐き捨て俺は永井の手を振り払った。
断末魔?俺には関係ない。


281 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:17:53 ID:OC+Z0maW
「篤君…」
「なんて奴だ杉浦君は。レディを置いて帰ってしまうなんて。
永井さん、僕でよけれb…」
とりあえずさっきからまわりをうろちょろしている男Aを黙らせた。
聞くに耐えないような声まで出してますます私を不愉快にする。
お前が邪魔するから篤君は私にそっけない態度を取るのよ。
そう考えたら余計に腹が立ったので屍にとどめをさした。

篤君を素直にさせるにはどうしたらいいかしら?やっぱり誘惑をするのが一番かな?
篤君のために大切にしてきたんだけど早くもらってもらう方いいよね。
やだ…考えただけで体が熱くなってきちゃった…
とりあえず火照りを冷ますためにトイレに行こう。篤君、私をこんなにエッチな体にした責任も取ってもらうからね。

トイレの個室に入ってすぐにスカートの中に手を入れた。
あーあ、やっぱりパンティが濡れてる。篤君のことを考えるとすぐにこうなってしまう。
早く本当に篤君に触れてもらって、貫いてもらわなきゃ。もう耐えられないよ。
割れ目に指をあてると充分に塗れていて簡単に指が入っていく…
これは私の指じゃなくて篤君の指、篤君が私に触れて私をめちゃくちゃにしてくれる。
「あっ…篤君っ!」
気付いたら空いている左手が胸に伸びていた。先端の突起が固く、敏感になっている。
「ねえ、もっとさわって…私は篤君のものなの!」
篤君ずるいよ。私をこんなに切なくさせるなんて。
学校のトイレでこんなことしてたら誰かにバレちゃうよ?その前に篤君が私を満たしてくれなくちゃ。

ほら、今も誰かが入ってきちゃったよ。
『お願い。木谷さんって杉浦君と中学の同級生なんでしょ?』
『まあ、それに家も近いけど、でも別に仲良くないよ。それに気になるなら自分で声をかければよくない?
青山さんみたいに可愛い子に話し掛けられたらクール気取ってる杉浦だってその気になるわよ。』
千晴?どこの雌猫にそんなふざけたことを吹き込んでるの?恋に障害があったほうがいいなんてそんなのは物語の中だけよ。
『でも、私今までにそういう経験がないから。』
『大丈夫だよ。青山さんは私が知る限り学年で一番可愛いんだから。
それにしてもなんで杉浦なの?確かに見た目は悪くないけど、無口だし、初日から喧嘩するような奴だよ?』
『あれは喧嘩じゃないの!
私があの二人に絡まれて困っているところに杉浦君が通りがかって助けてくれたの。』


282 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:18:49 ID:OC+Z0maW
助けてくれて好きになった?何よその安っぽい恋愛小説のようなきっかけは。
そんなのはただの錯覚だわ、そう錯覚。
青山とか言ったかしら?あんたは篤君が好きなんじゃない、恋に恋してるだけなのよ。
盛りがついて冷静な判断もできない雌猫にはしっかりとわからせてやらなければね。
『そっか、そんなきっかけなんだ。それならわかんなくもないかな。』
千晴?
『わかった。出来る限り応援させてもらうよ。
たださっきも言ったけど、杉浦とは仲良くないから、大したことは出来ないかもしれないけど。』
『ありがとう、木谷さん。
他に頼めそうな人がいなくて…』
『ううん、そんな。
でも青山さん可愛いなー。杉浦がうらやましいよ。』
その言葉を最後に二人は去っていく。
私は乱れたままの服装で個室の中で立ち尽くしていた。

どれくらいの時間が経ったのかしら、落ち着いた私は服装を整えて教室に向かう。
もう日も傾き、校舎に残っている生徒もまばらになっている。
それなのに後ろから聞こえる私のとは違う足音。しかも二人はいる感じがする。
外を見る振りをしてガラスに映る姿を確認すると頭の悪そうな男が二人いた。
こいつらが何をしたいかの予想はつく。別に二人くらいなら私一人でもいけるから問題はない。でも…
私は立ち止まる。笑いを懸命に抑えている姿は震えているように見えるのかしら?
「あーあ、気付いちまったみたいだね。可哀想に。」
「まあ抵抗しなければ手荒なまねはしないよ。その様子じゃわかってるんだよね?」
わかってるわよ、あんたたちの運命をね。

「弱い男。もう少し腕を上げてからこういうことをしたら?」
「ひええ!すいませんでした!もう逆らいませんから許して下さい!」
「そうねえ、じゃあ一つ頼まれてほしいことがあるの。」
ボコボコにされたクズ男二人に話しながら私は笑みを抑えることができなかった。
発情期の雌猫ちゃんにはちょうどいいわね。



「おはよう杉浦、ちょっといいかな?話があるの。」
「なんだ、木谷?珍しいな。」
登校中に珍しく話しかけられた。小学校から同級生の木谷だ。
別に仲がいいわけではないが、家が近いこともあって、数少ない話すことがある相手。
永井と仲がよかったけれど、こいつ自身はあけすけとした性格で、まあ悪い奴ではない。
「あんたさあ、入学式でいきなり喧嘩したでしょ?」


283 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:19:36 ID:OC+Z0maW
「あれは喧嘩じゃない。あいつらが因縁付けて殴りかかってきたんだ。」
「まあそんな是非はどうでもいいんだけど、その二人に絡まれてた子を覚えてる?」
「そんな奴いたのか?記憶にないな。」
そう言われるとあの二匹は最初背を向けていたな。誰かに絡んでたのか、ますますクズだ。
「それでね、その子が…あっ!」
木谷の視線の先を向くと、件のクズ二匹がまた誰かに絡んでいる。懲りてないのか。

「まあ、悪いことは言わねえから大人しく従いなよ。」
「あんたも運が悪いね。とんでもない奴に目を付けられてさ。」
「ああ、本当に運の悪い奴らだな。」
こっちを向いた二匹の表情が変わる。
「あっ、あの、こっこれはっ。」
「その、話し合えばわかります。」
「ほう、話し合うって言葉を知ってるのか?お前らは。」
「あははは、それは僕達は平和的解決を望んでますから。
なっ、なあ?」
「えっ!?ああ、そうですよ!暴力反対です。はい。」
「じゃじゃじゃっじゃあ、僕達はこ、この辺で!」
「まあ待てよ。折角だから事情だけ聞いてやるよ。話せばわかると言ったよな?」
「か、勘弁してください!殺されてしまいます!」
「殺される?誰かに命令されたのか?」
「本当に勘弁して下さい。もうこんなことしませんから!」
「お前等には危害が加わらないようにしてやる。だから話せ。」
俺は正義感があるわけじゃないが、弱いものをいじめる奴と自分で手を下さない奴はどうしようもなく嫌いだ。
「それが、名前は知らないんです。」
「昨日ボコボコにされて、命令されたんです。逆らったり、誰かにチクったら殺すって言われて。」
「どんな奴だ?特徴は?」
「それが…」
「女なんです!それも背が低くて見た目には幼い感じの。」
背の低い女?
「髪型は?」
「えっと、肩ぐらいの長さだったと思います。」
「木谷!」
絡まれていた女の子を落ち着かせていた木谷を呼ぶ。この子は木谷の友達なのだろうか、大分落ち着いてきたようだ。
「なに?杉浦。」
「永井と一緒に写ってる写真あるか?」
「初詣に一緒に行った時のプリクラがあるよ。なんに使うの?」
そう言って木谷は携帯を差し出した。
「よく見ろ、この中にいるか?」
「えっと、この右下の人だよな?」
「うん、間違いない。この人だ。」
「杉浦どういうこと?都がどうしたの?」
木谷が怪訝そうな顔をして覗いてくる。


284 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:20:45 ID:OC+Z0maW
「ねえ都。ちょっといいかな?」
朝から千晴が私のクラスに来て話しかけてきた。私も話したいことがあったからちょうどいいわね。
席を立ち、千晴についていく。話しにくい内容なのはお互いに同じようだ。まあ察しはつくけれど。

「…都、青山春菜ちゃんって知ってる?」
「ううん、知らない。」
へえ、春菜って名前なんだあの雌猫。
「で、その雌猫がどうしたの?」
「今朝、不良二人組に襲われたの。」
さっそく千晴に泣きついたってところかしら。千晴に協力頼むからそんなことになるのよ。
私は笑いをこらえるのに必死で、千晴が続いて言ったことを聞き取れなかった。
「なに?千晴。もう一回言ってもらっていいかしら?」
「杉浦が助けたの。」
「!?なんで篤君があんな雌猫を?役立たずの二匹め!」
「やっぱり都の仕組んだことだったの!?どうしてそんなひどいことを?」
「あの雌猫が篤君に手を出そうとしたからよ。それに千晴も千晴よ、私の気持ちを知らずにあんな雌猫に協力するなんて。」
「都…杉浦のことが?」
「ずっと好きだったわ。小学生の頃から。」
「でもあの頃、都が一番杉浦を…」
「あれは愛情表現よ。気付かなかったの?」
「転校前に告白する振りしてからかったりとか…」
「あれは照れた篤君を見てたら恥ずかしくなって強がっちゃったの。
でも篤君はわかってくれているわよ。私の想いをね。」
「おかしいよ都。そんなの恋じゃないよ!」
「千晴、あなたは篤君の近況を知らせてくれたりといい情報源だったわ。
でも人の感情に対して鈍いのが残念ね。もうあなたに価値はないわ。」
「都?な、何を…」
千晴の首に手をかける。今は篤君のそばにいるから千晴から聞くことなんてないし、私の恋の邪魔をした罪も重い。
「やめろ!永井。」
篤君の声がして、千晴から手を離す。
「木谷、残念だけどこれが事実だ。」
「わかった…でも、認めたくないよ。都がこんなこと…」
「俺がけりを付ける。
お前は春菜ちゃんを頼む、守ってやってくれ。」
「でも…」
「木谷。」
「…わかった。杉浦、お願い。」
「杉浦君…」
「大丈夫だよ、春菜ちゃん。君は絶対に守るから。」
篤君は雌猫に優しく語りかけ、頭をなでた。
何してるの?意味が分からない。そんな芝居は見たくない。
「ふふふ…あははは!篤君、いくら篤君でもしていいことと悪いことはあるんだよ?」


285 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:21:38 ID:OC+Z0maW
永井は何かが壊れたように笑い始めた。
「ねえ、篤君。なんでそんな意地悪するの?
そんな雌猫に優しくしたら勘違いされちゃうよ?ペットへの愛情と人間同士の愛情は違うってこともこいつはわからないんだから。
篤君は私とじゃなきゃ幸せになれないんだよ、私はずっと篤君のことが好きだったんだから。
篤君だってずっと私のことが好きだったんでしょ?ねえ、素直になって。私が素直じゃなかったことがいけないの?」
「そんな問題じゃない。お前が素直だろうがなかろうが俺はおまえを好きになれない。」
「どうして?どうしてよ?」
「人を好きになることに理由がないように嫌いになるのにも理由なんてない。」
「そう…それじゃ仕方ないね。」
その言葉とは裏腹にあきらめた様子は見えない。
永井はナイフを取り出して春菜ちゃんの方を向く。
「篤君、こんな雌猫がいるから篤君は正しい判断ができないんだよ。だから消すべきなの。」
「やめろ!お前はいつだってそうだ、自分の気持ち、自分の都合、自分のやりたいことしか考えてない。
それでどれだけの人間が振り回されて迷惑をしてるか考えたことがあるのか?」
「なんで他人のことなんて考えなければいけないの?私が篤君のことが好きなら篤君だって私のことが好き。
私がしたいことはみんなが望むことなんだから。」
ダメだ、完全にイカレてやがる。これも俺の責任なのか?
ふざけんなよ俺の人生をお前なんかに狂わされてたまるか!
「私の言うこと理解してくれないんだね。なんでそんなにものわかりが悪いのかな?
わかってくれないから仕方ないよね。」
永井は感情のない瞳でナイフの照準を俺に向けた。
春菜ちゃんと木谷を巻き込むわけにはいかない。少しずつ二人から永井を離れるように誘導する。
「篤君、一緒に死のう。そうすれば私達は永遠に結ばれるから。」
「ふざけんな!お前の自己満足に巻き込まれて死ぬなんてまっぴらだ。
それに死んだとこで何も解決になんかならない。気付いてないわけじゃないだろ?お前は目を逸らしてるだけなんだよ。」
「篤君こそ目を逸らしてるよ。私の想いに気付いてるんでしょ?私ずっと篤君を想ってたんだよ。」
「い、いい加減にして!」
春菜ちゃんがいきなり叫ぶ、俺も木谷も驚きで声が出なかった。
「何よ雌猫。元々はあなたがいけないのよ!いきなりしゃしゃり出てきて。」


286 :歪な三角 [sage] :2010/08/10(火) 10:22:28 ID:OC+Z0maW
危ない!永井が春菜ちゃんに近付づくのを止める。
「やめろ!」
「いいの杉浦君。」



「大丈夫だよ。杉浦君と私はこれから一緒に色々なことを乗り越えていかなければならないでしょ?」
篤君が私の手を掴んで止めているときに雌猫はそう言って篤君を止めた。
「永井さんと言ったかしら?」
お前に名前を呼ばれる筋合いはない。
「さっきから杉浦君とあなたのやりとりを聞いてたけど、あなた何様なの?
『いきなりしゃしゃり出てきて』?
笑わせないで。あなたなんて杉浦君の心の中に一欠片もいないじゃない。よくもそこまで思い込めるわね。」
「なんですって?お前こそ私達を邪魔してるくせに。」
「邪魔してなんかないわ。邪魔なのはあなたの方よ!」
「何!?」
「私と杉浦君は今日から付き合うことになったの。」
「嘘よ!ねえ篤君、嘘だよね?この雌猫に思い込みで訳の分からないことを言うなって叱ってよ!」
「永井。春菜ちゃんは嘘なんてついてない。」
篤君?なにを言ってるの?嘘じゃないって?
「春菜ちゃんは俺の彼女だ。」
嘘!嘘嘘嘘嘘!認めない!そんなのは認めない!私と篤君が結ばれるのは運命、ずっと描いてた未来なんだから。
それを突然横取りして、私から幸せを奪った。やっぱりお前が消えるべきなんだ。
「ねえ、雌猫。人のものを奪ってはいけないって習わなかった?猫が人様のものを奪ったら殺される運命なんだよ。」
何よ?その余裕のある表情は。もっと怯えて、泣き喚いて、命乞いをしなさいよ!
私はナイフを雌猫に向かい振り下ろした。



「うっ…そん…な、どう…し、て?」
俺は今目の前で起こったことをすぐには理解できなかった。
永井が独り言を呟いたと思ったら、突然春菜ちゃんにナイフを振りかざした。
春菜ちゃんのすぐ隣にいた俺は条件反射のように止めようとしたが、次の瞬間背中を誰かに押され倒れていた。
そして顔を上げた時に目に入ったのは…
「都!」
「き、木谷さん…ごめんなさい、私…刺されそうになって、怖くて…」
春菜ちゃんが涙を流しながら震えている。
「ううん…青山さんは悪くないよ。私だってあんなことされたら抵抗するから…」
「ち、は…」
「都!もう喋らないで!何も言わないで。」
「ち…」
「ごめんね都…私が都の気持ちを知ってたらこんなことには…」
永井が振り下ろしたナイフは春菜ちゃんにではなく永井の胸に刺さっていた。