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216 :ウェハース第八話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/17(金) 16:25:51 ID:9UEy9fHN

「んぐ……」

小町さんの両手で顔を固定され、唇を重ねられる。

吸い上げられる唾液と舌。
流し込まれる小町さんの唾液。

それを吐き出す事は叶わず、瞳は開いて僕は捕らえたまま、小町さんの舌がそれを喉にまで押し込んでくる。
荒くなった小町さんの鼻息が彼女の状態を如実に表していた。

「っん、勉強してる時にしようかなって思ってたんだけどね……」

そう言って満足そうに微笑む彼女に掛ける言葉が見つからない。
彼女は舌なめずりをして、ワンピースを脱いだ。
ブラは淡い桜色、黒いストッキングが妙に艶かしい。

「破れちゃ不味いから脱いじゃうね?」

そう言って彼女は状態を起こすと素早くストッキングを脱ぐとそれを畳んで、ベッドの下に置いた。
マウントポジションを取られても僕は何も言わなかった。
なんだか不思議な気分だった。
身体が少し浮いている様な感じがして、現実ではないと錯覚してしまう様な、甘ったるい雰囲気。
それに飲まれていたのかもしれない。

「真治君も服脱いじゃおっか?」

僕の返事も聞かずに、彼女は一人で僕の服を脱がしてくれた。でも、僕が拒絶してもきっと服は彼女の手で脱がされていただろう。
なぜかそう思った。

「少し、太り気味かな?」

彼女は微笑みながら、僕の乳首を口に含んだ。

「っ!」

途端、乳首が吸われた。
少し痛かった。
彼女は片方を終えると、もう片方の乳首も同じように吸った。

吸い終わった後、彼女の口から乳首へ細い糸が架かった。
それが何となく不快に思えた。

彼女は僕の全身に舌を這わせるつもりなのか、乳首を吸い終わった後、舌をそのまま下へと這わせていった。臍の辺りまで降りると、臍の周りと、臍を舐め回し始めた。
正直言って気持ち悪かった。

体中が汚されていくように思えた。

一体何処まで……。
そんな事を思っていると、先程から妖しく蠢くものに気が付いた。
彼女の左手が僕のペニスをボクサーパンツ越しに摩っていたのだ。

何となくそれで終着駅を予想出来た。
彼女の顔を見ると、貪るように、まるで一ヶ月ぶりにご飯にありついたように、一心不乱に僕の身体を舐めているのが分かる。
僕の身体は彼女の涎が反射して軌跡としてキラキラと光っていた

「フゥ、フゥ…フゥ……ッン!!」

身体を震わせた彼女の目が血走っている。
禁断症状を抱える中毒者のようにも見えたその彼女の姿は学校で見せていたものでも、僕の彼女として見せていたものでもない。
彼女の今まで抑圧していた内面、本性を体現したものなのだろう。
僕は恐怖による震えを止めるのに必死で彼女に対して何か行動を起こそうなどとは全く考えなかった。

怯える僕の視線に気付いたのか、彼女は努めて穏やかな笑みを浮かべると、僕のパンツをずらした。
ペニスは、いつになく勃起していて隆起する血管が少しグロテスクに見える。

なんで僕は勃起しているんだ?

興奮も、性欲も全く湧いていないのに、むしろ彼女の行為に嫌悪感すら感じていた。なのに、どうして。

「私に興奮してくれてるんだね?嬉しい」

さっきまでの顔を彼女は穏やかな笑顔で隠す。

「このままおあずけ、なんて可哀相。すぐにシてあげるね」

彼女はそういうと小さな口で僕のペニスを咥えた。
それからゆっくり上下運動を開始する。
頬を窄める彼女の顔に胸がしまった。不思議な事に切なくなったのだ。
時折歯が当たって痛かった。
彼女はそれを察してくれたのか、それともコツを掴んできたのか、上手い具合に当たらなくなり、次第に唾液が絡み始め、じゅぽじゅぽとイヤラシイ音を立てはじめた彼女のフェラチオ。
不思議と湧いてくる射精感に僕は身を震わせた。



217 :ウェハース第八話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/17(金) 16:27:03 ID:9UEy9fHN

「はい、ちょっと休憩」

「え?ええっ!?」

彼女は状態を起こし、僕の腰に座って戸惑う僕の手を掴んだ。
そのまま素早く、僕は強引に両手を背中のほうに回され、両方の手首にガチャリと金属の感触と何かが締まる音がした。

「えへへ?どう動ける?」

彼女は悦に満ちた笑みを浮かべながら僕に尋ねる

「え?なに、これ?」

どう動かしても手が後ろで何かに繋がれて動きを限定されてしまう。
そんな僕を射精感が急かす。はち切れる寸前のそれは本能から直々の通達を伝えているのだ。

「て、手錠?」

情けない声で僕は後ろで拘束する物の名前を口にする。

「うん、正解。高かったよー、それ」

彼女は鍵を見せると、それを部屋の端に放った。

「ねえ、射精したいの?」

彼女は僕の耳元まで来るとそう囁いた。
身をよじるが彼女はそれをものともしない。いや無駄だと分かっていたのだろう。

彼女の左手が少しだけペニスを上下する。
利き腕でなく、しかも他人のものをしごいているから、その動きはどこか不器用だ。
でも、急かせる本能を刺激して追い込むには充分過ぎた。射精を間近にして焦らされすぎたのか少し尿道が痛い。

彼女は手を離し、触れていた左手を僕に見せる。僕のカウパー液が彼女の白魚の様な手に粘着して、糸を引いていた。

「ほらぁ見て。これとってもしつこい臭いがする」

彼女はそう言って液が付着している人差し指と中指を口に含む。それから味わうように口を動かし、呑み込む。

「射精したいんだよねえ?真治ぃ?」

「っ!!!」

彼女は足、膝の裏で、僕のペニスを挟むか挟まないかといった具合の力で包む。

「……し、したい」

「ん?聞こえない?」

「したいです。し、射精したいです……」

性欲に屈してしまった自己嫌悪から小さな言葉だけ。彼女に届く最低限の声量で言う。

「射精したいの?んー、誰にさせて欲しいの?」

二人しかいない、手が後ろで繋がれマウントポジションを取られて何も出来ない僕と、膝の裏で僕のペニスを刺激し笑っている彼女しかいないのに彼女は尋ねた。

「小町さん、にです」

勝手に「さん」が付いて出てきた。これじゃまるで奴隷だ。

「なら……」

彼女はもう一度左手を口に含むと唾を絡めたそれを僕に見せた。

「舐めなさい」

僕はそれを舐めようと必死に首を伸ばし、口を開け、舌を伸ばす。
酷く滑稽だっただろう。そこまでしても届かない所に彼女の涎で濡れた指先があった。
彼女はそれを笑ってみていた。滴る涎の糸が、必死に指先を目指す僕の舌に垂れてきた。

「美味しい?」

僕は彼女の機嫌が変わらないことを祈りながら頷きコクコクと飲んで見せた。

彼女はそれを見てひどく上機嫌な笑みを見せると、手の高さを低くしてくれた。
僕はそれと同時に小町の左手にしゃぶり付く。
無心で、彼女の希望を叶え、ペニスをしごいて貰うために。

少しの間彼女の手をしゃぶると彼女は僕の顎にキスをした。僕はもう気が気ではなく、射精する事しか考えていなかった。

彼女は状態をマウントに入る前、フェラチオをしていた状態に戻した。
小町は右手でペニスを掴む。それだけでもう呼吸が乱れた。

「このまま、擦ってもいいけど。手が疲れちゃった」

「えっ?」

「持っててあげるから、自分でしていいよ?」

多分嘘だろう、だって彼女は右手を数回しか使っていなかったから。
でも僕は腰を動かした。必死で動かした。
また精液が上がってくるのを感じる。精巣からジワジワと上がってくるそれに身体が震える。
あと何回かしごけば射精、といった所で彼女は手を離した。

「えっ!?なんで!!?」

驚きと恐怖が心に広がっていく。

「射精する時にね、言って欲しい事があるの……」

僕が身をよじってベッドでペニスを擦ろうとするのを膝に乗る事で彼女は阻止する。



218 :ウェハース第八話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/17(金) 16:28:47 ID:9UEy9fHN

「な、何でもっ!!何でも言うから!!お願い!出させて!!」

必死だった。声は大声になり、彼女に射精を懇願する。

「じゃあね、イク時に、小町愛してるって言って?」

僕は何度も頷き、了解の意思を伝える。
彼女はそれを読み取るとさっきより強くペニスを握ってくれた。

「ほら、イきなさい」

必死に腰を動かした。そして、

「ウグッ!!、アアッ!!!こま、小町!!駄目だ!!」

程なくしてやっと射精。
天井に着くんじゃないかと思うほどの勢いで飛び出した精液は、彼女の顔、布団、僕の腹色んな所に飛散した。

「あっ!あっ!!」

思わず腰を浮かしてしまうほどの快感。爪先まで力が巡っていく。

彼女は僕がイって射精による快感に浸っている最中フェラチオを開始した。
いやらしく頬を窄め、尿道にまだ残っている精子を吸いだすそれはオナニーごときで達する事のできないエクスタシーのもう一つ上の段階へと快感を昇華させた。

「ッ!あがッ!!」

頭がおかしくなりそうだった。
いやもうおかしくなっていた。
彼女がフェラチオを終えた頃、身体はひどく疲弊し、意識は朦朧としていたのだから。

「ううっ、真治のだから飲めると思ったのに……」

萎えたペニスの方を見ると、小町さんが顔をしかめていた。
掌には大量の白濁液。

そうか、僕はまたイってたのか。
彼女のフェラチオで僕は二回目の射精を悟った。

「ん?どうしたの真治?そんなに気持ちよかったの?」

彼女は僕がひどく疲れた顔をしているのに気が付いたのか横たわる僕の身体を這って再び視線が合うところまでやってきた。
這ってきた肌の感触に時折粘着質な感触があった。
飛散して僕の身体に付いていた精液が潤滑剤になったのだろう。
それを思いひどい不快感を覚えた。

「これ、真治の涎となら飲めると思うんだけど……」

どういう事だ、自分の精液を自分で咀嚼して飲ませろって事か?

「私のお願いも、ちゃんと言えてなかったし……」

彼女はいいよね?と囁くと僕の返答も聞かずにそれを自分の口に含み、そのまま唇を合わせてきた。

粘性のある精液はひどく臭く不快だった。吐き出そうと舌を押し出すが逆にそれが彼女に火を点けた。
彼女の舌の動きは激しくなり、互いの唾液と精液が混ざり合い、粘性が無くなった時、彼女は僕の口の中の水分を全部吸い込むんじゃないかと言うぐらいの勢いで精液と涎を吸いだした。
気分は最悪、体力もかなり消耗し、意識は朦朧としていた。おまけに身体は自由が利かない。

「やっぱり……、飲めた」

今は満足げな彼女の薄い微笑を見上げるのが精一杯。
それから彼女は萎えたペニス、亀頭を指先で刺激し始めた。
一回で二回分の快感を出し切ったハズのペニスがまた息を吹き返し始めた。

状態を起こし、血管の隅々にまで血を送ると、筋肉が活性化し再び勃起に至ったのだ。
僕自身信じられなかった。

彼女はさらに機嫌を良くして、今度はショーツを脱いだ。露わになる女性の性器。
不思議とそこに目が行く。
彼女は僕の顔に跨ると言った。

『ほら、舐めなさい』

それは許可でもなく、ましてや依頼でもない。
拒否する事を許さない命令だった。
僕は何か言おうとしたけど、本能はそれを許さなかった。
僕は何も言わず、彼女の性器に舌を這わせたのだ。

初めての異性の性器の味は無味無臭だった。もっとも意識が朦朧としていたせいでよく分からなかったのかもしれない。
初めから湿気ていたそこは柔らかく僕の下をどこまでも飲み込んでいくように思えた。

「んっ!」

彼女は小さく声を漏らしたと同時に肉の壁が緊張するのが分かった。
少し締まったが、僕の舌は少し窮屈さを覚えただけでそれ以降は彼女の命令を従順こなしていた。

そうしていると、涎以外に肉の壁に湿気を感じた。
それは少し酸味を帯びていて、徐々に溢れ出してきた。
それから舌が何か若干硬度がある。といっても軟骨ぐらいの柔らかさのモノに触れた。


219 :ウェハース第八話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/17(金) 16:29:57 ID:9UEy9fHN

「んんっ!!」

彼女の二度目の震えは激しいものだった。舌が軽く絞られるように圧迫されると今度は液が溢れてきた。

「ゴホっ!!」

彼女は力無く僕の上に覆いかぶさると、キツく僕を抱きしめて二、三度身体を震わせた。
イったのか?僕が不審に思っていると彼女は状態を起こし揺ら揺らと危なく落ち着かない瞳で僕を見つめた。

「き、きもちいひー」

焦点を合わせるのを忘れている彼女の意識は今どこにあるのだろう?
馬鹿になった彼女は僕のペニスに一瞥をくれると締まりの無い顔で笑った。

「……する?」

僕はすでに頷く事すら出来なかった。
彼女はふらっと立ち上がり、ブラを外して部屋の隅に放り捨てた。
彼女は持ってきた鞄の中から箱を取り出しそれを開封した。
内容物は包みが何個も連結しているっといったものだった。
あれは……コンドームだ。
彼女は包みを開き、コンドームを取り出す。

それから僕のペニスに装着する。あれ?でも、コンドームってサイズとか無いのかな?とは考えたけど、考えがまとまる前に彼女は僕のペニスを跨ぎ、自分の性器にあてがった。
さすがに緊張しているようだ。
しかしさっきの快感が未だに身体に残っているのか脹脛まだ小さく震えている。

「ふぅ…ふぅ…ふぅ、っ!!」

彼女は腰を下し、性器は亀頭一気に呑み込んだ。
中はひどく窮屈で柔らかく小さな舌ならまだしも、硬さを帯びたペニスだと少し痛みを感じる。

「ひっひっ!、ッング!!」

彼女の体から破瓜の痛みが身体を突き破ろうとしているのか、彼女は今までに無いくらい表情を歪め、涙を流し、しゃっくりをするように呼吸を乱していた。

「い、いい、痛い……っひ!ひ、っ!!」

言葉にならない痛みを呑み込み、彼女はさらに重く腰を下し始めた。
亀頭の先が彼女の中を引き裂いていく。
ブチブチと緊張した糸が切れるようなそんな感触が伝わってくる。

「あっ!あがっ!!」

やっと根元まで入った時には血がペニスを伝って滲み、ベッドに染みを作っていた。
彼女も方も疲労困憊で目は宙を泳いでいた。
ここで終わればそれはそれで良かったのだが、僕のペニスにはもう血が廻っていたのだ。

なけなしの体力を振り絞り、僕は腰を、ペニスを突き上げた。

「っひ!!」

彼女の怯えた声が聞こえる。
それに構わず、もう一度突き上げる。

「あっ!…ああ…!あっ!!」

何かが壊れた音がした。気が付くと僕は彼女を天井に押し上げる勢いで腰を動かしていた。
彼女は動く事がで出来ず、何かを叫ぶのだけれど僕は聞く耳を貸さずただただ腰を乱暴に、躊躇無く動かす。
その内彼女の声も悲鳴から、嬌声に変わっていた気がする。
痛みで狂ったのか、最後には自分から腰を動かしていた。

僕が果てたのは、彼女が腰の動きを合わせ始めてちょっとしてからだった。


220 :ウェハース第八話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/17(金) 16:32:14 ID:9UEy9fHN

午後四時半。結局僕らは昼ごはんを食べる事はなかった。
僕が果てた後、僕ら二人は昏倒してしまったからだ。
彼女は僕よりも早く目を覚まし、まだ痛みの残る身体を引き摺りながら部屋を片付け、手錠を外し僕に新しい服を着せてくれていた。

夢じゃなかったのかと一瞬思ったが、染みの残ったシーツが一気に幻想を打ち砕いた。
そして頭が割れるように痛かった。

彼女は歩く際にふらふらとするようになっていた。

「嬉しい、痛みだよ」

そう言って微笑む彼女に、僕は顔を背ける事しかできなかった。

「悪いけど、家まで送ってくれる?」

僕は頷くしかせず、終始無言だった。
まるで大切なものを無くしてしまったような、そんな気分だった。
彼女の家まで送る間彼女は僕に寄り添って歩いた。
僕はただ空を見ていた。
考えがまとまらない。
頭の痛みは覚醒ではなくただ集中力を乱すだけで、ぼうっとしておかなければ痛みばかり気にしてしまう。

彼女の家に着いて、階段を上がるのを手伝うと、彼女は僕に触れるだけの軽いキスをした。

「明日も勉強しよう?」

小町ははそう言って妖しい笑みを浮かべる。
断るっと言った選択肢は無く、浮かんですら来なかった。
ただただ、了承するので精一杯だった。

「明日は、私の家にしようか?まだ歩くの辛いし」

健気な彼女の笑みも、僕にはもうどうでもいいことだった。
早く帰って休みたい。
ただそれだけだった。

「じゃあ、また明日」

帰り道は覚えていない。気付いたらベッドの前に立っていた。
そのまま、ベッドに倒れこむ。薄れていく意識の中で、僕は一本の長くて黒い髪の毛を見つけた。彼女のだろう。
そうして今日のことが夢じゃないと、また印象付けされた。瞬きの直後、もう世界は闇で満ちていた。

携帯の時計を見る。
深夜の三時半になっていた。

酷く口の中が乾いていたので皆寝静まって暗くなったリビングに這い出た。
頭痛は昼間に比べてマシだが、まだ痛かった。
台所の電気を付け、麦茶をがぶ飲みする。

気付くとテーブルにカレーがラップされて置いてあった。
食べなくては、と思ったが、食欲が全くなかった。
そのまま麦茶を冷蔵庫に戻し、寝床に戻った。

寝る前になって頭の痛みが薄れ始めた。
冷静になっていくにつれ、涙が滲んできた。

僕は傷つけられた。

そして彼女を傷つけたのだと、後悔したのだ。

彼女はセックスをする度に今日のことを思い出すだろう、無理やり押し広げられた破瓜の痛みを、永遠に忘れないのだろう。

そう思うと泣かずにはいられなかった。
泣き声を必死に噛み殺し、丸くなる。
この激しい感情が外に逃げ出さぬように。
この肉体に封じ込むために。

このままではだめだ。
このままでは互いが傷つけ合うだけだ。
僕は静かな闇と、薄ぼんやりと光を湛える月光の照らされる中、一人、決意を固めた。

……彼女と、藤松小町と別れよう。



221 :ウェハース第八話 ◆Nwuh.X9sWk :2010/09/17(金) 16:39:02 ID:9UEy9fHN

翌日は午前から酷く暑かった。
猛暑です、と気象予報士が口をそろえて評していたぐらいだ。

僕は彼女に電話で行く時間を告げるとシャワーを浴びてから家を出た。

太陽に焼かれて、家から持ってきたタオルはすぐに汗で滲んだ。
電車に乗り、高級な住宅街の通りを行き、彼女の家のインターホンを押す。

彼女は十秒もしないうちに玄関から出てきた。

階段を下りる際のおぼつかない足取りに心が締め付けられる。

「いらっしゃい。あれ宿題は?何も持って来てないみたいだけど……」

彼女の笑顔がいつもより眩しく感じる。
心の持ちようでここまで変わるものなのか。
僕は握りこぶしを作り、固めた意志をさらに強く念じる。

「小町……、話があるんだ」

やっとの事で切り出した。

「それ、大事な話?」

頷く。
もう彼女と言葉を交わせなくてもいい。
このまま彼女を傷つけるくらいなら、そうなっても。

「分かった。入って」

彼女に続いて家に入る。

「先にリビングに行ってて、コーヒー入れてくるから。それまでさっきまで私が見てた映画でも見てて」

映画?僕は気にも留めず、リビングに入った。
リビングは暗く、映写機が動いていた。そして映写機が映し出していた先を見ると、僕は愕然とした。

『な、何でもっ!!何でも言うから!!お願い!出させて!!』

嘘だ、こんなの……。

『ウグッ!!、アアッ!!!こま、小町!!だっ、駄目だ!!』

映写機から映されていたのは昨日の僕たちのセックスシーンだった。
力なく、近くにあったソファーに腰を下す。

『ッ!あがッ!!』

映像の中の僕はだらしなく涎を流し、白目を剥いている。
なぜか涙が頬を伝って落ちていく。

『ゴホっ!!』

「これね……」

いつの間にか横に小町が座っていた。僕の手を握り、肩に体重を預けてくる。

「昨日出来たんだ。久しぶりに徹夜しちゃった」

嬌声が部屋中に溢れる。耳を塞ぎたかったけど、彼女が僕の膝の上に乗りキスを求めてくるので叶わなかった。
数分間のキスの後、彼女は思い出したように僕に尋ねてきた。

「そういえば、大切な話ってなに?」

妖しい笑みを浮かべ、そう尋ねる彼女の心境が僕には分からなかった。
ただ、今流れている映像は僕を殺すには充分な武器だった。
彼女が僕の首もとにナイフを突きつけている様な、そんな錯覚を覚える。

「言ったでしょう?」

昨日の眼だ。黒い、宝石。

「確かなモノが欲しいって……」

それは、この今流れている映像?それとも破瓜の痛み?僕の昨日の懇願?

「今日もいっぱい愛し合いましょう?」

頭の中の疑問の言葉をかき消され、押し倒される。
彼女は上着を脱ぎ、ブラを外し、僕に情熱的なキスを求める。
ただ、目はずっと僕を捕らえたままだった。
僕は彼女の瞳の中、音も光も届かない宝石の中に、閉じ込められている自分を見た。

「そしてこれからも、ずっと……」