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442 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:50:39 ID:PNJndRgl
「久しぶりだな、慶太」
……あれ?もしかして父さん?
「大きくなったわね」
母さんまで!
目が覚めると目の前に父さんと母さんがいた。
「どうしてここに……いや、そんなことはどうでもいっか」
久しぶりの家族水入らずの時間なのだ。余計なことを考えて台無しにしたくない。
「慶太もやって来たことだし、何か食べにでも行こうか。慶太は何食べたい?」
「お寿司!」
「慶太ったら、相変わらずお寿司が好きなのね」
「だっておいしいんだもん!」
えへへ♪お父さんもお母さんもだ~好き!
そんなとき、ぼくにいへんがおきた。
「あれ!?なんだかからだがとうめいになっていくよ!?」
「っ!?くそっ!悪魔どもの仕業か!」
「こわいよ!おとうさん、おかあさん!」
「お願い!慶太を奪わないで!」
「いやだよ!ここにいたいよ!たすけておとうさん!」
「手を離すんじゃないぞ!」
「だめ!てがきえていく!」
「慶太!」
「おかあさ~~~~~ん!!」
     ・
     ・ 
     ・


「お願いだから目を覚ましてよーーー!!」
切実な声が聞こえる。この声は恭子ちゃんに違いない。
「……恭子ちゃん?」
「っ!?お、お兄ちゃ~んっっ!!」
僕に飛びついて来た恭子ちゃんは、何があったのか、顔をくしゃくしゃにしながら泣いていた。
「どうしたんだよ?そんなに泣きじゃくって」
「だって……だっで……もう……うわ゛~~~~~~~~ん!!」
何があったのかは知らないが、こんなにも儚げな恭子ちゃんを放っておくことはできない。
僕は優しく抱きしめながら頭をなでた。
恭子ちゃんの髪は、まるで上質の絹糸の様にとてもさわり心地が良い。
「ほら、僕ならここにいるから。どこにも行かないからさ」
「本当!?ずっと私の傍にいてくれる!?」
「あぁ、恭子ちゃんが望むならね」
「っ!!好き!!大好き!!もう絶対に離れたくない!!」
かわいいかわいい我が妹の抱擁だ。肋骨のきしむ音なんて気になんかならない。
「そんなに僕の事が好きかい?」
「好きすぎておかしくなっちゃうくらい好き!!お兄ちゃんの全てを誰にも渡したくないくらい好き!!」
「ふふふ、そう言ってもらえると嬉しいよ」
「お兄ちゃんは!?お兄ちゃんは私の事好き!?」
調子に乗っていたら嫌な質問をされてしまった。その類の質問だけは何よりも避けたかったのに。
「決まってるじゃないか。そんなのだ……大好きだよ。もちろん、陽菜や結衣、姉ちゃんもね」
あ、あれ……?言えた……のか?毒に犯されているはずじゃあ?
さきほどまでは心に思った事を強制的に言わされたはずなのに、今はなぜか死を回避することができた。
なぜに?
これは実験するしかない。
「イルカさんって本当に綺麗だよね。まるでどこぞの絵画から飛び出したような美しさを感じるよ」
「なっ!?ななななななななな!?//////////////」
結果。
い、いやった~!!死んだ事が功を奏したのか、毒が完全に消えている!!
考察。
イルカさん以外の女の人が恐かったです。もし生き延びる事が出来たら、今後はその辺を注意していきたいです。


443 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:51:35 ID:PNJndRgl
「やっぱりそちは分かるようじゃの。このわらわが命の恩人だと言う事を」
イルカさんが言い間違えたようだ。これは本人のためにも、優しく訂正させてあげないといけないな。
「命の恩人?殺人鬼の間違い―――ぐべぇ!」
「いかにも。わらわの復活の呪文のおかげでそちはこうして蘇ったのじゃ。感謝せぇ」
人のお腹を足でぐりぐりしている人に、何を感謝しろって言うんだ。
「やはり気に入った!この度の大会が終わり次第、そちをわらわの従者に招き入れよう!」
僕の意思とは関係なく、僕の人生が決まっていく。
どうやらあの髭を生やしたイルカさんの従者っぽい人たちの一員になるらしい。
ジェネレーションギャップとか、大丈夫かな?僕、職場で仲間はずれとかにされないかな?
「一つだけ、窺ってもよろしいですか?」
「なんじゃ?言っておくがそちの意思など、わらわの権力をもってすれば皆無な事は承知じゃろうな?」
「あ、それは何となく気が付いていましたけど……陽菜様達の許可を得ない事には……なんとも……」
僕のご主人さま。
望んでなったわけじゃないけど、表向きは違うけど、いつの間にかなっていた僕のご主人さま。
「しょうがないの~。おい、そこの女人ども。この男は貰っていくが、異存はないよの?」
恐いもの見たさで4人の顔を見てみる。
僕の考えている様な雰囲気はなかった。4人ともビックリするような笑顔だ。ちょっとショックだ。
「「「「…………………………ふざけるのも大概にね?その年で顔がぐちゃぐちゃになるのとか嫌でしょ?」」」」
まるで台本でも読んでるかの様だった。口調にも、タイミングにも、寸分の狂いはない。完璧だ。
「……というわけで、今回のお話はなかった事に―――」
「まぁ、この大会で優勝すればそちたちも諦めがつくじゃろ。なにせそういう決まりごとらしいからのぉ」
なぜその事をイルカさんが知ってるの?それに僕はその事を了承した覚えはないよ?
「そうじゃったな、太郎とやら!」
イルカさんの掛け声とともに、筋肉隆々の人達に連れられた太郎君がやって来た。
あの人たちも僕の同僚になるのかな?なんか嫌だな……
「は、はい!確かにこの大会で優勝した人が早川を一週間好きにできるってレディ達が!」
太郎君は今まで拷問でも受けていたのか、口調がやたらはきはきしていた。
そんな彼に僕ができるアドバイスは一つだけだ。
いくら拷問を受けたからといって、例えそれがどれだけ辛かったからといって、陽菜の気に障る発言をしてはいけない。
もう遅いだろうけど。
「余計な事をいちいちと……太郎君、そんな事より私の頼みごとの方はもう済ませてあるの?」
陽菜の頼みごと?
「い、いえ!それが薬品を探しているうちに捕まってしまって……」
薬品?
「………………そ。分かったわ」
僕は静かに目を閉じた。音の方は完全に遮断できなかったけど、直接映像を見るよりははるかにましだ。
○月×日。僕は一人の仲間を失った。


444 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:52:15 ID:PNJndRgl
「時間の方がだいぶ押してきているので、第2ステージの方へ参りたいと思います」
陽菜や恭子ちゃんの番が回ってこなかった。
ぶっちゃけ、岡田やイルカさんたちよりも聞きたかったのに。
「第2ステージは小悪魔対決!やはりかわいい女の子と言えば、この要素は必須ですよね?」
たしかに小悪魔さはいいかもしれない。姉ちゃんにちょっとした意地悪とか…………されてみたいな。
なによりこれを機に、魔王様も小悪魔程度にレベルダウンとかしてくれないかな?
「ルールは簡単。まず様々な性格を記した紙が入っているこの箱から、それぞれ一枚引いてもらいます。そしてそこに書いてある役を演じていただき、より演技力、可愛らしさをアピールできた方を慶太君に選んでいただきます。じゃあ陽菜ちゃん、どうぞ!」
「なんで僕限定何だよ!演技だけならまだしも、可愛らしさを含んだ順位付けなんてできるわけないだろ!」
僕の叫び声は会場全体に響くものだったが、陽菜はまるで聞こえなかったかのように箱に手を入れ始めた。
……まぁ、わかってたけどね。
「さ~陽菜ちゃんの引いたカードは……な、なんと!!」
カードに書いてある言葉を見た瞬間、司会者の顔が妙に青白くなった。そんな顔をされるとすごく不安になるじゃないか。
「ふ~ん、私はこれになりきればいいのね?」
なんだ?ま、まさか『奥さん』とか書いてあったんじゃ……い、いやそれはそれで嬉しいはずだ!
「それでは陽菜ちゃんに演じてもらう女の子はこちらです!!」

 
   [ツンデレ]


「ちょ、ちょっと勘違いしないでよね!別にあんたのために今まで眼羅巳を撃ったんじゃないんだからね!」
陽菜は何か誤解している。
ツンデレって言うのは、ツンの中にもデレがある人を指す言葉のはず。眼羅巳を撃つことのどこにデレがある―――いや、そう考えるのはよそう。
きっと陽菜だって良くも分らずに、嫌々こんなことを言ってるんだ。
そんな彼女に僕ができる事は、ちゃんと相手役を努める事だよな。
「そ、それにどうして他の女の子ばっかり見るのよ!」
え~と、ツンデレ相手の男って、確か朴念仁を演じればいいんだから、
「お前には関係ないだろ?何怒ってんだよ?」
これでいいのかな?
「ふ~ん……私には関係ないのか……そっかそっか……」
「ちょ、ちょっと陽菜!?何だか今の雰囲気と発言は全然ツンデレらしくなかったよ!めちゃめちゃ素が出てたよ!」
危なかった。危うく陽菜の得点と僕の命が消えるところだった。
「あ、そっか」
あ、そっかって……
「か、関係ないけど!ない……けど……」
「ないけど何?」
「……嫌……だから……」
陽菜は今まで見たことないくらいに弱気になっていた(演技だけど)。
こうしてみると、本当に女の子だって実感する。僕が大好きだった女の子だって実感する(演技だけど)。
「……ごめんな?もう、陽菜以外の女の子なんて見ないよ」
「!ご、誤解しないでよ!私はあんたに特別な思いなんか、こ……これっぽっちも……」
「分かってるよ。ただの俺の片想いだって。それでも俺は陽菜に誤解なんてされたくないからさ」
「……慶太」
何やらいい雰囲気になっってしまった。
こんな陽菜だったらマジで付き合いたい。そう思えるくらい、本当にかわいい。
だけど僕は勢い余って告白なんて絶対にしない。
例えこれが演技だと知らなかったとしても、そんなことはしない。
だって陽菜は隠しきれていなかったのだ。無性にギラついている眼を。まるでこれから僕を捕食しにかかっているような獰猛な眼を。
やっぱり陽菜は大魔王だった。


445 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:53:53 ID:PNJndRgl
「まるで最後はホラー映画のようでしたね!」
殺す。あの司会者、絶対に殺す。
「次は恭子ちゃんの番です!ではカードを引いて下さい!」
恭子ちゃんが例のボックスに手を入れた。
恭子ちゃんのツンデレとかだったら、かわいかっただけで済んだんだろうな……
「これにします!」
「ありがとうございます!さて、恭子ちゃんの引いたカードは……こ、これは!?」


 [甘えん坊(依存)]



「んふぅ~お兄ちゃん大好きぃ♡」
「そ、そっか。あ、ありがとね……」
恭子ちゃんの引いたカードは、まさしく恭子ちゃんにぴったりのカードだった。素がでまくりだ。
「で、でも、もうちょっと離れてくれた方が、お兄ちゃんとしては嬉しいかな……?」
「いやですぅ~♡お兄ちゃんとはぜ~ったいに離れないもん!」
二人の間を接着剤でも塗ってあるかのように、恭子ちゃんは僕に抱きついていた。
正直嫌ではない。というかめちゃめちゃ嬉しい。
こんなかわいい子が全身を使って僕に愛情表現をしているのだ。男冥利につきる。
でもこのままいくと『アレ』だから、早く止めないと。
「そ、そろそろ本気で離れてくれないかな?」
「………………………………………………………………そんなに嫌ですか?」
目を潤ませて見上げてくる恭子ちゃん。
え?なにこの目?まさか魔法?
「私はお兄ちゃんとこんなにもくっついていたいのに……お兄ちゃんは嫌なんですか……?」
だめだよ恭子ちゃん。その魔法は僕に効果抜群だから使っちゃだめだよ。
「嫌だぁ!お兄ちゃんと離れたくない!ずっとこのままでいさせてよぉ!」
僕は魔法を無効化する呪文も装備も持ち合わせていなかった。
「……僕だって恭子ちゃんとずっとこのままでいたいよ」
自分の愚かさに気づかされる。
かわいい妹のお願いを無視して、僕は自分の命の心配をしてしまった。
なんて最低な野郎なんだろう。どっちが大切かなんて、考えなくても分かるじゃないか。
「本当!?」
「あぁ僕だって恭子ちゃんとこうして抱き合っていたい。もう誰にも渡したくない」
全身が痒くなるようなセリフを淡々と話す。今の僕には一点の迷いもなかった。
「一生こうしていよっか?」
「うんっっ!!絶対だよ!?このまま一緒にいるんだよ!?」
「分かってるよ」
そうだ。このまま恭子ちゃんと一生抱き合っていよう。
どうせ僕の一生は間もなく終わるのだからな。
いや、一回死んだから二生かな?


446 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:54:37 ID:PNJndRgl
「さすが勇者!何度でも蘇ってきますね!」
「……毎回毎回イルカさん、ありがとうございます。そして司会者、死ね。マジ死ね」
「次は早川結衣ちゃんです!私の一番のお気に入りの結衣ちゃんの引いたカードは……」


[クーデレ]



「……好き」
こいつはこいつで、随分と短絡的な事を言いやがるな。それだけじゃ全然クールでもなんでもないぞ。
「……好き」
…………
「……好き」
「分かったよ!ありがとう!結衣さんにそう言ってもらえて僕は幸せな人間だな!」
もはやただの恐い人になっている。
目の前で好きしか言わない子に、僕は一体どうすればいいっていうんだ。
「慶太は……私の事……好き?」
マジかよ。またこの手の質問かよ。
もしここで『好き』と答えたら、またイルカさんにお世話になる気がする。イルカさんの機嫌と残りMP次第だが。
もしここで『嫌い』と答えたら、またイルカさんにお世話になる気がする。イルカさんの機嫌と残りMP次第だが。
どっちも同じ結末か……
「そうだな。これから好きになるかもしれないな」
男として最低の答えをしてしまった。まるで本命はいるけど、一応キープしとくかみたいな。
「どうすれば……私の事……好きになって……くれる?」
ってか全然クールじゃなくね?しゃべり方はどことなく冷たいけど、クールの割にはしゃべりすぎじゃね?
「……答えて」
―――グッ―――
「答える!答えるから!頸動脈を締めるのはやめて!」
なんて恐ろしい子なんだ。陽菜は二人もいらないよ。
「え~と……僕の好きなタイプは優しくて、暴力なんか絶対に使わない子だから、そんな風になってくれると好きになるかも」
こう言えば、少なくとも岡田、あわよくば恭子ちゃんまでが僕に対して攻撃しなくなるだろう。
はっきり言って、今までものすごく痛かったんだから!
「……じゃあ慶太に優しくしたら……恋人になってくれる?」
「……え?」
「もう二度と……慶太に呪文を使わなかったら……私と付き合ってくれる?」
「そ、それは……」
あ、ああん!



447 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:55:11 ID:PNJndRgl
「祥子さんは何のカードを引くのかな……?」
優しいお姉さんとかだったらいいな―――って、あの悪魔どもの考えたカードだ。そんな当たりカードは入っていないだろう。
「……?あの、すいません。このカードに書かれている言葉の意味は何ですか?」
どうやら姉ちゃんは難しいカードを引いたようだ。
「あ!これは当たりを引きましたね!」
司会者が嬉しそうに姉ちゃんに意味を説明している。
なんとなく、この場を抜け出したくなった。



 [ヤンデレ]



「ウフフフフフフフフフフフフ。慶太君はとってもかわいいですね♪」
姉ちゃんの手が僕の頬を撫でる。
「でもだからと言って、言い寄ってくる他のメス豚どもと仲良くすることはないんですよ?」
これは演技だ。皆同様、姉ちゃんだって仕方なくこんな事を言ってるんだ。決して本心じゃないはずだ。
「慶太君はお姉ちゃんだけを見ていればいいんですよ。ほら、お姉ちゃん大好きって言ってごらん?」
「え?で、でも、それを言ったら陽菜達が―――」
バチーーーーーーーン!!
久しぶりに味わったものすごい衝撃。歯が数本折れた。
「陽菜?慶太君の口にしていい女の名前は『し・ょ・う・こ』だけですよ?分かってますよね?」
「は、はひ!」
「じゃあもう一度」
「お姉はん大ふき!」
「よくできました♪いいですか?これから慶太君の口にしていい言葉は、『お姉ちゃん』『祥子』『大好き』『はい』の4つだけです。」
「……はひ」
落ちつけ自分。もう少し……もう少しで姉ちゃんの持ち時間がなくなるんだ。そうすればきっと、あの優しかった姉ちゃんに戻るはずだ。
「ところで慶太君は陽菜ちゃんの事が大嫌いよね?」
「…………」
お姉ちゃん、祥子、大好き、はい。この4つの単語だけでこの質問に答えるのは無理です。
「どうしたの?早く答えて?身の毛もよだつほど嫌悪してるんでしょ?」
え……えっと……
「……………………」
陽菜の視線を感じながら、僕は何て答えればいいんだ?
「お姉ちゃん大好き!」
「フフフ、ありがとう♪でもお姉ちゃんの質問にはちゃんと答えてね?それで陽菜ちゃんは―――」
「お姉ちゃん大好き!お姉ちゃん大好き!お姉ちゃん大好き!」
とりあえず、こうやってごまかすしかない。
「ふ~ん……それが慶太の答えなんだぁ……へ~……」
陽菜が攻撃態勢に入った。
ち、ちくしょう!結局やられちゃうのね!


448 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:55:56 ID:PNJndRgl
「ふむ!最後はわらわじゃな!」
もうこの際、何が来たって構いはしない。僕にはもう失うものは何もないのだから。
いや……一つだけあった。
あの純粋な恭子ちゃんだけは心の綺麗な女性に育ってほしい。
それだけが最後の望みだ。
「イルカ姫に引いてもらったカードはこちら!」


  [キモウト]



「……キモウト?なんじゃそれは?」
僕にも分からん。どことなく妹にニアンスが似てないでもないが。
「まぁ簡単に説明いたしますと、ヤンデレの妹バージョンです」
司会者の説明に笑いがこみ上げてきた。
「アッハハハハハハハハハハハハ!!」
マジ……かよ……
「ふ~ん、なるほどの~」
イルカさんが何か決意を決めたかのような表情で僕に近付いてくる。
「なんですか?」
「ぁ……愛しておる……ぞ……兄上どの///」
それだけじゃないんだろ?キモウトというからには、その続きがあるんだろ?
「だ、だから……わ、わらわを愛してはくれぬか……?」
イルカさんの発言は僕の予想と真逆のものだった。
そんな彼女をちょっとだけかわいいと思ってしまった。
「兄上どの……」
僕は妹フェチなのかもしれない。
恭子ちゃんもそうだが、僕を兄と慕ってくる女の子がとても愛くるしく見える。
気がつくとイルカさんの腰に手を回していた。
「あああああ兄上殿ぉ!?」
「かわいいよ、イルカさん」
顔を真っ赤にして悶えている彼女がたまらなく愛しい。
このまま本当の妹にしてしまおうか?
そんな事を考えていたとき、僕の第6感が警告を鳴らした。
何か危険が迫ってくる。そんな警告だ。
しかし辺りを見渡しても、これと言って変わった事はない。陽菜達がブラックスマイルになっているのだっていつもの事だ。
じゃあこのいいようもない不安はなんだ?
僕の不安は数秒後に現実のものとなった。


449 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:57:07 ID:PNJndRgl
「ふざけんなっっ!!」
そんな声とともに、抱きしめていたイルカさんの姿が忽然と消えた。
その後ものすごい衝撃音が聞こえ、その方向に目をやると壁に吹き飛ばされたイルカさんの姿があった。
誰かがイルカさんを音速で吹き飛ばしたのだ。
それを成し遂げたのは、なんとあの天使の恭子ちゃん。
「お兄ちゃんの妹は私だけだ!おまえなんかが気安く兄と呼んでいいはずがないだろっっ!!」
イルカさんの従者数人に押さえつけられているにも拘らず、それでも恭子ちゃんは前に進んでいた。
まるで猛獣だ。まったく止められる気がしない。
対するイルカさんは足をふらつかせながらも、立ち上がる事ができたようだ。この世界の女性は不死身なの?
「な、何をするのじゃ!今はそなたの出番ではないではないか!」
「黙れ!お兄ちゃんに気安くしゃべりかけるんじゃないっっ!!」
二人の間に火花が散っている。
イルカさんはともかく、恭子ちゃんがこんなに怒っているのを見たのは初めてだ。
「そんないきり立ちおって一体……そうか。さてはそなた、わらわに兄上殿が取られると思い、不安を感じているのじゃな?」
サトリがほぼ皆無になった僕でもわかる。これは火に油を注いだ発言だ。
「なっ……!なんでお前ごときに私が不安になるって言うのよ!!お兄ちゃんの妹は私だけなのに!!」
「しょうがないではないか。そなたとわらわでは、そもそも顔の良さが大きく異なるからな。だからきっと兄上殿も、わらわを妹としたいのじゃろうて」
「お兄ちゃんがお前みたいなブスを気にいるわけない!お兄ちゃんが好きなのは私だけなんだから!」
二人にはいつ殺し合いが始まってもおかしくないくらいの雰囲気があった。
今までイルカさんと恭子ちゃんはいろんな意味でいい友達になれると思っていたのに……
「まぁ、でも実妹はそなたじゃからな。言いたい事も分かる」
イルカさんはそう言って口元の血を拭った。
どうやら僕の恐れていた事は避けることができたらしく、年配であるイルカさんの方が折れたようだ。
戦争にならなくて良かった。
「しかしの?それ故にわらわとこやつは夫婦になる事が出来る。そ・な・たでは無理じゃがのぉ?」
「!」
「せいぜいわらわと兄上が婚姻の儀を取り行うまでは、優しくしてもらうんじゃぞ?あっははははははははは!」
―――ブチッ!―――
なにかを噛み切ったような音が聞こえてきた。
「………………す」
恭子ちゃんは口から大量の血を流しながら何か呟いている。さっきのは唇を噛み千切った音だった。
「……殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すっっ!!」
口から流れている血が、もう大変な事になっている。バイオハザードに出てくるゾンビみたいだ。
「お願い陽菜!そんなあからさまに嬉しそうな顔をしてないで、二人を止めてよ!」
「え~……じゃあ止めたら何してくれる?」
「何でもするから頼むよ!」
「じゃあ、この大会の優勝者を私にしてくれる?特別審査員特権で」
「僕にそんな権限があるはずもないけど、僕は陽菜に票を入れるからお願いします!」
「その言葉忘れないでね♪」
陽菜はそう言うと、お互いに髪を毟り合っている二人に向かって手の平を向けた。

 「挫羅鬼遺魔」

陽菜の呪文のおかげか、二人はピタッと動かなくなった。


450 :サトリビト・パラレル ◆7mmBvdBzwo [sage] :2010/09/26(日) 00:58:36 ID:PNJndRgl
「それではいよいよ今大会の優勝者を決めたいと思います!!」
このまま審査を続けると色々とマズイと判断したのか、コンテストは強制的に終幕の方向に向かわれた。
「期待しててね!」
陽菜は眩しい笑顔を僕に振りまいて、その手はガッツポーズの形になっている。
「慶太……優勝……したら……約束……守ってね……」
もう審査は終わったんだから、そのキャラは解除してよ。
「フフフ……慶太君はモテモテですね……フフフ」
……あの『ヤンデレ』とかいうキャラを演じてから、姉ちゃんの目が黒く濁っているように見えるのは気のせいなのだろうか?
三人は僕を囲むように、自分の名前が呼ばれるのを今か今かと待ち続けていた。
いつもならもう1人、この会話に加わってくる人物がいる。
だがその子は陽菜の呪文によって眠りについていた。
恭子ちゃんとイルカさんはあれから一度も目を覚ますことはなかったが、陽菜曰く「ちょっと強めの眠りの呪文だから!」との事なので心配する事はないだろう。
「さぁ、それでは発表したいと思います!!……ちなみに今回の優勝者は慶太君の独断と偏見だけで決定しましたのであしからず」
最後までこの司会者は僕の敵だった。
まぁいいさ。陽菜が優勝だから、とりあえず陽菜からの拷問は受けずに済むだろう。それだけで十分さ。
「栄えある慶太君が選んだ優勝者は―――」


「イルカ姫ですっっ!!」


「「「「………………………………………………………………………え?」」」」
あ、あれ?言い間違えたのかな?確かに僕は陽菜に票を入れたのに―――
「慶太……どういう事?」
「ち、違います!僕は確かに陽菜様に票を入れさせていただきました!これはきっと何かの間違いです!!」
岡田も姉ちゃんもかなり危険な雰囲気になっているが、それ以上に陽菜がやばい。
「私に票を入れるって言ってたよね?それなのになんであのクソガキが優勝なの?」
まままままままずい!
こんな時に限って太郎君は違う世界に旅立っている。もう僕に残された手はない。もう誰も陽菜を止める事はできない。
したくもない覚悟を決めさせられようとした時、ある人物から救いの手が差し伸べられた。
「気持ちは分からんでもないが、そのくらいにしてもらおうかのう。その男はこの瞬間をもって、わらわの物になったのじゃ。人の物に手をだすものではないぞ?」
場の空気をかき切るように、その声は凛と通った。
全員がその方向に目を向ける。
そこには眠っていたはずのイルカ姫が不敵な笑みをうか出て立っていた。その横には目と口をぽかんとあけたままの恭子ちゃんの姿も。
「慶太、早くこちらへ来んか」
流されるがままに生きてきた僕は、とりあえずイルカさんの指示に従った。
「素直でよろし。そんなそちにとっておきのプレゼントを与えようぞ」
そう言ってイルカさんは指を一回パチッと鳴らすと、従者の一人が30㎝四方の箱を抱えて現れた。
どうやら僕はこれを受け取るようだ。
「!?慶太君逃げてぇ!その中には呪いのアイテムが入っているわよ!」
突然叫んだ姉ちゃんに、今まで動きを止めていた女性陣が一気に駆け寄って来た。
「フン!もう遅いわ!」
だが一足早く、イルカさんが箱を開け、中に入っていたものを僕の首に巻きつけてきた。
「い、いでっでででっでででででででで!!!な、何だよこれ!!」
首に耐えがたい激痛が走る。そこには棘のついた首輪が巻きつけられていた。
「そ、そんな……慶太君に何て事を……!」
「何を言う。こやつはわらわの下僕となったのじゃ。下僕にきちんと誰が主人かを分からせてあげるのが、わらわの務めじゃ」
「あ、あの……この首輪は一体……?」
「安心せい。その首輪はただの―――」
イルカさんは一呼吸置いて、まるで母親が子供に見せるような穏やかな表情でこう言った。

「『服従の首輪』じゃ」