70 名前:玲子 (1)◇あばばばばば 投稿日:2010/10/01(金) 20:14:52 ID:wdstd6t7
昔から玲子は不気味な奴だった。
幼稚園の頃、廊下の隅で玲子はよく泣いていた。大声を上げるような泣き方ではなく、
音を立てずに体を振るわせて泣いていた。なぜ泣いているのかというと、まあ簡単に言えば玲子はみんな
に虐められていた。
無視され、叩かれ、そしていつも一人だった。
ある日、俺はそんな玲子が年長の餓鬼3人に虐められている現場に行き会った。
玲子は教室の隅に追いやられ、うずくまっていた。
その餓鬼3人は、ヘラヘラ小汚い笑い声を上げながら玲子のわき腹に蹴りを入れていた。
自分以外に人はいたが皆見て見ぬふりをしていた。
その時自分がなにを思ったのかは知らないが、急に目の前が赤くなり。
気がつけば、その餓鬼3人に突進していた、突然の奇襲に会いよろけている餓鬼3人に、
無我夢中に拳を叩きつけていたのを覚えている。
餓鬼3人の叫び声を聞きつけたのか、どこからか先生がすっ飛んで来て
暴れる俺を押さえつけるや、つまらない説教を言い始めた。「人を叩いちゃダメでしょ」とか「なんで
こういことしたの?」とか。どうやら先生は俺に落ち度があると思っているようだ、たしかに
俺が先に餓鬼三人に手を上げた、しかしこいつらは玲子を虐めていたではないか?
なぜ自分は責められなくてはいけないのか?至極理不尽だと、子供心にそう思ったのを覚えている。
普段は大人しい性格だったが、この時は相当頭に血が上っていたらしく、珍しく先生に反論した。
「せんせい!ぼく、玲子ちゃんが虐められてるの見たんだ!!だ、だからぼく・・助けようと思って・・・!!」
やはり大人に刃向かうのは怖かったのか、後の方は声がふるえていた。餓鬼3人は弱みを握られたような
表情をしていた。
「・・・本当?あなた達玲子ちゃんを虐めてたの?」
先生は怖い顔で餓鬼3人を睨み聞いた。当人の餓鬼3人は「し、しらねーよ、やってねーよ・・・」と
嘘をつきた。その傲慢な態度にイラついて、また手が出そうになったが我慢していた。
このままでは収集がつかないので先生は玲子本人に聞いた。

「玲子ちゃん、あなた蹴られたり、叩かれたりした?」


71 名前:玲子 (1)◇あばばばばば 投稿日:2010/10/01(金) 20:15:43 ID:wdstd6t7
しかし、玲子はなにもしゃべらず、ただただ頭を垂れていた。気味の悪い沈黙が場に流れ始めた・・・・
時計の針の音が妙に大きく聞こえ、いつの間にわいたのか外野の野次馬も黙っていた。

「・・・・ゎ・たし・・は・・s・・」

玲子が、か細い声で喋りはじめた。

「いじめられて・・・いません・・・」

一瞬、玲子がなにを言ったか分からなかった。
「いじめられていません」そんな分けない、じゃあなんでそんなに震えている?
なんでスカートがそんなに汚れている?なんで洋服くっきり足跡がついている?
こんなときどうしたらいいのか分からず、ただオロオロするしかなかった。

「ホラッ!玲子もされてないって、言ってるジャンかよー!!!」
(ち、違う・・・!)


「早川君・・・嘘はダメだよ・・・」
(先生・・・!!)


「・・・・・・・・・」
(なんか言ってよ!玲子ちゃん!!)

みんなは、よってたかって俺を責め始めた。
心の中が悲しみなのか、悔しさなのか、怒りなのかよく分からないモヤモヤしたものが
詰まっていくのを感じた。

(僕は悪くない・・)

(僕は悪くない・・)

(僕は悪くない・・)

(僕は悪くない・・)

(僕は悪くない・・)



僕は悪くない・・・・・・・・・・・・!



その時、玲子と目が合った、ほんの一瞬だけど確実に。
その瞬間僕の中の、なにかが弾けた、頭が真っ白になり、
気がつけば俺は玲子の手をとって駆け出していた。
教室を飛び出し、靴も履かず、そのまま門を出た。
後ろから先生の声が聞こえたけど、無視した。
いやだった。なにもかもから逃げ出したかった。
最終更新:2010年10月17日 21:58