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471 名前:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6 [sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:54:45 ID:XisNqYOX
日常に潜む闇 第1話

4月――それは新年を迎える1月と似ていて、世の中が何かと新しいものに変わる時期だ。
特に、日本では4月が1月以上に重く見られているような気がする。
 そんなことを考えながら、久坂誠二(くさか・せいじ)は桜並木の下を歩いていた。
 周囲を見回せば、まだシワが寄っていない真新しい制服を身につけた男女がちらほらと見える。実に微笑ましい光景だ。
 なんてことを思っている誠二だが、彼もまた彼ら彼女らと同様、久遠坂学園高等部の入学生である。
 久遠坂学園は久遠市の西側に位置する私立学校で、小高い丘の上に広大な面積を持つマンモス校だ。
 小学校に相当する初等部からいわゆる大学である大学部までが揃っており、
桜並木の正門から敷地内に入って、左に初等部、右に中等部、その奥の両サイドに高等部があり、寄宿寮となぜか学園内に立地している商業区を間において大学部が一番奥に存在している。
 これだけ広いと、外部から通学している者にとっても寮住まいの者にとっても徒歩は厳しいらしく、
バスや路面電車という公共交通機関が堂々と設置されている。
 それでいて授業料やその他諸々の費用は一般的な私立と同じか、
もしくはそれより若干休めだというのだから驚きである。
 さすが数の暴力といったところだろうか。
 誠二はとりとめもない思考を続けながら、学園の門をくぐる。学生証に内蔵されている非接触型ICで身分証明を行うことによって通れる、改札口がとても新鮮だった。


472 名前:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6 [sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:56:54 ID:XisNqYOX
「ここが、久遠坂学園……」
 誠二は目の前に広がる教育施設群、そして見渡す限りの人に感嘆を漏らした。
 と、その時背後からいきなり声をかけられた。
「うむ。その通りだ。ここが君たちの学び屋の園となる久遠坂学園だ。
 学園にようこそ、新入生君」
 驚いて、後ろを振り返る。
 そこにいたのは長い黒髪が特徴的な高等部の女子生徒。
 彼女の周囲の空気はピンと適度に張りつめて澄んでいる感じがした。
「ええ、と……ありがとうございます」
 しかしいきなり見知らぬ人、もとい見知らぬ先輩となる人物に声をかけられ、返答に窮する誠二。
 とりあえず歓迎はされたのでお礼だけは言っておこうと思った。
 見知らぬ先輩はそんな誠二の返し方に一瞬キョトンとしたが、何がおかしいのか口に手を当てて笑い始めた。
「くくっ。なるほど、噂どおりに面白い人物だな、君は」
 そして踵を返す。
「また後で会おう、久坂誠二」
「え? あ、はい」
 後ろ手を振って立ち去る見知らぬ先輩の言動について行けず、未だに混乱する誠二だったが、ふと疑問が浮かぶ。
「あの人なんで僕の名前知ってたんだ?」
 あんな感じの人と以前会っただろうかと記憶を探ろうとするが、
 途中で入学式の会場に早く行かないといけないことを思い出して誠二はその場を足早に去った。


473 名前:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6 [sage] 投稿日:2010/10/17(日) 16:58:29 ID:XisNqYOX
「君も相変わらず物好きだな、天城君」
「いいや、貴方ほどではないさ。生徒会長」
 生徒会長と呼ばれた男子生徒は手にしていたペットボトルの紅茶を軽く口に含みながら、その真意をうかがい知ることが出来ない微笑みを浮かべている。
 生徒会長に対して、苦笑を浮かべたのは何とも口調が男勝りな、
誠二に話しかけてきたあの女子生徒だった。
「そろそろ時間だ。可愛い後輩たちを迎え入れるとしよう」
 二人がいるのは舞台袖。隙間から会場内を見ればすでに満員御礼だ。
 ペットボトルを傍の机に置き、生徒会長は気を引き締めるようにネクタイを軽く締める。
「久坂会長、よろしくお願いします」
 静かに告げるように声をかけて来たのは司会進行役の女子生徒。
いつの間にか舞台袖に移動していたようだ。
 生徒会長――久坂誠一(くさか・せいいち)は頷くと、高等部の新一年生、総数400名及びその保護者らが待ち受ける壇上へと上がった。
 天城はその様子を、微笑を浮かべて舞台袖の暗がりから見つめるのであった。