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114 :ヤンデレの娘さん 脅迫の巻  ◆DSlAqf.vqc :2010/11/01(月) 01:04:52 ID:wJ+H+9ca
 「…千里くんの弱みって何ですか?」
 ある日の下校中、俺こと御神千里(ミカミセンリ)は恋人であるところの緋月三日(ヒヅキミカ)に脈絡無くそんなことを聞かれた。
 「や、割と弱みというか欠点は多いほうだと思うけど、何でいきなりンなことを?」
 「…例えばですよ、ある日、まかり間違って千里くんがどこかの女狐に誘惑されて篭絡されるかもしれないじゃないですか」
 「いきなりヘヴィな例え話だね」
 「…それで、私に向かって『別れよう』とか言い出すかもしれないですよね?」
 「……それで?」
 「…だけどそれはある種の気の迷いで間違いで正さなきゃいけないことなんですよ!」
 くわ、と身を乗り出して三日は言った。
 「それと俺の弱みがどうつながるん?」
 「弱みを握っていれば別れられないじゃないですか!」
 「ってソレ脅迫じゃないの!?」
 断言する三日に反射的にツッコミを入れる。
 つーか、たとえ話の中の俺が最低すぎる。
 浮気男かよ、誠死ね状態だよ。
 そーゆーことしたら最後、「女の子に似合わないカオ作ってんじゃねぇ!」と親にブン殴られる。
 見た目女なのにパンチ力がハンパ無いからな、あの人。
 「…それで、今までの観察記録(せいかつ)から千里くんの弱みを洗い出そうとしているんですけど、中々うまくいかなくて…」
 「それで直接本人に聞いたと」
 俺の言葉にこくん、と頷く三日。
 ……正直なのは良いことである。
 「とりあえず三日。さしあたり、俺に浮気と別れる予定は無いよ?」
 「…昔の人は言いました、予定は未定と」
 あれ、もしかして俺、恋人からの信頼度とてつもなく低い?
 「…それに、男の人が別れたい理由なんてたくさんあります。『君にはもっと魅力的な相手がいる』とか『占いで相性が悪かったし』とか『実は巨乳(貧乳)フェチなんだ』とか『ぶっちゃけ愛が重い』とか」
 「無駄に具体的だね…」
 「…実体験です。というか全部月日(ツキヒ)お父さんが零日(レイカ)お母さんや二日(ニカ)お姉様に言った言葉です」
 「娘の前で何別れ話切り出してんのおとーさん!?」
 まだ知らぬ三日の家族の名前が明かされたと思ったら、その上ヘヴィな話を明かされた。
 ……つーか、『お姉様に』って何さ。
 まさかとは思うけど、実の娘さんが美人過ぎるからって手ぇ出したんじゃあるまいか…。
 一日(カズヒ)おにーさんといいこの月日さんといい、どうにも緋月家の男共は油断ならんというか何というか。
 「三日、もし親父さんからいやらしいことをされたら相談してくれ。絶対力になるから」
 「…ありがとうございます、千里くん。でも、お母さんやお姉様がいますから、お父さんもこれ以上泥沼にしようとは思わない……と思います」
 ああ、泥沼なのがデフォなのね。
 もしかして、緋月家の家庭環境って割と殺伐としてんじゃなかろうか?
 「…あ、我が家は割と仲良いですよ?日曜朝に子供向けヒーロー番組を家族4人そろって観る位には」
 俺の心配を見て取ったのか、三日が言った。


116 :ヤンデレの娘さん 脅迫の巻  ◆DSlAqf.vqc :2010/11/01(月) 01:06:56 ID:wJ+H+9ca
 「ああ、それなら…」
 「…観ながら、お母さんとお姉様が正々堂々真正面からお父さんを奪い合うくらいには」
 「随分オープンな三角関係なんだな…」
 「…この前なんて、テレビのヒーローが必殺技を放つのと同じタイミングでお母さんがお姉様を吹き飛ばしました」
 「随分バイオレンスな三角関係なんだな!?」
 「…お兄ちゃんが家を出ているので、最近は飛んでくるお姉様を避けるのが大変です」
 「三日その内殺されるんでない?凶器は二日さん、犯人は零日さんで」
 「…それで、千里くんの弱みって何ですか?」
 「どうしてそこで話をそらすかな!?って言うか戻るかな!?」
 「…ウチの家族は何だかんだで幸せみたいですから」
 幸せらしい。
 当事者がそう言うからにはそうなんだろう。
 将来的には、色々な意味で三日を引き離したくなる家庭ではあるが。
 「…次は、私たちの幸せを考えましょう」
 「俺の弱みが俺らの幸せに関係するとも思えないけどなー」
 そうは言いながらも、自分の弱みとやらちょっと考えてみる。
 が、いきなり聞かれても分からん。
 弱みってぇとアレだろ?
 世間に暴露されたらピンチになるような情報のことだろ?
 一介の高校生がそういくつも持っているモンでも無いような気がしてきた。
 「自分の欠点なら数え切れないほど思いつくんだけどなー」
 「…え、御神くんに欠点なんて無いじゃないですか?」
 俺の言葉に、まるで当然のように言う三日。
 「参考までに聞くけど、三日的に俺ってどんななん?」
 「…御神千里。二年四組出席番号十九番、窓側の列の前から四番目、血液型はA型、身長195cm、体重83kg。
 所属クラブは無し、ただし料理部助っ人、夜照学園生徒会助っ人、他多数助っ人。得意科目は国語、苦手科目は数学。
 趣味は私と料理と昼寝と読書、好きな物は私と料理、本(漫画含む)、特撮番組、特技は私と家事全般、住所は都内夜照市病天零4丁目13-13。
 得意料理は和食。特に肉じゃがは絶品。ただし朝のホットケーキも捨てがたい。
 家族構成はメイクアップアーティストのお義父様、御神万里(ミカミバンリ)さん。お母様の御神千幸(ミカミチサチ)さんは故人。
 性格は温厚。意識して他人に気を配れて、頼まれると嫌とは言わないタイプ。
 けれど、できないことはできないと言うし、なおかつ頼まれたことは一通り達成する、達成できるミスター・パーフェクト。
 1日のスケジュールは…」
 「オーケー、分かった。それくらいでいい。あと、明日の弁当は肉じゃがにしよう」
 際限なく話そうとする三日を、俺は押しとどめた。
 このままでは何時間でも俺の話をしてそうだ。
 そうか、三日は肉じゃが好きなのか。
 じゃ無くて。
 「さすがに、ミスター・パーフェクトはほめすぎっしょ。俺はそんな大層な人間じゃ無いよ」
 「…そうですか?」
 お前は何を言ってるんだという顔で首をかしげる三日。
 「…千里くんは腹立たしいまでに優しい人じゃないですか。優しさで世界を狙える人じゃないですか。むしろ神」
 「何の世界を狙うのさ…」
 「…それに、私のことも助けてくれましたし」
 つぶやく様に付け加える三日。
 彼女が1年の時、1人迷って途方にくれていた所を、俺が助けたことが俺らの関係の発端である。
 いやまぁ、俺も最近忘れかけてた設定だけど。
 「でも、言っちゃあれだがよくある話だろ?たまたま、俺がそのとき声かけただけで」
 「…そこです」
 ググ、と手を握り、三日は語りだす
 「…当時、お兄ちゃんもいなくなり、人見知りで校内の知り合いも碌にいなかった私にとって、御神くんの存在がどれほど救いになったか…」
 舞台役者もかくや、という大げさな身振りで語る三日。
 「三日、みんな見てるみんな見てる」
 「…良いじゃないですか、千里くんが完璧なのは事実なんですから」
 陶酔さえ感じさせる様子で語る三日。
 うわぁ、目がマジだ。
 1人の人間に対してよくもまぁここまでカッとんだことを言えるもんである。


117 :ヤンデレの娘さん 脅迫の巻  ◆DSlAqf.vqc :2010/11/01(月) 01:07:31 ID:wJ+H+9ca
 「なんつーか…、三日がその内近いうちに悪い男に引っかかって、ボロボロにされてポイされそうで怖くなってくるわ…」
 「…え、そんな日は来ないですよ?」
 俺の言葉にキョトンとした目をする三日。
 いや、そういうところが怖いんだけど。
 「…千里くんは私をアクセサリのように扱ったうえ、好きなだけエッチした上に都合が悪くなったら捨てて高跳びしたりしないでしょう?」
 「だからなんで無駄に具体的かな!?」
 「…大丈夫ですよ、そんな日は来ませんから。……千里くんが私の隣にいる限り」
 「確かにそうなんだけれども!」
 うわぁ、愛が重い。
 多分、本来の意味でなく愛が重い!
 愛が負担という意味でなく、妙な責任感が生まれる重さだ!
 いや、これは愛が重いというか、むしろ…
 「あ、分かった」
 妙に納得して、俺は言う。
 まじまじと三日の顔を見つめながら。
 「…そ、そんなに見ないで下さい。…濡れます」
 「そこは大人しく照れときなよ」
 そういうキャラでもなかろうに。
 「そうじゃなくて、俺が思いつく限り最大の弱みがあったのに気が付いてね」
 「おお!」
 期待に満ち溢れた目でこちらを見る三日。
 「…やっぱり、出生の秘密!?失われた記憶!?それとも世界が滅びるような極秘情報とかですか!」
 「いや、どこのライトノベルの主人公だよ。それにこの弱み、できたの割と最近だし」
 「…最近の弱み?もしかして、私も知っていることですか?」
 「そう」
 不思議そうな顔をする三日を指差し、俺は言った。
 俺の唯一最大の弱みを、その原因に向かって。
 「惚れた弱み」
 その言葉を聞いた三日が顔をトマトのように赤くして……それを見た俺も自分の言ったことの恥ずかしさに悶絶したのはまた別の話。
















118 :ヤンデレの娘さん 脅迫の巻  ◆DSlAqf.vqc :2010/11/01(月) 01:08:11 ID:wJ+H+9ca
 おまけ
 とある過去の一幕
 「好きな人に見つめられたら…濡れます」
 今から数年前、ある日の緋月家の居間で緋月二日が堂々とそんなことを言った。
 「…濡れる、ですか?」
 「ええ、そうですよ…。主に下半身が…」
 きょとんとした顔の、髪を童女のようにおかっぱに切りそろえた妹の三日に対して、二日がまるで当然のことのように語る。
 「いや、それは貴様だけだからな、無知蒙昧にして愚かなる上の妹よ」
 読んでいた本から顔を上げ、まるで舞台役者のような口調で突っ込みを入れるのは、彼女らの兄である緋月一日。
 一挙一動が独特というか非日常的というかナルシストっぽいというかはっきり言って胡散臭い。
 妹たちが和服姿なのに対して、一日は1人だけ洋服なので更に無駄に浮いていた。
 「…え、濡れないのですか、お兄ちゃん?」
 「そこは心がときめくところだ、下の妹よ」
 妹に対して、詩集を片手にやれやれ、と大仰な動作で言う一日。
 舞台の上なら息をのむ動作であったが、生憎ここは一般家庭のリビングである。
 「そんな台詞がでるのは、貴方がまだ恋をしたことが無いからでしょう…?不感性の愚兄さん…?」
 「…貴様にさん付けで呼ばれると、下半身でなく頭に血が昇るのは何でだろうな…?」
 二日の言葉に、形の良い眉をひくつかせる一日。
 一触即発の空気にオロオロとする三日。
 「ああ、大丈夫だ、かわいい下の妹。これは単なる日常会話。僕がこんな愚物相手に本気で怒るはず無いだろう?」
 「ええ、大丈夫ですよ三日…。これは単なる日常会話…。私がこの愚兄に対して刀を抜く筈も無いでしょう…?」
 ほぼ同時に言う一日と二日。
 仲が良いのか悪いのか。
 「とにかく…、意中の殿方に見つめられると濡れる…。これは、大宇宙の真理なのです…」
 「真理とは大きく出たな、この変態が」
 「黙りなさい、この汚物…」
 茶々を入れる一日に対して、射殺さんばかりの勢いで睨みつける二日。
 「とにかく…」
 と、改めて三日のほうに目を向けて二日は言う。
 「三日も、恋をすれば分かることでしょう…。というか分かりなさい…」
 「…わ、分かりましたです、お姉様」
 無表情にも関わらず威圧的な視線を向けられた三日が敬礼とともに答える。
 「…こうして、日々洗脳が行われていくわけだね…」
 「何か言いましたか、愚兄…?」
 「Nothing,my Lord(何も?)」
 二日に目を向けることなく、一日はすっとぼけるのであった。
 これが、緋月家の日常会話。
 その頃の緋月家の姿。