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178 :Are you Youta?:2010/11/18(木) 00:25:33 ID:9npr/vpf


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「朝は酷い目に遭ったよ………」
「大丈夫?」

あれから俺は怪力馬鹿力を誇るゴリラ似父と冷酷殺人化した幼なじみ二人を相手になんとか誤解を解きながら命を保たせることに成功した。
しかし朝食を完食できずに俺と星奈は一足先に自分達の通っている高校に向かった。
今年で3年になる俺等は今日から入学する1年生の入学式の準備をしなければならない。
入学式は午後からなので、今年1年の妹の愛と両親は後から来ることになってる。

「やっとまた………と一緒になれる………」

出かける際こんなことを言うもんだから父さんに殺されるところだった。
俺の妹はなかなかのブラコンだ。記憶喪失以前のときのことは知らないが、現在は間違いなくブラコンである。
そのせいで俺は毎日あのジャングルの猛者、ゴリラ父さんにありとあらゆる鉄槌を受けてきた。
だから俺の性格がひねくれるのもまた当然のことだ。
しかし何故ブラコンになってしまったのやら。
少なくとも俺が中学2年生の時までは普通の兄妹の態度だった。しかしある日を境に何故か俺に過剰に好意が感じられる態度 になった。



過去の俺は結構鈍感だったらしいが、記憶喪失で頭のメモリー量が空き、頭の回転が速くなったのか過去の俺よりは鈍感ではなくなった。
事実、俺は妹の他にあの完璧超人幼なじみの星奈からも俺に対して好意的なものを嫌でも見受けられる。てか、毎日アピールされる。
星奈曰わく『まるで別人みたい………いや、別人よ!』と。
当初は記憶喪失のためか人格がまるで別人のようだったらしい。口調はもちろん誰か別人と会ってるようだと会う人ほとんどから言われた。

恥ずかしいことに俺は意識を取り戻してから2週間は記憶はあやふやで、入院時のこともあまり覚えてない。
唯一家族や星奈が毎日お見舞いしていたことは覚えていた。
しかし父さんの存在を確認したのは退院してからのこと。最初会ったときは何でゴリラがいるんだろうとよく疑問に思ったことだ。
バナナをあげたときのテンションの高さはゴリラそのものだったから………。
まあ、人間と話ができる時点で頭のどこかでは人間かと思ったが………まさか自分の父親だったとは………
せめて親戚のゴリラでいて欲しかった。





179 :Are you Youta?:2010/11/18(木) 00:27:19 ID:9npr/vpf
まあ、見た目通りがさつで乱暴、ゴリラとマイナス3ポイントだが、妹にはめちゃくちゃ甘い。



どのぐらい甘いかというと炭酸の抜けたファンタ以上に甘い。
母さんには普通の夫婦としての態度であるが、たまに恐れていることがある。

「しかし母さんは何故あんなゴリラと結婚したんだろう?」

自分の親にこんなこと言うのはなんだが、母さんは結構綺麗なほうだ。
流石に40の後半に入ったので若々しい20代みたいとは言えないが、どこか気品が良い雰囲気を感じ、昔はモテただろうなと思わせることも多々ある。

「お義父さんのことをあまり罵倒しちゃ駄目だよ。いいじゃない、たくましくて素敵だと思うよ。」

星奈の今の台詞は母さんから訊いた父さんの好きなところの一つで、実はあの二人の結婚の話に持っていったのは母さんからの方だった。
このことは記憶喪失以前の時も訊いたようだが、どちらも答えようとはしなかった。

「あんなに昔はお義父さんを尊敬してたのに……陽太はあの時から結構変わったね………」

何故だろうね、昔の俺よ………

それよりもまた星奈が哀しげな顔になった。
星奈はよく記憶喪失前の俺と今の俺を比較する。
今の俺は根本的な何かが違うらしい。星奈だけではなく、友達、親戚、そして両親にも一度だけ言われたことがある。





180 :Are you Youta?:2010/11/18(木) 00:31:23 ID:9npr/vpf


唯一、妹だけは言わなかったが………ブラコンのためだろう。
たまに記憶喪失してから一人だけ仲間外れにされてる疎外感があり、一度はまた世界から逃げようと考えたこともあった。
しかし挫けそうになった時、俺が………違うもう一人の俺が力強い魔法の一言で勇気をくれる。
そして同時に例の約束も俺を元気づける大切な一つになってる。

「………ねえ、聴いてる?」
「…ん?何が?」

少し自分の世界に浸り過ぎてた。

「まったく………なんかそーゆうところは変わってないね。」
「褒められたの?」
「好きなところの一つって言ったの!」


いや唐突すぎるでしょう。

いつも通りにくだらないやり取りをしながら学校まで幼なじみの相手をして向かった。
どうしてか、俺は高校生活最後のこの年に新しい出逢い達よりももっとかけがえのないことが起きると思った。



学校に着くとげた箱の前にホワイトボードが6つ並んである。そこには俺達の新しいクラスメンバー表が堂々と貼られてた。
ホワイトボードに集まる人をかぎ分けながら3年生のクラスが張り出してるボードに向かった。

「3組か………」
「やった!あたしも3組!」

どうやら俺と星奈は同じクラスだ。



「何だ、お前らも3組か。」

後ろを向くと少し柄の悪い男子高校生が立っていた。

「おはよう、貴幸(たかゆき)。」
「おはよう、雨野。」


柄が悪いせいか奴の笑みはどうしても悪人の笑いにしか見えない。一応、良い奴の比率が高いであろう雨野 貴幸は俺と星奈を見ながらニヤニヤしていた。
その姿は悪人予備軍だった。

「また夫婦で登校かい。いつ見てもアツイね~。」

確か警察は110番だったか?俺は目の前の悪人予備軍を悪人になる前に通報することにした。

「おいっ、待てよ!?冗談だから早くその携帯をしまってくれ!」
「そうだよ陽太。恥ずかしい気持ちは分かるけど照れ隠しに通報はあんまりだよ。」
「断じて照れてない!!」

大声を出してしまったせいで周りから冷たい視線が集まりながらもその後の入学式を迎えることができたのは奇跡に近いはずだ。





181 :Are you Youta?:2010/11/18(木) 00:34:30 ID:9npr/vpf




今日から高校生の俺はいつもより早く起きていた。
入学式は正午からだが、ついつい楽しみで朝5時という驚異的な時間に目を覚ましたのだ。

「陽ちゃん、今日から高校生だよ。良かったね。」

幼稚園児みたいな扱いを受けてるのは気のせいだ。
母さんこと優子さんは過剰に俺に甘く、近くに寄りそう。別にわるくないんだが家でならともかく、外でも接し方が家と同じなのはやめてほしい。

「おっ!早いな陽太。おはよう。」
「おはよう。」

リビングの奥の和室からひょっこり雲下家の大黒柱である父、陽大(ようだい)さんが珍しく寝間着姿でリビングに来た。
陽大さんは一言で言うとダンディーだ。渋くてかっこいいし、常に冷静で時々暴走する優子さんを止めることができる数少ない人だ。
ちなみに俺は優子さんの暴走を止めるなんて無理だ。逆に火に油を注ぐようなもんだから。

「今日から高校生だな。頑張ってこいよ。」
「はい。」

陽大さんの前では敬語になってしまうがそれも慣れてきた。
それから雲下家の朝食は俺が高校に向かうまで続いた。やっぱり家族と一緒に飯が食えるのは最高なことだな!

優雅な朝食を済まし俺は新しい自分の学校へ向かった。そして新しい日常と予想外の波乱が今後起こると知らずに。