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95 :風の声 第8話「風の傷」:2010/12/08(水) 14:04:53 ID:dlFKvczJ
「部活?」
「そう、部活」

人と接する努力を開始して早くも1ヶ月が経とうとしていた、あんな事件があった後なだけにほとんどの人が俺を恐れ近づいてこなかった
努力をしようにも、人との会話能力が無い俺は何もできずにいた。唯一会話ができるのが今の会話相手の舞だけだ

「部活って同級生だけの左右関係だけでなく、先輩との上下関係も築くことができるから、翼にピッタリだと思うんだけど」
「(上下関係は分かるが、左右関係って・・・)」
「どうかな?」
「いいかもしれないな・・・」
「本当!?じゃあ一緒に入ろうよ!どの部活にする?」
「・・・・・」
「どうしたの?」
「少し、考えてもいいかな?」
「・・・ドウシテ?」

今の舞の台詞が、少しばかり暗く、重く感じたのは気のせいだろうか?

「同級生と親しくなる事さえできていないのに、他のクラスや先輩とも親しくできる自信が・・・・・・無いんだ」
「・・・・・・嘘つき」
「?」
「努力するって言ったじゃない。それなのに、もう諦めるんだ」
「そりゃ諦めたくもなるさ。現実は簡単じゃないのだから」
「バカ・・・・・・勝手にすれば?」

バスから降りた舞は、この言葉を残し先に行ってしまった。
バス停から学校までのちょっとした距離。2ヶ月も2人で歩いていた為か、久しぶりの1人は少しだけ寂しかった

そういえば、クロウに会ってから俺にはちょっとした能力が目覚めた。周囲を吹く風が無数の流星群のように見えるのだ
今までの“風の声”は、いわゆる電波だったが今回のは電波ではなく“能力”として身についた
けれども、この能力がなんの役に立つのかは分からないし無駄な気もする
それでも、今みたいに1人の時は、これもまた寂しさを紛らわす為のものになってくれる
俺は流星として見える1つの風と昇降口まで一緒に歩いた
こうしてみると犬の散歩みたいでちょっとだけ楽しいし、流星が可愛くも見える
今日は久しぶりに風屋根に行ってみようかな?





私があなたを守るって言ったよね?あなたは何も心配しなくていい
もしも、あなたの身や精神に危機が迫ろうとした時は私が全てを投げ出しても守り抜く
部活に誘ったのだってあなたに人に慣れて欲しかったから、なのにあなたは・・・・

ごめん、最後の1文はウソ
本当はあなたと一緒に居る時間を少しでも長くしたかったから
ただ一緒に帰るだけよりも、部活をしながらいっぱい会話して、帰りのバスも一緒に居る
上下関係や左右関係なんか築かなくてもいい。
私がずっとそばにいる。それだけでいいじゃない
もしも誰かが私の思いや翼を邪魔をするというのなら、その時は・・・・私が・・・・・・・・・・・・・


96 :風の声 第8話「風の傷」:2010/12/08(水) 14:05:57 ID:dlFKvczJ
1ヶ月ぶりの風屋根。今日は風が龍のように舞い上がっていた、俺に見える流星たちも無数のロケットとなり大空へと飛び立っていた

「俺も、お前達のように“現実”という名の大空へ飛び立ちたいな・・・」
(何、上手い事言ってんだよ)
「(風につっこまれた・・・(泣))」
(・・・・・朝、彼女とケンカしただろ~♪)
「彼女じゃない」
キーンコーンカーンコーン
「・・・・・」
(チャイムが鳴ったぞ。良い子の皆は教室に戻る時間だぞ~♪)
「俺、良い子じゃないし・・・」
(悪い子の皆も・・・)
「分かったよ・・・・・・・・・チッ」

風と話すのも悪くは無いが、自分は人であるのだから、やはり人と会話をしたい
相手がいない会話は孤独を深く感じさせるからテンションが下がる
それでも会話相手がいない俺は、これをやるしかないんだ。望みたくは無いが一生続くかもしれない・・・
朝から俺にまとわりつく孤独感。大空 舞という人物が俺に与える影響の偉大さを改めて知る事になった

1週間前に席替えをした。場所は変わらず窓側の1番後ろの席。クラスに慣れていない俺にとってこの席はありがたい物だ
1つだけ問題があるが・・・・・
1週間前の席替えで席が替わらなかったのは俺だけ。つまり周りはすべてシャッフルされているわけだ
そして、俺の右隣の席になったのが・・・・言わなくても分かるだろ。いや、分かってくれ

「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・(チラッ)」
「何?」
「いや・・・・今日は不機嫌そうにしてるんだな」
「人付き合いが苦手な誰かさんのせいでね」

そう、大空 舞だ。
いつもは授業中にも関わらず話しかけてきたり、隣だというのに手紙を回してきたりなどするのに
今日は不機嫌で何もしてこない
何も・・ではないな。
机の横を通ろうとした時に足を出して引っ掛けようとしたり、俺がノートを取っている時に机を蹴ったり等
まぁ簡単に言えば“嫌がらせ”だ
肉体ダメージは少ないが、中学のトラウマを思い出すような内容だからか、精神ダメージの方がものすごく大きい
想像してみろ、トラウマを1日中やられる身を
学校が終わったのが、俺の心の中に“不登校”という選択肢が出る前だったのが何よりの幸いだった
HRが終わり、カバンを担ぎ教室のドアを出ようとしたときだった。後ろから足音が・・・・

「邪魔!」
「痛ッ!?」

ドアを出ようとした瞬間後ろからぶつかられ、俺の進行方向はやや右に反れ、そのままドアと正面衝突した
そんなに俺は恨まれるような事をしたのだろうか?
今、不登校の“不”の字が出てきた・・・
そんな事を思っているときに、ふと違和感を感じた
舞が歩く事により起こる微風がいつも見ている白い流星ではなく
じゃっかん黒っぽい流星だったことに気付いた
けれども、舞から離れてしばらくしているうちに普段の白に戻ったので
俺はあまり気にしない事にした


97 :風の声 第8話「風の傷」:2010/12/08(水) 14:06:41 ID:dlFKvczJ
それから数日が経過した
数日といってもそんな長期では無い、数日をXに例えて数式に表すと 1>X>4 となる。
簡単に言えば2、3日だな(最初からこう言えば良かった)
舞は相変わらず不機嫌で俺に話しかけてくる回数も減った
今朝の登校のときなんか『なんで一緒のバスに乗るの?』と聞かれた
答えは簡単。舞が駅で俺の事を待っているからだ。乗りたくないのなら先に行けばいいのに・・・

誰も話しかけて来ない。中学の時と同じだ。ときたま周りの奴らがあの時の奴らと同じように見えてしまう
孤独感だけでなく疎外感までもが俺の心の中に沸いてきたときだった。再び事件が起きた
今日も舞からの嫌がらせに耐え、帰りのHRが始まり担任の長い話を聞かず窓の外で風の流星が織り成す景色を見ていた
壁沿いに風が吹き降ろしているので窓一面には白いカーテンができ、素晴らしい景色だった
そんな景色に見とれていた時だった。突然俺の真横の部分だけ風が乱れた為か流星のカーテンが開いた。それもきれいに左右へと
不思議に思っていた時だった。目の前を黒い物体が落下していった





今、この光景を見た人間全て時が止まるだろう。それだけの光景が教室で、いや、俺の真横で起こっていた
今の現状はこうだ。俺の右腕が窓ガラスを突き抜けて血に染まり、その腕で物体・・・ではなく“人体”それも女子をつかんでいる
先ほど、落下してきたのは人であり、それに気付いた俺は右手で窓ガラスを殴って割り
ガラスを貫通した腕で落下してきた女子の腕をギリギリのタイミングでつかんでいた。
風のカーテンが開いたのはこの人の存在が風を遮ったのであんな光景が見えた
もしも、俺に風が見える能力が無かったら落下した事にすら気付かなかっただろう。改めてこの能力の価値を知った
けれども、いまだに危険な状況が続いている事に変わりは無い。つかんでいる人はいまだに外、ここは5階
右手の感覚は・・・・まだある。教室の奴らは時が止まっている。俺が協力を要請しないと1つの命が消える
けれども、俺には会話能力が無いし誰に対して話しかければいいのか分からない。唯一の話し相手の舞も気まずい状態だし・・
ヤバイ・・手の感覚が・・・・・

「大丈夫!?」
「え?」

反対側のガラスを開け、そこから顔を出そうとしているのは・・・

「舞?」
「早く、その人を渡して」
「無理言うな、窓を貫通してるから腕を動かせないし、女子の力じゃ持てねぇ」
「翼が頑張っているのに、それを見てるだけだなんて私にはできないよ!」
「でも・・・」

言いかけたその時だった。舞の行動に影響されたからか教室にいた奴らが俺らのほうに駆け寄ってきてくれ、手伝ってくれた
団結力とはすごい物だ。あっという間に女子は救われ、俺も解放された
女子が助かった時の歓喜はものすごい物だった。まるで、世界が響いているように思えた
その後、落下してきた人は保健室へと運ばれた
思うのだが、何故この学校の人達は病院ではなく保健室なのだろうか?
俺が倒れた時もそうだったし、今回もそうだ。
考えても答えは出そうにも無いので、この事には触れないことにした
そして、右腕から出血している俺も保健室へと直行した
保健室?
何か、ものすごい事を忘れている気が・・・・・・・・

「(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?!)」

どうしよう・・・・・。あの人がいる・・・・・・・・・・・・・・・


98 :風の声 第8話「風の傷」:2010/12/08(水) 14:07:18 ID:dlFKvczJ
「・・・」
「・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

さて問題ですここはどこでしょう?
世界のどこを探しても、こんなに沈黙が続くのは多分ここだけ・・・・・・保健室です
普段はそこらへんの保健室と変わらないのに今だけこんなに沈黙が続くのは2人きりだからだと思う
正確には3人(校医・ベッドで横になっている女子・治療を受けに来た人(俺))なのだが
1人は気を失っているのでカウントしない

「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・(気まずい)」

ここは勇気を出して話しかけるしかないよな・・・

「あの・・・」
(ヒュッ)

今、何かが頬をかすめたような・・・・

「発言許可は・・出してない」
「(軍人?)」

先生、あの子をベッドに寝かせたのはいいんですが、いつになったら俺の腕に包帯巻いてくれるんですか?
このままだと俺の足元に血の水たまりが出来て・・・

「そのまま・・・死ね・・」
「なんで俺の考えが分かったんですか?」
「雰囲気・・・」
「そういう先生の雰囲気は・・・・闇のように漆黒ですね」
「餓鬼に褒められても嬉しくないわ・・」
「(褒めてないのだが・・・)」

そういえば、先生の名前ってなんなんだろう?聞いてみた

「殺すぞ」
「(頃 須蔵(ころ すぞう)?)」

言おうと思ったけど本当に殺されそうなので止めといた。そのとき、ちょっとしたゲームを思いついた

「ねぇ、先生。先生の名前を当てられたら、俺の治療をしてくれ・・ますか?」
「勝手にしなさい・・・・外したら・・分かっているわよね?」

許可は得た(代償が命だが)。とりあえず、先生のイメージ・雰囲気から考える事にした
女、影、闇、病み、美・・・あれ?今出てきた漢字を2つだけ使って名前ができるぞ!俺はその思い付きの名前を言ってみる事にした

「美影 影美(みかげ かげみ)さん?」

・・・・・先生の動きが止まった


99 :風の声 第8話「風の傷」:2010/12/08(水) 14:08:05 ID:dlFKvczJ
とりあえず腕の治療はしてもらったものの、新たに傷が増えていた
本名を俺のような人間に呼ばれたことに怒りを感じたらしく、保健室で地獄が広がった
先生が保健室を後にし俺が保健室に残っていた時だった

「こ・・ここは?」

ベッドから小さな声が聞こえ寄ってみると気を失っていた女子が起きていた

「気付いた?」
「ここは?」
「保健室」

俺は今までの事を全て話した

「どうして助けたの・・・?」
「どうしてって・・」
「私の事なんか放っておいてくれれば良かったんです。こんな世界で生きる価値なんか無いですもの」
「だからって・・目の前で消える命を放っておける訳無いだろ!」
「いじめられた事の無い人が分かったような口をきかないでください!!あなたリストカットしたことある?
 ないでしょ。そんな臆病者が命を救うとか心にも無い事を言わないでください!!」
「あ?」
「私は怖くなんか無い・・・死ぬ事に対して怖くなんか無い」

見ると彼女の左腕には2、3本の切り傷の線が入っていた
それよりもこいつはなんて言った?死ぬ事が怖くない?リストカットできないから臆病者だ?
なんだろ、この心の奥底から湧き上る感情

「だから、私の事なんか放っておいて下さい」
「ふざけんな」
「え?」
「こんな世界生きる価値が無い?死ぬ事が怖くない?リストカットできないから臆病者?
 それらをやってのけたテメェは最強って事か?」
「そ、そうです」
「浮かれてんじゃねぇよ!!」
「!!?」
「テメェは最強なんかじゃねぇよ!現実に立ち向かわないただの雑魚だろ!
 自分の命を大切にもできない奴が偉そうにしてんじゃねぇよ!!」
「か、簡単に言ってくれるじゃないですか!!あなたも一度精神が潰れるまでいじめられればいいんですよ!!」
「誰がいじめられた事が無いって言った?」
「え?」

あまり乗り気じゃ無いけれどもリストバンドとヘアバンを外し傷を見せる。

「!?」
「言っとくけどこのリストカット全て自分で付けた物じゃないから」
「え?」
「自分でつけたのは1、2個。後は他者につけられた。この白髪だってそうだ
 俺は中学の時何度も命の危機にさらされた、けれども俺は生き抜いた。そういう目に遭うたんびに命の尊さを知ったから
 もしも、地球が滅びるくらいの災害が来ても俺は生き残ってみせる・・・・・死ぬのが怖いから」
「え!?」
「お前もそう思うようになるまで1回闘ってみろ。それでもダメなら俺に相談しろ、お前以上の目には遭っているのだから
 ほとんどの事には対応できる」
「・・・・・・」


100 :風の声 第8話「風の傷」:2010/12/08(水) 14:08:52 ID:dlFKvczJ
言いたい事を全て言い終え、保健室を出ようとしたときだった

「名前、なんて言うんですか?」
「1-B 風魔 翼」
「助けてくれて・・・ありがとう」

俺はその言葉を聞いて保健室をあとにした。彼女の考えが少しばかり変わったのならそれはそれでよかったと思っている
教室に戻る道中、俺は自分で言った言葉に少しばかり引っ掛かっていた。

『現実に立ち向かわないただの雑魚だろ!』

人に言えるような言葉じゃない。今の俺だって人との交流を恐れ舞の誘いを断った
彼女なんかよりも俺のほうが雑魚だ
俺には“舞”という支えてくれる人がいるにもかかわらず、闘おうとしない
俺も・・・・・・変わらないとな

教室と保健室のちょうど中間地点に来たときだった
視線の先に見覚えのある人がいた

「舞」
「あ、翼。大丈夫だった?」
「あぁ・・」
「あの子は?」
「あぁ、あの人なら無事だよ。命に別状は無いよ」
「(チッ)」
「?」
「それにしても翼。傷が増えている気がするんだけど・・・怪我したのは腕だけだよね?」
「校医が下手くそだった」

今、一瞬だけ寒気を感じた

「フフッ、そうなんだ」
「あのさ、舞」
「なぁに?」
「部活の件なんだけどさ・・やってみるよ」
「本当!?どの部活?」
「それはまだ決まってない。これから探す」
「私も一緒の部活に入ってもいい?」
「もちろん、友達が一緒のほうがやりやすい」
「友達・・・」
「何か言った?」
「ううん、何も♪   ねぇ翼」
「ん?」
「私が2、3日翼に冷たくしてた時どう思ってた?怒ってた?嫌いになった?」
「いや、どっちかと言うと寂しかった。だから、もう怒らせないから友達でいてくれないかな?」
「うん・・・私もごめんね」
「元は俺が悪いから」

舞とも仲直りしたし、部活も舞がいれば多分大丈夫
この考えが間違えだと気付いたのは、もっと未来の話


101 :風の声 第8話「風の傷」:2010/12/08(水) 14:09:41 ID:dlFKvczJ
計画通り
翼と2、3日離れ、さらに冷たく当たるのはものすごく辛かった
でも、翼の中で私の存在が大きくなった事は素直に喜んでいいわよね

それにしてもあの女、翼に傷を負わせといて無事だなんて
しかも、翼の話では怪我もしてなさそうだったし
自殺者が他人を巻き込んでんじゃないわよ
もっとも自殺者に限った話じゃないけどね
あの女、どう調理しようかな
まぁ、どこの誰かが分からないから今はやめとくわ
もしもまた翼を巻き込んだら・・・・・・・・・・