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275 :わたしをはなさないで 第四話 中編:2010/12/21(火) 00:15:36 ID:DbBUg7oP
「で、その娘が噂の夏樹ちゃんか」
「……ああ。今日は家でお留守番してるはずなんだけどな」
「えへへ。フミと一緒にいたかったから、ついてきちゃった」

これが別人でしたってオチはありませんかそうですか
かくもこの世は世知辛い
あとギン、お前もナツを嘗め回すように見るなこのロリコン
ああ、本当にどうしたもんか
しかし、ここで俺の低スペックの脳味噌に電流のようなひらめきが走る
ナツの両親が見つかった
ギンが居場所を知っている
そして、ここに今ナツが居る

「ギン、ナツの両親が住んでるところって、ここから遠いか?」
「なに? ああいや、別に遠くないぞ。せいぜいこっから一時間って所だ」
「なら、今から行っむぐぐっ!!?」

言葉の途中で首にかかっていた手にいきなり後ろを向かされ、口を塞がれた、
俺の口の中に別人の舌が入り込み、動いているのが分かる
考えるまでもなく、相手はナツ
しかも最悪なことに、俺が反射的に発した大声のせいか、周りからの視線が痛いほどに感じられちまう

「ぷはっ……はぁ、はぁ………」

糸を引きながら、俺たちの唇が離れる
荒い息をしたナツがようやく俺を解放したとき、ザワザワとうるさい店内の全ての目がここに集中していた
ナツの唇、やわらかかったな
混乱した頭で最初に考えたのは、そんなどうでもいいことだった
無意識に現実逃避してたんだろうなぁ、うん

「兼山さん。わたし、フミとこういう関係なんです」
「え? は? なに? この死ぬ時は25~28歳ボインボインのお姉さまに踏まれて死にたいって言ってた変質者が、君の恋人?」
「………フミ、年下で小さいけど、わたしでよかったらいつでも踏んであげるよ」

店内の視線が余計痛くなってくる
うるせぇ、死ぬ時は柱に縛られその周りを数十人の幼女に回られながら死にたいとか言ってたペドフィリア
あと踏んでくれるなら誰でもいいってわけじゃねえんだ。まず第一に………
いや、んなこと考えてる場合じゃない

「兼山さん、勘違いしないでくださいね。好きになったのも、告白したのもわたしからなんです
 そうして、フミはわたしを家族で恋人だって、そう言ってくれたんです」
「待てナツ、そんなこと言っ痛っ!」

ギンから見えないような角度で首に歯形が残る
その痕を舌でなぞりながら、誰にも聞こえないように、ナツは呟くように言った



[泣いちゃうよ。大声で]


276 :わたしをはなさないで 第四話 中編:2010/12/21(火) 00:16:07 ID:DbBUg7oP
ギンが何も言わなかったとしても、ここで大声で泣かれれば最悪警察沙汰になってもおかしくは無い
そうなれば、俺がナツをうちに二年間も住まわせていたことが明るみに出ちまう
行き着く先は国家権力の別荘だけだ。それだけは避けたい
バイト先の運送業者の社長も、行く行くは俺を社員にと言ってくれている
ここで前科者になってしまえば、そんな明るい未来もパーだ

「フミ、言ってくれたでしょ? お前は俺の家族だ。これからも一緒に暮らそう、って」
「あー……えー……うー………」
「ちゃんと、うんって言ってよ。ねっ?」
「う、うん……」
「よくできました。フミ、大好きだよっ」

でも、こいつを恨む事もできない
俺が好きで、俺といっしょにいたいってだけでこんなことをしてるナツ
酷い方法だが、その気持ちは本当に嬉しい
けれど、やっぱり駄目なものは駄目なんだ
俺と一緒に居たら、ナツはきっともっと駄目になっちまう

「ちょっといいか?」
「なんだ? ツッこみたいならいくらでも言ってボロを出させてくれ」

ギンの言葉につい本音が出ちまって、机の下でいつぞやのように尻をつねられた

「夏樹さんとお前が年齢を超えて交際関係にあることは良く分かった」
「わかんなくていいぞ」
「歳の差なんて愛があれば超えられるもん。警察の人が分かってくれてうれしいな」
「しかし、ならお前は何で古口さん探してたんだ?
 警官の俺が言うのもなんだが、今の状況を見たらたぶんお前に好印象を持たないと思うぞ。最悪会わせないようにするかもしれん」

ナイスだギン!
そうやってナツの嘘からどんどんボロを出していってくれ!
俺が口をつぐめば、おバカなナツに警察の追及を逃れることはできまい
……勝った。ナツにはかわいそうだが、これからも会うことはできるし、いつかは納得してくれるだろう

「フミが、ご両親に挨拶したいって言ってくれたんです」
「……はぃ?」
「あと二年してわたしが十六歳になったら、結婚しようって」
「しかしこいつに犬と猫と亀のほかに、嫁まで養えるか? 現実は厳しいぞ」
「今アルバイトしてる会社で正社員になれるって言ってました」
「もしも承諾してもらえなかったら、十中八九夏樹ちゃんは親元に帰されるぞ」
「その時は、訴えると言います。私の両親も娘を捨てて逃げ出したなんてことは今の生活で知られたくないに決まってるから」
「……君はそれでいいのか? 一度離れたとは言え、君の両親だぞ?」
「私にはパパとママより、フミとイエハルたちのほうがすーっと大事で、必要で、大好きですから」

…ナツ、お前はおバカじゃなかったのか?
なんでそんなふうに嘘がポンポン飛び出してくるんだ?
裏表の無い、正直なナツは、どこに行っちまったんだ?