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名前:わたしをはなさないで 第五話[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 00:40:02 ID:G+7SuvNs [2/6]
「………返信こねぇな」

交番で携帯を眺めながらぼんやりと呟く
こんなとこ上司に見られたら普通は減給ものだが、俺の不良警官振りはもう有名だ
しかもこんなところに上司が来ることなんてめったに無い
いやぁ、こんなとこあるんだねぇ
5時を回るとほぼ真っ暗、コンビニまではチャリを飛ばして30分
テレビもねぇ、ラジオもねぇ、たまに来るのが紙芝居。おらこんな村嫌だ、東京へ出るだ
しかし、最果てとはいえここがその東京なんだから始末に終えない
仕事といったら農家の手伝いや子供のおもり。就任以来一番の大事が牛のお産
これっておまわりさんの仕事じゃないよね?
しかしだからと言って交番でゲームやるわけにもいかない
俺は熱くなりやすいタチで、一度始めると他に目が行かなくなっちまうんだ

『兼山さん、この前大騒ぎしながら交番でゲームやってました』

こんなこと、たまに来た上司にチクられた時は生きた心地がしなかったね
言ったのが幼女で無かったなら後でお仕置きしていたところだ
まあそんなこんなで、俺は警官ライフを満喫している
しかし今、どうも心に引っかかってることがあるのだ

「バイトしてたとしても、一日以上返ってこないなんてなぁ………」

俺のクエスト手伝ってやるって言ったくせに、何もクリアしてくれなかったことについて俺の親友に文句のメールを送った
それから、一切連絡が無い
あいつは寝てる以外はメールには絶対に返信してくる男で、メールの切り時に苦労してると言ってたのを思い出す
まあ俺がかなりの携帯不精なため、ちょうど折り合いがついていたんだが
だから三日も返信が無いなんて、今までに無かったことといって差し支えない

「しゃあない、家電にかけてみっか」

べつにさしたる用件があるわけじゃない
ただ気になった、それだけだ
だいいちあのお姉様属性の極みみたいな男が、8歳も年下のロリを彼女にしたってだけでもおかしい
それにあの時はあいつに彼女ができたってことでお祝い気分になってたが、考えてみればあいつ、笑ってたか?
いつものあいつなら、ロリな彼女ができたなんつったら、俺に思いっきり自慢してくるってのに

335 名前:わたしをはなさないで 第五話[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 00:41:01 ID:G+7SuvNs [3/6]
「はいもしもしー、笹原ですよー」

受話器越しから、聞くだけで元気になれるようなロリボイスが届く

「あ、夏樹ちゃん? 兼山だけど覚えてるかな? 三日前に喫茶店で会った」
「だいじょうぶです! しっかり覚えていますよー」
「君みたいな可愛い娘に覚えていてもらえたとは光栄だな」
「忘れるはずありませんよ。だって兼山さんは、フミの親友なんですから」

あ、なるほど。恋人の親友だから忘れてないってことね
昨日フミに話してたみたいなラフな話し方じゃなく、ロリが無理矢理丁寧に話そうとしてる感じなのがよけい萌える

「ちょっぴりショックだな。君には個人的にも覚えていてもらいたかったのに」
「そんなこと言って、フミに叱られちゃいますよ」
「どうだい? 今度一緒にディナーでも」
「フミが一緒なら行きますよー。その時はお肉でお願いします」

さすがは恋人どうし
言うことまでおんなじだ

「君には厚切りのステーキを何枚でもご馳走するよ。フミは牛丼で」
「だったらわたしもフミと一緒に牛丼を食べます。お腹一杯」
「妬けるねぇ。それでさ、そこにフミはいる?」
「………いません」

ガラッと口調が変わった
俺のロリ感知センサーが、夏樹ちゃんの純真無垢ロリ抽出数値がずいぶん下がったのを察知する
つまり簡単に言えば、彼女は何か動揺を抱えて―――何かを隠している

「夏樹ちゃん。本当はフミ、そこにいたりしない?」
「いませんよ。どうしてそんなこと言うんですか?」
「いやなに、優秀な刑事の勘さ」

刑事どころか巡査だけどね
だいたいロリ感知センサーで当たりをつけたなんて死んでも言えるか

「いませんといったらいません。うちにはイエハルたちとわたししかいません」
「しかしもう20時だ。あいつの仕事ならもうとっくに帰ってなきゃおかしいね」
「遅くなってるんです」
「でもね、俺はさっきフミの会社に電話したんだよ。もうとっくに帰ったってさ」
「……会社の人が間違えたんです」
「警察の捜索だって言ったのに、ちゃんと調べないなんてことあるかな?」

もちろんこれは全部ブラフだ
いくら親友のためとはいえ、ただちょっと[おかしいな]ってだけでここまではしない
しかし、ずいぶんと効果はあったようだ

「それは……ほら、あれです」
「あれって?」
「いや…ほら………その………」
「夏樹ちゃん、どうしてフミは居ないなんて言ったかは分からないけど、別に俺は怒ったりしてないから」
「…………」
「ただ、フミと話したいだけなんだよ」

たっぷり一分は無言が続いただろうか

「………二人の時間を、邪魔されたくなかったんです」

蚊が鳴くような声で、彼女は言った

336 名前:わたしをはなさないで 第五話[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 00:41:35 ID:G+7SuvNs [4/6]
「そっか、ごめんね。でもちょっとフミにどうしても外せない用事があったんだ」
「わたしが代わりに聞きます」
「いや、駄目なんだ。本人でなきゃ確認が取れない事項が色々とね」
「フミのことなら私はなんだって知ってます」
「母親の旧姓と本籍地、知ってる?」
「…………」
「フミに代わってほしい。お願いだからさ」

彼女は酷くしぶしぶといった感じで、受話器を渡したようだ

「よお、ギン。どうした?」
「どうしたって言うわけでもないが、この前お前が妙に元気が無かったから気になってな」
「あはは、そんなことか」
「そんなことかって、俺はお前を心配してなぁ」
「いやいや、俺たちは至極円満さ。例えるなら………」

そこで一拍切って

「彼女のおかげで、平凡な高校生がAct2発現したような状況だぜ」
「……マジで? 本当にか? 冗談は抜きでか?」
「ああ、しかも今二人の間には『剛』と『柔』のしなやかな強さがあるものまでついてるぜ」
「嘘じゃないんだな?」
「もちろん。養分と引き換えのギブ アンド テイクを頼むぜ」
「………ああ、正直にわかには信じらんねーけどな。わかった」

受話器を彼女に返す
何を話したの? 意味が分からないよ。変なこと言わないで
そんな声が聞こえた気がする

「お話、終わりましたか?」
「ああ、ごめんね。二人の時間を邪魔しちゃって」
「……旧姓と本籍地は?」
「あ、それは……別にいいんだ。そういえば俺知ってたから、あいつの代わりに書いとけばいいしさ」
「フミのこと、何でも知ってるんですね。うらやましいな」
「なに、腐れ縁ってだけさ。それじゃ、お邪魔虫は早々に退散するよ」
「はい。また三人で会いましょうね。その時はフミの昔のお話を聞かせてください」
「ああ、約束するよ。じゃあね」

電話を切る
そうして俺はその足で、パトカーに飛び乗った
夏樹ちゃんがあいつを愛してるのは疑いようが無いけど、SOSを受け取ったからには行かないわけにもいくまい
俺たちがあの漫画の大ファンで本当に良かったぜ
こんな暗号、どんなに頭を捻ったところで一般人に分かるわけがないからな

「彼女のおかげで、平凡な高校生がAct2発現したような状況だぜ」
その漫画で、とある能力Act1を持つ高校生が同じく能力持ちのヤンデレ彼女に拉致監禁され、その戦いでACT2の力に目覚める

「ああ、しかも今二人の間には『剛』と『柔』のしなやかな強さがあるものまでついてるぜ」
これは体を糸にする能力で作った手錠を形容した言葉。今フミと夏樹ちゃんが手錠でつながれているとを言ってるんだろう

「もちろん。養分と引き換えのギブ アンド テイクを頼むぜ」
養分を吸い取る敵が、『助けてくれ』と言って仲間を誘い出せば命は助けるギブ アンド テイク。それを頼む。つまりSOSだ

「あーあ……これが解決したら、とことんまで手伝ってもらうからな………」

それでもサイレンは鳴らさないで走らせる
彼女も悪気があってやったのではない(と信じたい)のだし、できれば事を穏便に収めたかった