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512 :Mistress ◆TAPy3blMsc :2011/01/27(木) 19:33:09 ID:oXL37lFT
紅葉鮮やかな11月。季節は別にどうでも……良くは無い。
夏は暑い。今年なんかは例年に無いほどの熱砂の攻防戦を繰り広げた。ついでに連邦のガンダムも奪われた気がする。
春は過ごしやすい……という訳でもない。授業中、ぬくぬくしてもう勉学には励めそうも無い。
冬は……そう、八甲田山に挑むかの第五連隊の気分である。

となると、少し肌寒いくらいの秋が一番良い。個人的には。
しかし地面に積もる紅葉だけは何とかして欲しかったりする。クシャクシャと踏み潰す感覚は良いのだけれど、虫とか中にいたら……グシャ☆な訳であって。
特に芋虫は見つけただけで、野郎ぅぉぶっ殺してやるぅ!!ってな感じになるほど嫌いだ――ベネット氏のご冥福をお祈りする。

――マフラーの下でさぶいさぶい文句を垂れながらも通学路を進むのは僕、朝倉慎二(あさくらしんじ)。
特別な能力なんぞないし、実は殺し屋の才能があるなんてこともない。
強いて言うならエロゲと二次が好きだ。それを語るために某少佐の演説をして、学校でノーザンライト・スープレックスを食らってしまうほど好きだ。

容姿は……うん、客観的に見てハンサム……な訳ないだろ。中の中から中の上辺りだよ。そうなんだよ。決して平凡な顔立ちなんかじゃないだよ。

……まぁ、僕のことなんてどうでもいいや。

「スタァァァップ!」

やべえ。これは。
そう思った瞬間、僕の右肩に凄まじい力が掛かる……やべえ。

「待て!お前は法を犯した。保釈金(主に弁当の中身)を払うか身体に壊滅的ダメージを食らうかのどちらかだ!」

振り返ってみると、むさ苦しい衛兵さんがというパターンではなく、代わりに「顔だけ」が整っているファッキン女がいた。
こういう場合の対処法を三つあるらしい。

【ファッキン女にスタップされた場合】

A・抵抗をやめる
「腐り果ててしまえ、卑しい罪人め」

A・保釈金(主に弁当の中身)を払う
「つまらないな もっと手こずらせてくれるかと思ったのに」

A・逮捕に抵抗する
「では その血で支払ってもらおう!」


あかんあかんあかん。どの選択肢も僕に犠牲しか強要していない。
……こういう時どうすればいいのか。専門家のA,S氏に話を伺った。

(いや……もうこれ詰みでしょ。ゲラゲラwww)

なるほど、理に適ったご意見だと思います――さぁ、最後の時ぐらい堂々としようじゃないか。

「てめえにやるBENTOUは無い。さっさと失せな」

返答を聞いたファッキン女の表情が……驚きから……苛立ちへ……そして最後にニッコリと。

「準備はいいわね? 童貞野郎」

そのお返しにと中指を立てやると凶悪な右フックが僕を強襲した。



513 :Mistress ◆TAPy3blMsc :2011/01/27(木) 19:37:23 ID:oXL37lFT
今日も今日とて殴られる。そうだ京都へ行こう。
……何処へ逃走しようとも結局は捕まって、殴られるのだけども。

右フックで気絶してしまった僕はあの後、ファッキン女に引きずられる様にして学校へ連行されたらしい。
無論、弁当の中身は根こそぎ奪われた。午前中の授業を泣きながら受ける僕に友人達は大いに同情してくれたが、昼休みになっても誰一人として中身を分けてくれることはない。
友情ってなんだろな。なんだろな。

――あの女、いや、あの災害の名は「月森 綾乃(つきもり あやの)」毎回、僕の弁当の中身を強奪してくる悪党だ。
一般的に、何も事情を知らずに見れば、災害は美しい少女の姿をしている。腰まで伸びた艶やかな黒髪に、ギリシャ彫刻もダッシュで逃げ出すであろう端正な顔立ち。
スタイルはおっぱい! おっぱい!とつい叫びたくなってしまうほどだ。おっぱい。
そんな容姿からか、我が真田学園(さなだがくえん)ではあの流し目に見られただけでドキッ! まるで「魔女」の様なお方!と騒がれている。チッ……そういや魔女って褒め言葉なんだろうか。

しかぁぁぁしぃぃぃ。あのファッキン女の内面はというとぉ……(若本ヴォイス)
凶悪な笑みを見せながら人に暴力を振るい、必死に懇願する人の顔をグイグイと足先で抉りながら、弁当の中身を強奪できる冷血女なのである!

――ある日のことだが、僕はファッキン女から体育倉庫に呼び出しを食らった。
その知らせを聞いて、泣き喚きながらそのまま下校しようとした僕を、ファッキン女に魂を奪われた愚かなグールどもは無理矢理拉致し、会見の場所まで引きずったのである。
僕は跳び箱に腰掛けるファッキン女に対して説得を試みた。もう嫌なのだと。許してくれと。
しかし奴はそんな僕を嘲笑し、言い放った。

「まさか奴隷の分際でご主人様に意見するなんて……随分と偉くなったのねぇ」

奴隷なんぞになった覚えなどない。ただ毎回殴られているだけである。
奴に対して反論を続けた僕だったが、力無き理想、力無き言論は無意味だ。鞭で何回も叩かれた後に後ろ手に縛られた。

眼前には幕の内弁当がいつの間にか置かれ、ファッキン女はその背後でニコニコと笑い。
言った。

「犬みたいにワンって十回鳴いたら、これを食べさせてあげる」



514 :Mistress ◆TAPy3blMsc :2011/01/27(木) 19:38:25 ID:oXL37lFT
……昼食を目の前のビッチに奪われた僕はその時、とてもお腹が減っていた。
水を飲んで何とか凌いでいたが、もう限界だったのだ。
しかし僕にだって人間としての矜持がある。絶対に屈する訳にはいかない……

そう、そう思っていたはずなのに、三十分も経つと僕はあっけなく矜持やら誇りを放り出していた。
幕の内が、そう何の変哲もない幕の内が、まるで神がこの世に創造した最も美味な食事に見えていたのだ。

ワンと泣きながら吼える僕はどれほど惨めだっただろうか。
奴は笑い転げながら僕の顔を幕の内に「突っ込ませた」。

耳に聞こえるのは忌々しくも美しい笑い声と口を動かす時のクチャクチャという音だけ。



こんな地獄の様な体験を僕はこの女と一年間続けてきた。ついで現在、高校二年生である。
普通はこういう出来事が何回も立て続けに起これば、人は人として生きていかれない。
まず、精神科にゴーか、それか何もかも投げ出して犬の様に従順になって生活を送るかの二つだろう。

だが、僕は第三の道を選び取った。あのガンジーが示した「非暴力」「非服従」である。

決してこちらから手を出さず(決して非力な訳ではない。本気を出していないだけである)だからと言って服従もしない。
茨の道なのは分かりきっている。しかし僕は進まなくてはならない。
何故ならば、人間が人間である為に、本来持ち得ていたはずの権利を再獲得する為だから――

この方針を採ったお陰かは分からないが、非人道的な扱いは段々と減っていった。
たまに首輪に繋がれて奴の家に閉じ込められ、スネオばりに「マァマァー!」と叫ばせられることはあるが。


――さて、回想は終わりだ。
僕は空になった弁当箱を見て、虚しく笑うと、そのまま机に突っ伏す。
購買池って? とんでもない。あのファッキン女の手下が見張っていて、何か購入しようものならすぐさま「躾」と称された暴力行為が行われてしまう。

たまにこの学園が牢獄に思える。看守がイッパイいて、所長はあの女だ。