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272 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:19:00.16 ID:Lt1NYQrV
要が目を覚ますと周りには真っ白な景色が広がっている。これまでにも何度か見た光景に特に取り乱すことはなく、要は辺りを見回した。
今までならば彼女、海有朔夜が何処からともなく現れるはずなのだがその気配はない。ため息をついた後、要はそっと目を閉じた。
おそらく自分は海有朔夜と共に川に飲み込まれたのではないか、と要は推測する。何故敵であり仲間を散々傷つけた朔夜を助けようとしたのか。
要は自分自身の行動に疑問を感じたがとりあえずはここから出ること、つまり意識を取り戻すことが先決だと思った。
今までも何度かこの空間に来ているがあれは全て意識を失っている時に限り発生していた。だからこそ川に飲み込まれたであろうこの時にこの空間に長居すべきではないことは要も理解していた。
「…………?」
暖かな感触を感じて目を開けると目の前に手のひらほどの光がふわふわと浮いていた。光は静かな輝きを発していて逃げるでもなく向かってくるでもなくただ要の目の前に漂っている。
もしかしたら朔夜の仕掛けた罠かもしれない。ふとそんな考えが要の脳裏をよぎったが気にしていても仕方がない。どの道このままでは埒が明かないのだから。
軽くその場で深呼吸をしてから要はゆっくりと光に手を伸ばした――
「待って……!」
要の手が光に触れる直前、真っ白な空間に声が響いた。思わず掴み掛けた光から手を引いた要の頭にまた声が入ってくる。
「その光…には……触ら…ないで……全部……無駄に…なっちゃう……」
弱々しい、けれども必死に訴えてくるその声に要は聞き覚えがあった。聞き覚えというよりはむしろついさっきまで聞いていたあの声だ。
意地悪い笑みを浮かべながら要やその仲間たちを傷つけてきたあの少女の声に違いないと要は思った。そしてまたゆっくりと光に手を伸ばす。
「止めて……!お願いだから……私を……私を……!」
必死に訴える朔夜の声を無視して要はそのまま光を掴もうとする。どうやら今の朔夜に要を直接止めるまでの力はないようだ。ならば掴むべきだと要は思った。
この光を掴んだらどうなるのか、それは要自身にも分からない。ただもう海有朔夜の言う通りに行動するのは御免だと強く思った。
この光を掴む。それは要自身が、海有朔夜という一人の少女ではなく要組の仲間と生きていくのを選んだ要の海有朔夜との決別のようにみえた。
少なくとも要はもう迷うことはない。自分にはちゃんと帰るべき場所があるのだから――
「……皆、待っててくれ」
そして要は小さな光をしっかりと握りしめた。途端に辺りは眩しい光に包まれ要の頭に何かが流れ込んでくる。それは誰かの記憶。決して表に出してはいけない少女の精一杯の記憶だった。
要はきっと後悔する。その光を掴んだことを。これは要が憎むべき少女、海有朔夜の記憶だったから。



273 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:19:49.55 ID:Lt1NYQrV

※※※
私、海有朔夜の記憶の中に両親についての思い出はあまり……というかほとんどない。物心ついた時には既に両親を亡くしていて父方のお爺ちゃんに引き取られていた。
なので両親のことで覚えているのは抱かれた時の暖かさと両親の優しい眼差し。そして――
『おーい!こっちだ!こっちにまだ女の子がいるぞ!!』
肌が焼けてしまうような熱風と煙、そして血とガソリンの臭いだ。誕生日プレゼントとしてもらった純白のワンピースは両親の血でベッタリと濡れて、真っ赤に染まっていた。周囲は泣き叫ぶ声と何かが燃える音で包まれている。
『……パパ?ママ?…………どこ……?』
『こんな大惨事で無傷なんて奇跡だ!よし、早く連れていこう!!』
そんな中、私はただ呆然とするしかなかった。一体何が起こったのか、それを理解することも出来ずただ目の前に広がる地獄のような光景を見つめることしか出来なかった。
血と何かが焼けている臭い。周囲は地獄絵図なのにも関わらず私の身体は全く痛みを感じない。無傷だったのだ。だから救急隊の人が私を助けてくれる時も特に何も感じなかった。
これは何かの夢に違いないと思った。これがはっきりと覚えている両親についての思い出。
結局両親は死にその大規模な交通事故は死者数十人、負傷者数百人という大惨事を引き起こした。これが私の人生を一変させるきっかけとなった事故。そして始まりでもあった。



『海有さんの所の一人娘さん。あの事故で両親を亡くして以来、ずっとふさぎ込んで……』
『仕方ないわよ、ご両親は朔夜ちゃんを溺愛してらしたから……』
あの交通事故以来私の人生は一変してしまった。両親が死んでしまい近くに住んでいる父方の祖父に引き取られた。
そしてあの事故の直後、世間は私のことを"奇跡の少女"として持て囃した。なぜならば私が助け出されたのは事故の中心部で私以外の数十人は全員死亡。私だけが無傷で生き残るというマスコミからしてみれば格好の的、つまりネタだった。
毎日の様にテレビで報道される私の顔と名前、そして死んだ両親の軌跡。お爺ちゃんの経営する道場の前には連日マスコミが張り込み、私にインタビューを試みた。

そしてそれは私の通っていた小学校にまで及ぶことになる。
『おまえ"奇跡の少女"なんだってな!』
『でもおやはりょうほうしんでんだろ?かわいそうなやつ!』
『わ、わたしは……!』
『あんたくらいのよ!……ねくらなあんたなんかしんじゃえばよかったのに!』
『っ!?』
テレビで毎日の様に報道されるクラスメイトにいらついたのか、または羨ましかったのか。それとも元々私のことが嫌いだったのか。理由は分からないけれど私は虐めの標的にされた。
心ない彼等の言葉は当時の私の心を折るには十分だった。担任の先生は虐めの現場を目撃してもただ注意するだけ。彼等は先生がいなくなるとまた私に対する虐め、言葉責めを再開した。クラスメイトに助けを求めても――
『ごめん……。さくやちゃんとはかかわるなっておかあさんがいうから……』
『あいつら……こわいからさ……いっしょにいじめられたくないよ……』
誰も助けてはくれなかった。結局彼等の思惑通り私はすぐに不登校になり、やがて時間が経って次々と新しい"ネタ"が入っていく内にマスコミも私のことを忘れていった。
こうして私は着実に人との繋がりを嫌い孤立していったのだった。



274 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:20:37.55 ID:Lt1NYQrV

『……朔夜、ずっと寝ていても仕方あるまい。どうじゃ、わしと稽古でもしてみんかの?』
『……お爺ちゃんとなら……やってもいい』
そうして不登校が続いていたある日、お爺ちゃんが私を道場の稽古に誘った。元々お爺ちゃん子だった私はそれを受け入れとりあえず海有塾の稽古に参加してみることにした。
お爺ちゃんにしてみれば私に何かきっかけを与えたかったのだろう。私が希望を持つようになるきっかけを。結果的にそれが私の人生を大きく変えるきっかけとなったのだ。

『はあっ!』
『師匠、朔夜ちゃんは中々筋が良いですね』
稽古をするのは凄く楽しかった。身体を動かせられるのは勿論、お爺ちゃんと一緒にいられるし道場の皆も私に優しかった。今思えば皆私よりずっと年上だったし、私に気を遣ってくれていたのだろう。
何よりも日に日に上達することが嬉しかった。上達すればお爺ちゃんや皆が褒めてくれる。それがその時の私が生きる一番の糧だった。だから私は一生懸命稽古に励んだ。
毎日毎日胴着が汗びっしょりになるまで道場に通う皆と稽古をする。たまに担任の先生が様子を見に来ているようだったが私は学校に戻る気はなかった。
『やあっ!』
『筋が良いなんてもんじゃないのう……。もしかしたらあの子は……』
そんな私をお爺ちゃんが厳しい目で見つめていたことを、この時の私は知るはずもなくがむしゃらに稽古を続けていた。
そして稽古を始めて3年が経ったある日私はお爺ちゃんに勝負を申し込まれた。まだ私は小学6年生だったし何故この道場の師匠であるお爺ちゃんに勝負を申し込まれたのかよく分からなかった。
皆は口々に『武道家としての朔夜ちゃんの実力を見ておきたいんだよ』と微笑みながら言っていた。それを聞いて私も勝てるはずはないけれど、精一杯頑張ろうと思った。でも実際は――
『し、師匠!?師匠!!しっかりしてください!』
『師匠!?おい、救急車だ!早くしろっ!!』
それは真剣勝負だった。お爺ちゃんは始まった瞬間本気で私を"取りに"来ていた。だからつい恐くて無我夢中になってしまったのだ。その時のことは今でも思い出せない。
ただ気が付いた時には私の両手は血まみれでお爺ちゃんは真っ赤に染まって目の前に倒れていた。
『わ、私……』
『ば、化け物!!』
『えっ……』
『おい止めろ!朔夜ちゃんはこっちに!』
そのまま私はお風呂場に連れていかれた。でも今でも記憶に鮮明に残っている。
皆の、仲間だと思っていた彼等のあの怯えるような眼差しを。まるで自分達とは違う何か恐ろしいもの、化け物を見るような目付きだったことを。

『お爺ちゃん!ごめんなさい!わたし……!わたし!』
病院で目覚めたお爺ちゃんに私は泣きついた。大好きだった、唯一の肉親であるお爺ちゃんを傷付けてしまったことをひたすら後悔した。
『悪かったのう朔夜……。怖い思いをさせて……。わしが愚かじゃった。やはりお前は既にわしを遥かに凌駕していたのじゃ……』
お爺ちゃんは私の頭を撫でながら何度も謝った。でも私はこの時理解してしまった。自分は"人間"ではなく"化け物"なんだ、と。
だからこそ"人間"が数十人もまとめて死んだあの事故でも私は死ななかったんだ。いや、死ななかったどころか私は大きな怪我さえしなかったじゃないか。
お爺ちゃんに頭を撫でられながら私は少し楽な気持ちになった。もう悩む必要はない。だって私は人間ではないのだから。

それからはただただ稽古をこなす日々が何年も続いた。道場の皆と語ることもなく誰にも、大好きだったお爺ちゃんにも心を開くことはなかった。それが誰も傷付かない唯一の方法だと思ったからだ。
私は"化け物"なのだから誰かと関わらず生きていった方がいい。愚かだと思われるかもしれないけれど、私は本気でそう思っていた。少なくとも去年の夏までは。



275 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:22:29.75 ID:Lt1NYQrV

『うわぁ!これが"ドージョー"なのね!素敵!お母さんの日記にあった通りだわ!』
それは去年の夏頃だったか。蝉が盛大に鳴いていたその日にやたらとテンションの高い少女はやってきた。
透き通る白い肌に光り輝く金髪。そして澄んだ青い眼はとても印象的でまるでフランス人形のようだった。そしてこの道場には全くもって場違いな少女は一人で稽古中の私を見つけるとすぐに駆け寄って来て――
『貴女一体……?』
『わぁ!朔夜ちゃんだ!朔夜ちゃんだよね!やっと会えた!やっぱり可愛い!』
『ち、ちょっと!?な、何!?誰!?』
そのまま私を抱きしめた。夏真っ盛り、しかも汗だくの私を彼女は嫌がることなく抱きしめ続ける。普段から人の温もりに慣れていなかった私は突然の出来事に対応できず、ただ突っ立って金髪さんに抱きしめられていた。

海有塾の二階、一番右端に私の部屋はある。クーラーがガンガンに効いているその部屋で金髪少女は何故か正座をしていた。
『……何…してるの……?』
正座が相当辛いのか、身体を小刻みに震わせながら少女は口を開く。透き通るような青い眼には涙が溜まっていた。
『に、日本では……こうしなきゃいけないって……お母さんが……!』
少女は震えながらも一生懸命正座を続ける。真向かいにいる私はあぐらをかいているのに、だ。必死な彼女を見ていると何だか意地悪したくなり私は――
『……ふふっ、そうなの。日本ではね、他人の部屋にいる時は正座をしなきゃいけないのよ』
自分でも相当意地悪いと分かるような笑みを彼女に向けながら丁寧に説明してあげた。すると彼女は黙って頷き正座を再開する。一生懸命震えながらも堪えている彼女を見ていると何だか笑いが込み上げてしまって我慢するのが一苦労だった。
結局30分ほどしてからようやく今にも泣き出しそうな彼女を解放してあげた。事情を理解した彼女はしばらく背を向けてふて腐れていたが冷蔵庫にあった羊羹を振る舞うと機嫌をよくしてくれた。
彼女が『べ、別にこんなので……こんなので機嫌が取れると思ったら大間違いだから!』と言いながら羊羹を食べる。それが可笑しくて私は噴き出してしまった。それでまた彼女の機嫌を損ねてしまったのだが。
これが私、海有朔夜とライムの出会い。それまで他者とのコミュニケーションを一切拒否していた私を変えてくれた少女との出会いだった。

彼女、ライム=コーデルフィアは当たり前だけれど日本人ではなかった。彼女は小国コーデルフィアから日本のトップアイドルになるために来たらしい。突然の話についていけない私にライムは丁寧に話してくれた。
元々自分はコーデルフィアの王家一族であるお父さんと日本人のお母さんの間に生まれたこと。お母さんは難産でライムを産んで死んでしまいお父さんも後を追ってしまったこと。自分は王宮の離れに閉じ込められ"呪われた、汚れた子"として育てられたこと。
そしてそんな王家を見返したくてお母さんの生まれた日本でトップアイドルになる。そして自分の存在が正しいことを天国の両親に見せる。
それが彼女、ライム=コーデルフィアが日本に来た理由だった。この道場には彼女の母親が若い時に通っていたらしく私のお爺ちゃんと日本を離れてからも連絡をたまに取っていたらしい。
それを母親の日記から知ったライムはとりあえずこの道場を訪ねてみたということだ。
『お母さんの日記に朔夜のことが書いてあってね。一人だけ同い年くらいの女の子がいたから"朔夜"だと思ったけど合ってて良かったぁ!』
明るく話すライムに私は思わず言葉を失っていた。私と彼女の境遇はよく似ている。両親が幼い頃には既にいなかったり、周囲から虐められたり。
にも関わらずライムは前向きに生きている。自分の運命を呪うことなく懸命に生きた証を作ろうとしている。それに比べて私はどうだろうか。ひたすら運命を呪って学校にも行かず、他人とも距離を置いて――
『さ、朔夜ちゃん!?大丈夫!?』
『えっ……』
咄嗟に手を頬にやると濡れていた。無意識に私は泣いていたのだ。……本当は分かっていたのかもしれない。自分のしていることは間違っているって。でも何処かで諦めてしまっていたんだと思う。
それをこのライムという少女は教えてくれたのかもしれない。泣き止まない私をライムはそっと抱きしめてくれた。



276 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:24:10.97 ID:Lt1NYQrV
しばらく泣いて涙が止まった後、私はライムを見つめる。決心が鈍らない内に言わなくてはならない。これからはもっと前向きに生きるべきなんだ。これはそのための儀式のようなもの。
『……ライム、えっと……その……私と……』
ライムはきょとんとした後、私の言いたいことが分かったのかにやにやし始めた。これはおそらくさっきの正座の復讐なのだろうが自分で言うしかない。そうでなければ意味がないことくらいは分かっているつもりだ。
『何かな?朔夜ちゃん?』
『くっ……わ、私と……友達……』
『んん?』
『とっ!友達になってくれないかな!?』
恥ずかしさを紛らわす為に大声で叫ぶ。顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。ライムは少し考えるふりをした後、私に抱き着いて来た。それが答えだった。生まれて初めて出来た本当の意味での友達に、私は情けないがまた泣き出してしまった。
私達は部屋で話をした。好きな食べ物から好きな異性のタイプとか……本当に色んな話をした。気が付けばもう窓からは夕日が刺し5時を告げる鐘が鳴り響いている。そろそろ帰るというライムを私は玄関まで見送ることにした。
とても楽しかったし、少し……いや、凄く寂しくなると思ったからだ。二人でたわいもない話をしながら別れを惜しむ。
ライムはまた遊びに来ると言っていたがこれから彼女が目指す道はとても厳しい。ライムなら何とかなる気はするけれどしばらくは会えないような感じがした。
『あっ!そういえばね、私良いこと思い付いたんだ!』
そんな私を元気づけるようにライムは話す。彼女の思い付きとはアイドルになった時の芸名だった。明るく話すライムにいつの間にか私もつられて明るくなる。
ライムは私に一枚のメモを見せた。そこには私の家の番号と私の名前がローマ字で綺麗に書いてある。流石に外人だけあって達筆だと思った。ライムはその名前の部分、"umiari sakuya"を指す。
『これをね、逆から読むと……』
『えっと……あ、ゆ、か、し、ら、い、む……ライム!』
私の答えにライムはウインクをする。何の因果か、それとも奇跡なのか。私達の名前は一部だけれど"裏"の関係にあったのだった。ライムは『あゆかしらいむ……ちょっとダサいけど使わせて貰うね!』とおどけながら私に話す。私が寂しくならない為に。
『……ありがとう』
『ううん、"友達"だからね!』
こうして後の日本、いや世界を魅了するアイドル、鮎樫らいむは生まれた。そして私を白川要と引き合わせる運命もこの時生まれた。勿論、ライムの背中に思いっ切り手を振るこの時の私には分かるはずもなかったのだが。
それは今年の5月のことである。



初夏。暖かな春を越え風が心地好い季節だ。これからの暑さを予感させるような季節でもある。気が早い誰かが吊した風鈴を弄りながら私はテレビを眺めていた。ブラウン管の向こうには今や世界でも知られるアイドルがこちらに微笑んでいる。
"鮎樫らいむ"――日本人ならば誰でも知っているアイドルの誰も知らない秘密を私は知っている。何だかそれが嬉しくて私はライムがテレビに出るといつも彼女の曲を口ずさむ。
私とライムが出会ってから半年、彼女は見事宣言通りアイドルになった。私もあれからほんの少しだけれど自分からコミュニケーションをすることにしている。
まだぎこちないし相手はお爺ちゃんだけとそれでも良い。少しずつ変わっていこうと決めたのだ。



277 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:25:15.09 ID:Lt1NYQrV
そんな初夏を感じさせる夜のことだったか。しばらく連絡を取っていなかったライムから久しぶりに電話があった。はしゃぎながら電話に出た私とは対照的にライムは以前とは打って変わって静かだった。そして一言――
『アクアポートに……来て』
それだけ言うと彼女は電話を切ってしまった。明らかにいつもとは違うライムの態度に焦った私はとりあえず指定された場所に行くことにした。
アクアポートとはこの桜ヶ崎市にある海上娯楽施設"アクアマリン"の中にあるビルだった。何故ライムがそんな場所にいるのか。
最近テレビではライムがアイドルを休業していることについて様々な報道がされていた。両親を亡くした事故以来、極端なマスコミ嫌いになった私はあまりそのようなワイドショーは見ていなかったので気にしていなかったのだが。
もしかしたら直接何か話したいことがあるのではないのだろうか。そんなことを考えながら私はアクアポートへと向かった。だが結局ライムには会えずアクアポートを上っている途中で変な集団と出くわした。
そして私はそこで偶然にも白川要と出会うことになる。そして入れ代わるようにライム、もといアイドル鮎樫らいむは姿を消した。アクアポートの爆発と共に。
今になってもどうしてライムが私を呼んだのか、そして何故アクアポートが爆発したのかは分からない。私はライムを探す暇もなく仕方なく家へ帰ってきた。
この時は白川要のことなど途中で出くわした変な集団の一人くらいにしか思っていなかったのだが――



ライムが私を呼び出してから一週間ほどが経ったある日。世間はアクアポートの突然の爆発と鮎樫らいむの失踪で盛り上がっている。
あれからライムとは連絡が取れずずっと塞ぎ込んでいた私を白川要が尋ねて……いや、押しかけてきた。気分を変えようとたまたま稽古をしに道場へ来た私を見るとすぐに彼は近付いてきて――
『やっと見つけた……!お前、あの時の奴だろ!?』
『……誰?』
『この前の借りを返しに来た!』
目の前の少年が言うには私がアクアポートに行った一週間ほど前の夜、彼とその仲間もそこにいたらしい。
そして死闘(本人曰く)を誰かさんと演じている時に私が入って来て邪魔、というか全員蹴散らしたらしい。『お前は……誰だ!?』と言う彼に対して私は――
『てめぇは一言…"海有塾の者だ"と言って去りやがった』
厨二病じみた台詞を残して去っていったらしい。よくよく思い返して見れば確かにあの日、アクアポートを登っている途中騒ぎに巻き込まれた。あの時はライムのことしか頭になくてとりあえず一掃したがまさかそんなことになっていたとは……。
『……何か……ごめん』
謝る私に対して少年はいきなり勝負を申し込んで来た。何でも仇は拳で取るのが彼の流儀らしい。とにかく、こんな意味不明の出会いが私の人生を大きく変えるなどどは私はこの時微塵も考えていなかった。



278 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:26:03.18 ID:Lt1NYQrV

とりあえず死なない程度に少年、白川要を叩きのめすと彼は毎日海有塾に通うようになった。元々彼にも武道の才があったらしく急激に成長していった。そんな彼を見ていると昔の、あのがむしゃらだった自分を思い返して何だか複雑だった。
白川要は私と道場で会う度に勝負を挑むようになり、私も何となく彼が気になり始めた。今まで生きてきてどんな形にせよ、自分を求めてくれる人なんていなかったからだ。
そして気がつけば要と手合わせ出来るのを楽しみにしている私がいた。他人には邪魔されたくなかったので地下にある道場で毎日のように手合わせをする。そして手合わせの後に話をした。お互いのこと、家族や趣味など内容は多岐に渡った。
最初は乗り気ではなかった要も私の境遇を聞いてからは私に心を開いてくれるようになった。この頃の私はとにかく世間知らずで、よく要に馬鹿にされた。そしてその度に私は要を押さえ付けながら教えろと強要した。
『朔夜っていつも胴着だよな……。それでも本当に若い女の子かよ』
『ふーん……じゃあ明日、今時の女の子が着る服でも選んで貰おうかしら』
『はあっ!?明日は休み……いてぇ!!』
『返事は?』
『わ、分かったから離せ!いや離してください!!』
今思えば要も私もデートに誘う、誘われるのが気恥ずかしいからわざとこんな掛け合いをしていたのだろう。でも私は"恋"というものを全く知らなかったし何よりそれを自覚していなかったのだ。
要は口では嫌味を言いながらも放課後や休日を私との時間に使ってくれるようになった。最初は申し訳ない気持ちもあったのだが要といる内にそれも忘れて思いきり楽しんでしまっていた。
思えばあの交通事故以来私は遊びにも買い物にも行ったことはなかった。そんな私に要は新しい世界を次々と見せてくれたのだ。あの時がおそらく私の短い人生で一番幸せな時期だった。
そんな友達以上恋人未満の関係が一ヶ月以上続いたある日。太陽がアスファルトを照らし茹だるような暑さが町を覆う7月上旬。いつものように手合わせを終えた私は要に――
『朔夜……えっと……』
『何?再戦ならまた今度に――』
『す、好きだっ!』
いきなり告白され抱き着かれた。端から見れば要は単なる変態なのだが情けないことに私自身、この告白でようやく自分の気持ちに気がついた。
そして私はそのまま要を自分部屋に招いて愛し合った。生まれてきてから今まで一番痛くて、そして……一番幸せな夜だった。私を必要としてくれる人がまだこの世界にいるんだと実感した。
行為が終わった後、ベッドの中で要は私に色々打ち明けてくれた。自分も私同様虐めを受けていたこと。その影響で妹が自分に依存してしまいそれを受け止めきれないこと。自分の大切な仲間達をもしかしたら自分が傷付けてしまっているかもしれないこと。
そして何も出来ない自分が情けなくて消えてしまいたいと思っていること。
『俺は……屑なんだよ。分かってるんだ。優も遥も潤も……でも俺はそれに答えられない』
『要……?』
『もう一度……もう一度皆で笑い合えたらな……』
要は寂しそうな笑みを浮かべて私を抱きしめた。きっと要にとってその"仲間"達はとても大切なんだ。凄く悔しかったけれど同時に要のために私が出来ることはないのかと思いはじめた。



279 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:26:55.80 ID:Lt1NYQrV
それから日に日にやつれていく要を見ているのはとても辛かった。一度は要を苦しめるその"仲間"達を殺そうかとも思ったけれど、それはすぐに止めた。
一度、苦しむ要に耐えられなくなって、あるいは嫉妬心からか私は彼の学校にこっそり忍び込んだ。もし要を苦しめるその仲間たちを見つけたら――
でも私が学校で見たのはその仲間たちと談笑してふざけ合う彼の姿だった。私といる時には絶対に見せてくれない眩しいほどの笑顔だったのだ。私にはあの笑顔はさせられない、そう確信してしまうくらいだった。
私にはただ疲れた要を抱きしめることしか出来ない。要のために何か出来ないか。要が幸せになるためなら私はどうなっても良い。だから要にだけは……。
そんな私の思いとは裏腹に要の様子は悪くなる一方で私はただそれを見ているしかなかった。二人で何処に行っても、何をしても要は何処か上の空で遠くを見ていた。

要はゲームが好きで特に魔王が現れて勇者一行がそれを倒す、という王道が好きらしい。理由は言わなかったけれど今ならはっきりと分かる。きっと要はバラバラになった仲間が魔王という共通の敵を前にして団結する姿に憧れたのだろう。
バラバラになってしまいそうな自分の仲間を重ねて。もし私が魔王になれたら要はまた幸せになれるのだろうか。私はそればかり考えていた。そして運命の日は訪れる。



その日は蝉が五月蝿く鳴く夏真っ盛りの気候だった。要の学校ではちょうど終業式の日らしく、要は昼過ぎには道場に来たのだが――
『かな……どうしたのその頬!?』
要の左頬は赤く腫れていた。手当をしようとする私を止めて彼は学校に行くからここで待っていて欲しいと言って出ていってしまった。私は止めることも出来ず日が暮れるまでただ道場で立ち尽くしていた。

『……要』
流石に夜になり心配になって学校に様子を見に行くと要が空き教室で白髪の女の子に刺されているところだった。咄嗟に私は要を抱きしめてそのまま駆け出し学校を離れた。
突然のことに気が動転しながらも白髪の少女を振り切り要に呼びかけるが――
『っ……』
『要っ!しっかりして!』
要は腹部を深く刺されたらしくまともに歩けない状態だった。要の言う通り電車に乗って空いている席に座らせる。たまたま彼がこの前買ってくれた白いワンピースを着ていたので裾を千切って応急処置をする。
夜の微妙な時間帯、しかもローカル線で人は皆無なのが救いだった。そしてそこで要は全てを話してくれた。今日の昼間、仲間に別れを告げて来たこと。
仲間の一人、妹のことが好きな親友に殴られたこと。そして結局仲間を傷付けて逆に刺されてしまったこと。要は苦しそうにそれを私に教えてくれた。
『別れれば……もう傷付けなくて済むなんて……甘かったな……』
要は天井を見上げながら呟く。両手は腹部からの出血で赤く染まっていた。
『病院に……』
『行かない……もう……疲れたからさ……もう……良いんだ……』
要はゆっくりと目を閉じる。私は慌てて要を連れて駅を下りた。桜ヶ崎からは随分離れてしまっていて潮の香りがする。
病院を探そうとする私に要は駅から見える高い崖を指してあそこへ行って欲しいと言った。何となく、何となく感じる。要はもう死ぬ気なんだ。上手く生きられない自分を許せなくて海へ還るつもりなんだ、と。
私は黙って頷くとそのまま要を崖まで連れて行く。彼に買って貰った純白のワンピースはあの幼い頃の事故と同じように赤く染まっていた。崖は意外と高くここから飛び降りれば高い確率で死ねるような場所だった。要はゆっくりと顔を上げると私を見つめる。
『俺を……』
『私も行く。一緒に……行く』
彼の言葉を遮るように私は話す。そして何かを言おうとする要の口にキスをした。この二週間、毎日と言って良いほどしたキスも今日は何だか違う味がした。それは鉄と少しばかりの悲しさを含んでいたような気がする。要は驚いた表情で私を見つめていた。
『この二ヶ月近く、私は十分に幸せだった。少なくとも一生分はね。だから……大丈夫』
『……わりぃ』
もう何を言っても聞かないと諦めたのか、要は一言私に謝った。でも本当に謝るべきだったのは私の方に違いない。私がいなければ要はこんな結末を迎えずに済んだのだから。結局私は要を幸せにすることが出来なかった。そんなことを思いながら私達は――
『要……ありがとう』
『朔……夜……』
暗い海へと飛び込んだ。


280 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:30:27.11 ID:Lt1NYQrV

『……ここは……?』
真っ白な空間が周りには広がっていて死ぬことを覚悟していた私にとって目覚めることは意外だった。
さらに意外、いや奇跡とも言えるのが「私の精神だけが切り離されて要の精神の中へと取り込まれていたこと」だ。
昔ドラマで母親と娘の精神が入れ代わった話があると要が話していた。これはそんな感じなのかもしれない。
理解するのに時間はかかったけれど要の心の声が聞こえてきてようやく分かった。
そして私は自分の精神を削れば要に私を"認識"させることも出来ることが分かった。認識というか私の精神を要の精神と連動させて私が目の前にいるように感じさせる。
要が目覚めた病院で偶然にもそれが起こり私は彼と話をすることが出来た。これを奇跡と呼ばずしてなんと呼べばいいのか。
何よりも要が偶然にも記憶喪失になったことが私が要の中にいられるスペースを取らせてくれた原因だと私は思った。
一時的に記憶が一部無くなったことで私が要の中にいられる空間を作れたのかもしれない。
とにかく私は精神だけであるけれど要の一番側にいられることが出来るのだ。そして――
『この力があれば……要を幸せに出来るかもしれない』
そう。あの時は何も出来なかった。だけれども今度は要を導ける。要とその仲間達の絆を直して彼の望む世界を作ることが出来る。そのためには……。
『私は……"魔王"にならなくちゃいけない』
私の精神が続く限り要の前に現れて消えゆく少しのあいだ、彼と時を過ごすという選択肢もあったのかもしれない。
でもこのままではきっと繰り返す。要を巡って仲間が争いバラバラになってしまうだろう。要が生きている以上遅かれ早かれそれは起きる。
だからこそ共通の敵を作らないといけない。私なら出来る。きっとこの状態は神様が私に残してくれた最初で最後のチャンス。やり遂げてみせる。
要に私を"認識"させるにはかなりの精神を削るしいつも目覚めていることは出来ないだろう。むしろ彼の精神の中で眠っている時間の方が長いはず。
それでも私はやり遂げてみせる。要に仲間の存在を思い出させ、謎の少女を演じて要に私を……憎ませる。
嫌われたって良い。必要ならば私は魔王にだってなってやる。全ては、全て要の幸せのため……だから。
そう、これは私の愛。この世界で孤独で死にかけていた私を救ってくれた要への愛なんだ。


それからはかなり大変だった。要に私を"認識"させるのにかなりの精神を使ってしまい、頻繁に彼の前に出られなかった。
それに咄嗟に答えてしまった"鮎樫らいむ"という名前も私の本名を捜し当てるヒントになってしまった。
そして彼が私を"海有朔夜"だと認識した瞬間彼の精神から私が乖離してしまったのも予想外だった。おかげでそれからは依り所がなくいつ消えてしまってもおかしくなかったのだから。
ただラッキーなことも幾つかあった。私の力、つまり武道の才は私が要の精神にいる間は要のものになっていた。これで要は生活に慣れるまでは身を守れたし、"衝撃波"も使えていた。
また要が仲間と打ち解けてゆく内に彼等にも私を"認識"させることが出来るようになった。これで妹や会長さんの意志を導けた。そして何より仲間だけではなく新しい要素が要を支えてくれた。
それは"桜花"であったり"里奈"であったり"桃花"であったり"撫子"であったり……。そし
て"ライム"と"亙さん"……。
流石に要が初対面ではライムには私を認識させることは出来なかったけれど私は満足だった。
彼女が生きていて、そして幸せそうだったからだ。もしかしたら私にも有り得た未来……何て言うのはただの妄想だけれども。
結局私は最後まで"魔王"を演じきることが出来た。一度は会長さんや遥や妹の暴走でバラバラになりかけた"要組"は私という共通の敵を目の前にしてまとまったのだ。
多少紆余曲折はあったが最後は皆が要に集まっていた。そう、要はようやくリバース……つまり生まれ変わることが出来たんだ。
そして要ははっきりと私と決別することが出来た。後は私が消えればハッピーエンド。勇者一行はいつまでも幸せに暮らすことが出来る。
※※※


「たくさんあるんだ!」
要は朔夜を抱きしめながら川へと落ちてゆく。最後は精神が尽きかけてボロを出してしまったが頑張ったと朔夜は思った。だから、きっと最期に要が私を抱きしめてくれたのは囁かなご褒美に違いない。朔夜は誰にも分からないようにそっと微笑んで呟いた。
「……あったかい」


281 :リバース ◆Uw02HM2doE :2011/03/17(木) 01:31:19.25 ID:Lt1NYQrV


要は運良く川岸に流れ着いていた。辺りを見回すと穏やかな森が広がっている。どうやらかなり下流まで流されてきたらしい。安心したのと同時に記憶が蘇る。正確には流れ込んできた海有朔夜の記憶が。
「……だから……言ったのに……最期に記憶が…また混同するなんて……」
腕の中にいる朔夜はそっと呟いた。今にも消えてしまいそうな小さな声で。要が体験した今回の一連の事件の首謀者がじっと要を見つめた。
「私が……消えれば……それで……」
未だに必死に訴える少女に要はゆっくりと首を横に振った。ようやく全てを思い出せたのだ。全ては自分の責任。どうしようもなく狡くて、過去に縛られて人の優しさが信じられなかった自分の責任だと要は痛感した。
「何で……こんなこと……」
要の呻きの様な、心の叫びの様な問いに朔夜はゆっくりと微笑む。それは要がかつて、まだ朔夜と幸せな時を過ごしていた時に見せてくれていた笑顔だった。
「要を……愛しているから……」
そう。少女からすればこれは愛。愛なくしては到底出来ることではなかった。今まで人のために生きるなんてことをしなかった彼女が最初で最後、白川要という愛する人のために自分の人生を捨てたのだ。
しかし要にはそれは狂気にしか見えなかった。本当ならば気が付かなければならなかったはずだ。仮にも自分が好きだと言った少女を守るべきだった。いや、その前に彼女の苦しみを分かってあげるべきだったのかもしれない。
要は結局仲間を選んだ。しかし本当にその選択は正しかったのであろうか。その選択が海有朔夜を追い詰めることになったのではないのだろうか――
「朔夜……俺――」
話そうとする要の口を朔夜はそっと手で覆う。段々彼女の身体が軽くなり、透けてくる様子を見て焦る要に対して朔夜はとても穏やかな表情をしていた。彼女にとってはこの物語を考えた時から覚悟していた結末だから。
「いいの……これで……私は……幸せ……だって………要が幸せだから」
穏やかな笑みを浮かべる朔夜を見てなんとなく要は感じる。きっと彼女の幸せには彼女自身が入っていない。いや、そこまで考える余裕はなかったんだと。
「違う……朔夜がいなきゃ……駄目なんだ……!」
もう随分と軽くなった朔夜の身体を要は必死に抱きしめた。気が付くのが遅すぎたのかもしれない。自分にとって何が大切なものなのか。
「最後の一週間……凄く幸せだったから……私はもう十分……」
朔夜には分からなかった。どうすれば要が幸せになれるか。必死に考えた結果、狂気ともいえる行動に走ってしまった。要には自分しか見えていなかった。他にも不幸な境遇の人などいくらでもいるのにそれが見えなかった。
「もっと……色んなとこ行こう。お前……世間知らずだから……」
朔夜は意地悪そうに微笑みながらそれに返す。よく見ると彼女の服装はあの夜のままだった。真っ赤なワンピースは裾が少し千切れている。
「ふふっ……余計な……お世話ね……」
二人は静かに笑いあう。最期の最期でようやく狂気は晴れ、一番幸せだった頃の二人に戻ったような気がした。そして朔夜はゆっくりと消えていく――
「朔夜!俺!俺――」
「……死んでも……好きだよ……」
要の言葉を待たないまま、朔夜は消えた。真っ赤な、要の血で濡れた真っ赤なワンピースを残して。
「……………………ばかやろう……!!」
要はその場に泣き崩れた。真っ赤なワンピースを握りしめただ泣いた。自分の不甲斐無さ。情けなさ。様々なものが自分の中で渦巻いていた。



結局、英達が要を見つけたのはそれから何時間も経った夕暮れ時だった。そしてそれから約半年の月日が流れる。