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60 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:35:20 ID:3nsdqCoA
 ジャンが宿場に着いたとき、そこには客の姿は見当たらなかった。
 それは一階の酒場も同じであり、建物の中は不気味な程に静まり返っている。
 あの、小さいながらも活気のある声が飛び交っていた様子からは想像もできないくらいに、今の宿場は閑散とした状態だった。

 リディの話によれば、今は宿場に泊まっている客もいないとのことだった。
 疫病のせいで客足もぱったり途絶えてしまい、下の酒場も店を閉じている。
 酒場の店主とその妻も、しばらくは自分たちの実家に戻っているようだった。

「あ、あのさ……リディ……」

 お茶を持ってやってきたリディに、たまらずジャンは話しかけた。
 別に話したいことがあるわけではなかったが、あまりにも静かすぎる宿場の空気に押しつぶされそうなのが嫌だった。

「どうしたの、ジャン?
 お茶を入れたから、遠慮なく飲んでね」

「ああ……それじゃあ、いただくよ。
 それはそうと……君、香水なんてつけるようになったんだね……」

「あっ、ジャンも気づいた?
 実は、最近になってつけるようになったのよね。
 ジャン……この香り、なんの花のものだかわかるかな?」

「いや……僕は、そういった話はさっぱりだよ。
 いったい、何の香りなんだい?」

「うふふ……。
 これ、ラベンダーの香りなのよね。
 ラベンダーの香りって、人の心を癒す働きがあるんだよ」

 そう言って、リディはジャンの隣に座ると、その手の甲をそっと彼の鼻に近づけてきた。
 甘く、柔らかい香りが鼻先をくすぐり、それだけで不思議と気持ちが落ち着いてくる。

「ねえ、ジャン。
 それよりも……早く飲まないと、お茶が冷めちゃうよ。
 外は寒いんだから、ちゃんと体を温めて帰らないと」

「そ、そうだね。
 なんだか、リディにはいつも世話になりっぱなしだな……」

 リディに勧められるままに、ジャンは目の前に置かれたティーカップに手を伸ばした。
 先ほど大通りで出会った際には、彼女のあまりに変わり果てた姿に驚いたものである。
 が、しかし、こうして見ると、隣にいるのはジャンの良く知るリディのようにも思えて来る。
 香水をつけるなど彼女らしくない面も見られたが、それ以外は、至って普段通りのリディだった。

 舌を火傷しないように気をつけながら、ジャンは未だ湯気を立てている紅茶にそっと口をつけた。
 いざ口にしてみると、思っていたほど熱くない。
 いささか拍子抜けしながらもカップの中の物を一気に口に含んだが、次の瞬間、そのあまりの苦さにジャンは思わず顔をしかめた。


61 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:36:07 ID:3nsdqCoA
「うっ……。
 これはまた、随分と苦いお茶だね……。
 リディ、使う葉っぱを変えたのかい?」

「ええ、そうよ。
 たまには変わったお茶も飲みたいと思って用意したんだけど……気に入らなかったかな?」

「いや……勿体ないから、全部飲むよ。
 でも、次に入れるときには、もう少し薄めにした方がいいと思うよ」

 渋みというよりは、純粋な苦みの方が強い。
 そんなお茶の味に少しばかり妙な違和感を抱いたものの、ジャンは迷いを振り切るようにしてカップの中の物を飲み干した。

 苦く、喉が焼けつくような感触。
 あまりに酷い味に、思わずジャンは咳き込みそうになる。
 リディに限ってそんなことはないと思うが、何かの手違いでカビの生えた茶葉でも使ったのではないか。
 そう思わずにはいられないほど、彼女の出したお茶は苦かった。
 これでは自分が伯爵に出している薬の方が、まだ飲み物らしい味がすると言えるだろう。

「どうしたの、ジャン?
 やっぱり、お茶が口に合わなかったかしら?」

「う、うん……。
 このお茶、僕にはちょっと苦すぎたかな……」

「だったら、口直しにクッキーでも食べない?
 今、下の階から持ってくるから」

 そう言って席を立ったリディは、いつものジャンがよく知るリディだった。
 大通りで見せた病的な笑みはそこになく、あるのは気さくで明るい笑顔。
 瞳に宿っていた仄暗い闇も消え、彼女はいつも通りの様子で下の厨房に菓子を取りに行く。

 いったい、自分は何を気にしていたのだろう。
 今さらになって、ジャンは自分の考えが恥ずかしく思えてきた。
 リディに逆らえず、半ば強引に宿場に連れてこられた気もしたが、そもそも大通りで会ったときの様子こそが、自分の思い過ごしだったのかもしれない。
 居候同然の生活を続け、彼女に迷惑をかけるだけかけて去ったことで、心のどこかに後ろめたい感情が残っていたのかもしれないと思った。

 程なくして、リディが下の厨房から菓子を持って現れた。
 どうやらお茶も入れ直したらしく、今度のものはジャンも抵抗なく飲むことができた。

 温かいお茶と甘い菓子を口にすることで、徐々にジャンの身体からも疲れが抜けてきた。
 気のせいか、どことなく全身が暖まってきているような気もする。
 暖炉の前の炎に照らされたときのように、頭が少々ぼんやりとし始めていた。


62 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:37:13 ID:3nsdqCoA
「えっと……そろそろ、時間かな?
 今日は、本当に助かったよ。
 あのまま広場で馬車を待っていたら、僕の方が先に凍えていたかもしれない」

「どういたしまして。
 まあ、私はジャンが喜んでくれれば、それでいいんだけどね」

 お礼の言葉を述べるジャンに、リディが満面の笑みを湛えた表情で返す。
 なにはともあれ、彼女の気づかいを無駄にしないで済んだようだ。
 そのことが、ジャンの心の中で燻っていた罪悪感のようなものを、少しだけ和らげてくれたような気がした。

「それじゃあ、僕はもう行くから。
 リディも、病気には気をつけてね」

 そう言って、ジャンが椅子から立ち上がろうとしたときだった。

(あれ……?)

 突然、目の前の視界が揺らぎ、ジャンはそのまま糸の切れた人形のようにして床に倒れ込んだ。
 慌てて体を起こそうとするも、頭が思うように働かない。
 質の悪い酒に酔ったような感覚が全身を遅い、体に力が入らない。

 自分の身に、いったい何が起きたのか。
 朦朧とする意識の中、ジャンは懸命にそれを考えようとした。
 が、考えたところで正しい答えなど出るはずもなく、むしろ徐々に脳が麻痺してゆくような感覚に陥ってくる。
 体が昂奮を抑えきれず、自分の意志とは関係なしに、胸の奥から熱いものが込み上げてくる。

(な、なんだよ……これ……。
 僕は……どうなって……)

 そこまで考えたとき、ゴッという鈍い音と共に、ジャンの頭を激しい痛みが襲った。
 思わず頭を押さえ、仰向けに倒れるジャン。
 見ると、そこにはなにやら棒のようなものを持って、妖しげな笑みを浮かべているリディの姿がある。

「リ、リディ……。
 今のは……いったい……」

 そう、口にするだけが精一杯だった。

 ジャンが言葉を言い終わらないうちに、リディが再び手にした棒を彼の頭に叩きつけた。
 今度は打ちどころが悪かったのか、ジャンは自分の目の前が一瞬にして真っ暗になったのを感じていた。

「うふふ……ごめんなさい、ジャン……。
 でも……あなたに私の側にいてもらうためには、こうするしかなかったの……」

 目の前で仰向けになったまま動かないジャンに、リディが歪んだ笑みを浮かべながら呟いた。
 だが、そんな彼女の言葉さえ、今のジャンの耳には届かない。
 先ほどから彼の頭を支配していた陶酔感も相俟って、ジャンの意識は既に深い闇の淵へと沈んでいた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




63 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:38:22 ID:3nsdqCoA
 気がつくと、そこは薄暗い部屋の中だった。
 窓は黒いカーテンで覆われ、外からの光は入ってこない。
 部屋の隅にはランプが置いてあり、そこから放たれる淡い光だけが唯一の灯りだった。

 頭の隅に残る痛みに顔をしかめながら、ジャンはゆっくりと辺りの様子を見回した。
 どことなく見覚えのある部屋だと思ってよく見ると、そこは以前に自分がリディの宿場で借りていた部屋だった。
 亡くなった母親の部屋を改装して作った、あの従業員用の仮眠室である。

 いったい、自分はなぜこんな場所に寝かされているのか。
 そう考えたとき、ジャンの脳裏に今しがたの記憶が鮮明に蘇ってきた。

 ルネの待つ屋敷に戻ろうとして席を立った瞬間、泥酔したように床に倒れ込んでしまった自分。
 その後、追い打ちをかけるようにしてリディに頭を叩かれ、そのまま意識を失ってしまった。
 そして、気がつけば自分は薄暗い部屋の中、なぜかベッドに寝かされている。
 未だ全ての状況を飲み込めたわけではなかったが、少なくとも自分がリディによってこの部屋に運ばれたらしいということだけは確かだった。

 それにしても、リディはいったい何のつもりで、あんなことをしたのだろうか。
 そう思いながら体を起こそうとしたジャンだったが、腕と脚に妙な感触を覚え、ベッドから起き上がることができなかった。

「……っ!!
 こ、これは……!?」

 暗がりの中で目を凝らして見ると、自分の両腕が縄でベッドに固定されているのがわかった。
 いや、両腕ばかりではない。
 両足首もまた同様に縄で縛られ、股を広げられるような形で固定されている。
 更に驚いたことには、自分は一糸纏わぬ生まれたままの姿で寝かされていた。
 目覚めた時、妙に肌寒いと思ったのは、服を着ていなかったからだ。

「あっ……気がついたんだね、ジャン……」

 金属の軋む音と共に、リディが部屋の扉を開けて現れた。
 服は寝衣に着替えられており、その瞳は夜の闇よりも暗く濁っている。
 あの、大通りでジャンに迫ったときと同じように、乾いた笑い声を上げながらゆっくりと近づいてきた。

「リ、リディ……。
 これは、いったいどういうつもりなんだ!?
 君は、何を考えてこんなこと……!!」

「何って……私とジャンが、ずっと一緒にいるためだよ。
 今も、昔も、それにこれからも……ジャンは、私だけのナイトなんだから……」


64 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:39:47 ID:3nsdqCoA
「ナ、ナイトって……何を言っているんだよ、君は!?」

「うふふ……。
 まあ、わからないのも無理はないよね。
 だって……ジャンは病気なんだもの。
 心の底まで骨抜きにされて、私のことなんか見えなくなっちゃってるんだものね……」

「びょ、病気って……。
 それに、心まで骨抜きにされたって……」

「心配しなくてもいいよ、ジャン。
 あなたの病気は、私が全部治してあげる……。
 あなたの身体に染みついた、あの女の匂い……私が全部消して、元のジャンに戻してあげるから……」

 そう言いながら、リディは何の躊躇いもなしに自らの衣服を脱ぎ棄てた。
 橙色の光に照らされて、その豊満な胸と均整のとれた肢体が露になる。
 光のない淀んだ瞳でありながら、それでもどこか恍惚としたような表情も相俟って、今のリディは恐ろしいほど妖艶に見えた。

「ねえ、ジャン……。
 今から私が、あなたのことを私の香りで満たしてあげるわ……。
 そうすれば、あんな女の匂いなんか、あなたの身体から消えるわよね……。
 あなたも昔のように、私のことだけを見てくれるようになるわよね……」

 棚の上にあった小瓶を手に、リディがうっすらと笑みを浮かべながらジャンに問いかける。
 ジャンはそれに答えなかったが、リディは構うことなく小瓶の口を開けると、その中身を勢いよく自分の胸元に注ぎ始めた。

 次の瞬間、ラベンダーの甘い香りが部屋中に溢れ返った。
 リディが自分の胸に垂らしたもの。
 それは紛れもない、彼女がつけていた香水である。
 少量であれば癒しの効果を与えるそれも、ここまで大量に撒き散らせばむしろ不快だ。
 だが、当のリディはそんなことなどお構いなしに、瓶の中身を全て自分の身体に振りかけてしまった。

 やがて、香水がなくなったことを確認し、リディはそっと瓶を棚に戻してジャンに迫る。
 その両手をジャンの胸の脇に置き、上から覗きこむようにして彼の顔を見た。

「どう、ジャン……?
 私の身体……良い香りがするでしょう……?
 あんな女の、あんな香りなんかより、ずっと……ずっと甘いわよね……」

 リディの指が、慈しむようにしてジャンの頬を撫でる。
 虚ろな瞳のまま、まるで子猫を愛でる少女のように、彼女はジャンの頬を撫で続けた。

「うふふ……どうしたの、ジャン?
 私の身体……十年前とは違うでしょ……?
 ジャンのことを考えて、毎晩慰めていたら……胸だって、こんなに大きくなったんだよ……」

 ルネのものとは違う豊満な胸が、ジャンの顔に押し付けられた。
 柔らかく、それでいて張りのある感触が、吸いつくようにしてジャンの顔を犯す。
 が、それでもジャンはリディの胸に欲情する以上に、今の彼女に対する恐怖の方が大きかった。
 胸元から漂う強烈なラベンダーの臭気も相俟って、このまま窒息してしまうのではないかとさえ思えてくる。


65 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:41:21 ID:3nsdqCoA
「や、やめろ……リディ……!!
 こんなことしたって……僕は……」

 リディの胸に顔を埋められたまま、それでもジャンは精一杯の抵抗を試みた。
 が、しかし、その一方で、自分の下半身が徐々に熱を帯びてきているのを感じずにはいられない。
 己の意識とは反対に、身体の奥から凄まじいまでの欲望が込み上げてくる。
 一瞬、自分が自分でなくなってしまったのではないかと思うほど、それは強烈で抗い難いものだった。

「あっ……ジャンのも大きくなってきたよ。
 口ではやめろって言いながら、身体は正直なんだね。
 でも……昔から、そういう照れ屋なところも大好きだったよ、ジャン……」

 自分の行為でジャンが感じていたことに、リディは実に満足そうな顔をしてそう言った。
 そして、そのまま這うようにしてジャンの下半身へと顔を移すと、そこに屹立しているものを手にとって優しく撫で始める。

「くっ……駄目だ、リディ……!!
 君が何を考えているかは知らないけど……こんなこと、絶対に間違ってる!!」

「へえ……まだ、そんなこと言うんだ……。
 そんなに言うなら、ジャンにはもっと激しく私を感じてもらおうかな?」

「やめろって言ってるだろ!!
 僕の身体のこれは、僕の意思じゃない!!
 君が僕に飲ませたお茶……。
 あれに、何か混ぜたんだろう!?」

「あはは……やっぱりバレちゃったか。
 さすがはお医者さんだよね。
 実は……あのお茶には、いい気持ちになれるキノコの粉を入れておいたんだ。
 ジャンが私をいっぱい感じられるように、ちょっと危ない人に頼んで持ってきてもらったんだけど……」

 何ら悪びれた様子のない、至って無邪気な口調だった。

 リディがジャンに飲ませたもの。
 それは、幻覚作用をもたらすことのある、一種の麻薬として用いられるキノコの粉だった。
 阿片などに比べて中毒性は少ないものの、それでも昂奮剤としての効き目は秀逸だ。
 吐き気や目眩を伴うこともあるが、同時に意識の混濁や性的興奮の増加を促す作用もある。
 彼女が紅茶に混ぜてジャンに飲ませたのも、そういった類のものだった。

「ふふっ……。
 ジャンのここ、どんどん元気になってきてるよ……。
 薬のせいもあるとはいえ、やっぱりジャンも私を感じてくれているってことだよね……」

「な、なに言ってるんだよ、リディ……。
 君こそ……本当にどうしたって言うんだ……!!」

「私は別に、普通だよ……。
 おかしいのは、むしろジャンの方じゃないの?
 真面目なのもいいけど……自分に素直になれないのは、やっぱり病気だからだよね」

 リディの顔が、にやりと歪んだ。
 ジャンのものを撫でる手をそっと退かすと、今度はその豊満な胸で、今まで握っていたものを挟み込んでくる。
 柔らかく、温かい感触に包まれて、ジャンは自分の理性が物凄い速度で崩壊して行くのを感じていた。


66 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:43:05 ID:3nsdqCoA
「私の胸、気持ちいいでしょう、ジャン……。
 ジャンが喜んでくれるなら……私はどんなことだってしてあげるからね……」

 胸元にジャンのものを挟んだまま、リディがその身体を激しく上下に動かし始めた。
 初めは身体ごと胸を動かすだけだったが、徐々に自分でも胸に手をかけて、それを左右に揉みしだくような動きを加えてくる。
 終いには、胸元から覗くジャンのものの先端に、そっと舌を這わせて舐め始めた。

「んっ……ちゅっ……れろっ……はぁぁ……」

 胸と舌、その二つを使い、リディはジャンのものをゆっくりと攻め立てた。
 決して激しくすることはなく、どこか焦らすように、また自分自身も楽しむようにして、確実にジャンに快楽を与えてくる。

 いつしかジャンは抗うことも忘れ、ひたすらにリディの行為に身を任せるだけになっていた。
 本当は抗議の言葉の一つでも口にしたかったが、少しでも意識の集中を途切れさせれば、そのまま何も考えられなくなりそうで怖かった。

「んっ……んっ……ふぅ……んちゅっ……」

 舌と唾液の絡みつく音が、部屋の中に響き渡る。
 胸での愛撫から、今度は口の全てを使うものに切り替えて、リディは貪るようにジャンのものを咥えて舐めた。

「んんっ……はぁっ……んくっ……んふぅ」

 口の中で咥えているものが脈打つのを感じながら、リディはさらに激しくそれを攻めてゆく。
 舌を絡め、その全てを舐め回すようにして、奥深くまで咥えて口を動かした。

「あふぅ……ジャンの……凄い、震えてるよ……。
 んっ……我慢なんて……んふぅ……しなくていいからね……」

 唾液と舌の絡みつく音が激しさを増す度に、ジャンも己の限界が近づいているのを感じていた。
 もう、理性だけでは抑えきれそうにない。
 自分の意志とは関係なく腰が震え、軽い解放感の後、とうとうリディの口に己の欲望の丈を一度に吐き出した。

「んんっ……!?
 んぐっ……んふぅぅぅぅっ!!」

 何の前触れもなく口内に吐精され、さすがにリディも一瞬だけ驚いた表情を浮かべる。
 が、すぐに先ほどの恍惚とした顔に戻ると、吐き出されたものをゆっくりと味わうようにして、最後の一滴まで飲み干した。

「ふぅ……。
 これが……ジャンの味なんだね……。
 ちょっと苦かったけど……暖かくて、濃厚な味だよね……」

 欲望を吐き出したジャンのそれを口から離し、リディは嬉しそうな顔をして舌舐めずりをした。
 そして、再びジャンのものに手を添えると、先ほどのように激しく舌を使って刺激する。

「ちょっ……リディ!?」

「じっとしてて、ジャン……。
 あなたのことは、私がたくさん……たくさん愛してあげるから……。
 ジャンにはもっと……もっといっぱい、気持ちよくなって欲しいから……」

 唇の柔らかい感触が、再びジャンのものを包みこんだ。
 先ほど果てたばかりだというのに、すぐに下半身が力を取り戻してくるのがわかった。
 薬の作用もあるだろうが、それ以上に、今の妖艶なリディの姿と行為に壊されそうな自分がいる。
 献身的で家庭的な幼馴染の姿は既になく、今のリディは完全に魔性の女と言った方が相応しい様相を示していた。


67 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:44:42 ID:3nsdqCoA
「んんっ……はぁっ……。
 ジャンのここ、もうこんなに大きくなってる……。
 もっと……もっと、私を感じていいんだよ……」

 自分の行為でジャンのものが再び大きくなったことに、リディは満足そうな笑みを浮かべながらそういった。
 そして、そのまま固くなったジャンのものを握り締めると、それを自分の秘所にそっと宛がった。

「なっ……!!
 リ、リディ……そこは……!?」

「ジャン……私、もう我慢できないの……。
 あなたのここも我慢できないみたいだし……早く、二人で一つになろう……」

 先端で感じることしかできないとはいえ、リディのそこはジャンにもはっきりとわかるほどに激しく濡れていた。
 身体の準備は既にできているとばかりに、リディは手にしたジャンのものを、躊躇うことなく自分の中に押し入れる。

「んんっ……くぅっ……」

 瞬間、リディから今までの笑顔が消え、代わりに苦痛に耐えるかのような表情が浮かび上がった。
 彼女の中はきつく、激しくジャンを締めつけ、リディもまた苦悶に身をよじらせながらもジャンのものを取り込んでゆく。

「あっ……ジャンのが……入ってくるよ……。
 私の中に……少しずつ……」

 目元に涙を浮かべながらも、リディはゆっくりと腰を動かしてジャンを受け入れる。
 初めは強い圧迫感を感じたが、それを突き抜けたところで、リディの表情が一変した。

「くっ……はぁっ……ジャンの……きつい……。
 私の中で……どんどん大きくなって……」

 リディの顔が、明らかに紅潮しているのが見て取れた。
 彼女の中はジャンのものをしっかりと捕え、吸いつくようにして離さない。
 いつしかリディの動きはより激しく、その繋がりもまたより深いものになっていった。

「んっ……あんっ……凄いよ、ジャン……。
 私……初めてなのに……こんなに感じて……」

 そう言いながら、リディは動けないジャンの顔を両手で抑え、その唇を強引に奪うようにして口づけた。
 舌で唇をこじ開けて、その中にあるジャンの舌や歯茎の裏までをも蹂躙する。
 自分の中にある欲望の全てを、ジャンにそのままぶつけんばかりの勢いだ。

「んふぅっ……ちゅっ……はぁぁ……。
 ジャン……私……もう、駄目……」

「くっ……!!
 やめろ、リディ……。
 このままじゃ……僕も、もう持たなく……」

「いいよ、ジャン……。
 私の中で、たくさん気持ち良くなって……!!
 私の中に、いっぱい出して……!!」

 互いに限界が近い。
 それを悟ったのか、リディは再びジャンの上で激しく腰を動かし始めた。
 もう、これ以上は耐えられない。
 己の内から突き上げてくる衝動には耐えきれず、ジャンもとうとう、リディの中に自らの欲望を解き放つ。


68 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:45:49 ID:3nsdqCoA
「うっ……くっ……」

「あっ……はぁぁぁぁぁっ!!」

 ジャンがリディの中で果てたとき、リディもまた絶頂を迎えて身体を震わせた。
 自分の中に熱いものが注ぎ込まれるのを感じながら、リディは満足げな顔をして腹を撫でた。

「うふふ……。
 暖かいの、いっぱい出してくれたね、ジャン……。
 私の中、気持ち良かったでしょ?」

「リディ……。
 こんなことして、君は本当にただで済むと思っているのか……。
 もし、これで子どもができたりしたら……その時は……」

「あはは……。
 大丈夫よ、ジャン。
 私、あなたの子どもだったら、何人だって産めるもの。
 男の子でも、女の子でも……それこそ、五人でも十人でも大丈夫よ。
 たくさん愛し合って、たくさん子どもを産んで……家族みんなで、ずっと一緒に暮らしましょう……」

 部屋の天井を眺めながら、リディはどこか夢見心地な口調でジャンに言った。
 その耳には、既にジャンの言葉など届いていない。
 ジャンと一つに繋がったことで、リディはこれまでにない満ち足りた気分を味わっていた。

「うふふ……。
 もし、本当に子どもができたら……それこそ、私から逃げられないわよね、ジャン……。
 そのためにも……もっと、もっとたくさん愛してもらわなくちゃ駄目だよね……。
 あんな女のことなんて考えられなくなるくらい、私もジャンのことを愛してあげるから……。
 だからジャンも、いっぱい、いっぱい私のことを感じてね……。
 私の中でたくさん出して……早く、元気な赤ちゃんを作りましょう……」

「リディ……」

 それ以上は、何も言葉にできなかった。
 目の前のリディは、既にジャンの知る彼女ではない。
 だが、それがわかったところで、今の彼女から逃げるための術も見つからない。

「ふう……。
 それじゃあ、今日はここまでね。
 でも……すぐにまた、私がジャンを愛してあげるから……。
 だから……それまでは、ちょっと大人しくして待っていてね、ジャン……」

 名残惜しそうな顔をしながら、リディがゆっくりとジャンの身体から離れた。
 繋がっていた部分が外れると、そこからは一筋の鮮血が走っているのが見える。
 ルネと同じくリディもまた、男に身体を許すのは初めてだったのだろう。
 もっとも、そんなことに対する躊躇いなどなく、リディはジャンの欲望を己の思うままに貪りつくしたのだが。


69 :ラ・フェ・アンサングランテ 【第十七話】  ◆AJg91T1vXs [sage] :2011/02/03(木) 01:46:42 ID:3nsdqCoA
 ジャンの寝ているベッドから離れ、リディは部屋にある机の上に置かれていた一枚のハンカチを手に取った。
 青い色をしたハンカチからは、微かにラベンダーの香りが漂っている。
 リディのつけていた香水の匂いは、彼女の使うハンカチにもまたついていた。

 行為を終えた後の秘所を、リディはそのハンカチでそっと拭いた。
 そして、先ほど脱ぎ捨てた服を手際よく身に纏うと、今度はハンカチを丸めてジャンのことをじっと見降ろす。

「ねえ、ジャン……。
 まさかとは思うけど、大声出して助けを呼ぼうなんて考えていないわよね?
 そんなことしたら……私、あなたに何をするかわからないわよ?」

「な、何をするかわからないって……。
 それ、脅しているつもりなのか……」

「そうね……。
 でも、私もジャンに乱暴なことはしたくないし……とりあえず、こうしておけば安全かな?」

 そう言うと、リディは空いている方の手でジャンの口を強引にこじ開け、その中に自分の秘所を拭いたばかりのハンカチを押し込んできた。

「んぐっ……!?」

 喉が焼ける程に強いラベンダーの香りに混じり、むっとする女の匂いがジャンの口内に溢れ返る。
 思わず吐き戻しそうになったが、その前にリディがジャンの口に新たな布を宛がった。
 そのまま布でジャンの口を抑え、声が出せないように縛り上げる。

「ごめんね、ジャン……。
 私だって、本当はこんなことしたくないんだよ……。
 だから、変なことは考えないで、これからも私だけを見てね……」

 もう、声を上げることさえも敵わない。
 そんな絶望的な状況が、ジャンの心を急速に壊していった。

「あはっ……あははははっ……。
 これで……これでジャンは、もう私のものなんだよね……。
 あなたはもう、私から逃げられないの。
 他の誰のものでもない……私だけのジャンになるんだよね……。
 あははっ……ははっ……あはははははっ……」

 自分の想い人が諦めたのを悟ってか、リディが狂ったように笑い続ける。
 その顔にあるのは、仄暗い闇を湛えた二つの瞳。
 そんな彼女の瞳に映る自分の姿を見て、ジャンは永久に逃れることのできない牢獄に、自分の身体も心も縛り付けられてしまったように感じていた。