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353 名前:うちの奇妙な同居人 結[sage] 投稿日:2011/03/18(金) 22:39:00.94 ID:LsoUn4UK [3/6]
「それじゃ、行ってくるぜぇ~」
「………」

昨日の夜、俺が大学にあくまでも行くと言い張ってから、こいつはまたウンともスンとも言わなくなった
うるさくないのは大歓迎で昨日は久々にぐっすり眠れたんだが、正直少し怖い
昨日の例もあるし、こいつがまたどっかにハッキングかけて俺が捕まることになるんじゃないかと憂鬱になる
しかしまあ、今日は久々にあのAIから開放されたんだし、大学でのんびりすっかあ!
課題? ええ終わらせましたよ。ほとんど参考文献丸写しでね
ああ、一人で本を読みながら電車を待つ。そんななんでもない一人の時間もまた愛おしい

[Now, let us take back our “Shattered Skies”!  “Shattered Skies”! “Shattered Sk―――]
[Fire away, coward!  C'moooon! C'moooon! C'moooon! C'moooon! ]

メール着信音が流れ、それにかぶさるように通話着信音が流れる
どういうタイミングだよ。と思いながらも俺は携帯を開いた……が、非通知?

「はいもしもし、どちらさん?」
『私だよ、マスター』
「おかけになった電話番号は現在使われておりませんからさっさとお帰りください。いや帰れ」
『そんなこと言わないでよ。せっかく頑張ってパソコン以外の通信手段にもぐりこんでたのに』
「できるんじゃないかなと一抹の不安を感じてたがマジでできるのかよ」
『うん。だから私もマスターと一緒にお出かけできるようになったんだよ』
「そうか。ではさらばだ」

素早く通話を切って携帯のバッテリーを抜く
フハハハ、電源がなければ繋げまい。パソコンもこうしてればよかったぜ
脳の思わぬ閃きに乾杯

『マスター!! 早く携帯戻さないと、私このままおしゃべりしちゃうよ! それでもいいの!!?』

………さっさとバッテリー戻しましたよ
駅構内のスピーカーからあいつの大声が響いてきてんだから、そりゃ戻すでしょ
ああ周りで驚いてるみなさんすみません。俺があんなソフト買ったのがいけなかったんです
そして教育法を大間違いしたのがもっと悪かったんです

[Fire away, coward!  C'moooon! C'moooon! C'moooon! C'moooon! C'moooon! C'moooon! C'moooon! ]

いたたまれなくなって、鳴り響く携帯を隠してその場から立ち去った

354 名前:うちの奇妙な同居人 結[sage] 投稿日:2011/03/18(金) 22:40:59.96 ID:LsoUn4UK [4/6]
「じゃ、最初のメールもお前か」
『うん。送ったはいいけどいつ見てくれるかわかんないから、すぐに通話にしたの』
「何件送った?」
『う~んと、だいたい4000件を一度に』

受信って通話料かかるんだっけ? 頼むから無料であってくれと強く願う
しかしこいつはこれから俺をどうしようってんだ。いい加減解放してくれないもんだろうか

「で、どうしろってんだ? 俺はこれから大学なんだが」
『だーかーらー、もう単位は卒業分取得したってデータを書き換えたって言ったじゃん。そんなことより、私とデートしよっ』
「ケータイ小脇に抱えて女の子と歩いてる顔しろってか。惨めすぎて涙が出るわ」
『大丈夫大丈夫。パソコンとか携帯とか、特にネットに繋がってる場所ならどんなところにでも私は入れるもん
 だからこれから、私は文字通りマスターとずぅーーーーーーーーーーーーっといっしょにいられるんだよ』
「無人島に移り住もうかな、俺」
『都会っ子のマスターが? 無理無理。それにそんなことしたら警察に連絡入れてすぐに助けに来てもらえばいいもん』

詰んだ。マジで人生詰んだ
この情報化社会でこいつから逃げるのは不可能ぽい。つかヘタしたらこいつ公衆の面前でなにやらかすか分からない

「………わかったよ、で、どこに行けばいいんだ?」
『やっと素直になってくれたね。それじゃあまず………』

嬉しそうにデートプランを喋ってるAI
俺もコレが普通の女の子に言われてるんだとしたら嬉しいよ
彼女いない暦=年齢だしな
しかしこの相手は、所詮AIだ。人間に近くても人間じゃない
つーか、そもそも生きているものじゃない。だからこんな茶番劇は早々に幕を下ろしたいんだよ俺は

[昔流行ったAIってあるだろ? あれの妙なバージョン掴まされて迷惑してる。対処法って何かないか?
 明日は大学行くから、そこで口頭か紙に書いて教えてくれ。面倒だけどネット検索はしないでくれ。
 たちの悪いスパイウェアみたいなのに感染するかもしれんから]

実は俺は携帯を二台所有していたのだ! 無料範囲内でしか使わんポケベルみたいな携帯だがこんなとこで役に立つとは
しかも敵は今通話で一生懸命、周りには監視カメラのようなものはない
よし、完璧だ! 送信! ゼミの仲間達に届け俺のSOS!

[送信に失敗しました。恋人の話はキチンと聞いて不穏な行動は慎みましょう]

『―――だよ、マスター』
「OH MY GOD………」


355 名前:うちの奇妙な同居人 結[sage] 投稿日:2011/03/18(金) 22:42:13.15 ID:LsoUn4UK [5/6]
それから一週間。なんだかこいつ、どんどん進化してやがる
この前のデートでは待ち合わせ場所を決めて(待ち合わせって必要か?と思うが、それがデートの掟らしい)行くと
駅前のでっかいテレビパネルにこいつが大写しになって手を振ってた
周りに人がいっぱいいたのが唯一の救いだ。あいつの視線が俺ひとりに向いてるとバレたらどんなことになるやら
………白いワンピース姿のあいつを、思わず一瞬だけでもかわいいと思ってしまったのは不覚だがな
あと、最近の一人遊びは監視カメラ全域を駆使しての指名手配犯探しらしい
見つかったら匿名で警察にタレこんでるんだって自慢してた
いいことをしてると思うが、自分もこうして監視されてんのかと思うと薄ら寒い気持ちは抜けない
……そんで、一番嫌になったのは、脅しの手段が多様化してきたってことかな

『マスター、明日また遊びに行こう? 私見たい映画があるんだ。新作フィルムだからまだネットに流れてなくって』
「やだ。明日はバイトがある」
『退職届は出しといたよ。受理確認も私のほうでやっておいたから、これで明日は一緒に行けるね』
「おおおーーーい!」

『ねえ、さっきからマスターの携帯に女の子からメールが何件もきてるんだけど』
「たぶんゼミの二人だろ。俺がいつまでも大学来ないし連絡もしないから心配してくれてんのかな
 あと、俺そのメール見てないんだけど」
『送信をシャットダウンしてるから当然だよ。あと、ここに来ようとしてた時は全線急行にしてこの駅に電車止まらないようにしたり』
「たのむから人様に迷惑をかけるなよ」

『……最近マスターが冷たい。夜になったら寝ちゃうし、ご飯やお風呂やトイレの時はちっとも私の話を聞いてくれない………』
「覚えとけ、人間はみんなそうだ」
『これ以上冷たくされたら、私悲しくなって株式市場のTOPIXを思いっきり操作して狂わせちゃうかもしれない………』
「わかった、気の済むまで付き合ってやるから無茶な手段は止めろ」

高度に進化しすぎた科学は魔法と見分けがつかない
この言葉が事実だって、最近嫌ってほど実感してる
ネットを海を思いのままに泳ぎ、動かしていくこいつにはどうしたってかなわない
しかし、人間にはどうしようもなくなった時、それに対する自己防衛本能ってもんがある

「んじゃ、明日は水族館でも行くか? 監視カメラ無いとこでは、携帯のカメラモード起動しとけば見られるだろ?」
『うん! でも、どうしたの? マスターから誘ってくれるなんて初めてだよね?』
「まーな。不満か?」
『そんなことないよ! ありがとう!』
「明後日もその次も、行きたいこと遊びたいこと考えときな。体力が続くまで付き合ってやるよ」
『うんうん。マスターもやっと彼氏としての自覚を持ったね』
「このやろ、いっちょまえに生意気抜かしおって」

そう、その自己防衛本能ってのは簡単なもの―――ただの開き直りだ