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49 :闇母 [sage] :2008/01/12(土) 19:47:20 ID:f5RU4BjJ

〈茉奈Side〉

スカッとするくらい気持ちいい音がリビングに響いた。ついに、お父さんが、荒だった。お母さん、いや、あの年増、ほんと無様。
泣いたところで無駄無駄。“今のお父さん”にはね。
私はいつからなんて分からないけれど、ずっとずっとずーーっとお父さんといたいって思ってた。お父さんの笑顔に、仕草に、言葉に、私のこの小さな胸はドキドキしてしまう。お父さんの全てが欲しい。ただそれだけ。
けれど、人の恋路を邪魔するヤツがいる。お父さんの幼馴染み?知らないよ、そんなこと。
不思議なのは、私はあの年増をなんとかしなくちゃいけないって分かること。何をすればいいのかも、身体が分かるの。

『嘘も方便』。過程なんて、関係ない。私が欲しいのは、結果だけ。悪いね、お母さん。いや、年増。
私、私のために最善を尽くすから。


50 :闇母 [sage] :2008/01/12(土) 19:48:03 ID:f5RU4BjJ
もう私なんて眼中にない。半分嬉しくて、半分悲しい。私だけみていて欲しいんだもの。でもいいの。ホントいい気味だから。

お父さんはあの後も何十回も年増を殴り、蹴った。年増はただただうずくまって、必死に耐えるだけ。弁解の言葉は聡史さんには届かない。だって人間が『猫』の言ってること分かるわけないじゃん。
「お父さん…もう許してあげようよ」
お父さんが鬼の形相で振り返る。
「茉奈、まさかお前まで」目が血走ってる。吸いすぎたかな。
「ちがうよ。私はお父さん愛してるから…絶対裏切ったりなんかしないよ」
私はスカートをめくってパンツを晒す。かなり恥ずい。私の顔きっと真っ赤になってる。
「お父さんの、好きにして」
目がパンツに釘づけになってるよ、お父さん。
あの年増は気絶してる。血だらけの顔と床。掃除しとけよ、負け猫。けれどね、まだまだ足りないの。あんたからは全部奪うから。
「お父さん、先お風呂入ってて」
さすがに落ち着いてきたお父さんをお風呂に促し、私はやるべきことをやってしまう。
まだお父さんを我に返してもいけないし、あの年増からは『存在意義』を奪ってやらなくちゃ。
「あは、あははははははははははははは!!」



51 :闇母 [sage] :2008/01/12(土) 19:50:30 ID:f5RU4BjJ
〈市代Side〉

気付けば、私はリビングの隅でまるくなっていた。身体中が痛い。頭がぐらぐらする。喉もヒリヒリする。軋む身体を起こして、私は周りを見渡す。
真っ暗なリビング。私は電気をつけて、初めて愛のムチの凄まじさを知った。時計を確認すると、午前三時を少し過ぎたところだった。
やられた。懐かしい手法だった。多分聡史さんは薬でもあの小娘にかがされたのだろう。かつて私がやったように。しかし全く同じシチュエーションを真逆の立場で味わうとは思わなかった。
そして悔しかった。まんまと策にはまったこと、そしていくら薬でとはいえ、聡史さんに誤解されたことが。涙が止まらなかった。

リビングを綺麗にし、仕方なしにシャワーを浴びた。。そこそこに上がり、寝室へ向かう。そこには、彼の字で“入るな”と扉に紙が貼ってあった。

仕方なくリビングで寝ようかと思い、背を向けたときに、その信じがたいものがギシギシという音とともにかすかに耳に届いた。
「んあっ、あっ、だめ、もうらめ、らめ、あんっ」
「いく、いく、ま、また、いっちゃうよおぉ、んーーっ!」
信じられない。まさか、あの人がまさか、ね。はは。


52 :闇母 [sage] :2008/01/12(土) 19:51:22 ID:f5RU4BjJ
〈聡史Side〉

どうやら朝のようで。行為の後特有の気だるさとともに意識が覚醒してきた。
「市代…」
隣にさっきまでいたのだろうか。市代の温もりがまだ残っていた。
だが不思議だ。普段なら行為を思い出して朝も“あれ”が元気なのに、昨日のことをまるで覚えていない。学生時代にも似たようなことがあったような、なかったような。

今日は土曜日。俺は久しぶりの休日を享受できるわけだ。娘の教育の為にも、一応着替えてからリビングに向かう。
「………。」
誰もいない。
明かりはついているが人の気配がしない。
「朝食もまだか…」
なんだ?こんな珍しい。市代が朝食を作ってないとは。それのために毎朝毎朝俺より一時間も早く起きるのが市代の優しさだ。

キッチンを覗いて言葉を失った。まるで何かが大暴れしたかのようにぐちゃぐちゃになっている。バラバラの野菜。ひしゃげたおたま。
「こ、これは、これは一体…」
なんだよ、これ。


53 :闇母 [sage] :2008/01/12(土) 19:56:16 ID:f5RU4BjJ
その時俺は視界の端にうずくまる市代を見つけた。
「い、市代!!」

市代の身体がピクリとする。
しかし俺は足がすくみ、すぐには近寄れなかった。なぜなら、市代の手には結婚して初めて贈った包丁が握られていたから。
(危ない!)
俺の本能がそう告げている。いやそれははっきりと雰囲気で分かる。
でも俺、俺はあいつの夫だから、それ以前に市代を愛しているんじゃないのか!?お前はあの日約束したろ?
俺はついに駆け寄り、彼女の顔をあげさせたところで、またも言葉を失ってしまった。
市代の顔は殴られたあとのような青痣と腫れでいっぱいだった。
「聡史さん…」
そしてその目は何も見ていなかった。
「私…私…」
「い、一体何があったんだ!?まさか、強盗か!?お、おまえ、まさかや、やられたんじゃ」
かなりパニクっていて、自分が何言ってるかも分からない。
「わか…ない…」
ボソッと言った市代と目が合うと、腫れたまぶたの下、彼女の瞳からぼろぼろと惜しみなく涙がながれて。彼女の口からは衝撃的な事実を聞かされた。
「味が、味がわかんないの…全然わかんないよぉ!!!」

後で分かったことだが、その日、彼女の舌は永遠に味覚を失った。