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65 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/09(土) 08:36:48 ID:FRUSX36M [11/29]
アリスがへんになってから、1ヶ月がすぎた。
今彼女のうでには、ぼくが作ったアームレットがついている。
あのチョーカーがあまりににあってたので、外した後にロザリオで作ってみたのだ。
それ以来、アリスはそのアームレットを見てニヤニヤしている。

……あの日も、アリスはアームレットを見ていた。


「ふふ…ふふふ……」
もう、何度目かわからない彼女のひとり笑みをぼくはながめていた。
作ったちょうほんにんのぼくがいうのもなんだけど、アリスに悪いことしていたチョーカーだ。
正直、気に入る理由がちょっとわからない。
というか、アリスは持っててだいじょうぶなのかな?
「ねぇ、アリス……」
「んん?何かして遊ぼうか?」
こっちにはじけるような笑顔を向けてくる。かわいいんだけど…顔が赤くなっちゃう。
「あの、あのさ!そのロザリオは、持っててもだいじょうぶなの?」
急にアリスの顔が青ざめた。まるで今にもたおれちゃいそうだ……

「わ…私にこのアームレットを外せと言うのか……?
 私はこの贈り物を身につけるにふさわしくない…のか?
 ……た、頼む、私からこれを取り上げないでくれ……
 これは…これは君から貰った大切な……」
えぇ、なんでそっちにいっちゃうんだ?
「違うよ!そのロザリオはもともと悪いモノだったんでしょ?
 …アリスに何かあったら嫌だなって。」
ぼくもあさはかだったなぁ…ふつうに買ったのをプレゼントしてあげればよかったのに。

「な、なんだそういうことか…それについては気にしないでくれ。
 既に封印自体は無くなってしまったので、ロザリオに新しく封印の施しをしないかぎり
 これはただのアクセサリーだ。何の悪影響もない。
 ………いや、このアームレットは特別なものだったな。
 なんといっても…きっ…君が私にプレゼント…してくれたものだからなっ!」
アリスさん、顔真っ赤です。

アリスが下を向いて「私も何かプレゼント…」とかゴニョゴニョしてるのをよそに、
ぼくのおなかはせいだいにふまんをうったえた。
今は夕方。そろそろ晩ごはんの時間だ。
「アリス、ぼく晩ごはん食べてくる。」
聞いてない。っていうかまだ顔が真っ赤。たいちょうが悪いのかな?
トントンとかたをたたいて注意をよんでみた。
「ぅっひゃう!?ななな何だ!?」
かぜをひくと、ねつで頭がボーッとなるよね。アリスかぜでもひいたのかな?
「ねぇ、体だいじょうぶ?気分とか悪くなってないかな?」
女の子はオトコより体をだいじにしないとね。
「わわ私は全然気分悪くないぞ!むしろいつもより気持ちいいくらいだ!
 だって私の隣に、今君がいてくれてるから…!
 あのその、だ、だからもうちょっとそばにいっても…」
なんかさいきん、アリスと話が通じてない気がする。
アリス、疲れてるのかな?
ここで、ぼくの頭に豆電球が光った。
「……ねぇアリス、いっしょにごはん食べにいこうよ。」
ぼくのおかあさんの料理を食べたら、きっとアリスも元気になる。
われながらいいアイデアだ。
「あ…えっ?ど、どこに?」
アリスが急にろうばいしはじめた。
「いや…ぼくんちだけど……」
というか、アリスの家ってどこだろ。よく考えたら知らないな。
まぁ、ごはん食べながらアリスにきこう。
もっとアリスのこと、知りたいな。


「………残念だが、それは出来ない。」
………えっ?
考え事をやめてアリスを見ると、アリスはにが虫をかみつぶしたような顔をしていた。
ぼくとごはん食べるのがいやだったとか?
そ、それならしかたないね。しかたない。
「すまない、私はここから離れることは出来ないんだ。」
え?ふういんとやらは外れたんじゃないの?
まえに言ってたこととちがう。…なんで?
もしかして、ぼくって嫌われてる?
…いしきしたらけっこうきついな。心がはりさけそうだ。
「あ…違うぞ!君と一緒に行きたくないわけじゃないんだ!ただ私は…」
アリスが何か言ってる。何言ってるんだろう。ぼくの悪口じゃなきゃいいな。
ははは、よく、きこえない。帰ろう。

「アリス、もういいよ。ぼくは帰る。」
ドアを開けて、ギギギっときしませながら閉める。
なにかぼくを呼ぶ声が聞こえた気がした。
言わなきゃよかった。きょぜつされるのがこんなにつらいなんて………

………帰ろう。

66 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/09(土) 08:38:01 ID:FRUSX36M [12/29]
次の日のめざめは、かこさいあくの気分だった。
アリスに嫌われたことしか思い出せなかった。
家庭教師に勉強を教わってても、
黄色と黒のストライプにポストをぬって、はいたついんの人をはっきょうさせても
ずっとアリスのことを考えていた。
おそらく二度と会えないだろう、ぼくの初めてのトモダチ。
仲直りできるだろうか?
今日もくらにいてくれるだろうか?
どうすれば、また話せるだろうか?
…こういう時は、あいてのよろこぶプレゼントがいいってメイドさんが言ってたけど、
ぼくはアリスの好きなものを知らない。
アリスはぼくに、自分のことを何も教えてくれない。
ぼーっと、窓の景色をみる。
…そろそろ秋だ。あのくらに、たくさんのブドウが運ばれるんだろうな。
秋…秋………
そうだ!モミジをたくさん集めて、アリスに渡そう!
金色のモミジなら、アリスもよろこんでくれる!
そうときまればコートを着よう。モミジがりだ!

…なんか、体が重いなぁ。あと、なんかむねがくるしい。
耐え切れずに、ちょっと咳き込む。
……口の中がてつの味でいっぱいだ。
抑えた手を見る。今日ケチャップを食べてないのに、真っ赤だ。
かあさん、ぼくの体がなんかおかしい。
いたい、くるしい。
くるしいよ…




僕は、その日街へ降りた。
病院に、入院するためだ。
そしてそのまま、5年の歳月が過ぎた。

67 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/09(土) 08:39:05 ID:FRUSX36M [13/29]
――今年もまた、秋が来る。
窓の外は、緑色の気配をすっかり薄め、赤と黄色の色彩に溢れていた。
アリスと離れてしまって5年、僕の病気は一向に快方へ向かうことはなかった。
お医者様も様々な薬を試してくれたが、全て無駄に終わった。
そして今、僕は外へ出る準備を進めている。
病院に許可は取っていない。脱走するのだ。
先月辺りに、こっそり両親と医者の話を聞いたところ、
僕は雪を見ることが出来ないらしい。
つまり、冬を迎える前に死ぬってことだ。
……冗談じゃない!
こんな病院で死ぬなんていやだ!
僕はまだアリスに謝ってないんだ!こんなところで死んでやるもんか!
手持ちかばんの中に、紅葉を入れる。
あの時渡せなかったが、今から渡しに行こう。

もう、覚えてないかもしれないけど……


馬車に揺られること3時間、僕は昔の実家にいた。
今では祖父母しか住んでないこの家だが、僕の拠り所はこの家しかない。
生まれ育ったのも、初めて友達ができたのも、全部ここだ。
死ぬなら、ここで死にたい。
……じいちゃんに挨拶に行くか……


「そうか、お前は決めたか…」
じいちゃんはそれ以上、何も追求しなかった。
そこから先は、今までの生活や昔話をたくさん話した。
あと、こっそり蔵で遊んだことも…謝った。
じいちゃんはただ笑うだけで、僕を責めたりはしなかった。
ただ、蔵を持ち出したことで、僕はあることを思い出した。
「そういえばじいちゃん、蔵の悪魔って何?」
するとじいちゃんは、椅子に深く腰掛け、ゆったりと話しだした。

「昔、この地方に悪魔がいてな。
 村を襲い、人を殺し、病を流行らせる…ひどい悪魔がいたんじゃよ。
 そこで我らが先祖の聖騎士が悪魔を討伐し、封印したんじゃ。
 封印した場所はちょうどあの蔵の位置。……まぁ、お伽話みたいなもの。
 ……そうそう、悪魔の名前は『レッドアイズ』と呼ばれてたはず。
 その名のとおり、血のように真っ赤な瞳をしていたそうじゃ。」

真っ赤?真っ赤だって?
アリスの目は真っ青だ。どういうことだ?
僕は嘘をつかれてたのか?みんなで僕をかついでいたのか?
な、なら僕は何を信じればいいんだ。
友達なんていたのか?アリスは本当に友達だったのか?
ポロポロと、涙が出てくる。
じいちゃんは、そんな僕を優しくなでてくれた。
その後、体と心の疲れから、僕は眠ってしまった。



――ぱちん、と薪が弾ける音で目が覚めた。
時間は深夜。
この時間はアリスと遊んだ時間だ。
僕は躊躇なくコートを羽織り、蔵へ向かった。
もう、どうでもよかった。
僕はもう死んでしまう。相手が嘘ついてようと嫌われてようと。
ただ、もし会えるなら一言言いたかった。

「ありがとう。」って…

サク、サクと枯葉を踏みしめる。
かばんから、紅葉を取り出す。
―もし誰もいなくても、この紅葉を置いていこう。
やがて、僕は蔵の前にたった。
いつも見ていた蔵は、かつて無いほど大きく見えた。
ドアに手をかけ、軋ませながら開けた。
そして蔵の中の闇に身を投じる時、何故かとぷん、という水の音が聞こえた気がした。

68 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/09(土) 08:39:51 ID:FRUSX36M [14/29]
「なんだ…これは……」
僕の第一声はこれだった。
蔵の中のあちこちに、血の跡がある。
ひっかき傷のようなものも見える。
この光景を一言で表すなら

狂気。

進むどころか、入ることさえ忌避したくなる光景であった。
しかし、何故か僕の足は勝手に進んだ。
まるで目的地が分かっているかのように。
蔵の窓の近くと通るときに、月光の下に何か本が置かれていた。
手にとってみると、それは僕の本だった。
何度も読んだ、お気に入りの本…
「不思議の国のアリス」
どこかに行ってしまって、なくしたかと思っていた本があった。
ふと思い出した。
これはアリスと一緒に読むために、チョーカーを外した日に持ってきたんだった。
あの後の経験がすごすぎて、本のことを忘れていたかもしれない。
アリス………

アリスを思い出していると、下から何か音が聞こえた。
泥棒だろうか?それとも……
僕はゆっくりと階段を降りて、その存在を確かめに行った。
だが、その存在は僕の想像を超えていた。

階段の下で待っていたのは
変わらぬ姿の
アリスだった。